●リプレイ本文
●にぎわい
大阪・日本橋はにぎわっていた。最新のゲームを買うことや、様々なイベントを楽しむために人が集まっているのだ。エスティヴィア(gz0070)がいる、この『熱血亭』も同じだった。ここは対戦ゲームジャンルであれば、アナログ・デジタル関係なく取り扱う。
駐車場は何処も満席で、あちこちにアニメ・ゲームキャラのステッカーを貼った車が停められおり、人だかりも出来ていた。
「姉さんに言われて着てみたは良いけど、あんまり落ちつかない衣装だね‥‥。でも、ジェイ兄さんと遊びにいくなんて初めてだからちょっとわくわくしちゃうな‥今日は楽しもうね」
アセット・アナスタシア(
gb0694)が、迷彩服の自分の姿を気にしながら、兄代わりなジェイ・ガーランド(
ga9899)に微笑んだ。
「大胆なコスプレだな‥‥。先に駐車するから、もう少し我慢してくれ」
「うん、わかった」
アセットは迷彩服を脱ぎ、『魔法と少女と肉体言語』に出てくるキャラクター、魔剣士シャルロッテ・ディスティニのコスプレを着ている。これは普通に売られているもの(戦闘に影響しない服装)の加工品だ。その姿になった彼女は、ヲタク達に発見されると、
「写真取らせて! シャルロッテコスの人!」
と、寄ってくる。
「は、はい?! えっと!」
急に言われてしまった状態なので、アセットは驚いて対応が出来ない。
「恥じらいとか驚きのポーズ、いいなぁ」
ヲタク達は、ハイテンションだった。しかし、本当にアセットが驚いていることをすぐに知り、「驚かせてごめんね」と謝り、落ち着くまで待っている。
「なにがあった?」
心配になったジェイが駆け寄ってくると、アセットが説明し。一応の納得を得た。
「まだ、彼女は初心者です。それ以前にイベントまで待って頂けませんかね」
と、ヲタク達を説得する。
「あ、そうか、『熱血亭』にいくんだ。ごめんなさい」
ヲタク達は謝った。かなりのはまり具合だったために、ハッスルしたようだ。
「いいよ、兄さん。悪い人たちじゃないし」
苦笑しているアセット。恥ずかしいのは確かだった。
優しい兄と、可愛い妹の組み合わせに見える(同じ金髪だし)。
「おお、この風景も萌えだね〜」
なんでもかんでも、萌えにするなエキストラ・ヲタク。
「ドクター!」
女形である鳥飼夕貴(
ga4123)がドクター・ウェスト(
ga0241)を見つける。彼はイタイ白衣に『血煙上等』とかかれているので、非常に見つけやすい。こう言うときはよい目印になる。
「けひゃひゃひゃ〜。鳥飼君か、ご機嫌だね。しかし、割烹着かね〜? バイトでも始めるのかな〜?」
「いええ。だた、動きやすい格好にとおもったら、こうなった」
割烹着の毎度喫茶でもあるのか? と問われたりしたが鳥飼が「店のひとじゃないよ」と言うと、その人は去っていく。あちこちにメイドさんやら学生服コスがいるので、そう間違われてしまったのだ。
「ま、コスプレとか思われてもいいし」
「おー、ドクターに鳥飼君じゃないのぉ」
「エスティヴィアくん、こんにちはだね〜」
「今日はエスティヴィアさん」
エスティヴィアが2人に声をかけた。
「今日は、遊んでいくんだろ?」
「そうだねぇ〜」
3人は『熱血亭』に入っていった。
そのあと、クマの着ぐるみが、この店舗に入っていった。中にいるのは誰なのだろう?
