●リプレイ本文
●キメラ1日研究員達
申 永一(gz0058)の呼びかけに応じ、1日キメラ研究員に志願したのは6名。
「戦うべき相手であるキメラのことを知ることは良いかもしれませんね。申さん、今日はよろしくお願いします」
小説家志望ということもあり、観察力は人一倍ありそうな羽鳥・建(
ga5091)。
「永一兄はん、今回も宜しくお願いします」
前回に引き続いて参加した櫻杜・眞耶(
ga8467)。
「ここに来たからには、何か調べないとな」
参加動機は不明だが、やる気が窺える紅月・焔(
gb1386)。
「キメラ研究員に志願したのはいいんだけど‥‥風邪ひいちゃった‥‥っしゅ!」
マスクをし、時折ポケットティッシュを取り出しては後ろ向きで鼻をかむ高岡・みなと(
gb2800)。
「みなと君、そのような体調で研究ができるのか? 無理だけはしないでくれ」
永一がみなとの体調を心配する。
「は〜い‥‥」
微笑のポーカーフェイス、優雅で気品がある仕草で研究室に入ってきたが、前回の化け狐キメラとの変身リベンジを果たすべく心の中では燃えている美環 響(
gb2863)も眞耶同様、前回に引き続いての参加者だ。
貴族風の衣装の上に白衣を着用し、伊達眼鏡をかけた響はかたちから入るタイプにようで。
「うまく調査できるだろうか‥‥心配です‥‥」
緊張気味の天宮(
gb4665)は、長い髪で顔が隠れていて表情が窺えない。
「これで全員揃ったな。これから、白衣、手袋、実験に必要なもの、レポートを渡すので各自研究してくれ。わからないことがあったら、俺に聞いてくれ」
永一の挨拶終了後、白衣を着用し、必要なものを受け取った後、各自、お目当てのキメラのもとに向かった。
●紅月・焔の研究
焔が研究対象に決めたのは、女性型キメラだった。
女性型と一口に言うが、美女タイプから醜女まで様々である。
「調べるなら、美女がいいに決まっている」
とりあえず何を調べるか檻を見回った結果、ラミアタイプの美女キメラを研究することに。
「ラミアってことは‥‥蛇だよな。ネズミとかカエルを生きたまま食うのか?」
下半身が蛇だからと言ってそれらが好物とは限らないが、試しに与えてみるかということで永一に頼み、生きたカエルを用意してもらった。
ピンセットでカエルの脚を摘み、ラミアキメラの前に差し出したが‥‥プイッとそっぽを向かれた。どうやら、お好みの餌ではなかったようで。
「こいつ、何を食べるんだ?」
生餌が駄目なら、普通の食い物でも与えてみるかとリンゴを与えて見たところ、これは食べ始めた‥‥というが丸飲みだった。
『美人な女性キメラがいたのはいいが、一口で餌を食べる姿には幻滅した。キメラに上品さを要求するのは無理か。美女タイプが全部こうでないと願いたい。 紅月・焔』
●天宮の研究
彼が選んだキメラは、体調50センチほどの『燐光蟲』という特定の条件下で発光するキメラだった。
「まず、どのような条件で発光するか調査しましょう」
研究室を明るくしたり、暗くしたりして燐光蟲が光るパターンを調査したところ、明るい場所ではカメレオンの如く姿が見えず、薄暗い場所ではうっすらと姿を現し、暗い場所では蛍の光跡のような動きが見られた。
「複数パターンによる、姿の見え方が違うのですね」
更に研究した結果、研究室の電灯を消したり点けたりしたところ、燐光蟲がそれにあわせるかのように点滅するのがわかった。
発光現象だが、近くにいた小型キメラには何かしらの影響を及ぼすことはないことが判明した。
『私が研究したのは『燐光蟲』という虫キメラでした。蛍のようなカンジで光るのかと思いましたが、想像していたものと少し違っていたようです。予想外の結果になるのも研究の面白さだと思いました 天宮』
●高岡・みなとの研究
