タイトル:【ACE】防衛ラインマスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/20 04:28

●オープニング本文


 シェイド討伐戦が終わったからと言って、ロス全体が平和になったわけではない。
 周辺にはびこるキメラの退治と、ロス市街地によるステアーの破片争奪戦のような、危険が無くなるわけではない。
 忙しさにかまけ、不味くなったコーヒーを飲みながら、様々な書類の山と格闘していく尉官や佐官達が居た。始末書、今後の計画書、市民からの要望の書類の山だ。
 UPCは今では何でも屋でも出来そうである。
「うがああああ! おれは、デスクワークに向いてねえぇっつうのっ!」
 単細胞であるジェームス・ブレスト(gz0047)が叫び、両手で頭を掻きむしった。限界に来たらしい。
「猫を探してくれ、里親募集の要望ってなんだよ!」
 キメラの出現場所の調査書や、ワームの動向調査、【Woi】による市街地破損箇所の復旧の他に、浮気調査やらゴシップ集やら、猫探しとか混ざっているらしい。
「隊長その辺上手いでしょ」
「それは別だっ! あいつらから見つけてくれと言ってやがるんだっ!」
 ブタに猫とか色々懐かれているのか? と思うほどだったが。

「隊長大変です! スクランブル」
「なんだ?」
「橋頭堡から南西10マイル。鯨との交戦! 鯨を撃破した物の、残ワームが、こちらに向かっています。数は100キメラ、2REX−C、20キューブ、2ゴーレムです。武装は‥‥槍に盾の他、特殊能力です」
「鯨を囮の降下作戦かよっ! 俺も出る!」
 橋頭堡全体に緊急サイレンが鳴り響き、傭兵達も急げとLHに呼びかけられた。
「緊急事態だ、傭兵達は、可能な範囲の作戦を練り各自で撃破だ! ただし、軍装置の貸し出しなどは出来ん。以上!」
 情報の共有化は出来るだろうが時間がかかる。

 CWは指揮官機らしいゴーレムと砲撃役のREX−Cを守るように囲んでいるようだ。まず、壁となっているキメラの大軍を蹴散らし(おそらく対KV用で強化されているだろう)、CWを排除してゴーレムに挑む形となるだろう。相手も分かっているため、変則的な行動をとるかもしれない。
 敵の戦術を予測して、撃退もしくは殲滅せよ!

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
ヴァイオン(ga4174
13歳・♂・PN
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
水円・一(gb0495
25歳・♂・EP
クリス・フレイシア(gb2547
22歳・♀・JG
浅川 聖次(gb4658
24歳・♂・DG
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
加賀・忍(gb7519
18歳・♀・AA
アトモス・ラインハルト(gb7934
19歳・♂・SN

●リプレイ本文

 砂煙。機械のモーター音。銃声と砲撃音、爆発にかき消させる叫び声。橋頭堡近くに落下したビック・フィッシュ(鯨)は大小様々な破片をばらまき、キメラなどの小さな生き物は隠れやすくなっていた。もちろん7〜10m程度のゴーレムなども充分に隠れられる。北中央軍が見たワームの一団は、障害を排除せず、隠れながら進んでいる。
 あちこちでも同じような編隊がみられ、遠くからの敵影も見えるそうで、ジェームス・ブレスト(gz0047)は全体指揮に向かわないといけないらしい。
「余り無理するな」
 水円・一(gb0495)が彼に言って、ディスタンに乗る。
「お前もな。挨拶は、このあとだ。こっちが片付ければ、すぐに向かう」
 自分も出撃し、指揮を執るのだがらハードに違いない。
 傭兵達は、前もって知らされている、一団を相手することとなっている。CWで囲まれた橋頭堡撃破を目的としているワームの一隊だ。

