タイトル:【Woi】変則な敵マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/18 07:26

●オープニング本文


●ラスト・ホープ島。UPC本部、最上階。(ロス時間、6:00)
「最高首脳会議からの提案は、やはり変わりませんか」
「‥‥ふだんはお飾りだが、どうにも自分たちの生存のチャンスであればなりふり構う余裕もないらしい。我々UPC軍各国首脳の下部組織だ。残念ながら決定は変わらない」
 四方を窓のない壁に囲まれた暗室において、UPC特殊作戦軍の長であるブラットが褐色の肌の男と向き合っていた。
作戦内容を説明するモニターの映像は、ふだんならジャミングの影響で乱れもしようが、窓の格子で動く蟲の触覚の僅かな動きすらも鮮明に映し出している。

「限られた領域、限られた時間、限られた戦力‥‥私は軍事については君ほど詳しくはないが、極めて難しい作戦になる程度のことはわかる。‥‥にもかかわらず君に多くを望まなければならない」
 褐色の肌を持つ男の指が僅かに動き、資料映像がピタリと止まる。ビルの屋上から望遠カメラで撮影されたその映像には、部屋の中で部品を組み立てる一人の男が映し出されていた。

「ただでさえ軍への不信感が高まっている昨今だ。故意は勿論、住民的被害は認めない。市街地での戦闘などもっての他‥‥どうかね、君はできるかね? 『住民に事前通達なく、10時間以内にこのバグアをロスに被害を出さず抹殺し、尚且つステアーのパーツを無傷で奪う』ことが」
「作戦決行は只今より14時間後、一斉におこないます。吉報をお待ちください」

 ブラットは人工分布図帯付のロスの地図に描かれた複数箇所の印を見据えながら、静かに言葉を紡いだのであった。

●UPC本部、作戦説明テープ(ロス時間、7:00)
『最初に通達する。諸君はこの依頼を受けた者である。これより作戦説明をおこなうが、説明を受けた後の依頼放棄は認められない。依頼関係者以外は直ちに部屋から出るように‥‥
 (10秒ほどの間)
 作戦を説明する。今回のミッションは、先の大規模作戦によって、撃墜した敵新鋭機『ステアー』の重要パーツ回収である。ステアーの胴体の一部はUPC軍が回収したが、欠損が多数存在する状態である。敵はこれらを保持し、ロサンゼルス市街地に分散して潜伏している。入手した情報によると、敵は今より14時間後、幅3m高さ2mほどの装置から、重力制御によって衛星軌道上までパーツを打ち上げることが予想される。
 諸君はこれから10:00到着予定の便でロスに向かい、準備の後、20:00に作戦を決行するように。
 今回のミッションは『KV非推奨依頼』である。使用は許可するが、市街地に大きな影響を与えるような作戦は軍法会議の対象となる。臨機応変かつ、確実にミッションを遂行するように」

●発見するも
「『よっしゃー簡単に見つけたっ!』と思ったら、これはこれで問題だぜ」
 ジェームス・ブレストは、ステアーの破片を探す仕事に従事していた。そして、それを回収しているバグアのスパイが蜘蛛型操業ロボをつかい、どこかに運ぼうとしているのだ。
「緊急だ。応援を頼む」
「了解」
 生物的曲線のステアーの破片は、何かの虫の殻にも見える。
 いくら、直情家のジェームスでも、このまま突き進むほど愚かではない。増援がくるまで、しっかり他の部下に追跡と推測を任せて自分は車を用意していた。搬送用のワームのたぐいが来ると危険である。
「つまりだ。余り作戦は練ることは出来ねぇ。推測だが、海岸に待機している装置の所まで運びこもうとしているのだろう。その前に叩くぞ」
 タイミングが大事なこの作戦。
 しかし、敵は道という道は通らず、蜘蛛のような機械を使い移動している。つまり、道無き道を進むのだ。しかし、こちらは縛りがある。道を通らないといけない。
「車やバイクで道を走って、なんとしてでも海岸までいかせるな。なんとしてでもとめるぞ!」