風邪ひきさんであるみなとの研究テーマは『キメラに風邪をうつすことができるか』だった。
まず風邪を移そうと試みたのは、全長20センチほどの小さな妖精タイプキメラ。
虫篭に入れられているので、逃がさないようにそっと蓋を開けてせき、くしゃみを連発したが、キメラが唾を弾いているのが見えた。
キメラにフォース・フィールドが張られているのは知っていたが、弾かれるとは思わなかったみなと。
「唾は弾かれたけど、風邪ひくよね‥‥多分‥‥」
ポケットティッシュで鼻をかみ終えると、次のキメラに風邪をうつしてみることにした。
「カッパキメラかぁ。水の中に棲んでいるんだから、風邪はひかないだろうなぁ。やめよう」
キメラは風邪をひくのか研究だが、ひきそうもないことがわかったので断念。
そんな彼女には、もうひとつ研究してみたいことがあった。
「猫型キメラは、マタタビに酔うかどうかってのに変えよう。キメラでも猫だもん、酔うよね?」
まずは、仔猫くらいの大きさの猫又キメラに実験。猫又キメラはマタタビの木の匂いを嗅ぐと齧りはじめ、しばらくすると腹を見せ、ゴロゴロしはじめた」
(「キメラでも、マタタビは弱点なんだ」)
それに調子良くしたのか、次は猛獣キメラの檻に向かい、トラ型キメラ、ライオン型キメラにも同様のことをしたが‥‥これらには、マタタビの効果は無かった。
「な、何でっ!?」
みなとが驚いていたところに通りがかった永一は「マタタビに弱い猫タイプのキメラは、キメラとしては不完全だ」としれっと言った。
「そ、そうなんだ‥‥。もっと実験したいけど、風邪悪化させたくないからボク、帰るね‥‥。ごめんね、申さん‥‥」
帰る前に、律儀にレポートを作成するみなと。
『キメラに風邪をうつそうとしたのは、完全に失敗したかも。フォース・フィールドを張られてるのすっかり忘れてたよ。マタタビはネコ科キメラなら全部に効くかと思ったけど、トラやライオンに効かなかったのは残念だった。今度の研究は、うまくいくように何をするかじっくり考えよう。 高岡・みなと』
●羽鳥・建の研究
ビーストマンである建が研究対象として選んだのは、ハーピーキメラだった。
「ハーピーがどのような音楽に興味を示し、どのようなものを好んで食べるのかを研究してみましょう」
まずは、様々な音楽をCDラジカセで聞かせることに。
最初は、無難なところで静かなクラシック曲。興味を示さないかと思ったが、ハーピーキメラは小首を傾げて聞き入っているように見える。
次はヒーリングミュージック。聞き入っていたかと思えば、次第に目を閉じ、コクリコクリと眠り始めた。
「眠っているところかわいそうですが、次はこれです」
最後にかけたのはギンギンロック。これに驚いたハーピーキメラは「せっかく気持ちよく眠っていたのに邪魔するな!」といわんばかりに、ぎゃあぎゃあ騒ぎ始めた。
「建君、音楽を止めてくれ! 他のキメラも暴れだしてしまった!」
CDラジカセを止めると「すみませんでしたっ!」と研究員達にペコペコ頭を下げて謝りまくる建。
気を取り直した彼の次の研究は、ハーピーキメラの好物が何か。キメラが落ち着くまで取り掛かれなかったが。
まずは、クッキーやケーキといった洋菓子を与えてみることに。
興味を示したハーピーキメラはケーキを掴んで食べ始めたものの‥‥両手、両足に鋭い鉤爪がついているのでぐちゃぐちゃの状態に。それでも、舐めるように綺麗に食べたのは感心すべき点だ。
次に与えたのは、建お手製のムニエル。
魚は大丈夫かと不安だったが、これも洋菓子同様ボロボロ崩れたが、美味しそうに食べていた。
最後はステーキ。鳥型キメラなので肉を食べるかどうか心配だったが、これは原型を留めたまま食したが‥‥食いちぎれなかったので、2口ほど食べた時点で檻の隅に投げ捨てた。
「噛み切れない肉は、好みではないようですね」