 格納庫では様々な出撃の模様を見せている。
「まったく‥‥傷が癒えていないのに」
 ヴァイオン(ga4174)が自分の事で毒吐く。
 無理はしないと言っても、ロスを守る要を破壊されてはならない。勇気を振り絞り、彼はアヌビス『S・Crow(化け鴉の意)』に乗る。
「その体で? それ無謀ってもんだろ」
 アヌビスを担当している整備員がヴァイオンの包帯状態をみて言う。
「しかし、今誰かやらなくちゃいけないんです! 大丈夫‥‥むりはしません」
 彼は戦闘に入るまでは、非覚醒でアヌビスを動かすようだ。ブーストなどはできないが、狙撃位置の確保をする分には差し支えないだろう。
「ロッテで、ゴーレムとRCを叩きますよ。即興レベルですが、段階ごとにフェイズを組んでいきましょう」
「ガッハッハッ。まかせろ!」
 ソード(ga6675)が皆に言う。孫六 兼元(gb5331)が豪快に笑いながら答えた。
 実質1時間もない中で立てた作戦は、ゴーレムとRCの破壊を優先するということだ。可能な限り前面に出ているキメラとCWを叩くことも含まれる。
「全員乗ったか? 再確認するゴーレムは、ソード、アトモス、浅川と俺、REX−Cは鳴神、加賀、孫六、クリス、ヴァイオン。CWとキメラの掃討はAnbar、君にまかせた」
「味方がより良い状態で戦える環境を整える事が支援機の責務だからな」
 Anbar(ga9009)が、水円の作戦確認に大声で答えた。
 浅川 聖次(gb4658)ペンダントを一度握り締めている。
「またジェームスくんと一緒に麦酒を飲みに行きたい物だ。がんばろうか」
 クリス・フレイシア(gb2547)が先の楽しみを考える。猫の里親探しのあとに意気投合したのだ。
「今回は里親探しでは無いのですね‥‥」
 また、ジェームスと、そう言った「里親探し」で縁のある鳴神 伊織(ga0421)もふと思うことを月にする。
「俺も好きで猫を拾うわけじゃねぇよ、伊織。向こうからやってくるんだ」
 近くから、ジェームスがフェニックスのコクピットハッチを開けっ放しで、伊織に言ったのだった。今から出撃のようである。
「あ、そう言う印象がつよくて‥‥」
 伊織にニッコリ微笑みと、苦笑が入り交じる。
「こっちが、あらかた終われば、すぐに向かいからな‥‥!」
 ブーストをかけて、全体式に出撃する、UPC北中央軍エースであった。


 破片や瓦礫をよけながら向かう傭兵達。何かの墓標か、荒れ果てた荒野のいびつなオブジェとして破片が転がっている。もしくは破壊された家屋が爆発しまたあたりを目視しにくい状況下になっている。
「確かにコレは並の市街地線より厄介だな」
 水円が舌打ちする。
「もう、ウーフーのジャミング中和をオーバーしている量の、電波の乱れが‥‥」
 クリスが、電波の悪さを報告した。
「いい狙撃位置を探します」
「僕も俺も探そう」
 ヴァイオンとクリスが周りを調べる。レーダーなどには、あと数マイルで敵機が見える。早く狙撃位置を見ておかないと厄介だ。
「今探しているところ‥‥。敵影は?」
「砂煙でわからない。この辺というのは分かるけど‥‥」
 Anberが報告。
「!?」
 加賀・忍(gb7519)がカメラに写った影とアラート音から、「キメラか!」と機斧「ラヴァーナ」を振り上げその影を叩き斬る。すると、鼠の悲鳴を大きくしたような声と共に、激しい爆発が起こった。同時にソードのシュテルンに張り付こうとするキメラの群を、ソードもアテナイの一つで倒すと、激しい爆発がおこる。どちらもたいした爆発ではないが、機体自体がよろめくほどの衝撃はあった。
「自爆型か?」
「あのキメラは‥‥はぐれか? なにかか? どちらにせよむやみに接近は控えるべきか‥‥」
 定位置を決めて、隠れる。レーダーからは、ある程度編隊は誤差程度らしい陣形で敵は向かってくる。しかし、鯨爆発直後のために、まだ視界がクリアというわけではない。
 状況からするとこちらが不利である。熱源や電磁派でのレーダー探知ではあるが、ワームはそれよりも高性能の『何か』で探知している。重力波のレーダーだ。おそらく向こうは確実にこちらの陣形を知って向かって来るだろう。
 キメラが、蜘蛛の子を散らすように散開していく。
「狙い撃つより、固まっている所にG−44を!」
「いくぜ!」
「はい!」
 G−44を持つKVが一斉に数カ所にむかって放り投げる。大爆発からキメラが誘爆している。
 それでもその爆発から避けたキメラは、KVに張り付こうとしていた。
「こいつら全部?! 自爆タイプか!」
 浅川、アトモス・ラインハルト(gb7934)がキメラを引き離す。機銃をもつKVが寄せ付けないよう撃つのだが、異様にすばしっこい。大型になれば動きが鈍る。まるで、ゴキブリや蝿をたたき落とす為に追いかけ回すような気持ちになる。
 そこから、砂煙を衝撃で払いのける2つ光の帯が、KVに張り付いたキメラごと焼き払おうとする。
「おいおい、まさか!」
 プロトン砲を浴びたキメラは、そのまま爆発して更に土煙やクレーターを作った。あらゆる所での爆発が、傭兵達を苦しめていた。キメラは壁ではなく、起爆の駒の一種のようなのだ。
「なんて荒っぽい攻撃‥‥なのでしょう‥‥」
 殺気を帯びて伊織が言う。
 着物が操縦レバーに引っかかるような不快感もあり、余り慣れない彼女は、咳き込んだ。彼女のシュテルンがもつハイ・ディフェンダーを盾代わりにいてキメラの爆発を受け止めていたが、プロトン砲自体のダメージを防ぎきることはできなかった。