 ジェームスは車を走らせた。

●参加者一覧

鳳 湊(ga0109
20歳・♀・SN
白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
赤宮 リア(ga9958
22歳・♀・JG
楓姫(gb0349
16歳・♀・AA
須磨井 礼二(gb2034
25歳・♂・HD
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
流 星刃(gb7704
22歳・♂・SN

●リプレイ本文

●急を要する(ロス20:00)
 夜。小さな明かりで、待つジェームス・ブレスト(gz0047)。
「応援に来た、ジェームス」
「おう、白鐘か。今回も頼むぞ」
 白鐘剣一郎(ga0184)をはじめとした、傭兵の応援達がジェームスに声をかけた。
「初対面もいるが、時間が1時間弱、挨拶は後だ。端的に作戦で言うと、お前らの作戦を実行する。つまり、瓦礫の道を進む5名、迂回路でバイクを走る2名。工事中の交渉とそこでの足止めが1名だな?」
「そうですね。ジェームスさんも付いてきてくれますよね? 瓦礫の方面に」
「もちろんだ」
 須磨井 礼二(gb2034)の言葉に、当然のようにジェームスが答えた。
 インデーズに乗り込むジェームスに続いて、各種車両ジーザリオやバイクで向かう傭兵達が各方面に向かっていった。

●工事中
 鳳 湊(ga0109)が工事中の看板と、警備員を発見すると、車を止めて、
「UPCです。緊急事態発生のために通してください」
「どういう事だ?」
「この近辺にキメラが出没してその退治に向かっています。先回りして叩くので」
「‥‥おっと、大きな声で叫びそうだった‥‥そう言うことならしかたないな。いいぞ。こっちでも避難するが、道がほとんど無いから気をつけろ」
「ありがとうございます。感謝します」
 バリケードを取り除いている最中に、一人の作業員と警備員が話しかけていた。
「おっと、まってくれ。壊れはしないだろうな?」
 何か言い争っているらしいが、作業員が渋々、何かを渡した。
「ああ、すまない、やっと出来た部分が壊れないか作業員が心配してな。そうそう、これが予定開通通路の地図だ、その地図は古くてね」
「ありがとうございます」
 バリケードが取り除かれた後、湊はジーザリオを走らせるのであった。
 しばらく、舗装された道が続くが、徐々に未舗装の砂利道になる。もし、高級車だったら、タイヤをとられていただろう‥‥。
「戦闘の音も聞こえないですね。‥‥こちら湊、こっちに敵は来ていません」
 視界には、瓦礫の道が見える。しかし、蜘蛛型ロボの影を発見するには至っていない。
 彼女はそのまま道無き道を走り続けた。


●渋滞をかいくぐる
「覚醒はしなくても良いとしても、これはきっついなぁ!」
 鹿島 綾(gb4549)がバイクで渋滞の車間をかいくぐっていく、楓姫(gb0349)もそれに併せて、縫うように走っている。夜のために、そんなにスピードは出せないが、早くたどり着かないといけない。
 再建のためにひっきりなしに車が行き交うため、自然と渋滞になる。今回のように瓦礫に埋もれて使い物にならないところもあるためだ。交通整理の警察もイライラしている。
 それを、横目にみながら、綾と楓姫は渋滞を縫って進むのだが‥‥、
「うおお!」
「‥‥っ!?」
 いきなりの車が迫ってくる! 何とか接触を避け、2人は運転手に怒鳴り声を背中に走っていった。普通ならここで思いっきりとばされていただろう。それだけ急がないといけないのだ。
「間に合ってくれよっ!」
「間に合わせましょう‥‥」
 ハンドルを握る手に汗が滲むのを感じる。しかし、先は闇。不安を振り払うように走った。


