●リプレイ本文
●バザー開始前日
ソウジ・グンベ(gz0017)は、参加者が持ってきたバザー提供品をひとつずつ、じっくりとチェック。
「誰だよ、20mmバルカン砲を持ってきたのは‥‥」
出品者はジェームス・ハーグマン(
gb2077)。
知り合いがいらないと送ってきたものをバザーに出品したようだが、危険物は没収!
次は、ブックカバー、ペンケース、巾着袋など学園生活で使えるような布製品。柄は低年齢層から高学年層までを意識し、それぞれに見合うものに。
「保護者が、子供に買って与えたいと思う品を作りたいという心がこもっているな。ん? 出品者はあいつか」
出品者のリュイン・カミーユ(
ga3871)は料理は苦手だが、裁縫の腕はかなりのものと見た。
次はプレゼントソックス。クリスマスなので、これは売れれば子供に活用してもらえるかもしれない。他には手描きの風景画、手作り絵葉書に各種カード類が出品。
出品者は、絵を描くのが趣味のラルス・フェルセン(
ga5133)。
「ラルスは、あいつと面識があったからな。参加してくれてありがたいぜ」
ソウジが言う『あいつ』とは、ブロークン・クラッシャーと呼ばれる傭兵のことだ。
次は、季節外れのキャミソール白と紫2着ずつと、センスが外れた靴下類数点。キャミソールは、ご丁寧にクリーニングしてある。
出品者は百地・悠季(
ga8270)。
次は、呼笛、クレヨンやクーピー等で描いた手製のハガキサイズ以上の静物画、風景画、適当な石を花や動物を彫って作った手作りの文鎮の数々。
出品者は番 朝(
ga7743)。
「へぇ、器用なもんだ」
ソウジは文鎮をひとつ手にし、いい出来たと感心。
朝の隣の出品物は、折り紙で作製したくす玉の飾りや置物、多種多様の水彩画、駒、面子、竹馬といった昔懐かしの玩具。
出品者は夜坂桜(
ga7674)。
「ノスタルジーなカンジなものもいいな。高年層に売れそうだ」
桜の出品物を見て、嬉しそうに微笑むソウジ。
次は、着物の生地のリサイクルしてそれを利用して縫ったクマのぬいぐるみ数点。
出品者は櫻杜・眞耶(
ga8467)。
着物の柄は派手でなく、地味でないものを使用しているのは彼女なりの細かい気遣いだろう。
次は、価値がありそうなアンティークに年代物のティーカップセット、これまた年代物のビスクドール(金髪碧眼真紅のドレス1体、銀髪赤眼黒のドレス1体)、年代物の懐中時計と高価そうなものが。
出品者は美環 響(
gb2863)。
最後は古本の数々。
絵本、漫画(少年誌から青年誌まで様々だが、成人向けはない)、小説、専門書等多数と駄菓子。本は中身が見られるようにしているので、内容が気に入ってもらえれば買ってもらうということにしたのだろう。
出品者は、フリーターで様々なバイトをこなした羽鳥・明(
gb3843)。
「ジェームス以外は全員出品OK‥‥と」
バザー出品物をすべてチェックを終えたソウジは、出品物が仕舞いこんである部屋のドアを閉じ、鍵をかけた。
●バザー開始数時間前
