タイトル:プロモーションビデオマスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 不明
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/12 14:04

●オープニング本文


 ローデン事務所で、フィアナ・ローデン(gz0020)は、事務所の窓から景色を眺めていた。
 ただ、ただ、じっと。
 おそらく、この数ヶ月で色々なことがあり、ぼうっとすることで、整頓しているのだろう。しかし、彼女の歌を歌いたいという気持ちはふくらむばかりだ。
 後ろの方で、スタッフがガヤガヤ騒がしく、会議している。彼女はその内容もしっかり耳に入れているようである。自分に今役割がないわけではない。もちろんスタッフと喧嘩している訳でもない。
「出来ましたよ。企画」
「はい」
 そう、役割分担できている信頼関係があるからこそ、彼女は今のスタッフに任せているのだ。
 フィアナが案を出すこともあれば、各地の声を拾ってきたスタッフが纏めることもある。今回は、スタッフからの企画だったようだ。

「プロモーションビデオ?」
「はい、コレを作っておけば、状況に応じて各地に流せます。危険な目に遭っている貴方を守る手段でもありますし、各方面へのアプローチに使えます」
「確かに、大規模の時に私たちが閉じこめられると、動きようもないですし。無理にやると、軍に迷惑もかかりますからね」
「将来的には世界全体を見据えないと‥‥アメリカだけではないですし」
「うん」

 今回の企画は、学園都市エイジアのプロモーションビデオ、今回ライヴで歌ったものの再編集などをするためだ。しかし、エイジアでミニライヴや、ドラマ的な要素を作るには問題があった。
「スタジオ設置などのノウハウはあっても、演出ビデオを撮るというノウハウはちがうので‥‥」
「そこで、傭兵さんですね? IMPとか他国で名の売れている方とか、本職とかを」
「はい」
 その辺はぬかりないようだ。

 つまり、演出家を傭兵や彼女の友人、様々な人で盛り上げる事にあるようだ。
 もっとも、エイジアに行く理由は他にもある。
「小麦屋さんに挨拶しに行きましょう」
 半年以上お世話になっている人へ、挨拶回りもあるのだ。

●参加者一覧

ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
皐月・B・マイア(ga5514
20歳・♀・FC
風雪 時雨(gb3678
20歳・♂・HD
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
風雪 六華(gb6040
20歳・♀・ST
ヴィンフリート(gb7398
20歳・♂・DF
紅桜舞(gb8836
14歳・♀・EP

●リプレイ本文

●企画立案
「では、不思議な国のアリスみたいに、各所をフィアナが回って、私たちが配役を務める方向が良いかもしれないな」
「うーん、でもアリス服その物で行くより、学生服でフィアナが回る方がいいとおもうにゃ〜」
「え、学生‥‥服?」
「兄さんそこでかたまらない」
「ところで、実年齢は?」
「えーっと、お酒は飲めるんですけど‥‥詳細は『乙女の秘密』です」
「なんちゃって女子高生に‥‥」
「それは禁句だな」
「えー、あたいだって‥‥」
 ローデン事務所で、色々話が弾んでいる様子だ。
 ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)と風雪 六華(gb6040)の案が決まった。お題は『不思議の国のアリス』として、アリス役がフィアナだという。
 転校してきたフィアナ・ローデン(gz0020)が、同級生の猫娘アヤカ(ga4624)と一緒に歩いている時、うさぎの落とし物を拾ってから物語が始まる。そのうさぎを追いかけていき、学園都市エイジアを紹介していくと言う。アジアンストリート、ホテル、エイジア学園、ライヴハウスから、最後に高見台の展望台の順らしい。
「小麦屋の人達、元気にしてるかなぁ」
 皐月・B・マイア(ga5514)が、久々に出会える人と楽しみにしているようだ。
「マイア、小麦屋知ってるの?」
「マイアちゃん、しってるのかにゃ?!」
 フィアナとアヤカが身を乗り出した。
「ほう、知ってるんだ」
 ホアキンもマイアを見る。
「まえに、ボランティアで高見台の手入れのお手伝いをしたんだ。私は、腕がこうだから、小麦屋でメイドウェイトレスをしていたんだけど」
「CD営業で、小麦屋手前で、ゲリラライヴをしたニャ」
「そうだったな」
 アヤカと、ホアキンが言う。
「結構、エイジアに行ってる人が多いんだな、詳しく聞かせくれないか?」
 鹿島 綾(gb4549)は、一度でもエイジアに向かって何らかの仕事(遊び)をした人達に尋ね始める。
「‥‥、わたくしたちも、聞きたいです」
「お願いします。パンフレットなどより、言ったことのある人の話も聞きたいな」
 紅桜舞(gb8836)、ヴィンフリート(gb7398)もマイアやアヤカ、ホアキン、に尋ね始めた。
 ホアキンやアヤカ、マイアが、大体その当時はこういう感じと、教えて行くと、綾がメモをとる。アイドルタレントとして、アヤカがいるため、演技指導は彼女が詳しい。女子高生はどういう風かとか、物語の登場人物とか‥‥。実質監督はローデン事務所の演出スタッフになる。
「最終的な下準備と打ち合わせは、現地で、と。いいですか?」
「OKです」
 フィアナが最後にまとめて、今回の会議は解散。数日は皆で程度のプロットを考え、撮影機材などもそろえ、エイジアのホテルに向かうことになった。