●瓦礫の道
「うへぇ。これはひでぇ‥‥っと」
 ビル1階分のコンクリートの破片が道の2/3を遮断している。車1台通ることはできるが、かなりスピードは落とさなければならない。しかし、ジェームスは愛車インデーズであいている空間を通り抜けていく。
 ドラグーンの礼二が先行して、敵がいないかを見る。
「あ、あんな所に」
 瓦礫にそってある、半壊全壊している建物の影から、足が見えているのだ。隠れて移動していることがわかった。夜と言うこともあり、運良く見つけたとも言える。ただ、耳を澄ませば、いびつな機械音が聞こえているのだ。それが幸いして、見つけることが出来たとも言う。
「これでは、ねらい打ちも出来そうにないですね。もう少し良い位置に向かいたいです」
 赤宮 リア(ga9958)はアルファルを持ちながら、悔しそうに言った。
「あいつらは気が付いてないのか?」
 アンジェリナ(ga6940)が不思議そうに双眼鏡から見ている。
「それならこっちが好都合だ」
 剣一郎はアンジェリナに答えた。
 一方、荒れた路面で必死に運転している流 星刃(gb7704)は、
「うおおお!」
「大丈夫、避けるで!」
 瓦礫の悪路を必死に運転する星刃であった。
 しかし、途中、道に真ん中に大きな瓦礫があり、後わずかで衝突しかける。夜の状態のために、視界が悪いのだ。ドラグーンは登ってもいけるが、車では難しい。
「うおお。なんてこった!」
 ジェームスが瓦礫に拳をたたきつける。何か大きな破砕道具でもあれば、一発な大きさである。ハンマーやそう言った物だ。
「ふふふ」
 リアが、ニッコリ微笑んで、無骨なパイルバンカーを持っていた。
「こんな時のために、犀牙を用意してました♪」
 リアがニッコリ微笑む。パイルバンカーの大きさから細身のリアが持つと、異様である。
「急いでくれ頼む」
 アンジェリナが運転席でリアに頼んだ。
「まかせてください♪ ジェームスさん離れてくださいね♪」
 彼女は一気に犀牙を発動して、見事に轟音とともに瓦礫を粉砕するも、リアが反動で吹っ飛んだ。
「きゃああ!」
 運良くジェームスが居たので、彼が受け止める。
「たすかったぜ、リア」
「あ、ありがとうございます‥‥。私には会わない武器でした」
「いそいで!」
 インデーズは乗り捨て、アンジェリナのジーザリオに乗るジェームスと、流のジーザリオに乗り直すリアを確認してから、再出発した。
 皆の推測は的中し、一段と大きな瓦礫のところまでいくと、先ほどの蜘蛛の群が向かう予定ルートに先にたどり着いた。瓦礫と言うよりビルが横倒しになっており、死角も多く、ああいったロボが物を運ぶという事では良いルートとも言える。
 迂回路の交差とちょうどであるようだ。しかし、工事中の道路の交差は工事の変更により、ずれてしまっている。
「よし、車をおいて、隠れて待ち伏せるぞ」
 瓦礫班の各人が配置に付いた。時間は十分にある。

●アンブッシュ(20:15)
 それから2分後、偵察に辺りをキョロキョロしている数機の蜘蛛型ロボが姿を現した。
 まず、護衛機と運搬機を引き離すことが肝心だ。しかし夜のために、判別が難しい。
 徐々に近づく蜘蛛の集団‥‥。中央に月の光で黒光りする物がみえた。あれがステアーの破片だと分かる。
 8機で持ち上げて移動しているのを、囲んで、前に4機、後ろに4機と護衛がいるようだ。
 襲撃ポイントにロボがたどり着く。
「いくぞ!」
 ジェームスが叫んだ。
 一気にジェームスと剣一郎とアンジェリナが走り出した。
 別方向から礼二と星刃も接近し、リアが兵破の矢で、一体を狙い撃った。FFの反応があったがそのまま矢は貫通し、蜘蛛型ロボが軋むような悲鳴を上げる。
 星刃がそこを急所突きで破壊し、一体を無力化した。
 剣一郎とアンジェリナ、ジェームスの3人は、蜘蛛型ロボの足を狙って、移動を妨げる戦法である。
「はああ! 斬鋼閃っ!」
「‥‥ふんっ!」
 しかしさすがに8本もあると半分を斬るには骨が折れる。剣一郎とジェームスは一撃に体重を乗せる一撃で的の足を折り、アンジェリナは急所を突きながら、手数の多い斬撃である。的の蜘蛛型ロボは異様な装置を出して、電撃を三人に浴びせたり、ガトリングをぶっ放したり反撃にでた。回避するために、距離をとるしかなかった。
「数が数で、大変だっ!」
「そこを、根性で! うおっ!」
「ジェームス!」
 剣一郎はさけんだ。銃弾がジェームスの脳天に直撃したとおもったが、彼は、大剣で見事に受けきっていた。
「不可能を可能にするんだぜ! さあてこっちの反撃だ!」
「ああ!」
「‥‥わかったっ!」
 不敵に笑うジェームスはまた蜘蛛退治を開始し、剣一郎もアンジェリナも同時に動く。