「聴講生の羽鳥・明だよ、よろしくね。孤児院に寄付するためのバザー開催って聞いたから参加したんだ。困っている人は放っておけない性分でさ。俺にできることはあんまりないけど、できるだけのことはするよ。皆、一緒に頑張ろうね!」
営業スマイルの練習だよ、と言って、ニッコリ笑って挨拶する明。
「フフッ、僕の話術と容姿で、今回のバザーという名の戦場を勝利へと導きましょう」
美少年に見えるよう多少メイクをし、良いところのお坊ちゃんに見える服装でやって来た響。
「バザーなんて気が利くじゃない。どうしたの? こういう時に民間に還元してこそ、
存在価値があるのよね。だから、あたしが参加しない手はないわね」
荷物をひっくり返して提供品探しまくったわ、と苦笑する悠季。
「ブロークン・クラッシャーことブライアン君の孤児院のためでしたら、いくらでもご協力致しますよ。『協力を求めみてはどうでしょう?』と言い出したのは私なのですから。今回の発案はグンベ中尉ですが、ブライアン君に協力することにh変わりありませんからね。喜んでお手伝いします」
他の孤児院のお手伝いが出来ることも嬉しいし、孤児院は、孤児達にとっても『家』でもある。家族思いのラルスは、一番大切にな思い出にしようと微笑した。
「チャリティバザーとは、殊勝なことだ。ソウジの企画というのであれば‥‥まぁ、その、何だ‥‥顔見がてら、参加するのも良いかな‥‥」
やると決めたからにはキッチリとが信念のリュインは、是非とも成功させて、孤児院に寄付出来るようにしようと人一倍燃えた。
「私は出品は当日になっちゃったけど、皆に負けないよう頑張るからね!」
斑鳩・眩(
ga1433)は大張り切り。
●バザー開幕
晴天の下、暖かい太陽の光が差す中でチャリティバザーが行われた。
学園入り口でバザー開催のチラシを配っているのは、笑顔で愛想良く、ついでに威勢良く、活気良くバザーの説明をしながら学園祭に訪れた客に足を運んでみたくなるように製品についての説明を丁寧に行っているのは、女性らしいスカート姿のリュイン。
(「猫を被って接客してやる。惚れ直せ、ソウジ」)
ソウジに見て欲しいというのもあるが、説明は親切かつ、丁寧、笑顔で対応。
ラルスは、ヒエダ貸衣装店で借りた執事服に着替えると、休憩コーナーの設置にとりかかった。
「提供する飲み物は緑茶、紅茶、ぶどうジュースでいいでしょう。お茶と名のつくものは、私が腕によりをかけて淹れさせていただきましょう」
紅茶の本場イギリスや、日本の老人達に認められるかどうかはラルス次第。
お茶を淹れるのが上手な彼なら、きっと喜んでもらえるだろう。
「あんたも執事服なのね? あたしもヒエダ貸衣装店から借りてきたの。手伝いに来たわ」
「ありがとうございます、助かります」
「学園祭が始まったら、ここもそれなりに忙しくなりそうね。飲み物だけど、紅茶、緑茶、烏龍茶を取り揃えてみたわ」
準備をしながら、子供の応対は目線を同じ高さにしたりとか、応対は片膝をついたりすると、ホストクラブもようになっちゃいますかねぇ? と苦笑するラルスに「そのくらいのサービスは当然よね」とウィンクして答える悠季。
2人が頑張ったおかげで、休憩コーナー完成!
