●リプレイ本文
「フィアナさん!」
フィアナ・ローデン(gz0020)の事を聞いて、赤霧・連(
ga0668)が駆け寄ってきた。フィアナは彼女を軽く抱きしめる。
「連ちゃん、こんにちは」
「ギャボッ!」
連は、相変わらず抱きしめられると驚いてしまう。
「‥‥こんにちは、フィアナさん」
「フィアナさん、お久しぶり」
「フィアナ、私たちが助ける」
「ベル君、小鳥遊さん、マイア、来てくれてありがとう」
ベル(
ga0924)、小鳥遊神楽(
ga3319)、皐月・B・マイア(
ga5514)が来て、フィアナに挨拶する。マイアは右腕だけでフィアナを抱擁した。彼女と深く関わりをもつ傭兵だ。
「‥‥俺が守ります」
ベルは真剣な顔で、フィアナに言う。
彼女は、マイアを抱きしめたまま、「ありがとう」と笑顔を見せた。
フィアナはマイアの左腕の異常を気にし始めた。
「大丈夫なの?」
マイアはそれの答えとして覚醒して左腕を動かした。
「仕事自体には支障はないから心配しないで」
「お久しぶりだな、フィアナ氏」
「パレードでお会いしましたね、ヴィンセントさん」
ヴィンセント・ライザス(
gb2625)と挨拶。大阪・日本橋のハロウィンパレードで、出会っている。
「兵舎・放課後クラブでは何度かお会いしていますね。改めてはじめまして、レールズです」
レールズ(
ga5293)が最後に挨拶する。
「はい、改めて、初めまして。フィアナです。あまりお話しは出来ていませんでしたが。今回はよろしくお願いします」
一度戻って依頼を出したフィアナは、再びデトロイトに傭兵達と共にいる。
ライザスが、提案したフィアナがブレン・アーソンの人物の似顔絵を描くということを、移動中にしている。しかしながら、歌が上手かったら、絵が上手いという訳ではない。
「うむ、流石にこれでは‥‥」
似顔絵を提案したライザスが困り果てるほどだったのだ。
連だけは考え込みながらその似顔絵とにらめっこをしている。
「どうしたのです? 委員長」
「ほむ、どこかでお会いしたようなぁそうでないようなぁ」
周りで、ウロウロしている連。
「‥‥気になるのですか?」
「喉に小骨が刺さっているような感じなのです」
ベルの問いに、連は答えると、彼は「思い出したらお願いします」と答えた。
「NPOとして活動どうしているなら、ULT等に資料があるかもしれない。探してみよう」
神楽とレールズがスタッフと電話やパソコンで情報収集し始めた。
ラスト・ホープからでは情報不足だった為、現地の方で情報を集めることとなった。『デトロイト慰問協会』についてスタッフと一緒に訊ねる事になっている。
『つい最近登録できたばかりなので、実際はあまり大したことは出来ておりません。細々とやっておりますねぇ』
「はい」
『こちらではあまり変わったことはないのですが‥‥噂があるようです。悪評を取り扱う匿名掲示板から話なので、信憑性に欠けますね』
「噂ですか? 掲示板‥‥ですね?」
『ええ、デトロイト内なら一覧可能ですね。暫くお待ちを』
相手から、メールが届く。
神楽が、直ぐにリンク先を飛ぶと、
「ああ、本当にこういう噂有るのね‥‥」
椅子の背もたれにもたれて、ため息を吐くのだ。
『行方不明者が多いから関わらない方が良いぜ?』
「ちょっと、やり取りだけでは無理だから、実際に慰問に行った人に聞きに行く?」
神楽が言う。
「ですよね。俺は一寸相互理解と言う名目で電話だけで聞いてみますね」
レールズもかなり難しいと判断しながらも行動にうつる。
神楽は、デトロイト市内で調査するといって、出かけていった。
「ほむ、行ってらっしゃいです!」
連が手を振っていた。彼女の腰に可愛い携帯が揺れている。
「さてと、私も向かわないといけませんネ!」
拳を握って、連が張り切っている。
「直接入るのか、朝霧氏?」
「ほむ、そうですヨ?」
「相手は、ほぼ間違いなく‥‥フィアナ氏を狙う敵だ。こう言うときは変装する方が良いのだが」
ライザスが、アタッシュケースからスーツカバー付ハンガーを取り出す。
「一度直接いくのがいいのです! フィアナさんのお使いで!」
その後のタイミングなどは、お任せしますネと付け加える。
「では、私は予定通り着替えていくか」
マイアも動く。
「あたしが手伝う、マイア」
「フィアナ、ありがとう」
奥の部屋で着替えるマイア。別の部屋で着替えるライザス。
1時間後に眼鏡を外した紳士・ライザス。遅れて、メイド・マイアとフィアナが出てきた。
「ほむ、かわいいのです! マイアさん!」
「そう言われると、恥ずかしいなぁ」
「メイドさんは、礼儀正しく、可愛くスマイルですよ♪」
「そ、そうだけど‥‥」
「似合ってるよ、マイア」
「ありがとう」
