タイトル:【コミ】原稿を作ろう!マスター:タカキ

シナリオ形態: イベント
難易度: 不明
参加人数: 11 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/16 03:32

●オープニング本文


 そろそろ、着手するべき時期だ。
 何の?
 そう、原稿ですよ、原稿。夏のコミック・レザレクションの同人誌を。略してコミレザ。
 様々な創作物語を作り出し、この祭典で売り、仲間と共に共有する。それが、コミレザの素敵なところである。
 兵舎で書いていたり、自分のラボで唸っては夢おちになる人もいたりしましたね。あと、兵舎でさてどうしようかと、考えている人も良いのでは?
 そう、夏の戦いのために準備するのも悪くない。
 ここでは、そう言った人達の悲喜交々を描く、平穏な日常と、同人誌の内容を見ることが可能となる。

 ヲタクの世界は、バグアの襲撃で壊滅状態になったが、熱意ある同人作家や企業が、見事に大阪を中心に再開発、発展させていったのであった。

 ラストホープのホテルでは、エスティヴィア(gz0070)が原稿を描いていた。ラボは研究機材で埋まっており、使えないのだ。横断ツアー中のローデン事務所に厄介になるわけにも行かず、ネームだけでも書いているのだ。
「4月に良いネタがあったんだけどなぁ。忘れちゃったしなぁ」
 彼女は口にペンをくわえていた。
「コーヒー入りました」
「あ、ありがとう。あんたの方は進んでる?」
 コアーがコーヒーを持ってきてくれた。
「え、まあだいたい。所長はスケジュール通りに行きますでしょうか?」
「なんとかなるかなねぇ」
 エスティは苦笑する。
 今回は傭兵と魔法少女物の予定だ。一応知っている店には伝えてある。終わったら委託で売るつもりらしい。
 仕事の合間に、この趣味を楽しむのが彼女流だった。


 さて、今彼女はラストホープにいる。では、創作作家としてするべき事は何か?

 彼女を誘う? それとも仲間をつのって新作を作る? そう言うお話し。

●参加者一覧

/ 藤田あやこ(ga0204) / ドクター・ウェスト(ga0241) / 伊藤 毅(ga2610) / アルヴァイム(ga5051) / 秋月 祐介(ga6378) / 月夜魅(ga7375) / 葛城・観琴(ga8227) / リリー・W・オオトリ(gb2834) / 直江 夢理(gb3361) / 矢神小雪(gb3650) / 上杉 怜央(gb5468

●リプレイ本文

●ホテルにて
 ドクター・ウェスト(ga0241)はエスティヴィア(gz0070)にいろいろなコスプレを着せられていた。
「エスティヴィア君、この吸血鬼のようなコスプレは何かね? 我輩も『魔法と少女と肉体言語』の本を描こうと、君に描き方の詳しい話を聞きに来たのだがね〜」
「ああ、モデルが動いちゃダメだって」
「うーむ、動かないことは苦しいことなんだけどねぇ〜」
 苦笑するドクター。
「ところでコアーは?」
「買い出しと、いま秋月君と、打ち合わせぇ」
「そうなのか〜、ゲスト原稿と言うことだね〜」
「そうそう。前から頼まれていたからねぇ」
 半年前、エスティは冬に秋月 祐介(ga6378)のところで、同人原稿依頼を頼まれていた。今年の秋月はひと味違うようだ。
「よし、良い感じに出来た。それじゃ、一つ基礎的なところから教えようかねぇ」
 デッサンを描き終えたエスティヴィアが画材を机に置いて、真新の画材を引っ張り出した。鉛筆、ペン、インクなどだ。
「よろしくたのむよぉ〜」
 テーブルの前で、エスティヴィアが親切に教えていく。
「下書きはこうして‥‥。ペンは最終的に使いやすい物を探すしかないかなぁ。それはあげるから」
「ふむふむ、作り手の苦労を垣間見た。とても参考になったよ〜」
「あとは、愛情と、熱意ねぇ。コアーが教えてくれるわよぉ。あたしは、先ほど言ったとおり、秋月君ところで世話になるから」
「わかったよ〜。うむ俄然やる気が出てきた〜」
 時間はあるが原稿に集中することになると、誰かアドバイザーが居れば助かる。