完成したところに、朝が水筒の中に入れたホットココアとコーンクリームスープを差し入れた。
「ありがとうございます。これも使わせていただきますね? 朝さんは、何をするんですか?」
「おれ? オウとこうたいしながら、まいごのあいてときゅうけいコーナーのてつだいをするぞ」
桜のほうを見て、迷子を宥めるために用意して紐引きを見た。
「そのまえに、あれをかんせいさせないとな」
紐引きの仕組みは、ダンボールの板に紐を通し、その下の段は数種類の動物が描かれた布が被せられている。その下に更にダンボールの板を敷き、その下に紐をくくりつけた景品がある。
「なかなか良いですね。迷子の子供が泣き止み、楽しむのではないでしょうか?」
「あたしもそう思うな」
ラルスと悠季に褒められ「てれるぞ‥‥」と顔を赤らめる朝。
仕掛けは、上の紐を引けば下の景品のどれかが落ちるというもので、景品は、四季の花、多種の動物の描かれた王冠バッジ各1つ、竹とんぼ、ケン玉、シャボン玉等が箱に入っている。
「私は主に、迷子を宥めることですね。迷子コーナーでは保父さんばりの活躍をするかも店‥‥しれません」
迷子を宥めたり、話を聞いたり、持ってきた玩具で遊んだり、紐引きで遊んだり、手品や自作の紙芝居もしてみよう、子供相手に遊べるものをいろいろ持ってきた桜は、良い保育士になれるかもしれない。
●屋外バザー
屋外で提供品を売る参加者達は、レジャーシートを敷き広げ、その上で丁寧に売り物を並べた。
一番良い場所をとっているのは、多くの古本を出品した明だった。
中身が見られるように、本は袋とじや紐で閉じていない。本の内容が気に入れば勝ってくれるだろうという楽観的思考もあるが。
興味を示したカンパネラ学園の生徒数人が、明の販売スペースにやって来た。
「いらっしゃい。遠慮なく手にとって読んでみてよ。気に入ったのがあったら買っていってね。値切りは要相談だけどね?」
生徒の1人は、最近発売された恋愛小説を、残る2人は『今日のおいしいおかず』、『イケメン’S写真集』を購入。
「毎度あり。恋愛小説は300C、おかず本は100C、写真集は500Cだよ。駄菓子はどう? どれでも10Cだよ」
それも買います! と女子生徒3人達はお目当ての本と駄菓子を購入。
「あんまし客が来ないねぇ‥‥。売り物の本でも読もうっと」
そうすること数10分、朝がやって来た。
「朝さん‥‥だったよね? いらっしゃい。ゆっくり見ていってね」
「ちしきになりそうなしりょうぼん、なにかないか?」
そう問われたので、機械百科事典と動物百科事典の2冊を朝に差し出した明。
「女の子だから、植物図鑑か花言葉集がいいかな?」
「それじゃあ、しょくぶつずかんのほうをもらうな」
そう言うと、明に100C手渡した。
購入後、やらなきゃいけないことがあると走って明の出品ペースを後にした朝。
ありがと〜! と手を振り、朝を見送る明のもとに新たな客がやって来た。
眩は出展物『サンタ靴』をかけ、チャリティー腕相撲大会を開催していた。
「私と勝負してくれる人募集中! 参加費100C、私に買ったら1000C贈呈!」
ルールはレギュレーションを決め、ちゃんとした勝負としたが戦術は自由。
「姉ちゃん、俺が挑戦するぜ!」
腕っぷしの強そうな男が、眩に挑戦を申し込んだが‥‥能力者である彼女に敵うわけがない。
「毎度ありぃ! また挑戦する?」
勝てないと判断した男は、再戦を辞退。
その後も何名か彼女に挑戦したが、誰一人として勝てず。
「ボクも挑戦していい?」
最後の挑戦者は、6歳前後の少年だった。子供なので、半額の50Cにおまけ。
(「子供相手に本気出しちゃ大人げないから、ここは‥‥」)
考え事をしているうちに、眩の腕がバタンと倒された。
「負けたよ。はい、賞金1000Cと商品の『サンタ靴』だよ」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
お礼を言った少年は、母親に手を引かれて他の場所に向かった。
「ま、いっか‥‥。悠季はどうしてるかねぇ?」
眩から少し離れた場所では、眞耶が出店中。
舞妓時代に着ていた着物の生地のリサイクルして縫い作ったクマのぬいぐるみ。
着物生地でできているということもあり、お年寄りの客も何人か集まっていた。
「これ、孫の土産にしたいんだけどいいかね?」
「はい。お孫はん、喜んでくれるといいですね」