●『アジアンストリート』
「エイジアって活気があっていいな〜♪」
 転校生のアリスは、アジアンストリート手前を歩いている。再開発でエイジアが出来たことを、下のテロップにて流れていく。
『このビデオは、学園都市について案内します。さて、転入生の‥‥』
 こんな感じに。
 エイジアにおいて中心の商店街になるアジアンストリートは、駅前にありアジア関係のレストランが建ち並ぶ。そう、中華街とエスニック、韓国と様々な食材、露天が立ち並ぶのだ。もちろん、一般日用品を扱う雑貨屋なども専用区画で存在している。
「わわわー! いそがないと! いそがないと!」
 銀髪の高校生が急いで走っていって、アリスを追い越した。
「わっ!」
 驚くフィアナは、その場で呆然とする。しかし、下を見ると先ほどの男子生徒が落としていったであろう、生徒手帳を見つけるのだ。
「あ、同じ学校の人‥‥、本当なら学校で会えればいいけど‥‥今渡さないと‥‥」
 アリスは駆けだしたのだった。

●カミングアウト
 始める前のこと。
 ホテルで着替える風雪 時雨(gb3678)がうさぎ役と決まっている。
「お願いね」
「はい、良い物にしましょう」
 フィアナはにこにこして、彼にキスをしてから一度ホテルを出て待つ。
 角で、妹がにこにこ(いや、悪巧みの笑み)をして隠れてみていたなんて兄が知るよしもなかった。
 更衣室として借りている一室の籠の物体を確認してから‥‥時雨は絶句した。
「なぜ、女子生徒の服なんですか!」
 しかし、本来使う制服がない。
 ブレザーにミニスカだが、なぜこういう事をするのか見当が付く。
「あとで、言ってやる‥‥それより‥‥フィアナにばれなきゃ良いんだけど‥‥」
 しかし、妹に勝てないので、無理だろう。
 一方、妹の六華は「計画通り」とそのまま忍び足で去っていく。
 胸の周りがスカスカしているわけだが、覚醒した時点でそれは綺麗に収まった。
「‥‥本当ばれないか‥‥心配になってきた」
 不安が募る。

 マイアとアヤカは先に小麦屋の主人に挨拶して戻ってきた。
「うさぎ役の人はどこかニャ?」
「どこだろう‥‥。‥‥か?」
 こそこそしている銀髪の少女を見つけたマイアとアヤカは‥‥二つの面白い反応を見せた。
「まさか、時雨が女装趣味だったニャんて‥‥。面白いニャ」
 結構、いろんな場所で『男の娘』を見ているため、抵抗力があるアヤカに対し、
「時雨どの‥‥。やはり『その気』が‥‥」
 マイアが無意識に知覚の掃除用具から右手でモップを握り、緑色の光玉が一つ舞う。
「こ、これには深いわけが!」
「訳って‥‥? 時雨? あ、マイア、アヤカちゃんおかえりー」
 そこで、フィアナが角からやってきた。化粧を済ませてきたようだ。
「しぐれ? ‥‥まさか‥‥女の子だったなんて‥‥きゅう」
 ショックで気絶。
「「「フィアナー!」」」
「時雨どのー!」
「ぎゃああ!」
 予定を変更できないため、フィアナが目覚める事数時間待ち。そのあと、時雨の覚醒のことや、それをしる妹が悪戯した事で、こってりマイアとホアキンとスタッフから怒られたのであった。