「ただいまですー。あ、ドクター、こんにちは」
 コアーが帰ってきた。お願いしますという感じで挨拶を終えた後、入れ替わりにデスティがホテルから出て行った。
「では、早速原稿に入りましょうか」
「そうだねぇ。良く聞くからね〜。『気が付いたら締め切り近くて原稿真っ白』とかね〜」
 笑うドクターに、コアーは苦笑するのであった。

●秋月氏の憂鬱1
 教授本拠地‥‥ではなく、秋月の部屋がある兵舎。そこに、沢山の人が集まっている。どれも顔見知りなので近隣は、「教授のことだ。何かカップル撲滅の作戦を練るのだろ」というなま暖かい目でみていたが、予想が外れた。黒子こと、アルヴァイム(ga5051)と伊藤 毅(ga2610)がやってきたことで、カップル撲滅運動と推理していた近隣は別の事と思った。コミレザかもという確信は持っていない。
「黒子さん、伊藤さん、早く来てくれて助かりました」
 かなり焦っている模様の教授‥‥じゃない秋月。
「なに、男の性は仕方あるまい。で、物は何処だ?」
 黒子の衣装で解らないのだが、たぶん顔は、スナイパーかヒットマン然とした顔だろう。
「一度押入の床をぶち抜けたもので死蔵品を何とかしている」
「了解。伊藤。仕事に入るぞ」
「了解です」
 リビングには本の束。全部『お子様が見ちゃダメよ』という物ばかりだった。いわゆるへちぃ本の数々である。
「よくコレクションしてますねぇ!」
「ああ、命と同等の物だ。しかし、これは自分の破滅を招く‥‥。この数日はそう言う物になりました」
「‥‥話している時間はない。運ぶぞ」
 彼の趣味が、眼鏡に巨乳で『ぱいめが』。巫女属性という。その業により、敵は増えていくほうだ。特に胸で。
「流石に車全部に積み込めないな」
 覚醒して運んだので苦にはならないが、物理的に難しい状況。黒子はシートをかぶせて車を走らせた。
「残った物は、書斎に‥‥」
 伊藤と一緒に余った本を書斎の裏にいろいろな方法で隠していった。

●数日後のドクター
「だからそう引くんじゃなくて!」
「こまかいね〜」
 ドリンク剤を飲みながらドクターが嘆く。
 ドクターもある程度の感性はあるが(イタイ白衣の絵が秀逸だったのも見越して)、一朝一夕で上達はない。コアーの指導が厳しいのであったりなかったり。流石にドクターも作り手という方面での経験はないため、四苦八苦していたのだ。ペンの持ち方からとか色々まで。そのなかでも、ドクターは、創作という楽しさに惹かれていく。

●個人でも
 藤田あやこ(ga0204)は、自室にて1人で色々考えていた。
「ヲリムちゃんでいこう!」
 眼鏡をかけて、かき集めたネタ帳をみる。このごろいろんな方面で大人気のあの大将のネタを記録している物だ。
 さすがに、大将さん自身をそのまま書くと、ご本人が激怒しかねないので、かなりアレンジをする。しかし、そのアレンジはかなり独特だった。オリムのフィギュアを基本にし、あやこの自画像も入っているのだ。あやこ自体は絵が下手ではない。普通には見ることは出来るはず。もっとも同人の数割は個人の自己満足による物である。なので、それ自体が罪ではない。あと、貶すことはコミレザ精神に反する。
 『着せ替え絵本・ヲリムちゃん(CD付き)』の原画に入った。ただ、どれだけ着せ替えのネタをつけるかが、問題となっている。絵本も手がけたいのだが、色々悩んで、
「うおおおおおおお」
 詰まった。
 かなりせっぱ詰まった。
 一応、定番のメイドとか巫女とかその辺はあるとしても、ヲリムちゃん自身の『設定年齢』によって大きく変わる。デフォルメでも、年齢が三十路だと悲しい。色々悲しい。そこで、化粧品に若返りの毒薬が入れられて、15歳前後になってしまったという設定にしたのだった。これなら、まだ謎に包まれている御大将の素顔はすべすべお肌確定のはずなので、すっぴんでも勝負は出来る?
「とにかく、決めて萌えは、焼き肉のときに皆に聞こう!」
 と、いうことで彼女はあるだけの物を描き、カメラをセットし、自分の写真を納めるのであった。CDの内容は、官女自身のコスプレ写真集のようである。
 結果的に、絵本に費やすことになるため、今回は『ぬりえ不敵ロボKNIGHTY・VOLT』は延期という形になりそうであった。一つに集中するその方が良い物が作れるだろう。