ライザスの後ろ3歩にマイアが移動した。
「絵になりますね」
「ベル殿、フィアナのことは任せるから」
「‥‥分かっています。必ず」
「お願いしますね、ベル君☆」
いきなり近くにいるフィアナに気付いたベルが、「うわあ!」と驚いていた。連はその瞬間を携帯のカメラで素早く収めた。しっかり、フィアナもフレームに収めて。
「多少、思惑とは違いますが。ゲットです♪」
「だめです! 其れ消して下さい!」
「いやです〜大事な記念なのです♪」
ベルが連を追いかけている。見ているだけで微笑ましい。4名は苦笑する。
「人の事務所で暴れてはダメじゃないでしょうか? 他のお客から見えない所ですけどね‥‥」
マイアが苦笑していた。
「あなたたち、戯れは其処までですよ。元気は良いことですが」
ライザスが丁寧な言葉でため息を吐いた。
「さて、練習をしましょうか。腕の方は大丈夫ですか?」
「よし、ライザス殿‥‥じゃない、若旦那様、ご心配及びません」
連が協会に直接赴いて、アーソンと話をしたいと出かける。
「フィアナさんの代わりに来ました! ブレンさんのお話を聞きたいです!」
連の登場で。受付や奧の事務所は沈黙。フィアナという言葉で一瞬、固まっているのだ。まるでその反応は、連にとって西海岸での事件を思い出す。
「‥‥はい。申し訳ありません、しかし、ブレンは今出かけておりまして」
「ほむ、其れは困りました」
「折り返し‥‥」
「折り返し返事が来なかったから来たのです!」
連が手を広げ、可愛く、【ででーん】と効果音がでそうな明るく可愛い声で答える。
「申し訳ありません」
受付スタッフ、とまどっている。
こういう状態だと話は平行線で終わる。連は確信して悪戯をしているともとれた。
「‥‥こまりましたネ。仕方ないので、また来ますネ」
結局は、連は去っていくことになる。
代わるように今度はライザスとマイアが入ってきた。しかし、知り合いではない素振りをしてお互い顔を見ない。
「ライザスと申します。此処の活動について少し訊ねたいことがありますが‥‥よろしいですか?」
「はい。では此処の協会では〜」
お金持ちそうに見えるのか、受付は、丁寧だが簡易に説明し始めた。
「なるほど、実はですね。私の祖父が‥‥こちらに資金援助したいのですが、その前に可能でしたら、以前の実績などをお聞かせいただけませんでしょうか?」
「それは誠にありがとうございます」
受付は深々とお辞儀した。
後ろのメイド・マイアには誰も突っ込んでこない。
「では、詳しく話をしたいのだが、いいかね?」
「では、奧にどうぞ」
と、受付に案内される。
その応接室でまつ2人に現れたのは、フィアナから聞いた印象と同じ男であった。
「ブレン・アーソンです」
『やっぱりだめでしたー!』
連からの電話がベルに来る。やたら元気である。
「‥‥ダメでしょうやっぱり。‥‥直接のりこんでも」
電話を受け取っているのはベルであり、苦笑していた。
『今、美味しそうなシュークリーム屋を見つけたのでお土産に買って帰りますネ! 皆さんの分を!』
ちなみに、ベルがシュークリームの単語で反応する。
「ベル君の大好きなシュークリームですか☆ 考え事の時に糖分は重要です☆」
フィアナはニコニコしている。
「‥‥強調しないでください」
困った顔になるベル。
レールズは連の連絡が入ってから、スタッフに頼んで、事務所に電話する。
『こちら、デトロイト慰問協会です』
「いつもお世話になっております‥‥ローデン事務所の」
『いつも申し訳ありません』
今回はブレンと代われと言うことは言わなく、フィアナとアポ無しであったことに対してから、相互理解のための話を持ちかけた。すると、謝罪してからは、まるでマニュアル通りの活動報告などをするのみだった。
(「気味が悪いですね‥‥」)
鳥肌が立つ。後日お詫びに行くことなったので、その日時を決定した。
一方、ライザスは、ブレンと話をしている。
「今回は誠にありがとうございます‥‥。代表を務めるブレンです」
ブレンは名刺を渡してくれた。写真が入っている。
「‥‥特にイベント中に騒ぎや問題とかは起こりませんでしたよね? 組織力が問われますので‥‥」
「滅相もないです。騒ぎなどいっさい」
「‥‥そうですか。しかし噂では、あなたがいるときには行方不明者が‥‥」
「其れは私どもの方でも困っておりますが‥‥」
既に出立して、その場にいない慰問グループが誘拐なんて、無理であると主張していた。
「そうですか。それでは結果を祖父に報告してきます。‥‥また、連絡しますね‥‥」
と、ライザスは言って、協会を後にする。
ある程度協会から離れたときに、ライザスがマイアに訊ねる。
「どうだった?」
「かなり難しいです。相手もかなりのポーカーフェイスのようです」
