●リプレイ本文
●護衛
「こんにちは、フィアナさん。私たちが護ります、自称応援する会会長として」
フィアナ・ローデン(gz0020)の護衛をかってでたのは水鏡・シメイ(
ga0523)が、胸をたたいて言う。
「はい、偶に意地悪なところがありますが、信じています。お願いしますね」
フィアナは微笑んでシメイと握手した。
「フィアナちゃん、ニャー!」
アヤカ(
ga4624)がフィアナに抱きついた。
「きゃ、アヤカちゃんもお久しぶり!」
抱き返す。
「あたいも護るニャよ。バックダンサー務めるニャ」
屈託のない笑顔でフィアナを護ろうと言う。
アヤカは明るい雰囲気を出す、そう言う女の子なのだ
「‥‥フィアナさん護りますね」
ベル(
ga0924)は大人しめに握手をする。
「はい、ベルさん。お願いします」
「俺も護るからな」
鳥飼夕貴(
ga4123)がフィアナに挨拶する。
「今回は、お近づきになれて光栄です」
興奮のあまりシロクマになりそうな鈴葉・シロウ(
ga4772)だった。
「はじめまして、優です。よろしくお願いします。フィアナさん」
優(
ga8480)もフィアナと握手する。
挨拶も済んだ後、今回の護衛についてどうするか話し合うことにした。
「まず、フィアナさんとは密着した護衛が必要ですね」
目を閉じ、思案中のシメイは言う。
「お忍びでフィアナさんもコミレザのスペースに行くから、その護衛‥‥。ステージ内外の警備ですね」
シロウが言う。
「変装するべきだね」
鳥飼が言う。前に、大阪・日本橋の新作ゲーム深夜販売にて問題が起こったからだ。開催時間前に出かけるのは普通である。
「その場合、フィンさんという偽名でいきましょうか?」
シロウが提案する。
「その方が良いかもニャ」
他に異論はない。
「変装は、ゴスで行く?」
今度は服装だ。
「そこは、ゴスより‥‥っ! そう、セーラーとブレザー、どっちが好みですか? 私としてはセーラーで金髪ポニーテールというのも古き時代を感じさせ良いですが、最近はブレザー変形型制服が多いですし。うん、悩ましい」
語り出すシロウ。
「えっと、『なんちゃって』的になりません? 制服だと? それに、あたしが学生の時、制服は着てないし‥‥」
セーラー服の数々を見て、とまどうフィアナ。
「何を言いますか! コスプレも侮っては行けません!」
シロウはそこで熱く語り出す。制服の素晴らしさとかなどを。止まりそうにないから、シメイとベルと鳥飼が、手刀で彼を叩いた。
「流石、ヲタク。こだわりがあるな」
その後に、鳥飼が感心する。
「‥‥ふ、褒めないで下さい」
半分はそうだが、半分は褒めてないかも。たぶん。
「‥‥変装とコスプレを一緒にしない方が良いですよ」
ベルが静かに突っ込んだ。
「まあ、コスプレで目立ってはダメなので‥‥ふむ、そうなると難しいものですね」
シロウは考え込む。
「ま、俺はゴスを基本にしておくか。こうしたイベントだからな」
鳥飼は決まった居たようだ。
「デスペアについて分かることは?」
シメイがベルと鳥飼に尋ねる。
「名前以外では分かってないね。ただ爆弾などを使っていたが‥‥。ここで爆弾を使うと、危険だな」
鳥飼が考え込んだ。
「‥‥前のように‥‥必ず護り抜きましょう」
ベルが厳しい口調で言った。
誰が未着警護するかで少し時間はかかったものの、男1、女1でシロウと優に決まった。
(「☆いやっほーぅ! 両手に花☆」)
と、鼻の下伸ばすのは、シロウの心の声。流石キス・クマだ。
鼻の下を伸ばしている為に、優が怪訝な顔をしている事に気が付き、真面目な顔になる。
「ふむ、では、金髪を利用した、マニアックか古いヒロインと言うことで変装しますか」
フィアナがどれぐらいマニアックなのと聞くと、70年代前後のスポーツ根性少女マンガのお嬢様に似て居るぐらいで、『こういうキャラ居たけど、どの作品だっけ?』と思わせるものらしい。『知っているが、喉まで出かかっているけど出ない』というもどかしさを醸し出すつもりだ。
「こんなことならテニスウェアも持ってくればよかった!」
「どんどん方向性が違う気がします‥‥」
優が苦笑していた。
「もちろん、護衛はしっかりしますよ! 大船に乗って!」
シロウはどんと胸をたたく。
手には既にパンフと、要注意人物らしい写真を持っているシロウだった。
そして、アヤカとフィアナは、ステージの打ち合わせをする。
「今回ミニコンサートなので、そんなに時間はないから、数曲と一寸したトークでおわりだね」
「ふむふむニャ☆ バックダンサーもそれほど要らないって事かニャ?」