●『王者の技』:ドクター・ウェスト作
 ※ここにでるキャラクターは格闘ゲーム「魔法と少女と肉体言語」の登場人物です。

 ひかりとリーゼロッテがこたつに丸くなりながら、深夜のプロレス番組を見ていた。
「ねーねー、格闘技で最強なのはどれかなー?」
 魔法格闘家のひかりがみかんを剥きながら、メイドで魔法使いなリーゼロッテに尋ねていた。
「‥‥それは勿論純粋なる護身術ですわ。私もご主人様を守るために‥‥」
 彼女がとても長い話になるので、今回は割愛させていただく。
 それが始まり。ひかりが2人だけでは答えがでないので、友達の魔法使いかなたや魔剣士シャルロッテを呼ぶと‥‥。
「格闘技だけで決着をつけるですって! あなた、何をかんがえておられるのですか! 野蛮きわまりない」
「‥‥剣もだめなのか‥‥。それは不愉快だ‥‥」
 この2人、自分の先頭スタイルにプライドがあるために、結構不満だった。
「良いじゃないー。極め技と化しているのと、おなじなんだし」
「‥‥身も蓋もない‥‥」
 大抵魔法などはカウンタースペルで消滅して、肉弾戦という事が多いため、このメンツや、魔法格闘家は、何かしら格闘技を知っている。純粋魔法使いのかなただって絞め技はかなりの数を持っていた。
「では、おっぱじめよー!」
 と、魔法無しでやってみると。
 顔つきが変わりました。殺気を帯びたとか、顔から感情がないとかじゃなく、キャラのペンタッチ自体が変わっている。キャピキャピした萌え萌えから、昭和70年ぐらいのごっつい時代劇看板イラストみたいな。
「むん! 我が拳は鉄をも砕く、一撃必殺っ!!」
「剛の拳は、柔に負ける事を知らしめてやろう!」
「我が主を守るために鍛えられた護身奥義をとくとみるがいい!」
「寸で見切れる私に‥‥刃向かえる物はない!」
 魔法が入って無くても、この少女達、怖いぐらいに強い。一般異種格闘義戦とかでたら常連間違いないぐらい。そんななか。
「フン小娘ども! われこそハイブリッド格闘技! ねじ伏せてくれるわ!」
「何やつ!」
「われこそは! 真の格闘女王!」
 割り込む新キャラのシルエットが出てくるために、カオス状態になる。

 残ったのは、ぼろぼろになって突っ伏しているひかりたち4人。劇画から萌えキャラに戻る。
「こうなったら第二回魔法格闘技大会でみかえしてやるー!! はやくでろー!」
 割り込んできた謎キャラに負けたらしい。
 ひかりが叫んだ。手足をじたばたして可愛く叫んだ。


●秋月氏の憂鬱2
 何とか隠し終えた秋月プロデューサー。
「なにが?」
「おおおおお!」
 可愛い声に、驚きを隠せない秋月。
「お、驚かさないでください、リリーさん」
 彼の後ろでリリー・W・オオトリ(gb2834)がニコニコしていた。
「ふっふー、色々隠していたんですね」
 リリーはその手には理解のある人でした。良かったね、祐介君。
「あ、焦りましたよ」
「まあまあ、手伝うからね。そうそう、どういうお話しを?」
「ふふそれはですね」
 企画書なる物を、取り出し、オーバーリアクションで見せる。

『HELP ME! TSUKIMEEEEEE!』

 なんだか聞いたことのありそうな物だが気にしない。気にしない方が良い。
「魔法の国から来た主従関係を持つ2人組のつきみーとゆりりんを主人公にした。ハートフルドタバタコメディギャグ作品。色々と人を助けたりするつもりが、逆に助けてな状況になったり‥‥ですよ」
 眼鏡を輝かせて、説明した。
「面白そうだね! でも、そのモデルさんは?」
 リリーも目を輝かせて乗り気になった。
 リリーがまだ人がそれほど居ないので尋ねた。
「そろそろ来る頃だと思います」
「焼き肉食べに来ました! いえ、お手伝いに来ましたっ」
「私も、出来る事なら、やりたいと思いまして‥‥。月夜魅お姉様と一緒ならたとえ火の中水の中‥‥っ。はう!」
 月夜魅(ga7375)と、相変わらず妄想で真っ赤になっている直江 夢理(gb3361)が秋月の部屋のインターホンを鳴らしていた。
 おそらく隣人は、
「彼奴はロリに目覚めたのか?!」
「ばかな、あいつが女を連れているだと!?」
「教授としての威厳は?!」
 とか思ったに違いないが、エキストラの思惑なんぞ、実際どうでもよい。しかし驚愕な事が起こるのはそろそろだ。月夜魅も17歳ぐらいの若さだし、夢理はまだ14歳前後だ。秋月基準からすると、守備範囲外で場外ファールらしい。