「あなたが現在、傭兵メイドなのに何も言わなかったのはどうなのでしょうね?」
腕を組んで考え込むライザス。
「さて、報告しますか」
何故、2人が変装口調のままなのか? 尾行されることを考慮しての事である。裕福な出の青年な所は、所々嘘が入っているのだから。調べられてはばれてしまう。
「帰りましょう、若旦那様」
「そうですね。紅茶が飲みたいです」
公園もある住民地区。普通に人が行き交う。此処に神楽がいるのは、協会と共に仕事をしたアーティストを訊ねることだった。
「尾行はされてない」
不穏な気配はない。もし、今の行動を怪しまれた場合を考えてだ。
今日は公園で歌っているか芸を披露しているということで、公園に向かっている。確かに公園には、何カ所かでそう言った催しをしている。目的の慰問に参加した人を見つけた。
「あったね。でも、ボクは戻って来れたからなぁ‥‥噂は知っていても、どうなんだろうね?」
1人のピエロ姿のパントマイムが答えてくれた。
「噂は、行方不明でしょ? それに友達なんだけど、能力者で同じパントマイムだったけどさ、彼は護衛も兼ねて別の所で言ってから、傭兵業に集中したみたいだね。元気にやってるし、大丈夫だけど」
「だれに誘われたの?」
「ブレン・アーソン」
「‥‥!?」
「しってるの?」
「たしか、ブレンさん主催の慰問遠征では、現地の人が居なくなるって噂も聞くね。でも、スカウトじゃないかな? ボクは其処までしか知らない」
「そうですか。ありがとう」
芸も見ていたので、彼にチップも渡してから、神楽は去っていった。
他にも聞いていくと徐々に、ブレンがらみになると、事件性が高くなる噂を聞き出せるのだ。謎だった。
「警察によってリストを貰おうかしら‥‥」
神楽は夕方に事務所戻る。行方不明者のリスト、ブレンの関与が一致することに分かり始めてきたのだった。しかし、事件は、彼らが丁度いないときだが、これは十分に怪しい。
全員が戻ってきた後、照合する。やはり調べれば調べるほど、粗が見つかっていく。失踪のタイミングも上手くやれば簡単に出来るトリックだと推測できる。
ライザスが入手した名刺をフィアナに見せる。
「この人です」
即答。
「ほむ? 見せて下さい」
連がみる。
「‥‥あ‥‥西海岸で見た、誘拐集団のリーダーに雰囲気や輪郭が似てます!」
数ヶ月前、失踪事件に驚異的な防御能力を持つ男であったのだ。
「‥‥まさか?」
ティーブレイクどころではないようだ。ライザス・マイア組と話が出来たことも不自然でもある。
どうする? と誰かが言う。
「‥‥フィアナさんをラスト・ホープに戻らせた方が良いです」
急いで電話をし、高速移動艇の手配を頼む。
「ブレン自身をこっちに。謝罪で来るとなっていますから、そこで捕まえましょう」
フィアナを帰らせてから、ブレンが来る日。事務所には一般人は誰もいない。ブレンが入り口のドアが開く。
「どちら様でしょうか?」
レールズが受付をする。
「ブレン・アーソンです。この間は申し訳ありません」
彼が近づく瞬間、レールズが神楽から借りた手錠をブレンにはめた。
「‥‥たいした歓迎ですね」
「バグア、逃げられると思うな」
周りから銃器が向けられる。連は何も持たずに覚醒、神楽が銃を持ったまま、近づいた。
「君に訊きたいことがあります!」
「君は、西海岸であったね‥‥久しぶりです」
彼は連を見る。
「この状態でも私を捕らえることは出来ないよ」
「そんな余裕どこからだ? このままUPCに連行する」
神楽が銃を向ける。
「やはりあなたでしたか。デスペアのリーダーですね? 何故、フィアナさんを狙うのです?」
連が問う。
「良い歌を本来聴かせるのはバグアですよ? 彼女の歌はその価値があります。人間に聴かせる物ではない」
「ブレンは偽名だな?」
「名前など、記号でしかない、ライザスさん。しかし、歓迎のお礼として、私の一応の『名』を教えましょう」
瞬間。彼に周りに赤いオーラがでる。手錠を持っていたレールズと、近くまでいた神楽と連が吹き飛ばされる。オーラではない。ブレンの拳と蹴りだったのだ。
「アキラ・H・デスペア。バグアであり、デスペアです。人間に絶望を振りまく存在です‥‥。以後よろしく」
化粧が剥がれていく。その姿はまさに、連が見た西海岸の男そのものであった。全員の射撃を机などを利用して巧みにかわし、その間に、彼は髪の毛に隠している針金で手錠を外して、カウンター席に置いた。
「今回は、挨拶だけですので」
散らかっただけの事務所だけだった。幸い誰も怪我をしていない。
アキラは消えていった。幻だったかのように‥‥。
「‥‥巫山戯るな! デスペア!」
ベルが激しい怒りで壁を殴った。
急遽、協会に向かったのだが、もぬけの殻になっていた。