「慰安みたいに落ち着いた方向じゃなく、お祭りだからね。想い存分にはっちゃけましょうね、アヤカちゃん」
「OKニャ♪」
ステージの幅の地図を調べ、プログラムをしっかり調整する。
周辺警備のシメイと鳥飼とベルも、アスタリスク大阪の地図と地理をしらべ、何処で警備するか頭にたたき込む。此で全て準備は整い、現地に向かうのであった。
●イベント開催前の開場
一行は、開場入りする。開場にはいると、既にスタッフ達の熱気で圧倒される5人。シロウとフィアナは平然としている。どっちかというと、熱意に同調している感じだ。
「‥‥流石違う‥‥シロウさん」
「ふ、褒めないで下さい」
褒めてないと思う。たぶん。
ステージになる開館は奧にあるのではなく、中間だ。
「この開館の奧にトラックが良く出入りするということで、私と鳥飼さん、ベルさんはその近くも向かいましょう」
「‥‥ええ」
シメイと鳥飼とベルがまず確認で向かう。
「あたいたちは、一度楽屋裏に行くニャ」
「ですね」
アヤカがフィアナの腕を抱きかかえて進む。
「血がたぎるなぁ」
シロウは、コミレザの雰囲気に、昔の青春時代(?)を思い出しているようだ。優は全く同人について分からないため、圧倒されて引き気味であるが。サブカルチャーについては理解が難しいのである。それは永遠の命題だ。
中央は広場になって其処に2〜4号館がコの字となって囲んでいる。1号館はせり出しているためと、外に交通機関の自販機もあるので、普通はブースとして使われない位置だ(列整理用によく使われる)。
開催するのは午後近くということで、リハーサルや他の人との交流が行われていた。
「はい、そこでアヤカちゃんでてきて!」
「ニャ!」
スタッフの演出に従い。リハーサルをする。
「フィアナ、こっちきて」
スタッフが呼ぶ。一緒にアヤカもやってくる。
「はい」
「ここはこういう風にして‥‥そして‥‥」
「はい」
「ふむふむニャ」
真剣に本番前の打ち合わせをする歌手とアイドルを、シロウは萌えて眺め、優とベルは真剣に眺めている。ベルは決意を新たに周辺の警備に向かっていった。
(「‥‥あのような失態は絶対したくない‥‥」)
鳥飼は、未だ普通の姿で、周りを警備する。
「こちら鳥飼異常なし」
「こちら、シメイ、異常なしです」
今のところ問題はないようである。
リハーサルが終わったときに、開場入り口から地鳴りが来る。一瞬優が身構えるが、シロウが止める。
「開場したんです。ヲタク達がダッシュする足音ですよ」
と、言った。
大型ほ乳類の群が蹂躙するような音、そして熱気。アヤカ辺りはなれてきたが、既に慣れ親しむシロウはここでは冷静にいる。
「暫く、時間があるから、フィアナさん行ってきたら?」
スタッフが言う。
「はい」
「では、回っていきましょうか!」
シロウが、鼻息を荒くする。シロクマに覚醒しそうだ。
優は一寸引いてしまう。
「行きましょう」
「いってらっしゃいニャー!」
アヤカが手を振って見送った。
彼女もばれると周りが大事になりかねないので、お出かけは自粛気味なのだ。
●ヲタクデートと、牛
シロウがフィアナの希望する場所をエスコートし、優がその後ろを歩く。女の子を2人案内する男として、周りは映ったのだろうか。
「あのコ可愛いな」
「黒髪の人綺麗だなぁ」
「くそ、友達なのか! あの眼鏡!」
そんな声がする。
「逆に目立ってません?」
優が心配する。
「カメラ向けられてないから大丈夫ですよ」
シロウがウィンクする。
もし、シロウが1人か、同志だけで行くと、水を得た魚‥‥もとい、北極に戻った白熊みたいに本能のままこの会場を闊歩しているに違いない。熊は群れないけど。
しかしフィアナのお忍びが幸いするとは、思いも寄らなかった。
「なに、人面牛が、こっちに突撃?」
シメイが駆ける。
ベルもアヤカも、鳥飼も急いで走る。
ステージの会館前に、謎のトラックが入っており、そこから大阪・日本橋で問題を起こした人面牛が乱入したと情報が入るのだ。
「めいどすわぁぁん!」
「みこすわぁぁん!」
「ふぃあなたんはぁはぁ!」
不気味な台詞を吐きながら、ヲタク顔の人面牛が突撃してくる!
「絶対邪魔をさせないニャ!」
アヤカがルベウスを装備し、一気に間合いを詰めてロデオの様に乗る。そこで牛を何度も引っ掻き一頭を屠る! しかし、止まりきれない牛。彼女は牛から飛び降り、くるりと着地した。牛はそのまま壁に激突して沈黙。
「ふぃあなたんはぁはぁ!」
しかし、直ぐにヲタク顔が涎と鼻水を垂らして迫っていた!
「ニャー! キモイニャー!!」
ヲタク顔を間近で見たため、青ざめる。
ベルのフォルトゥーナ・マヨールとシメイのアルファルの連射が、その一頭を仕留める!