 上杉 怜央(gb5468)は夢理の後ろで隠れるようにいた。
「はじめまして、上杉 怜央と申します。姉がいつもお世話になっています」
 姿は、女の子だが、行儀の良い男の子だった。しかし、男の娘でもいいやと思う。そんな可愛さ。それは、姉代わりの夢理の所為とも言うが、彼をここまで元気に育てたという点だけ偉い。
 秋月は、急いででて、
「いらっしゃい。こっちですよ」
 と、書斎と反対側のリビングの方に誘導した。今書斎の中は、夢理には楽園、怜央には刺激が強い場所だ。
「ふふふー。良いモデルさんがいっぱいだね♪」
 リリーはうきうきして、後を付いていった。
 秋月は真剣な顔つきになって、リリーや月夜魅達を見る。
「早速ですが、まず大まかな話をしますね‥‥それから、リリーさんに描いて頂きます。ラフが出来るころには、エスティヴィアさんが来る頃でしょう、彼女もゲスト参加して頂けます」
「はーい」
「はい! わかりました!」
「わかりました」
「はい‥‥」
 会議が始まった。

 黒子と毅の方はというと、必死に物を隠している最中。
「これは一寸、原稿書けるか、判らないな」
「とにかく、安全な場所に起きましょう」
 と、苦笑していた。
 車のガレージより、KVの格納庫が良いのではないかと思った。

●子狐屋
 矢神小雪(gb3650)は、宴会予約を受けつていた。彼女が切り盛りしている兵舎は、オープンテラスのあるカフェらしいが、状況に応じて焼き肉なども出来るようにセットはしているようである。30人ぐらいは何とかなる大きさらしい。
「秋月様、8名ですねお任せください」
 今回は秋月とその仲間が焼き肉パーティをするための半分貸し切りである。
「人数的に多くなるかもしれないから、団体割引で良いかな〜♪」
 と、電卓を叩いて予算を決めた。
 肉系はカルビ、タン塩、ハラミ、ロースなどをしっかり頼み、今は女性に人気のホルモンもしっかり確保。野菜・海鮮も、ごはん・麺・スープ類もしっかり下ごしらえ。予定日まではその準備をしながら、通常営業である。
「がんばるぞー」
「おー!」
 小雪はバイトも雇って、しっかりかっきり働くのであった。

●灰になる
「‥‥できた」
 ペン入れもトーン貼りも終わったドクターはそのまま力尽き、口から魂を出していた。あとは、総合的なチェックと修正のみ。入稿までまだ時間はある。ちなみにコアーが西研まで出向いていることになっている。
「ん? 何かデジャヴ‥‥」
 気になってやってきたエスティヴィアが、乳酸菌飲料を飲みながら、ドクターの亡骸(?)をみていた。
「お帰りなさい。原稿はどうです?」
「ばっちりよぉ。仕上げに数日だけかしら」
「よかったぁ」
 コアーは胸をなで下ろした。
「しかし、これは錬成治癒でも回復見込めないねぇ‥‥」
 エスティはドクターの魂をつんつんする。反応するが、元気がないようだ。
 ドリンク剤とか色々差し入れと、
『がんばったね☆ なかなか面白いわよ』
 という書き置きを残し、エスティとその助手は去っていった。

