●リプレイ本文
空港の廃墟のような場所だが、人の気配がある。
ここは、ドローム社第14開発室。マロッコ機関・エスティヴィアのラボなのである。
コンペディションにアイデアを出し合うためにここに来た能力者達は、手に自分の思い描くレーザー兵装の青写真なりレポートなどを持って、建物に入っていった。
「まさか、あの大きな映像装置がここまでになるとは‥‥凄いことだ」
白鐘剣一郎(
ga0184)は、一度この場所に来たことがあるが印象深い。
「ロマンだぜ。いやあ、俺のミカガミにも早く着けたいな」
リチャード・ガーランド(
ga1631)が目を輝かせてコンペディションを待つ。
やたらと綺麗な状態に眉をひそめ、あちこちを調べている男が居る。水円・一(
gb0495)だが、彼をなぜ其処まで神経質にしているのか?
砕牙 九郎(
ga7366)は首をかしげて訊ねる。
「おーい、なにやってんだってばよ?」
「いや、かなり掃除が行き届いているから信じられなくてな」
頭を掻く水円。
南雲 莞爾(
ga4272)は苦笑して、
「ここは凄い散らかってたんだ。驚愕するほどにな。何かスイッチが入ったのかかもしれないが‥‥」
「そうだと思うだろ? あと、兵装の会議は極秘になる分‥‥盗聴器などを探しているわけだが」
「ないだろ‥‥。ここほとんどエスティヴィアの独り暮らしだぞ」
南雲がため息を吐く。
「‥‥そうなのだけどな、神経質になっていた」
「ようこそいらっしゃいました。こちらにどうぞ」
若い女性が現れる。あまり印象的でもない白衣の研究員らしい女性だった。
一行はそのまま彼女に付いていき会議室に向かうのであった。
「ようこそ来てくれました」
笑みを浮かべ、緑の髪を後ろに束ねポニーテールにしたエスティヴィア(gz0070)が出迎えてくれた。
「けひゃひゃ! お久しぶり。エスティヴィア!」
「おお、同志、ドクター・ウェスト」
エスティヴィアとドクター・ウェスト(
ga0241)はハイタッチしてから握手する。
「初めまして! 俺はリチャード・ガーランドだぜい!」
子供の科学者も元気に挨拶する。しかし、エスティヴィアに撫でられてしまった。
「子供扱いされた!」
「子供じゃないの」
「初めまして、赤宮 リアです! 専門的な知識は持っておりませんが、熱意とアイデアはあります!」
赤宮 リア(
ga9958)は元気に熱意を持て挨拶する。
「エスティヴィア、この心境はどういう事だ?」
部屋の異様な綺麗さに驚く南雲莞爾と水円は訊ねるのだが。
「こう言うときぐらいしっかりしないと行けないわよぉ。大事な夢の一歩なんだし」
苦笑している。
「いつも其れでやって欲しい物だ」
南雲はため息を吐いた。
1人気配が後ろにあり、エスティヴィアが気付くよりも早く誰かの腕が彼女の胸を触った。男性諸君は「はぁ!?」と目を丸くするのだが、エスティヴィアは艶のある声を出してしまった。
「こら! いきなり何を!」
「ほほう。これこれは、なかなかのものやねぇ」
烏谷・小町(
gb0765)がエスティヴィアの胸を評価していた。
「ああ、これがうちの挨拶や。烏谷・小町ゆうねん。よろしゅう」
細身なのに結構あったのである、ちなみに形もよい。
「とんだ挨拶だけど、自重して欲しいわ‥‥」
エスティヴィアは苦笑した。
●コンペのプレゼンテーション
「まず、映像粒子とレーザー照射について、簡易的に説明していきます」
助手のコアーという女性が、開発試作器の映像機を使って、プレゼンを行っていく。
特殊な粒子に特殊な光線を当てて、映像を映し出すという基礎的なことからはじめて、今回の本編、如何にレーザー兵装(レーザーシールド)や幻影装置を開発していくかという事にまで行く。