 前方で詰まったために、運搬のロボは、迂回し始める。横からの銃声。そこで足が1本急に無くなったため、バランスを少し崩した。
「ふう! 間に合ったな! 配達ご苦労さん! しかしそこまでだ!」
「ここで逃がすわけには、いかない!」
 綾がバイクを止めて、真デヴァステイターの両断剣を乗せた全弾射撃。楓姫も同じように狙撃眼をのせた狙撃銃「狩姫」で、足を打ち抜いたのだ。

 他の方向に向かおうとする蜘蛛が居るのだが、音速を超えた銃撃音で、不意を打たれ、星刃、リア、礼二の挟撃で、行動不能になる。
 そう、見晴らしの良い工事中の道路から、狙撃眼と鋭覚狙撃をつかった、湊のライフルが、見事な牽制をしているのだ。夜でも、戦場では光があること、目標が大きいことが、スナイパーである彼女にとって格好の的となるのだ。悪を撃つ銃弾から逃れることは出来ないだろう。

 足を無くし、バランスを崩した蜘蛛型は、必死に抵抗を試みるが、近接で動く天馬の隊長と剣の道を行く女性剣士の斬撃に沈黙し爆発する。
「こっちも負けていられない!」
「そうだね!」
 礼二と星刃も中央部分にエネルギーガンや急所突きの一撃を与え、リアが上からの強弾撃の三連で無力化していく。
 回収蜘蛛には、護衛に付いているような武装が少なく、足による攻撃しかできなかったため、楓姫が血桜で斬り、綾が援護で銃撃のコンビネーションで3体破壊したときから、ステアーの破片を棄てるしかなく、攻撃に転じる。しかし、連携のとれた傭兵達の前に、運搬型はタダのでかいくず鉄になるだけだった。

●甲虫の印象(20:45)
 黒光りするステアーの破片。装甲部分の一つらしい。元から生物的なものが多く使われている印象が強いので、あながち間違いではなかった。
 怪我を少し治し、UPC回収班が来るまで、追撃が来ないか周辺を調べる一行だが、無事、回収することに成功したのであった。
 トラックなどがやってきて回収作業が行われている中、包帯を巻いているジェームスが傭兵一行に話しかけた。
「では、改めて聞こうかな? 自己紹介、俺は大尉のジェームス・ブレストだ」
 初対面の人から順に挨拶する。そして握手をしていった。
「はじめまして」
「おう、今回は助かったぜ。お前達のお陰で、回収できてミッションもクリアだ。夜の中ごくろうだったぜ」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
 礼二は、笑顔で答えた。
「しかし、今回は厄介だったな」
 同じように包帯を巻いている剣一郎は、ジェームスと一緒にコーヒーを飲んで、談笑する方向になり、元から明るい性格の星刃や礼二も加わっていた。
 応急手当をしているなか、トラックに運ばれるステアーのパーツを見送るリアが、
「これが何かの役に立てば良いのですが‥‥」
 不安と期待を混ぜたつぶやきをついた。
 しかし、アンジェリナは、
「‥‥あとは研究所へ託そう。私たちの役目はここまでだ。これ以上は傭兵の出る幕では無い」
 そのつぶやきに答えた。
「あとは親父の仕事だな! 間違ってくず鉄にしなきゃ良いけどな。お前らもこっちでコーヒー飲みな!」
「‥‥戴こう」
「あ、はい、頂きます!」
 ジェームスが笑いながら2人を呼んだので、2人はそちらに戻ったのだった。