●秋月氏の憂鬱3
 デッサンを書き起こし、第一プロットも出来た段階。まだ、1日も経ってない。秋月とリリー、そして黒子と毅でネーム開始となる。
「いやー、こうしてると、若い頃を思い出すね‥‥。双子の姉やお互いの伴侶と一緒に執筆してた頃が一番楽しかった‥‥。あれからもう‥‥年経ったのか‥‥。何もかも皆懐かしい」
 と、天井を見上げて、リリーが昔を懐かしんでいる。しかし、我に返って原稿に目を向けた。
「大まかなお話しは出来ているから、あとは夢理ちゃんが加えてくれた案で‥‥サービスサービスー♪」
「な、なにかおてつだいできることはありませんかー!」
 月夜魅が色々手伝えることがないかというと、結構あるのだが、同人誌を本格的に描くという技術面では彼女はあまり無い。
「では、昔の本などの整理を頼みましょうか」
「わ、わかりましたー!」
「あの、私もお手伝いします!」
 月夜魅と夢理は、お呼びがかかるまで別の部屋に置いていた、コミレザの残りの在庫確認をする事になった。
「月夜魅お姉様と一緒に手伝い‥‥。これで、あんなことやこーんなことが‥‥ぽっ」
 既にトリップしている夢理。だめだこいつ何とかしないと(褒め言葉的に)。
 トリップしている彼女が足を滑らせて、
「はう!」
 彼女がこけてしまいそうなところ、月夜魅があわてて抱きしめる。
「ぼうっとしちゃだめですよ!」
「あ、はい! ごめんなさい月夜魅お姉様っ! ‥‥って! はうっ!」
 抱きしめられている状態なので、彼女の脳がショートして煙が上がった。
「夢理さん! しっかりー!」
 かなり過激な妄想をしたようだ。月夜魅お姉様の胸で逝けるなんて生涯に悔いはありません。とか思っているに違いない。
「そのネタもらったよ!」
 その一部始終を見ていた、リリーが俄然やる気になった。
「ふむ、日常からネタですね‥‥。面白い」
 プロデューサーモードの秋月は、『逸材』と知り合えて本当に良かったと満足げであった。

 インターホンが鳴る。
『エスティヴィア登場――♪』
『秋月さんいますか――?』
「はいはい、まってくださいね」
 秋月がドアを開ける。
「いらっしゃいませ。まっていましたよ」
「それじゃあ、一緒に作ろうかねぇ。ハイこれお土産」
 おにぎりとお茶、パンやコーヒーの袋と、お菓子の詰め合わせとドリンク剤。黒子が持ってきているドリンク剤とかも加えると、結構な数だが、夏休みの宿題と同じく、この時期に完成していれば、そんなに使うことはないだろう。こういった物は保存が利くので、貯蔵庫に入れれば後に役に立つ。
「そろそろお昼としましょうか」
 お昼はエスティの持ってきたもので済まして、また執筆に戻る。
 月夜魅は、スケッチブックと色鉛筆を取り出して、目に映った景色を描いていた。子供っぽいのだが、しかし、ちゃんとデッサンとパースなどはしっかりしている物で暖かみがあった。
「月夜魅君は可愛い絵を描くね」
「ありがとうございます! はずかしいですけど!」
 エスティに褒められて、月夜魅はにっこり微笑んだ。

 怜央は、真っ赤になりながらも、原稿を書いている。彼女‥‥否、彼曰く、
「ボクは白瀬留美(gz0248)少尉にその、一目惚れというか‥‥。なぜか強く惹かれてしまっていて、ファン倶楽部まで作って‥‥何かこう、留美少尉の為に何かせずには居られないんです」
 という事らしい。
 少女漫画風な作風な彼の絵は、絵の修行をすればかなり良い線行くのではないか? という物だった。それは同人経験者のリリーのお墨付きであり、褒められると、怜央は照れてしまう。
「では少しは意見を‥‥」
「夢理姉は、だめです――っ!」
 夢理が覗こうとすると、真っ赤になって怜央が原稿を体で覆った。
「けちですね‥‥」
 と、ぷぅと拗ねて、夢理は月夜魅の絵を見てまた妄想トリップ。

 黒子の方は、前もってトーンの練習などをしているのだが、あまり芳しくなかった様だった。描くこと、書くこと、塗ること、組むことのすべてに於いて、経験とその積み重ねが必要なのではないだろうか。
「‥‥流石に一朝一夕じゃ上手くならないか」
「なにごとも、経験・蓄積だねぇ」
 エスティヴィアが苦笑して、アドバイスしながら、絵の勉強会風味に。
「エスティヴィアさん、原稿はかどってるかな?」
 リリーが訊く。
「何とか。ゲスト原稿のほう優先でやってるわよぉ」
「それはありがたいことです‥‥では話の展開の修正も‥‥話し合わなければ」
 秋月は『直江さんの案を全面的採用しますよ』という事になっているため、妄想でトリップしている夢理をもどして話し始める。しかし、妄想が止まらない彼女を我に返させる仕事も一苦労であった。