映像の中ではブレイザーを着けたエスティヴィアに、コアーが超機械を放ったりして、シールドの展開を映し出していたが、映像の中のエスティヴィアとコアーの姿はかなりボロボロだった。
「体張ってやっているな」
「メンバー居ないんでね。コアーとあたしだけよぉ」
彼女は苦笑する。
あとは、幻影装置機基礎概念は、基本映像粒子を安定噴射させて別の機体を映し出したりすること。レーザーシールドの展開プログラム(デザインも仮)である、粒子噴射口は数点あってそこから扇状か円になるようになっている。噴射口を工夫することで、菱形などにも出来るようだ。
「最終目標として、我々もエミタを使用する事により可能な疑似フォースシールド(代替フォースフィールド)を所持し、バグアに対抗しえる防御と力を得たいのであります」
と、現在の仮説をたてて、展開構想を説明した。基本的にはKVや生身の前にフィールドが展開している図式だったのだが。
「未だ謎が多いワームの特殊兵装だが。戦闘になれている諸君達には、あの赤い壁について分かるかもしれない」
と。
●意見:レーザーシールド
「レーザーシールドを開発していくべきだろう」
白鐘は考えて言う。
「疑似フォースフィールドは、まだワームなどのシステムが分かってないこともある。なので、開発できるものではないな」
と、付け加える。
「まあ、その段階になったらうちらも、その手伝いは出来そうやねぇ。ワーム捕まえてくるとか」
小町がからからと笑う。
「ふむ、やはり開発の順番はレーザーシールド、質量幻影装置、最終的に擬似フォースフィールドだね〜」
ウェストも同じ意見だった。
「質量幻影装置は、ナノマシンを扱えるとしたら、実現可能かも知れないね〜。まあ、エミタ関連のナノマシンは未来研の占有物かもしれないから、気の遠くなる話だけどね〜。ふむふむ。我が輩も、当初個人用疑似フォースフィールドを考えていたのだが、構想の段階から出力面で躓いていてね〜‥‥」
「おーい、ウェスト博士さ」
考え込むドクターに割り込むのは砕牙。
「なんだね? 九郎君」
「いやKVの兵装だってばよ。だから生身は今、考えなくて良いんだって」
「‥‥え? KV兵装!?」
「うわ、口から魂出たようにみえる顔! おい! いきてるか! おーい!?」
ウェストは驚くと口から魂が出ていると言われそうな表情になるので、九郎や近くにいる人も驚いた。
コアーが彼に、冷やしタオルを掛けて、そっとしている。ウェストは『ぴくり』とも動いてない。
「いや、まあ、総合的にレーザー兵装を考えているわけだから、別に生身もOKなんだけどねぇ」
苦笑するしかないエスティヴィアであった。
「まず俺の考えでは、だ」
白鐘が自分の草案を配る。
「二つほど案があるわけだが、ひとつは武装として、メトロニウムシールドにこのレーザーシールド発生装置を取り付ける案だな。それように小型化にして、物理と非物理に対応できる盾を作り出す」
皆は真剣にパラパラと草案を読みながら、彼の言葉を聞いている(まだウェストは起きていない)。彼の声と、紙がめくれる音しかない。
「もうひとつは、アクセサリとして効果範囲をコクピットだけに絞り、交戦時に常時展開とするものだ。生存率が高まるはずだと俺は思っている」
彼は機械音痴なので、専門的な事は省いた説明だが、簡易的な図などにより比較的分かり易い内容であった。
「ふむ、これは良い案だな。盾を小型化して扱いやすくする、そしてメトロニウムシールドにも適応しておくと‥‥、盾の有意義所為はあがるな」
「俺的には、ディフェンダーに着けたいんだけどね」
水円が言う。
「其れは盾の意味が無くなるわよ? あたしの考えで全体的な物じゃないけどだ、ディフェンダーは武器で、盾が防御。能動的に行う攻撃と何かに対応して構える受け身とは違う物だとおもうのよ」
