●リプレイ本文
●いきなり修羅場?
一行が高速移動艇に向かうなか、リズ・A・斉藤(gz0227)は、鹿嶋 悠(
gb1333)の巨体が見えたときに、笑顔で抱きついてきた。
「ユウさん!」
「おっと、リズさん。お久しぶりです。元気にしていましたか?」
「うん、元気でしたよ。ユウさんがいれば‥‥、えっと、心強いです!」
一寸、頬を赤らめており、とても慕っているように見える。
「‥‥ま、まぁ‥‥このぐらいで目くじら立てるのもなんですしね‥‥」
悠の後ろから声がする。こめかみに青筋が浮かんでいそうな、引きつった笑みをした少女だった。
「あ、紹介します。シャーリィです」
悠が、『その表情を察知することなく』恋人のシャーリィ・アッシュ(
gb1884)を紹介する。
「初めまして、シャーリィ・アッシュと申します。以後お見知りおきを」
と、先ほどの笑顔は何処へというさわやかな笑みで、リズと握手をした。
(「‥‥これって‥‥修羅場ですね‥‥」)
(「鹿嶋気付よ‥‥」)
と、思った人は沢山居るだろう。
ツンとしている恋人に鹿嶋は首をかしげるだけであった。素敵に鈍い。だがそれが良い。
そして、相変わらず『握手できない運命』のセージ(
ga3997)は「今回もよろしくな」とリズと握手しようとすると。高速移動艇の発進放送で邪魔された。
●人の気配はなく
9人は、寂れた街の大通りを歩いていた。キメラの驚異で怯え、家に閉じこもっているのだ。
「よほど危険だということか」
須佐 武流(
ga1461)があたりを見ながらつぶやく。隣には恋人の雪待月(
gb5235)がいる。
リズの他に、フェイト・グラスベル(
gb5417)、風雪 六華(
gb6040)は戦闘依頼では初陣だ。しかし、リズは能力者としては初陣で、キメラの恐ろしさを知っている。並の人間では太刀打ちできないことに。
「はじめてなので、連携など教えてもらいたいね!」
フェイトがニコニコ笑う。
六華は、どうも兄が来られないようなので、ため息を吐いている。しかし、傭兵になった理由は色々あるため、この退治は乗り気だ。
「あまり、堅くなるな? いいなリズ」
セージがリズに言う。
「うん。わかってる。けど、良い感じはしないもの‥‥何処の一緒なんだって‥‥」
怒りが彼女の目に見て取れていた。
「ん、変な緊張で動けないとかじゃないなら良いけどな」
そう、この寂れた町を見て、彼女が思っていること。
(「‥‥ナシュビルと重なっているのですね」)
(「何とかして助けたい。その思いが強いですね」)
ベル(
ga0924)と悠がそう思った。
「ね、ユウさん」
リズが目を輝かせ、悠をみて手を握ってきた。
「はい、何でしょうか、リズさん」
「ちゃんと戦い方教えてくださいね。連携とか」
「‥‥ええ、わかってますよ」
「お願いしますね!!」
彼女は悠の腕に抱きついた。
ベルやセージは、ニコニコ笑う(半分のオロオロもあるが)。武流も雪も何かを考えているが、口には出さない事に。しかし、シャーリィだけはハッキリと判る程に、顔が引きつっていた。
「ほう‥‥、仲のよろしいことで。もっとも、別段咎めることでもありませんが」
「えっ? どうしたんですか? シャーリィ」
「何でもありません‥‥。早く参りましょう」
足早に、拗ねた口調で先を進む。
リズは首をかしげており、悠から離れてない。
「班分けはあれでいいのかな?」
フェイトがうーんと考え込んでいたが六華は「良いんじゃないかしら? たぶん大丈夫でしょ」と答えただけ。
「‥‥ある程度のことは教えますが、‥‥自分のスタイルを見つける方が‥‥良いですよ。俺はその手助けをします‥‥」
ベルが先輩として、初陣の2人にそう言うと、
「はーい、わかりました先輩!」
「お願いします」
彼女達がお辞儀をする。