グラットン・S・彩(
ga1321)は、サーコート姿で『熱血亭』にいた。愛用するグラットンソードは危険物なので、一時預かりになっている。
「こう言うのも悪くないね」
この『魔法と少女と肉体言語』に何かキタみたいだったので参加したのだ。
「おお、賑わってるねぇ」
わいわいと、開催を待つ人がいる。練習用で現在対戦枠にはなってなく、ほぼCPU戦の練習台のみになっていた。奥の方に、大会用の筐体が置かれている。
「あの『かなた』使いが居たら怖いんだけどね〜」
ドクターは思い出した。
しかし、推測できる人物は、今ここには来られない。
「そ、そうなのかしら‥‥」
エスティは、一寸遠くを見ていた。
開催式が始まる。エスティヴィアが開催の挨拶をすることは、ドクターや鳥飼もクマの着ぐるみも驚きだった。
各々が、彼女に拍手をおくったり、くだらないジョークにブーイングしたりと賑わってから、大会に臨んだ。大会といっても大きな物じゃなく、賞品も粗品もない。たんに、新作販売前の前祝いで楽しくやろうというだけなのだ。
「さて、真剣にやってみるか!」
彩が、筐体の椅子に腰をかけてヒカリを選んだ。
「こっちでは、モンクで! いくぞ!」
レバガチャではないが、それなりに動かしている彩。
「マジで親のダイヤの結婚指輪のネックレスを指にはめてぶん殴るぞっ!」
と、ひかりの劇画じゃない萌え必殺技(魔法)のときに叫ぶ。
しかし魔法のキャンセルがかかってあっさり、彼方に関節技を極められる。おお! とギャラリーが湧くと、
「うるさい、気が散る、一瞬の油断が命取りだ!」
彩が叫ぶと、ブーイング「自分だって叫んでるだろ!」とか。
「喧嘩しないでください〜。楽しむためのイベントで喧嘩しないで」
スタッフが止めに入る。
「う、わかった」
主催者に怒られるのは流石にと、若干自重していく。
でも、ギャップ格闘で、無銘を使うときも「マジで親のダイヤの結婚指輪のネックレスを‥‥」と言いかけたところ、また当て身で極められた。
「ちょ! こいつ忍者だろ!」
「忍者いないわ!」
とギャラリーからつっこみが入った。一斉に皆が笑った。
ドクターはというと、イタイ白衣に描かれている、ヒカリを選択。彼のテクニックはノーマルレベルなのだが、今回のコンディションは良かった。
「ソコだ〜! 『無銘に隙無し!』けひゃひゃひゃひゃ〜!」
超必殺技のギャップカットインで、見事に相手をKOさせていく。
しかし、ベスト4まで進むと、注目が集まり、「ドクター、なんでいるの?」と一般の人に聞かれてしまうのだ。
「い、息抜きだ。わ、我輩だって、たまには息抜きくらいはする〜‥‥」
と、少しどもり気味。余所を向いて弁明しているが、今のところコミレザ関係・魔法と少女と肉体言語関係ではほぼ参加しているので、息抜きというレベルではない。
ちなみに、昔のゲーム漫画の技を再現したいと思っても、エスティヴィアから覚醒したり、そんなおかしい技を再現したりは筐体が壊れるおそれがあるため、彼はその行動を止める。流石に大きな迷惑はかけたくない、最後の良心の十字架にかけて。
結構快進撃を続けているドクターだったが、そろそろ集中力が切れて、技の切れがなくなっていった。そこで、ジェイと当たった。
「ドクターがんばれ!」
鳥飼が応援しているが、ジェイのかなたの猛攻が、ドクターを苦しめた。
「ガード! ガード! うわあ 極められた」
『零距離でも、我には此がある!』
かなたの声が野太い男のようにかわって、ドクターのヒカリを絞める。そのあと、投げ飛ばして、魔法砲撃の超必殺技!