エスティヴィアが割って入った。
「考えて頂ければ、幸いだ、エスティヴィア」
白鐘は席に座る。
「今度は俺だなぁ」
砕牙が手を挙げる。
「俺の説明も良いかな? 白鐘さんの草案と一寸被っちゃいそうだけどさ」
と、自分の草案を説明する。
「まずは、軽量化も考えたいけど、レーザー単体が良いな。摩天楼やハヤブサ、ナイチンゲール、ミカガミなどは装備力が低く平均的に重くなる非物理系が装着しづらい。このレーザーシールドは一応物理にも効果があるってことだろ? なら、常時展開(その分装備時の練力が減る設定にし)、前方に展開、防御と抵抗を上げるってやつだな」
「それは、ウォール(壁)を作るということかしら?」
「KVの半分以上を庇うようにするから、そう考えられるかもな」
その言葉に「ほほう」、と参加者はうなる。
「其れは一寸問題じゃないかねぇ」
いきなりウェストが起きあがって言う。
「うわ! びっくりした!」
オーバーリアクションの砕牙。
「それだと、難点では攻撃したとき粒子が飛散し、使い物にならなくなることもあり得るわけだけどねぇ」
「タワーシールドのように空間的に嵩張ってしまうのは問題か?」
「其処まで大きくしなくても、小型メトロニウムシールド無しでも行けるようにしたいという主旨だってば」
「あ、それなら何とかなりそうですね。しかし、全面を包むには難しいと思いますよ?」
「だよなぁ。一寸難しいか。大きな展開は」
リアの言葉に唸る九郎。
「しかし其れもよい案だな」
南雲は腕を組んで頷いていた。
「俺の考えた物と差異はなかったんだ、2人のは」
リチャードが立つ。
そして、プレゼンテーション画面前に立って、ファイルを表示させた。
「あ、ほんと粒子以外に何もない!」
しっかり映っているのに、手を入れるとすり抜けることにリチャードは驚いた。
そして、現状のメトロニウムにコーティングする方法が良いかもと説明する。
「簡単に言えば、メトロニウムシールドを映像粒子でコーティングすることでシールドの防御力を向上させるという方法。これなら粒子散布の基準も決めやすいし、物理、非物理両方に対応できる装備になる。何よりも作りやすいと思うんだ」
問題は重量だけどね。と付け加える。
「まずは基礎。基本技術を確立すれば他へ応用できるし、能力者個人装備へ転用もできると思わない? 最終的には軽量化のためにレーザーだけでシールドもほしいし」
「そうだねぇ。先を見通してのことだからねぇ」
リチャードの案は、同じでも今後の開発計画を考える良い材料となるだろう。と、ほとんどの者が思った。
「俺っちも愛機のミカガミも重たいもの持ちたくないしね」
「そう言う個人的なことも重要になるな」
南雲は微笑んだ。
「でも、やっぱりロマンだぜ!」
親指を立てて張り切る子供の科学者であった。
「皆色々考えついて、あたしは嬉しいよ」
エスティヴィアは感謝の意を込めて拍手をする。
「後問題点は‥‥南雲君、どうぞ」
南雲莞爾がエスティヴィアをみていたので、彼女は彼に発言を譲った。
「ジェネレータ関連や消費練力だな」
全体が「ざわっ」となる。
「砕牙の案だと、練力消費量が問題だ。もし半分も減ると短期決戦になるからな。後、発生機構の負担などを考えないと。俺としては白鐘の提示したアクセサリ案を推していきたい」
「ふむ、やっぱり、無茶があるかぁ」
「一から大きな盾か壁を作ってしまうと、前の映像装置のような、KV10機でも使えない代物になってしまうだろう」
「うわ! そんな燃費悪かったんだ!」
また、大声を上げてのけぞるみたいに驚く砕牙九郎。
「九郎さん、相変わらずリアクション大きいです」
「‥‥ごめんなさい」
リアにたしなめられた。
「別電源(バッテリーカートリッジ)式にはでけへんの?」
烏谷・小町が手を挙げて発言する。