そう言って、丁寧にラッピングして購入した老人に手渡した。
残りのクマも、順調に売れたのであっという間に完売。
「さて、休憩コーナーのお手伝いにいきましょうか」
店じまいをした眞耶は、急いで休憩コーナーに向かった。
そこから少し離れた場所で、響はマジックショーを開催中。
出品物を売るだけでなく、孤児院のスポンサー探しというのも参加動機であった。
響は自前のステージに上がり、その下には出品物が綺麗に並べられている。
「只今より、マジックショーを開催します、そこのおじ様、お姉様、見てください!」
マジックショーを開催したのは、趣味の奇術を活かすためである。
ハンカチを取り出したり、シルクハットから花や鳩を出したり、手をぎゅっと握ってバラの花一輪を出すと、近くにいた女性客に手渡した。
「バラのような可憐なお姉さんに、とてもお似合いですよ」
お世辞がお上手ね、と気を良くした女性客は、年代物のティーカップセットを購入。
「ありがとうございます」
紳士らしくお辞儀する響。
彼のマジックに感心した客達は、残りの商品を買い求めた。
年代物の懐中時計は紳士という身なりの老人が、ビスク・ドール2体は双子のお嬢様が購入。
「皆様、ありがとうございます」
響が感謝の気持ちを込めて礼儀正しくお辞儀した後、懐中時計を購入した老人に声をかけられた。
「このバザーは、何が主旨なのかね?」
同情をひくように、響は孤児院の現状を話した。
「そうだったのか‥‥。わずかではあるが、わしにも孤児院救済の手伝いをさせてもらいないだろうか?」
そういうと、老人は名刺を手渡した。名刺には、とある大企業の名前が。
(「この人、ここの会長さん!?」)
「どうだろうか?」
「あ、ありがとうございます! 学園側には、僕が交渉しますので返事をお待ち願えますか?」
ゆっくり待っているよと笑顔で言うと、老人は去っていった。
入り口から少し離れたところで、チラシ配りの衣装のまま、リュインは出品物を販売していた。
「うちの子、来年小学生になるの。手提げカバンとペンケースをいただけないかしら? 男の子だから、ヒーロー柄のものをいただくわね」
「あ、ありがとう‥‥」
早速売れるとは思わなかったリュインは、ちょっとビックリ。
その後、子供に使わせたいというお母様方が次々とご来店したためリュインは大忙し。
●休憩コーナー
支度を終えた眞耶は、自宅で作ってきた柚子ピールと柚子の絞り汁を入れて作った柚子のシフォンケーキ、ライチを細かく刻んで入れたジャスミンティーのシフォンケーキもホールごと提供。
「いいんですか? ありがとうございます〜」
笑顔で喜ぶラルスに、余ったら皆さんでいただきましょうと切りそろえる眞耶。
「注文お願ーい!」
「すぐ行きます〜」
ラルスが慌てて注文を聞きに行くと、テーブルには両親と小さな娘が座っていた。
「いらっしゃいませ。お嬢様、ご注文は何になさいますか?」
子供への応対は、目線を同じ高さにしてというのがラルスなりの礼儀である。
「んと‥‥ホットココア!」
「かしこまりました。のんびりとご休憩ください」
両親はコーヒーを注文したので、メモを取って休憩コーナー裏に向かうラルス。
悠季も注文を聞いたり、飲み物を入れたカップを運んだりと大忙しのご様子。
メニューを手渡すと、注文する客には愛想良く笑顔で対応。
「あの‥‥お勧め品ってありますか?」
カップルがメニューを何にするか迷っているようなので、悠季は「シフォンケーキセットはいかがでしょう? シフォンケーキは。柚子シフォンケーキ、ジャスミンティーシフォンケーキのどちらかを選んでいただくことになりますが」
カップルはコーヒーとレモンティ、両方のシフォンケーキを注文した。
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
手伝いに来た朝も「いらっしゃいませ」と元気良く、無邪気な笑みを振りまいて接客中。
「のみものとかいろいろあるぞ。よかったらちゅうもんをどうぞ」
にぱっと笑い、注文を聞く。屈託の無い朝を可愛い、と思ったカンパネラ学園の女子生徒2人は、ホットココアを注文。
「ありがとう、おまちくださいませな」
休憩コーナーの裏側では、飲み物を注いだり、軽食の用意とシフォンケーキを切り揃えたりと大磯箸の割烹着姿の眞耶が奮闘中。
「烏龍茶とコーラ追加ー!」
「はーい!」