 そして、RCやゴーレムは、CWを周りに浮かせながら、瓦礫に隠れる。ちょうどプロトン砲の跡が生と死を分ける道に見える。
「奴さん、別の所に隠れて、そこから撃つようだな」
「そうはさせない。クリス!」
「ああ、分かっている。右に向こうもロッテで組んでいる。‥‥ん? 左が動いた!」
 ヴァイオンとクリスが、データリンクから大凡の位置をつかむ、CWのジャミングで読み込みは難しい、しかし相手の行動は比較的読みやすい。おそらくソードがファランクス・アテナイという自動重機を使ったから、向こうはそれの弾幕を避けているのだろう。
 CWの影を見ては、スナイパーライフルRを放つヴァイオン。Anberも試作型「スラスターライフル」で、CWを狙う。しかし、頭痛などが激しく、上手くロックオンできないため、牽制ぐらいしかできなかった。兼元やアトモスが先を進もうとすると、ゴーレムがショルダーキャノンの砲撃の他に、シールドに隠し持っているガトリングの牽制射撃や、『なにもない』ところから、『火の玉』を作り出し、それを投げてぶつけて来る。水円のヘビガトを盾で防いで、また隠れるゴーレム。お互いが瓦礫に隠れるか退くという状態になっていた。距離にして大凡70mをお互い詰められないでいる。
 クリスは、すでに的がロングレンジライフルの射程より内側に入り過ぎていると分かっているため、レーダーでの索敵ナビの役を徹底している。他に銃器を備えたKVを持つ能力者が、隠れては撃ち、50mまでは、迫ることができた。
「RCの様子‥‥みんなよけて! ‥‥回避!」
 クリスが叫び、皆が伏せる。
 再び大きな、光の帯があたりを蹂躙し、灰にしていく。そして、橋頭堡ぎりぎりにあった障害物を蒸発させた。もうプロトン砲の射程距離にはいっているのだ。一歩も退くことは許されない!
「ならブーストで迫るのみ! 無茶するぞ、兄弟!」
 砲撃の隙を突いて兼元が突撃!
 ソードのシュテルンがダブルリボルバーを撃ち、アテナイを撃ち続ける弾幕の中、アトモスがゴーレムに向かってシールドスピアを突き刺すため突進する。ほぼおなじように、水円が牽制でヘビガトを撃ち、浅川が突撃した。
 お互い盾などで受け止めて、激しい突き合いになる。周りに浮かぶ、CWからでる激しい怪電波による頭痛に耐えながら、戦っていた。しかし、狙撃に回っている仲間達が確実に1機ずつ倒してくため、徐々に思考がクリアになる。
 ソードと浅川が担当しているゴーレムは、浅川を蹴り飛ばし、ソードに向かっていった。
「な!」
 恐ろしいパワーで吹き飛ばされる浅川のディアブロ。しかし、幸いコクピットではなく、胸のあたりが凹んでいる。
「く、そんなに俺が厄介ですか? いいでしょう」
 本来なら、射程内に入りたくはなかったのだが、事は事。ソードは覚悟を決める。雪村を持って、敵より早く懐に入り、必殺技を見舞おうと突撃する、僅差で敵の方が速かった。
 シュテルンの右肩がゴーレムの槍が突き刺さり、カートリッジ音とともに一気に爆発し、シュテルンの右腕が吹き飛ばされた。
「!?」
 その衝撃で、大きな隙ができたため、もう一撃を腹に喰らい、大きな爆発と衝撃を味わった。しかし、意識が途切れる前に、アテナイの弾幕を一気に起動しゴーレムを後退させる。雪村は、ゴーレムの右肩まで切り裂いていたが、エネルギー源無くしてその場に落ちた。