「ふむ、カートリッジねえ。そういえば、ドロームの別の開発部門で、レーザー兵装用のエネルギーカートリッジシステムを開発してるって、以前、ベルナール社長が言ってたような言ってないような‥‥」
「しかし、装填に時間食うかもしれないぞ?」
「そっか。まあ、希望案だから。後希望としては盾も良いけど、やっぱ戦闘機状態KV状態両方で使える方が良いわぁ♪」
けらけらと明るく笑う。
「アクセサリの事もある分問題はないですね」
「このところ盾は涙目だからねぇ、ひゃっひゃっひゃ」
もしアクセサリ案がなければ、全KV対応にならなかっただろう。危うい危うい。
「順序はエスティヴィアに任せて、兵装(盾)と装置(アクセサリ)で考える方がいいかと思うねぇ」
ウェストが纏めてみる。
「アイデア兵装は後にして、次は‥‥質量幻影装置をどうするか決めようかねぇ。その間休憩よ。コアー!」
「はい、ミネラルウォーターをどうぞ」
空になっていた水を換えてくれるコアーであった。
●神経質
水谷は周りを神経質に調べていた。
「どうした?」
白鐘が訊ねる。
「ああ、盗聴器がないか何か潜んでないか調べて居るんだ」
「‥‥大丈夫と思うぞ?」
「なに?」
「周りを見ろ。君がやっていることは杞憂だ」
白鐘がはっきり言った。
「‥‥」
「確かにデスペアとか言う存在気になるとしても、ここはかなり辺鄙で、バグアが来たという話はない。ラボが競合地区寄りに建っていれば別だが、だいたいエスティヴィアは常時机の下で寝ているほど無精しているだぞ?」
「‥‥そうか」
「話を聞けば彼女のここはコアーという人と、俺たち傭兵ぐらいしかきてないじゃないか?」
もっともなことであった。
「心配することは良いけどな」
苦笑する白鐘であった。
●ウェストさん、困る
「エスティヴィア。ちょっとお願いしたいのだけどねぇ」
「なに?」
休憩中。ゲーム機から離れないエスティヴィア。でもやっていたのは、フィアナ・ローデン(gz0020)との通信格闘らしい。ネット対戦が出来る事から、フィアナは今、北アメリカにいるようだ。
「なにー! これは『魔法と少女と肉体言語』ではないですかぁ!」
「ハードであそんでるのよねぇ。フィアナ強いよ」
「うそーん!」
ウェストは驚きで又魂抜けた顔になる。
「は! それなら対戦をしなくては! ってちがーう!」
博士、ノリツッコミする。
『E:AFK』
『F:k』
キーボードを叩いてから、ゲームを中断。エスティヴィアはウェストの方に向く。
「ん? なんだい?」
「科学者として我が輩の野望(夢)なんだけどねぇ。最終的に、『非能力者』でも、使えるようにしたいのだができないかねぇ?」
「無理だね」
「どうしてかね?」
即答されたことで身を乗り出しそうになるウェスト。
「今どれだけの数の能力者がいるのかは、あたしは管理者じゃないから分からない。厳しい言い方になるけど、あたしら『能力者』でないとSES武装は扱えないんだよ。例えば、ドロームで造ってるM1戦車だってSESエンジンを搭載してるけど、一般人が乗る分には、せいぜい『高出力な戦車』止まり。つまり、エミタと同調しないと、SES武装は真価が発揮出来ないのさ。もし一般人が使えるようになった場合‥‥。確かにバグアは退治でき易いかもしれないけど、実はエミタも原理は未だ不明な点が多いし、未来科学研究所も研究中なのよね、わかる? まだ能力者が生まれてそう経っていないのに、それが一般人へ普及するようになるまでには、後どのくらいの年月が掛かるか‥‥想像も付かないでしょ?」
「む‥‥そうであってもだけどねぇ」
「それに、全員がSESに対応できるほど頑丈でも適応能力があるわけじゃないんだ。人間は‥‥。あたしは選ばれたとかで奢ることはないけどさ。それにSES兵器自体を一般人に広めるのは好きじゃないね。それが軍であっても。新しい火種が起きてしまう」