(「‥‥先輩‥‥良い響きだ」)
ベルは心の中で悦に浸った。元は明るい調子の良い性格なのだ。お調子者もあったかもしれない。
「雪、いざとなったら俺が必ず守るからな」
「はい、武流さん」
武流と雪は良い雰囲気を作っていた。
(「飛び出しそうなので、心配です」)
雪は不安を感じていた。
●群狼戦
公園の前で確認をとる。
「個人での連携、班での連携、前衛&前衛の連携、前衛&後衛の連携、後衛&後衛の連携。今回は色々ありますが、最初の2つは覚えて欲しいとセージさんが仰っています。私達の動きを見て、何か感じて頂けたらと思います」
と、雪がリズや、初陣メンバーと打ち合わせる。
「了解」
「了解ですよ」
「わかりました」
「私ももう一度確認してと‥‥」
3班に分かれ、適宜、前衛と後衛に分かれて行う作戦だ。
「よし!」
皆が覚醒したときに、遠くの方で遠吠えが聞こえる。人間の匂いで気が付いたようだ。
「作戦通りにするぞ」
セージと武流、雪の班は前衛系だ。悠とシャーリィ、リズが中間、ベルとフェイト、六華が後衛となる。8人まとまっているより、お互い分かれた3班体勢が群衆戦法に対応出来ると判断したからだ。
視界に入った第一群。武流とセージが距離を詰めて、何頭かを斬りつける。
「一緒に踊ろうぜ、駄犬ども。生と死の狭間を舞台にしたソードダンスを!」
演舞のような華麗さはない。無骨ながらの死を運ぶ無神流の剣が犬の群れに舞う。しかし、あいてはセージや武流の死角をねらうように数匹で攻撃していた。爪に引っかかれ、噛み付かれる。
「いてえな!」
セージの剣舞を受けよろめくキメラに、武流の【OR】タイガーファングがうなりをあげ、キメラを屠る。しかし、後ろからキメラが飛びかかる。よけきれない!
そこに一筋の矢の軌道を見た。雪が弓でキメラを射抜いたのだ。キメラはそれでも倒れてないが、目標を雪も加えて、広範囲の火のブレスを吐いた。
「このやろっ! 熱っ!」
「きゃあ!」
武流は避けるものの、彼女は火に当てられた。かろうじて虚闇黒衣を展開して自分の周りは黒く曇る。それにより火のダメージは軽減されているが、綺麗な銀色髪の毛が焼かれてしまった。
「雪!? このやろおっ!」
「落ち着け、須佐!」
セージが叫ぶ。しかし聞いてない。
「‥‥っ!」
横から何か影。そこで武流が止まる。目の前にはキメラが居ない。
リズが割って出て、アーミーナイフで犬キメラともつれ合い6m先まで転がっていったのだ。インパクトの轟音が響いた。手にはアーミーナイフを持っていた。
「2匹目‥‥!」
リズは猫の目で、犬の急所を仕留めていた。更に牽制でスコーピオンを撃ち、他のキメラを近づけさせない。間髪入れず悠とシャーリィが、別方向から襲いかかる犬をはじき飛ばす。
「フェイトさん、六華さん、いきますよ」
後方支援担当のベルの班は、フェイトが飛び出しやすいように牽制と狙撃を開始。ほとんどの気が、ベルと六華に向けられたところを、竜の翼で急接近したフェイトが一撃の下で犬の頭部を切断した。
「よし3匹目!」
悠&シャーリィの華麗なコンビネーションは、心が通じ合う同士からなる美の演舞だ。2人の息のあった攻撃で、さらに1頭を撃破した。シャーリィが愛する人の死角をフォローすることで、悠が豪快にハルバードを振り回す事が出来るのだ。残りは6体。何かを悟ったキメラは、じりじり後退していく。
「‥‥物陰に隠れるために、逃げるつもりです!」
ベルが叫び、一頭を狙い、動きを封じる。
暴走気味に見えた武流も、冷静さを取り戻し、セージと一緒に動きを封じたキメラを撃破した。
リズの牽制と鹿嶋&シャーリィの班は、本当に初組み合わせなのか不思議なほど連携がとれていたのだ。なんと、2匹目も屠った。
「背中をあなたに任せられるというのは安心できる」
悠がつぶやくと、シャーリィは少し頬を染めているが、隙はない。