 伊織と加賀のロッテは、RCをうまく挟撃に追い込む。しかし、KVになれてない二人のKVは、ソード達に比べると、ぎこちないところはある。更に伊織は、強化に色々使っても、自分自身のKV操縦のポテンシャルが追いついていないために、強化に見合った動きを見せてない。しかし、相手は指揮をするゴーレムから切り離されたため、ほぼ本能で爪や牙で攻撃する。
「はぁ!」
 雷電がブレードウィングでタックルする。よろけるレックスにハイ・ディフェンダーを持ったシュテルンが、上段の構えになって、恐竜の首を斬り落とした。オイルなのか血なのか分からない液体が噴出し、RCは爆発する。

 同じく、兼元は、ヴァイオンと援護射撃と、クリスのデータリンク補佐で上手く懐に潜り、月光、大般若長兼の二刀流でミカガミが爆ぜる。
「喰らえぃ! KV抜刀・斬奸!」
 大般若長兼で斬りつけた後に、内臓雪村と近接マニューバーの併用した豪快な攻撃をし、恐竜がそのままゼロ距離プロトン砲の射出に入った! しかし同時に月光がREX−Cを仕留める。
「うおおおお! これぞ、KV抜刀・双極――っ! どわあああ!」
 爆発とプロトン砲の衝撃で、銀色の鬼は10mぐらい吹き飛ばされる。が、彼は見事に踏ん張って着地した。その姿は後ろから見ているヴァイオンとクリスからすると、鬼の姿に見えたのだった。

「っ! その隙、逃しはせん」
 水円のディスタンとアトモスが連携して、ゴーレムを何とか沈黙させる。二機とも、ワーム版ロンゴミニアトの攻撃で穴だらけになっているが、無理に変形やブーストしないかぎり、なんとか動く。急いでソードのシュテルンを大破近く追いやったゴーレムにむかうのだが、ゴーレムは別の方向を見て全速力で逃げるようだ。
「にがすか!」
『深追いはするな! 先に残ったCWと負傷者の応急手当だ!』
 熱くなってしまっている浅川に、ジェームスの通信が入った。
 
 しかしまだ頭痛が酷い。Anberだけで半数のCWを狙うのは骨が折れる。
「く、まだ痛い」
「待たせたな!」
 ジェームスが率いる隊が、増援に来てくれたのだった。
「ジェームス! おそい!」
「すまねぇ。色々手ここずってな!」
 
「残っているCWの殲滅にかかるぜ。クリス、伊織。ソードとヴァイオンを撤退の補助をやってくれ」
「分かりました」
「わかったよー」
「おわりました、‥‥か?」
 ヴァイオンは、状況を把握した後に覚醒を解くと、一気に熱が出て、気を失った。さすがに重体で、高改造機を動かすには無理があったようだ。


 今回の攻撃で、橋頭堡の一部が破損したが、すぐにでも修理できる程でリッジウェイ中隊が、また動き始めている。ロス自体に壊滅的被害は無かったようである。
 落とした武器や壊れたかもしれない兵装を回収後、チェックすると修理可能らしい。ただ、ソードとヴァイオンの方はしばらく入院生活をしなくていけない。そして、かなり強化している機体に乗っている能力者も体の疲弊度は並ではなかった。
「あ、疲れているなら別にいいが、一段落付いたら飲みにいかないか? ジェームス君」
 クリスがジェームスを誘う。
「あー、まだ仕事が山積みなんだよな‥‥。この後不味いコーヒー飲みながら、文書処理だぜ?」
 ジェームスは、デスクワークをするのが嫌な顔をしている。彼もかなり強化をしている機体に乗っているため、疲労の顔が見て取れるが、軍人という矜持か使命なのか、気合いで踏ん張っているようである。