厳しい口調で、彼女は言う。
「エミタには定期的なメンテナンスが課せられているけど、一般人にはそれがないでしょうね。制限のない力を持ってしまった人間全員がそれを良い方向に使うとは限らないのよ。万が一に仮に出来てしまったら、そっちの開発が進みすぎて、今度は『あたしらが火消しに回る』。それは確実だわ」
エスティヴィアはそう言い切る。
「我が輩は、考えを間違っていたのだろうか‥‥」
悩むウェストであった。
●質量幻影発生装置
「次に質量幻影発生装置だけが、なかなか興味深い物だが‥‥問題がある」
プレゼンテーションでは、コーン状などで噴霧し、レーザーで別のKV等を映し出すというものだ。間違ってワームが攻撃するという希望がある。
「ただ、ワームが何をもってKV等を認識しているかだけど」
「生体ワームなら目でしょ?」
「亀についてはねぇ。でもキューブワームって」
「ああ、アレは謎だな。アースクエイクは振動だろうか?」
普通は人間と同じように眼で見ていると仮定して話を進めてみることに落ち着いた。キメラの大多数は眼で居ているし、ワームにしても人型などは搭乗するタイプもある。何割か多く眼という器官物を見ているとして考えてもさほど問題ないだろう。ファームライドやシェイドなども『カメラアイ』で見ているはずだ。搭乗者自身人間(の形をしたバグア)なのだから。
「ただ、常時展開で分身を作るのは難しいと俺は思う」
白鐘が言う。
「マッハで飛んでいる飛行機状態では噴射と映像粒子の安定空間が追いついていかないことになり、きわめて難しい。陸戦では効果をもちそうだが‥‥」
「個人的には興味があるが、一緒に付いてくると言うことは難しくなるのか」
南雲が言うと、白鐘は頷いた。
「粒子散布映像投射を1つのユニットに集約し、滞空・機動能力を持たせる位は必要そうだな。しかし、先ほどの南雲の言うとおりに燃費や負荷がどうなるか、だ」
「マイクロマシンなどで補助などするのはどうかねぇ」
ウェストが意見を出す。
「ナノとは行かないが、だいぶうまく行くはずなんだよねぇ」
「‥‥そうだな。仮にそれで一定時間粒子を固定できるのであれば、そうする事もアリだと俺は思う」
「ふむ、先が見えてきた感じだってばよ」
九郎がワクワクした気持ちで言う。
「マイクロとまで行かなくてもチャフなら可能かもよ? その方が基盤的に安定していそうだし? アクセサリにはなりそうにないけどね‥‥。一応アレも兵器みたいだし」
エスティヴィアが口を挟んだ。
「なるほど。チャフを忘れていたな」
チャフとはレーダー探知を妨害する兵器のひとつである。レーザーを妨害する物質を散布し(日本語訳名では欺瞞紙とかとなり、紙か類似した物を散布させるそうだ)、レーダーで追尾するミサイルなどを回避しやすくなる。其れを映像粒子に置き換えるのだ。
この調子だと、白鐘とウェストの案を纏めて開発していきそうだと、エスティヴィアの顔は語っていた。
●其れをふまえた新兵装。
また休憩後に、今度は新しい兵装アイデアを出し合う時間になった。
「まあ、先に行っておくけどさ。あたしは兵器にはとことん疎いから。うーん、研修組もうかな」
「ロボアニメが好きなのに?」
リアと九郎が首をかしげる。
「ああ、ああいうトンデモ理屈は好きだよ? 実用性たり得る専門が分からないだけさ。それにあたしは専門的な物を確信するまでは、そんなに語ることは控えておきたいのよね」
エスティヴィアは肩をすくめた。
「おっと、横道にそれちゃったで、なにかあるかい?」
「俺があるってばよ」
彼女が言うと、砕牙が手を挙げて、レポートを持ってきた。
「あ、あたしもあります!」
赤宮リアもだった。