 そこで、またインターホンが鳴った。
『こんにちは』
 その声で、急いで秋月が玄関に走った。
「待っていましたよ。葛城さん」
「はい、制作期間中の雑事はお任せくださいな」
 穏やかに話す巨乳の美女、葛城・観琴(ga8227)がやってきた。背は低いのだが。
 女の直感で分かるのだが、リリーとエスティは「ああ、そうなのねー」とつぶやくだけで、「おねがいしますー」と、挨拶して再び原稿に向かうのだ。
「では、お掃除の方を」
 と、観琴が、掃除機をかけ始める。ストーリー担当の夢理は秋月と会話。それをネームにしていくリリー。月夜魅は、暇なときは観琴の手伝いをするが、基本的に前もって書いていた絵本の原稿整理だった。黒子は、エスティヴィアのゲスト原稿の手伝いだ。毅は別のテーブルを借りて、空撮写真集の同人誌を書いていた。暴露本は流石にやばいと言うことで、止められた。コミレザは楽しい健全な創作活動である。そのため国家機密を暴露する本などは好ましくないのだ。
 うっかり、つきみーが近づくと、
「下手すると防機とか混じっている可能性があるんで、作業中はあまり近づかないでくださいね」
 と注意された。
「防機って何ですか?」
 屈託ない笑顔で訊くつきみー。毅がんばれ。防衛機密のことだとはおもう。だいたいそんな物持ち込んだらやばいのではないか? というつっこみは心の中でしましょう。

●『HELP ME TSUKIMIEEEEEE!』 MODE−AUTUMN&ウェンライト工房合作
 とある魔法世界・百合王国のお姫様つきみーと、その従者ゆりんのお話し。
 主従関係でありながら、姉妹同様に平和に暮らす2人の。そして、癒しを与えるために周辺の世界に魔法をつかう2人なのだが‥‥実施は迷惑ばかりおこしていました。
 暴れ牛をとめようとしても、魔法が発動する前に突き飛ばされたり、雨が降らないので、雨乞いをしたとしても、あまり降ってくれなかったり、人の恋路を手助けしようとしたら、ゆりりんの妄想で頓挫し、馬に蹴られちゃったりとかなり散々な結果が行われていました。
 突如、その世界に筋肉薔薇帝国の軍勢が襲いかかります。ガチムチです。あまりみたくありません。
 たすけてつきみー! 百合王国の王女つきみーにしか、帝国を倒せる者はいない! がんばれつきみー! まけるなつきみー!

「ってなんですかー! 百合王国って!」
 つきみーが世界設定につっこみを入れた。
「私と愛の楽園です‥‥そう言うことになってます‥‥ああ、なんという素敵な空間‥‥はぅ」
 むぎゅー。つきみーがゆりりんのほっぺを抓りました。
「いひゃいですー! でも‥‥なんかいい‥‥」
 悦に浸るゆりりん。
「きんにくー!」
 ガチムチ共が襲いかかってくるところ、ゆりりんとつきみーは避ける。
「とにかく倒さなければなりませんね! ゆりりんさん!」
「あ、はい‥‥」
 ゆりりんは頬を赤らめて、つきみーのほっぺにキスをすると、つきみーが光り出す!
 和洋折衷が合わさっているが、ミニスカ着物フリフリに、可愛いバトンと巾着を持ったつきみー登場!(生足なのか、絶対領域なのかはふれないでおく)
「てーいっ!」
 とバトンを一降りにて、ガチムチを一掃して戦う。ゆりりんはその姿を見て悦に浸った。
「このまま皇帝をたおしますよ!」
「は、はい!」
 ミニスカから可愛い下着が見えてのつきみーの魔法快進撃。ちなみに、今回はスクール水着じゃない。
「ええ! 見えちゃうのですか!」
「お姉様素敵な下着です! ぽっ」
 ゆりりんも負けじと、補助魔法で頑張る。しっかり、妄想も忘れない‥‥。

 とうとうやってきましたボスの皇帝。ゆがみねぇみたいな、ごつい人だ。
「この世は、むっちむちで無くてはならーん!(以下略)」
 皇帝の前口上。脳みそ筋肉でした。
「それは絶対にさせません! 百合が美しいのです!」
 ゆりりんが反論。
「えーっと、それは何か違う気がしますよ?」
 結構冷静なつきみー。