「‥‥伍長には負けていられませんが‥‥」
先輩といわれた分、やっぱり連携の指示は上手くしないと思う。でも、今は初陣の後輩が怪我をしないようにすることが大事だ。ここは冷静になれ、ベル。
「フェイトさんの援護を」
「了解しました。(私は、動物が好きですが、キメラは邪魔でしかない)」
六華はベルと牽制射撃を行う。
「閃光の如く、瀑布の如く、突撃!!」
フェイトが竜斬斧「ベオウルフ」でなぎ払う。ぐるんぐるんと小さなミカエルが斧に振り回されているようだが確実に効果があった。別方向から来たキメラを竜の咆吼で吹き飛ばし、そこで、セージのソードダンスで仕留められる。
そうして連携は上手くいき、キメラの掃討はあまり被害もなく、終わった。
流石にSESのインパクトやブレス攻撃で、公園の一部は破壊されているが、惨事には至ってなかったのでよいし、バグアとの戦いで、施設が無傷などは結構無理な注文である。
●本当はキメラよりも怖い物は嫉妬
セージやフェイト、六華やベルは他に敵がいないかを探し、また、軍や自治体に連絡を入れて詰めの仕事をしていた。
武流は雪を看る。やけどの方は救急セットで何とかなりそうだ。しかし髪の方は切った方が良いみたいだった。
「しかし、無事で何よりだ‥‥」
「でも助けてきてくれました。ありがとうございます。武流さん」
彼女は武流の頬にキスをした。
「たおせました!」
リズが悠に抱きついた。良くやりましたねと、悠は頭をなでて微笑む。
「‥‥」
シャーリィは黙って、悠を睨んでいた。
「? どうしました? シャーリィ」
「‥‥なんでもない。しかし、そのあと話があります。みっちりと‥‥お話を聞かせて頂きます」
怒りが伝わる。
「ど、どうかしました?! シャーリィ? ‥‥!?」
悠は今の状態を再認識する。嫌な汗がたらたら流れてきた。
「?? あ‥‥っ、ご、ごめんなさい!」
リズは、悠から離れて、猫のように飛びすさり、丁度あった木に隠れてびくびくしている。
「‥‥浮気ですね‥‥わかります‥‥」
ベルが、あの謎のお菓子っぽい時のような笑みを浮かべ、ニコニコしていた。からかい甲斐がありそうだという悪戯な笑みだ。悪気がない事なので
「ああっ!?」
やっと気づいた、『鈍感戦士。』な鹿嶋・悠。
「ヤキモチでしたか」
もっと早く気づこうよ、とか他は思うが、口にしないでおこう。
(「‥‥ニヨニヨできるシーンですからね‥‥」)
たまに『シュークリームみたいな着ぐるみ?』を着る少年は思っている。
「妬いてくれる程、好きでいてくれてありがとう。俺もシャーリィの事が好きですよ‥‥愛してます」
悠は恋人の頭をそっと撫でた。
その行動で、シャーリィの怒りは不思議と消えていく。
「こ、今回は不問にいたします‥‥ただ、お話ししっかり聞かないと」
そっぽを向きながら、シャーリィは頬を染めていた。
「あう、あう、まさか恋人がいらっしゃったんですかっ?」
リズは、木に隠れてふるふる震えている。子猫が怯えて居るみたいで、一寸可愛い。
「‥‥あ」
そう、知らなかった! しかし、それではとんでもないことになる!
「えっと、それは、‥‥ですね」
悠はどう説明すればいいか困った。
「ふぅ、私からお話ししましょう」
ああ、確かに彼に好意を抱くのは理解できると、彼女は思った。ここは女性から話した方が良いかもしれない。後で色々、弄られること確定ですね。とほとんどの人が思った。
リズ、実は鹿嶋・悠に恋をしていたようである。いつ頃か判らないが。
あらかた仕事が終わって、ラスト・ホープ。
「さて、終わったことだしお茶でもしない?」
「それは良い案ですね!」
六華の案にフェイトが同意する。
「私も行きます!」
リズも手を挙げて、同い年でワイワイとし始めた。
それを大人達は微笑みながら眺めていた。