●『ホテルの半熟卵』
 フィアナは、うさぎっぽい生徒を追う。ストリートを通り抜けると、一段と大きなビルが見えた。
 そこで、全長2m弱たまごが、ホテルの塀に腰掛けていた。よく分からない分厚い言語の本を読んでいたが、アリスに
「‥‥どうかしたのかい? 可愛らしいお嬢さん」
「あの、ホテルのほうに、うさぎみたいな高校生さんみましたか?」
 アリスはたまごに尋ねた。
「白兎? 今日は見ていないな」
 たまごは、堀から動こうとしないが、
「落ちるか心配です。たまごさん」
 アリスは不安そうに言う。
「ここはもう、ホテルの敷地内だ。未来志向の学園都市は、ホテルも快適そのものでね。お陰さまで、半熟な私もこうして落ちずにいられる訳さ」
 ホテルの塀でごろごろするが落ちない。
「そうなのですか?!」
 驚くアリスに、たまごはホテルの快適さとサービス、最上階からは、別の夜景が見られると話す。
 かなり話し込んでいたため、たまごはふと気づく。
「時間大丈夫かね?」
「ああ! 探さないと! でも‥‥」
「ではコレを持って行くがいい」
 たまごは、難しい本の一ページから栞にしていた物を差し出した。
「このエイジアの全体地図だ。役に立つだろう」
「ありがとうございます!」
 アリスは、ぺこりとお礼を言って、走っていった。

●没から変更へ
 ライヴハウスを通って中に入ると、ハートの女王様役をするという桜舞の台詞が、問題があったため、
「さすがに、こういったプロモーションには、デスメタル系は無理!」
 スタッフや、ホアキンが言う。
 今回は同人や、有志によるに自主作成映画ではない。れっきとした仕事だ。
「やっぱり『死刑!』はだめ?」
「だね。私の『ハンプティ〜』も原作の性格がきついために変更したぐらいだ」
 ホアキンが理由を言った。
 ライヴ自体に人を入れることも考えると、また費用もかさむため無理がある。
 ヴィンフリートの事も学園内でナンパして玉砕する役をするために、プロモーションの内容から逸脱する行動と判断。内容を差し替える事に。
「えーっと‥‥じゃあ、うさぎについて、さらっと言うぐらい?」
「わたくしのほうも?」
「そうだね」
 そして、学園に人が集中しているために、ライヴハウスのほうで、受付トランプハートのクイーンとバイトトランプスペードの2として変更する事となったわけだ。

●『学園』
『に゛ゃっに゛ゃっに゛ゃっ‥‥』
 奇妙な猫の鳴き声。
「だれ?!」
 アリスが振り向いた崎には、ガードレール。そこに猫耳の女の子が腰掛けていた。
「猫ちゃん!」
「アリスちゃんどうしたにゃ? そんないに急いでどこにいくニャー?」
「コレを落とした兎さんを探して居るんです」
「ニャー」
 すっごい興味がなさそうにひと鳴きした猫娘だが、何か閃いたのか思い出したのか、キラキラと目を輝かせて。
「友達だから、一緒に探してあげるニャ」
「ありがとう!」
「まずは学校だニャ」
「うん」
 アリスが先に進むと、猫娘は悪巧みの笑みを浮かべて、また『に゛ゃっに゛ゃっに゛ゃっ‥‥』と鳴いた。
『あたしは、一寸、からかってあそんでみるにゃ』とカメラ目線からウィンク。