 しかし、ボスなだけにかなり強く、つきみーとゆりりんは押されてしまう。
「このままでは! だめです!」
 つきみーもこれはやばいと思っていた。
「こうなるとあの技しかありません」
 庇って、つきみーより怪我を負ったゆりりんが言う。
「し、しかし、私初めてですよ!」
「平和のために!(「後は実は私のために!」)」
「えーい、しかたありません!」
 決意をするつきみーは、ゆりりんをだきしめる。
「とどめだぁ!」
 皇帝の魔法の砲撃が迫る中、つきみーとゆりりんは口と口を重ね合わせた。
 服がはじけ飛び、一瞬裸っぽくなったつきみーが、華麗に新しい魔法コスチュームに変身する。魔法砲撃はその変身結界に弾き飛び、その後にのこったのは、綺麗な白銀のドレスに白銀の靴、鈍色の鎌をもったつきみーだった!
「おしおきです!」
「ぐぎゃああ!」
 一閃! それで皇帝は倒れた。あっけねえな。

 そのあと、変身解除したつきみーとゆりりんは‥‥
「は、初めてのキスは‥‥なにか‥‥すごいですねー」
 真っ赤になるつきみー。
「お姉様といっしょになりたいです‥‥愛しています」
「ゆりりん」
「おねえさま」
 2人は抱き合って、再び熱いキスを交わし、主従ではなく愛するべき人へと、変わっていくのである。そして、禁断の地へと旅立っていくのであった‥‥。

●秋月氏の憂鬱・最終?
 まだ原稿が完成する前の話。
 観琴がせっせと、お掃除しているので、作業場以外は結構綺麗さを維持出来ていた。トーンのカスとかはどうしても出来るし、毅の空間は不可侵となっていた。
「さて、粗方出来ましたので、こんどは、ここですね〜」
 観琴は鼻歌交じりに書斎へ向かった。
「あ、どうも、ん‥‥って書斎はッ!? ちょ‥‥待ったぁッ!!」
 ボードゲームに熱中していた秋月は、観琴を追いかけるために走り出す。
「? どうしたのぉ?」
 遅れて気が付くのは全員。しかし別段おかしいものでもないんじゃ? と思うのだが‥‥。
 黒子と毅だけは理由を知っている為違った。
「残ってたですね」
「やばいですねー」
 と、小声で話し合う。
「埃がいっぱいですね。綺麗にいましょうか」
 観琴は鼻歌を歌いながら、お掃除開始。そこで見つかる数々のへっちぃ本。
「‥‥ま、いいか」 
 と、動じない観琴だが。
「それはだめぇだぁ! うわああああ!」
 っと、散らかっていた書類で滑る秋月。
「え? きゃあああ!」
 書斎の本棚から、様々な本が落ちる。ドサドサと。非常に幸いなことに怪我はないのだが、秋月は、ほんの角より、何十倍も柔らかい感触に違和感が‥‥。
「えーっと‥‥このふくらみは‥‥まさか‥‥」
「あ‥‥秋月さん‥‥」
 一寸頬を赤に染めている観琴。彼女の谷間に思いっきり顔を埋めている状態になっている。
「うわああ! すすみません! すみません!」
 あわててその場から起きあがり、謝り続けて取り乱す秋月。
 教授状態でもここまで取り乱したことはないはずだ。
「ほうほう、なかなかやり手だよね。わかいっていいね」
 リリーがその現場をしっかり見ていました。
「ああ、秋月様って大胆です!」
 夢理は書斎に散らばる本の一部を見て、真っ赤そして妄想。
「はいはい! 子供は見ちゃダメです! 秋月さんのえっち!」
 年齢的に問題ないが外見だけはのつきみーさん。でもリリーさんより問題ない。
「こどもはあっちで良い子にしてようねー」
 リリーがつきみーも夢理を追い出して、結局大人達で書斎掃除になってしまった。

 怜央はというと、『情報網で繋がるボクと留美少尉』を必死に書いていた。

●『情報網で繋がるボクと留美少尉』
 ボクは情報研修の為にUPC本部に向かう途中のことだった。
「ち、遅刻しちゃうよ!」
 ボクはイチゴジャムを付けたパンをかじったまま走る。
 そのまま走ると、いきなり何かとぶつかった。たぶん、人とぶつかったんだと思う。
「いたっ!」
「‥‥いたいの」
「ごめなんさい! ‥‥怪我‥‥」
 すぐに起きあがって、助けようとしたボクの体は止まった。
 素敵な女性だったんだ。
「だいじょうぶなの。でも、ちゃんと前を見てなの」
 彼女はそう言って、逆にボクを手をさしのべてくれた。