全員は黙って読む。
「ふむ、クロウ君、いい感じじゃないか。シールドガンの非物理タイプという事ねぇ」
うんうんと、エスティヴィアは感想をこぼす。
青写真的にではあるが、既にシールドガンが開発されていることで、基礎は出来ている。それの長距離可能のライフルにつけるものだ。
「高分子レーザーの銃身横に盾を装着して、盾表面にレーザーの粒子を流すことで受防、抵抗を上げるものなんだってば。ただし防御判定一回につき練力をいくらか消費するってことで。S−01のブレスノウかKV全体にあるブースト程度かな」
「ふむ、これは出来るわね。高分子レーザーが重いから、装置のレーザーシールドを入れると、少し嵩張る程度かもね。これは兵装担当に訊ねてみよう。それでもってあたし個人で3.2cm高分子レーザーは持っているし‥‥着けてみるかな‥‥くず鉄覚悟で」
エスティヴィアがそう答えると、九郎はガッツポーズをとった。
「ありがとだってばよ!」
「リア君とクロウ君のピンポイントにつてだが‥‥確かに有用だけど、『大小細かく展開』や『指示した場所に装置を持っていく』『武器としても使える』はいくつか無理があるわね‥‥」
「そうっすか」
「リア君の案は、先ほどの白鐘君の言うレーザーシールドに類似しているので、軽量型ミラーフレームとして考えると良いかなぁとおもうわね。現段階では」
「かぶりましたね」
「ま、そういうこともあるよ」
エスティヴィアは、微笑む。
「このリア君のミサイル迎撃の方もチャフで可能かもしれないけど、迎撃より、回避向けかしらね」
リアが提出したアイデアには自動ミサイル迎撃システムも書いてあった。練力を引き替えに、回避などが上昇するのだ。仮に打ち落とすことは出来ないとして、練力を消費することによりより回避し易いようにすると言う事は可能かもしれない。高度なレーダーの設置が必要の可能性や、エスティヴィア自身が兵器専門ではない、砲身の旋回力など問題点も書かれているためかなり親切だった。
「ただ、あたしは未だレーザー砲について、いや攻撃兵器については専門外なのでね。兵器部署関連と掛け合うことにするわ。それでいいかしら?」
「はい」
他に沢山の議論もあったが有意義な会議になったのである。
●クロウ君のお料理
「クロウ君料理上手なんだねぇ」
エスティヴィアは、うきうきフォークで肉じゃがを食べていた。
「うまーい」
とても、幸せそう。
「ない、ちゃんと食わないと体に毒だぜ。エスティヴィアさん」
「うんうん、しかしめんどうでさー」
「面倒がちゃいけねえよ!」
九郎はツッコミ、苦笑していた。
「うお、ここに俺が観たかったロボアニメのDVDBOXがっ!」
リチャードがエスティヴィアの宝物庫(DVDラック)をみて驚いている。
「なんだって――! 我が輩もみたいぞ!」
すぐさま駆け寄るドクター。
「ああ、例の映像粒子プロジェクション使って良いわよ〜」
「やったー!」
ウェストとリチャードはハイタッチで喜んでいた。一寸2人とも子供っぽくて微笑ましい(片方は本当に子供だが)。
南雲の方は黙々と食べており、水円はコアーと後片づけをしていた。
「綺麗なので逆に不思議だ」
未だ彼は信じられないらしい。
「いつもそうであって欲しいです‥‥」
エスティヴィアと一緒に食事をしているのは、白鐘とリア、南雲に九郎、小町である。
「夢の一歩に踏み出せたかな?」
「ああ、本当に助かったよ。白鐘君」
「其れはよかった」
と、会議の時にあった、ほどよい緊張感はなく、和気藹々とした時間となる。
皆が帰るとき、リアがエスティヴィアにこう言ったのだ。
「今度は是非、レーザー武装の開発にも携わってみたいですね♪」
「その時は又言うわよ。待ってるわ」
エスティヴィアは微笑んで、リアと他の人達と握手を交わすのであった。