 校門前にスペードのAが立っている。しかし、カードその物に手足が生えているわけではなく(ライヴハウスの方のトランプもだが)。スペードのAの衣装は銃士服だ。腰にレイピアを提げている。
「スペードのAさん、こんにちは」
「ああ、こんにちは、アリス」
 恭しく、礼をして、スペードのAはトランプを名刺代わりに二人に渡した。
「どうか困ったことがあったのかな?」
 と、彼女は訊くと、事情を話した。
「そうか、でも急がなくても大丈夫だよ。もしかすると、この中にいるかもしれないね」
 と、優しく礼儀正しく、彼女は接する。
 内部の委員に話を通すため、連絡を入れた後、「案内をしましょう」と彼女がエスコート。
 エイジアの学園は、創立自体はつい最近になるが、機内にある有志による再建のため。創立者には、有名校の創設者に縁があるとも言われていると言う。そこで、猫娘が茶々を入れては、アリスが驚き、スペードのAが、それは違うと、訂正していく和やかな案内になった(全部堅苦しく案内にすると、眠たくなるのは必至だから)。
 総合的な巨大校にもなるために、専門学科も多く、初等部、中等部、高等部、大学などもそろっていると説明していくのだった。
 学園は活気があるため、あちこちでは部活が盛んに行われている所を見かける。
 そして、委員長的な女子高生とであったのだ。
「Aさん、兎さんを探している人は、この人ですか?」
「はい。では私はコレで」
 スペードのAはお辞儀をして去っていく。
 事情を話すと、兎さんは見かけてないと答えが返ってきて、アリスは困った顔をした。
「見るニャ!」
 猫娘が、指をさす方を見ると、ちょうど校門から兎が逃げていく。
「追いかけましょう!」
「むりしないでくださいね〜」
 女子生徒は、二人を見送ったのであった。

●『ストリートのライヴハウス』
 学園を出てから、別の通りに入る。その通りはライヴハウスがあちこちにあるのだ。学生が自主的に音楽に親しみやすい為、また歌の想いを伝えるために、様々なジャンルに対応したライヴハウスが点在しているのも、エイジアの特徴である。ライヴハウスと言っても、カフェのようなものから、重低音が鳴り響くために防音対策で地下ステージになっている所もある。
 アリスが、走っていく兎をみたときにその一つに入った。
 そこは地下にステージがあるライヴハウスだが、この区画の中心的な場所で第一号店だという。壁の周りに参加したバンドのサインが壁に直書きされている。
「あのおじゃまします」
「なんでしょうか?」
 ハートのクイーンが受付のテーブルを拭いて、スペードの2が会場を掃除している。
「ここは、ライヴハウスです。でも、お昼だから夜からですよ?」
「あ、そうなのですか? じつは‥‥」
 アリスはトランプに兎が来たか尋ねたが、
「たぶんおっちょこちょいの兎だな。でも、こっちには来てないぜ?」
 とスペードの2が答えた。
 その会話の中で、ステージ周辺と、ここの成り立ちをかいつまんで話を進める。テロップに詳細が流れるようになっていた。
「ここからなら、高見台が近いです。たぶん、そこにいるのでは?」
 最後にはそう締めくくった。
「ありがとうございます」
 アリスはお礼をいって、ライヴハウスを去って行った。

●『高見台』
 夕方になっていた。
「疲れちゃった」
 兎を追いかけていくと、いつの間にか高見台の展望台付近まで登っていた。
「綺麗」
 アリスは猫娘と、風景みる。
 一望できるパノラマは、疲れを癒す。
「また会いましたね」
 スペードのAが小麦屋のメイドと一緒にお茶を飲んでいた。
「どうぞゆっくりしてくださいね」
 メイドさんは微笑んで、二人を招いた。
 メイドが高見台や小麦屋の事を説明していく。また茶々を入れる猫娘がいるが、それもまた、訂正されていく。
 話が一段落した後、展望台に人影‥‥いや兎影を見つけた。
「あ、兎さん!」
 アリスは駆け寄って、生徒手帳を渡した。
「ああ! 無くしてしまって、どうしようと‥‥本当にありがとう」
 無事にアリスは、兎に生徒手帳を渡すことが出来たのだ。

●さて、撮影終わって。
 小麦屋で、第一次の打ち上げ。
「ああ、フィアナのアリスは可愛いなぁ」
「色々詰め込むのにはしんどいか? どこかカット出来るか?」
「あたいはねー」
「お久しぶりです」
「げんきにてるか?」
「おかわり!」
「わたくしも!」
 と、賑やかに打ち上げが行われていた。

 高見台から引き上げの時、『誓いの柵』を見て、マイアが思いっきり溜息を吐いていた。
「まだ‥‥居ないからなぁ‥‥でも、興味はあるけど、今は良いし‥‥」
「なにが?」
「わぁ!」
 フィアナが小首をかしげて尋ねてきたら、マイアが思いっきり驚き、真っ赤になってワタワタし始めたのだった。

 このビデオでエイジアに知名度が上がるのか、まだ分からない。