 それがボクの初恋。

 研修の会議室に、先ほどであったときの、女性が居た。留美少尉というらしい‥‥。ボクは‥‥先ほどのことを謝って、必死に勉強したんだ。
 そして、紆余曲折を得て、ボクの隣に留美少尉がいて、情報戦で活躍して、大規模作戦を勝利する。
 まだ、恋人とかじゃないんだけど、ね。

「まあ、怜央ったら‥‥おませさんですね。これは私も頑張らないと、いけませんね‥‥。月夜魅お姉様との‥‥愛の道を‥‥あの原稿の手直しできませんでしょうか? 秋月様、オオトリ様」
 へ?
 あ、集中しすぎた所為で、夢理姉に原稿を覗かれて言います!
「や、やだ、見ないで‥‥!」
 真っ赤になった怜央の顔はどう見て美少女そのもの。そのまま彼は原稿を持ったまま、秋月氏の家を出て行ってしまった。
「ああっ! 怜央!」
「ああ、ボクも見たかったなぁ」
 リリーが悔しがっていた。
「焼き肉食べたいです!」
 恋より食い気なつきみーがいた。
「にくくいたい、にくー」
 エスティもだった。

●打ち上げ
「つかれた、ぐー」
 リリーが、すべての行程を終わらせ、テーブルに突っ伏した。
「おつかれさま!」
「お疲れ様です!」
「おつかれねぇ」
 2週間程度の集中作業は各自終了した。観琴という周辺の手伝いをしてくれる人が居なければ、たぶんこの部屋は、エスティヴィアのラボ以上に混沌としている惨状になっていただろう。彼女に感謝しなければならない。秋月と観琴は前の事件があってか、秋月自身がよそよそしく、距離を置いているように見える。観琴の方が、接近している様子があるが、これは如何にと思われる。
「ふむ、フラグが折れるか?」
 黒子が思う。
「どうなるのかな? かなー?」
 リリーが、昔の青春を思い出すように、秋月と観琴の関係を眺めていた。

「次はお肉です! 夢理さんはお疲れ様です!」
「はい、お疲れ様です。月夜魅お姉様‥‥これでパラダイスが‥‥ぽっ」
「さて、前祝いとして、小狐屋に予約を取ってあります。自分のおごりですから、どんどん食べて、飲んでください!」
「では、言葉に甘えて」
「気が利くねぇ!」

 秋月一行と、藤田が小狐屋で出会う。
「いらっしゃいませ!」
 小雪本人がお出迎えする。
「こんばんは、お願いします」
「おねがいします」
 と、挨拶を交わす。食い放題のバイキング&立食パーティ的になっているのでそれほど問題にならない。
「無事に、当選はしているので遅刻しない限り問題ないでしょう」
 と、秋月はコミレザのチケットを見せていた。合体サークルにはサービスとして合計7名ほどのチケットが渡されるようだ。

「では、原稿の完成を祝っての乾杯を!」
「「かんぱーい!」」
 グラスの音が小狐屋に響く。
 月夜魅が、夢理に『おくちあーん』で食べさせてあげていたり、藤田が絵心のあるリリーやエスティに相談を持ちかけていたりと、和やかな雰囲気であるわけだが、お酒が回ってきた観琴が秋月に迫ってくる。というか甘えてきた。
「1人が寂しいんです。一緒にいましょうよ」
「え、そ、そうですか‥‥では‥‥はい」
 秋月の腕に抱きついて離れない観琴。
「ふむ、これで教授ルートから抜け出せるのか?」
「しかし、あまりにも、押しがないね」
 黒子とリリーがぼそぼそ。
「夢理〜さ〜ん。この原稿は何ですかぁ?」
 青筋をたてながら、夢理のほっぺを抓る月夜魅。
「ひひゃいでふ〜」

 こうして、無事に原稿が終わった人や、まだ書いている人も今は休憩する。
 ‥‥え? ピンと来たら作るとかどうするって?
 創作をしている以上、それは宿命ですよ?

●余談
小雪「団体サービス割引で35000Cです」
秋月「それは、助かります。しかし、はて?」
小雪「エスティヴィアさんにはコアーさんが居ますから、いっそのこと10人とカウントしました」
秋月「ああ、なるほど、納得です。サービスありがとうございます」