『きえてなくなれぇ!』
何ともギャップが凄いゲームなのだろう。
ジェイが勝ち、小さくガッツポーズを取るジェイ。
「ジェイ兄さん強いね!」
「ええ、まあ、留学時は日本で過ごしていましたからね」
アセットとジェイは仲良く会話していた。
「負けちゃったねぇ〜」
緊張が切れたのか、魂が口から抜けているドクターを、鳥飼が肩をかして、休憩スペースに移動していった。
少し、時間をさかのぼる。クマの着ぐるみと、アセットの戦い。コスプレ同士対戦で盛り上がる。
「む‥‥流石にずっと此では熱いな」
くぐもった声。
「よろしくお願いします」
アセットが挨拶すると、クマは頷いた。
「大丈夫なのか? クマ」
「あの、シャルロッテ萌え」
「写真はあとあとー!」
シャルロッテという同キャラでの対戦となっている。
クマのきぐるみでは流石に動かしにくいのか、クマは苦戦している。しかし、アセットもこのゲームはほとんど初心者で、このシャルロッテが自分と似ていると言うことから共感をもったから使っているというわけだ。
前に戦い、ある程度馴れているようなクマだったが、暑さなどで持久力と集中力が落ち、結局アセットに完敗してしまった。
「たのしかったよ」
アセットは笑みを浮かべて、クマと握手する。クマも握手を交わしてから、休憩スペースにむかっていった。そして、クマの頭部を少しあげて、水を飲む。
「あついな‥‥」
くぐもった声がクマから聞こえた。
鳥飼はと言うと、別の参加者に、一回戦負けをしておりその後、常にドクターの周りにいた。この中で、知り合いというとドクターしかいない。エスティは運営で忙しそうだ。
あと、
(「色々、こういう事で出会っているから、友達になりたい」)
が、本音だ。
ただ、ドクターがそう思っているかどうかは解らない。
「楽しい日であればいいね〜」
回復したドクターがつぶやいた。
「だね。他のゲームでもしておきます?」
「ん〜、疲れたので、もう一寸ここにいるよ〜」
「では、俺もここにいます」
喧噪から離れた場所で、遊び疲れた2人のゲーマーは、まったりしていた。
アセットも勝ち進んでいたが、途中で負けてしまう。
そして、最終的にジェイが優勝した。
「今回の肉体言語大会優勝者は、ジェイ・ガーランド!」
おおお! と拍手が巻き起こった。
「あ、ありがとうございます」
一寸恥ずかしいジェイ。
「ジェイ兄さんおめでとう」
アセットは拍手を送った。
彩のほうはというと、他のゲームに夢中になっていた。
そして、コスプレイベントも開催され、アセットがかなり人気になっていた。
「コスプレ初心者なのに、上手いね。写真撮らせてください」
「え、写真‥‥良いけど、ちょっと恥ずかしいな‥‥」
一寸照れる。
「ううん、その照れ顔が萌えだ!」
休憩している鳥飼も、「良いコスプレだ」とつぶやきながら評価していた。
ジェイは、その辺心配しながら見ているが、運営がしっかりしているため、大きなトラブルはなく、アセットも、
「我が剣術に死角はなし。魔剣聖に刃向かうとは愚か‥‥で良いのかな?」
ポーズを決めて、サービスしている。
そして、エスティヴィアが閉会宣言をだすと、ゲーマー達は色々話をしたり帰っていったりと思い思いの行動を取った。
「あーつかれたぁ!」
エスティヴィアは、運営の数名と休憩スペースでぐったりとなっていた。
「エスティが参加すると、バランスが」
「え〜、あたし上手くないわよ」
「そんな分けないじゃないか、シャルロッテとヒカリだとぜったいに」
どうも、この1年で腕を上げているらしい。
そこで、クマが現れて、
「‥‥おつかれさまだ」
と、親しく話しかけた。
「ずっと着ていたけど、だれよ?」
エスティは一寸不思議に思って、問いかけると、クマは頭部をはずす。水円・一(
gb0495)だった。
「‥‥あんたも暇だねぇ」
「お祭りぐらいこういうことをする」
一はむっつりとした。
「で、こんなところで主催していていいのか? 原稿はどうした」
「ばっちりよ!」
一は、エスティに原稿のこと聞くと彼女はピースサインで返した。
「‥‥なら、いい。おつかれさん」
彼は鞄の中からトリュフチョコを出す。
「お、さんきゅー。甘い物ほしかったんだぁ」
エスティはニコニコしながらトリュフチョコを平らげた。勿論、分けて他の運営にもあげた。
ジェイとアセットはそのあとも一緒にガンシューティングで遊んだり、魔法と少女と肉体言語を一緒にやってみたりと思いっきり楽しみ、帰る事にする。
「中々楽しかったな。またこの手の大会があれば、参加しようか?」
「そうだね。今度はみんなで行きたいな」
と、仲良くはなして帰っていった。