予想以上に忙しさに、てんてこ舞いのラルス、悠季、眞耶、朝だった。
●迷子センター
カンパネラ学園の規模は大きいので、親と一緒に来た子供がはぐれてしまいここに預けられることも。
出品物を没収され、売り物が何も無いジェームスは、ソウジから迷子センターの仕事に就くよう命じられた。
その理由は、危険物を出品した罰であるのは言うまでもない。
『迷子のお知らせを致します。10歳のクレアちゃんという女のお子様を迷子センターでお預かりしております。保護者の方は、至急迷子センターテント前までお越しください』
私には、こういう仕事は向いていない気がするんですけどね‥‥とぼやきつつも、アナウンスをこなすジェームスだった。その隣には、ホットココアを飲みながら大人しくしているクレア少女がいる。
次は伊藤さんの呼び出しか‥‥と溜息をつくと、成人男性が至急相方を呼び出してくれと要求した。
「迷われたお客様のお名前と、あなたのお名前をお聞か願えますか?」
そう聞くと、男性は『俺』、相手は『貴』で通じる! とキッパリ。
(「随分とふざけた名前ですね。それで通じるなら、そうしましょうか」)
ジェームスは悩んだ末、言い出した本人がそれで通じると言ってきかないのでその通りにアナウンス。
『日本からお越しの『貴』様、お連れ様の『俺』様がお待ちでございます。至急、迷子センターテント前までお越しください』
これで本当に大きな迷子が来るんでしょうか?
迷子の相手は桜が担当。
迷子を宥めさせるには遊ばせるのが一番! ということで、作成した紐引きをさせることに。
「紐引きをやってみませんか? 紐を引っ張れば、何か良いものがあたるかもしれませんよ?」
ぐずっている少年が紐引きを始めたところ、景品はライオンが描かれた王冠バッジ。
王冠バッジに絵を描いたのは桜だった。
「わぁい、ライオンさんだー!」
喜んでくれて良かった‥‥と、嬉しくなる桜。
迷子達は次々に紐引きを始めると、四季の花が描かれた王冠バッジ、動物が描かれた王冠バッジ、竹とんぼ、ケン玉、シャボン玉セット等をもらえたことで大喜び。
子供達は、親が迎えに来るまで景品を嬉しそうに見ていたり、遊んだりしていた。
(「朝さんと一緒に、作った甲斐がありました」)
自然と笑顔になる桜は、まだ残っている子供達に自作の紙芝居を披露。
子供達は、ワクワクしながら続きを楽しみにしていた。
●交代の時間
休憩コーナー担当者と、迷子センター担当者が入れ替わる時間が来た。
入れ替わりといっても、眞耶とアナウンス担当のジェームスは仕事を続行。
ラルスは、休憩コーナーの一角に出品スペースを設けた。
「スペースと人手は、無駄なく使いたいものです」
提供品はプレゼントソックスと、彼直筆の風景画の手作り絵ハガキ、各種カード類。
絵を描くのは趣味というだけあり、とても上手である。
「すみません、絵ハガキ見せてもらえますか?」
「どうぞ〜」
客は一枚一枚良く見た後、紅葉が描かれた絵ハガキと湖が描かれた絵ハガキを購入。
「ありがとうございます」
ニッコリ微笑みながら、丁寧にお辞儀するラルス。
プレゼントソックスは「子供のプレゼントにしたい」という父親が購入し、絵ハガキ、カードも徐々に売れ始めた。
感謝の心を忘れず、出品物を購入し客に「ありがとうございました」と満面の笑みで見送るラルスだった。
迷子センターでは、朝が迷子達に自己紹介。
「おれ、つがいあした、っていうんだ。きみ、なまえはなんていうんだ?」
「マコト‥‥」
泣きながら、マコト少年は自分の名前を言った。
「マコトか。おとうさんかおかあさんがおむかえにくるまで、おれがあそぶから。だから、なきやんでな?」
マコト少年以外の迷子を集めて、朝は子供達と桜が持ってきた玩具で一緒に遊んだ。
朝が竹とんぼを飛ばすと、自分達も飛ばしたい! と希望する子供がいたので飛ばし方を丁寧に教えた。
最初に飛ばした子供は、高く飛んだので大喜び。
女の子達は、シャボン玉を飛ばして遊んでいる。
今の子供達はゲーム世代だが、古き良き遊び道具もまだ捨てたものではない。
もう1人。迷子の世話をしている参加者がいた。
「迷子には飲み物与えて宥めつつ、自分が誰で、親がどんな服装か聞き出せばいいのよね?」
子供の扱いに、あれこれと考えている悠季のもとに「おしっこ!」と言い出した4歳くらいの少年が側にきた。
漏らされては大変! と、悠季は少年を抱えてトイレにダッシュ!