「ふぃあなたーん!」
間抜けで不気味な断末魔。
「‥‥大丈夫ですか!?」
ベルが叫ぶ。
「だ、大丈夫ニャ! もう2匹! くるニャ!」
指を指す。
ゴスロリの格好をしていた鳥飼が、月詠と蛍火を抜刀し、ピンクの髪をなびかせ、人面牛に斬りつける! そこで人面牛は止まったが、一旦引いた。ベルとシメイの援護射撃をかわしたのだ。
「なに!?」
そこで、鳥飼は間合いを更に詰める。
アヤカがまた飛び乗り一頭を、そして鳥飼がもう一頭を撃破した。相変わらず断末魔は気持ち悪いのだが。
瞬時のことだった。ステージ会場まで危害は0である。
「‥‥これも、デスペアに関係していると‥‥怖いです‥‥」
「フットリフレの失踪対象が、ヲタクだったからな‥‥。考えられることだね」
ベルと鳥飼は、人面牛を見て不安を隠し切れていなかった。
「はい‥‥はい‥‥こっちは大丈夫です片づけました」
シメイが別の警備班に返答していた。
「行列にも突っ込んでいったようです。危うくパニックになるところだったと」
「こわいね‥‥うわ! 俺のお気に入りのゴスが!」
戦っていたので、ボロボロだ。
ちょっと、ショックな鳥飼君であった。
遠くの方で、騒ぎがあったらしく一部の超警備班が向こうに走っていった。
「バグアか?」
「おい、なんか星座連中がいたんじゃね?」
「にているだけだろ」
「ヲタウェイの牛じゃないか?」
そんな、憶測が飛び交う中、シロウと優はフィアナを護る。
「今向こうにいては危険ですね。こっちは平静を装って、普通にスペースを回りましょう」
「‥‥ええ」
「そうですね‥‥」
無線でそっちが落ち着くまで会場内を回ると優が伝える。幸い、電波障害がなかったようだ。
「OKでました。で、スペースってなんでしょうか?」
優が訊ねる。
「それはですね☆」
「それはですね♪」
と、シロウとフィアナが、同人即売会の専門用語を簡単に説明していく。
音楽関係の同人CDなどをみてフィアナは試聴し、優やシロウに勧めた。
「良い曲ですね」
「ですです。あたしのお気に入りなの」
と、和気藹々とした雰囲気で、進む。
寄りたいところがあるとフィアナが言うので、ロボット・メカ関係の島に向かう。その目当てとは、
「エスティヴィアさん! こんにちは」
「? だれ? あ‥‥フィアナか」
小声で反応する、ゴス服でいるエスティヴィア(gz0070)。
少しばかり話をして、チケットと本の交換をすませて去っていく。
場所が場所だけに、目聡いヲタクが居た。
「ひょっとして、あれフィアナじゃね?」
「マジデスカ!」
「サインサイン!」
「写真だろ!」
ヲタクがざわめく。
「ええ!? 完璧な変装だったはずなのに!」
「これではダメです‥‥」
「フィアナさん、こっち!」
手を引っ張るシロウ。続く優。
ヲタクが追いかけてくる。これでは追いついてしまいそうだ。
「きゃ!」
フィアナがつんのめった。
「フィアナさん失礼」
直ぐにシロウが彼女を抱き、フィアナを横に抱きかかえる。
「ええ?」
そしてシロクマ顔になって、ダッシュ!
「ちょっと、それは逆に目立ちます!」
優が焦る。
しかし、幸い少しの覚醒で、一般人ヲタクを巻くことに成功した。覚醒した2人に追いつけるのは、同じ能力者だけだ。
「ふー、一寸びっくりしました」
「もう。キス・クマの異名は‥‥伊達ではないですね‥‥」
「しっかり巻くルートも頭にたたき込んでいたんです。それに、シロクマは萌えですよ?」
爽やかにウィンクするシロクマ。
ここでは、彼は英雄だ。たぶん。
30分の遅れは人面牛と、この逃走劇による物だが、フィアナ自体は全くの無傷であった。合流した一行は直ぐに衣装に着替え、再度の確認。そしてステージの開幕だ。
「アヤカちゃん?」
「牛臭くないかニャ?」
「大丈夫だよ」
フィアナとアヤカのやり取りを見て、ベルは、
「‥‥無事でなによりです」
安堵の気持ちで呟いたのであった。
●ミニコンサート開幕
30分の遅れをお詫びするアナウンスの後‥‥、問題なくフィアナのコンサートが開かれた。
ステージでは、フィアナがマイクを持って、まずはお詫びのトークだった。
「皆さん一寸遅れてしまいました。ごめんなさい。でもその分、思いっきり歌いますね!」
歓声が上がる。
「フィアナ! フィアナ!」
「わふー!」
フィアナの歌は今回、明るめの歌が多い。変装しているアヤカと、一部のバイトがバックダンサーを務め、短い時間ではあったが、楽しく進む。トークでは、フィアナのぼけに皆が突っ込むなど、楽しい雰囲気であった。シロウやベル、優は静かに、聴き入っていた(勿論、警備をおろそかにしていない)。
周辺警護をしているシメイや鳥飼もその歓声を聞き、今回は成功だと確信した。
「こちら異常なし」
「OK」
こうして、フィアナのコンサートは無事に終わったのだった。