●日が暮れて‥‥
カンパネラ学園祭は、滞りなく終了した。
参加者達は、出品コーナー、の後片付け、売れ残り商品の回収、休憩コーナー、迷子センターの後片付けを始めた。
他の出店や教室も、後片付けを始めていた。
終了後、食堂で打ち上げが行われた。
飲み物はラルス、悠季が持ってきたもの、デザートが眞耶お手製のシフォンケーキと明持参の駄菓子各種。
「皆、お疲れ。バザーは大成功だったようだな。迷子センターに子供を引き取りに行った親から、お兄ちゃん、お姉ちゃん達と楽しく遊んだことを喜んでいたという意見が多く寄せられた。休憩コーナーは、対応が丁寧という評価だったぞ。出品コーナーは、売れ残りもあったようだがほぼ完売といっていいだろう。売り上げ金は、後日発表となる」
本当にご苦労! と参加者全員を労った後、ソウジが乾杯の音頭を取った。
「成功してよかったわね!」
「ああ!」
眩とハイタッチし、喜びを分かち合う悠季。
「ん〜このケーキ美味しい〜♪」
柚子シフォンケーキを味わいながら、満足そうな笑みを浮かべる明。
「喜んでもらえて何よりです。後は、売り上げ金がどの程度集まり、どれだけブライアン君に貢献できるかですね」
紅茶を一口飲んだ後、孤児院のことが気になる言うラルス。
「ソウジはん、これ、孤児院の子供達に渡してくれませんか?」
眞耶が差し出したのは、売れ残ったシフォンケーキとキャラメル味のシフォンケーキだった。
「ああ、早めに届けるよ」
「ありがとうございます」
「私が用意した玩具も少しか残りましたので、孤児院に寄付します」
桜は、箱に詰められた玩具類をソウジに手渡した。
「リュイン、チラシ配りご苦労さん。今回の功労者はキミだ。キミのおかげで、大勢の客がバザーに来たんだ」
「そ、そうか‥‥。汝にそう言われると照れるではないか!」
今回の功労者であるリュインに、盛大な拍手を送る参加者達。
後日、バザーの売り上げ金が公表された。
それを聞いた参加者達は、達成感に大喜びし、自分達がしたことが貢献できて良かったと思った。
売り上げ金のすべては、北米某所にあるブロークン・クラッシャーが育った孤児院に寄付され、その他の団体、某大企業からも寄せられた。
匿名の寄付金の送り主は響に名刺を手渡したあの老人であるが、それをソウジに報告するのをすっかり忘れていたのだった。
これに驚いたブロークン・クラッシャーの連絡により、ソウジはその一件を初めて知り「何で俺に報告しなかった!」と、呼び出した響に大目玉を食らわせた‥‥ものの、学園側から監督不行き届きと注意され、始末書を書くハメになった。
何はともあれ、孤児院に貢献することができたので結果オーライである。