最後の研究は、自然の写真集に興味を示すか。
海の風景、空の景色の2種類を見せたところ、空の風景が気に入ったのか、翼をバタバタさせて喜んだように見えた。
『鳥型キメラなのか、空の風景が好きなようですね。音楽は人間同様、落ち着いたものが好みと推定。雑食性なので何でも食べるかと思いましたが、ステーキは食べさせ方を考えたほうが良かったと反省しています。有意義な研究でした。 羽鳥・建』
●櫻杜・眞耶の研究
前回に引き続き研究会に参加した眞耶が選んだ研究対象キメラは、子供程度の大きさの中型サイズの猫獣型キメラで猫妖精ケット・シーと猫又の黒猫系の2体。
「猫又みたいに尻尾の先が割れていませんし、ケット・シーのように背中に羽根が生えていないんですね。外見は単に二足歩行で動き回るだけの黒猫でしかないようで‥‥」
外見は黒猫なのに、何故か鳴き声は『メェーメェー』とヤギっぽい。そのアンバランスさに、眞耶はクスリと笑った。
最初に行った研究は、味覚や嗅覚を中心としたものに。
味覚の調査は、猫の好物である魚肉、鶏肉の他に酒や油、猫の嫌いなオレンジ等を食べるかどうかを調査。
まずは魚肉と鶏肉。これに関しては、普通の猫同様、美味しそうに平らげた。皿を舐めるほどだったので、好物に認定。
次は酒と油。酒は一口舐めるとまずそうな表情になったが、油は酒よりは多めに口をつけた。
「猫又の好物である油も、キメラは好むみたいですね」
最後は、猫が最も嫌う柑橘類。ミカン、オレンジを皿に乗せ与えてみたところ、匂いを嗅ぐとパクッと食べ始めた。
「あらら‥‥これは平気なんですね」
普通の猫であれば柑橘類の匂いを嫌うのだが、キメラ化したことで弱点が克服されているのだろう。鳥型キメラが弱点である鳥目を取り除かれたのと同様、ということが判明。
続いての嗅覚調査では、以前に研究した偽座敷童子とメタボ人間型キメラ2体。
様々なアロマオイルを使用し、好む匂いと苦手な匂いを調べてみた。
リラックス効果のあるラベンダーを嗅がせたところ落ち着いた様子を見せ、眠りを誘うカモミールを嗅がせるとウトウト眠たそうな反応を見せた。
人型キメラは、人間に近い反応を示すことが判明。
『今回は猫型キメラと人型キメラの2タイプを研究しました。今回は永一兄はんに注意されないよう気をつけて行いました。キメラでも、モデルであるものの好みが反映されていることが今回の研究で判明しました。次回があれば、また参加したいものです。有意義な研究ができて楽しかったです。 櫻杜・眞耶』
●美環 響の研究
楽しんだものが勝ちが信条の響が選んだ研究対象は、前回同様化け狐型キメラだった。
「何故、前回と同じキメラを選んだ」
永一の質問に対し「前回のリベンジです!」ときっぱり答えた響。
響VSキメラの変装対決は、こうして幕を開けた。
「丁度いいところに来てくれましたね、申さん。審査員をしてくれませんか? どちらがより本物に近いか審査してほしいんです」
「それは構わないが‥‥変身方法はどうやって決めるんだ?」
これで決めます、と研究員に用意してもらったモニターを指差す響。
「これに映った人物に、どちらがいかに変身できるかを決めるんです」
前回の研究により変装のカリスマ性を発揮できるようになった彼は、それだけでなく簡易ステージも研究員に設置させた。
興味を示した他の研究参加者は、何だ? と響のもとに集まった。
「では、モニター表示された人物変装開始!」
永一が合図すると、モニターに映像を映し出した。
その人物は、カンパネラ学園教官のアプサラス・マーヤーだった。
化け狐キメラ、響共にアプサラスそのものに変身!
「どっちも似ているな。響君、アプサラス教官の物真似できるか?」
「勿論です」
ニッコリ微笑むと、アプサラスになりきって自己紹介を始めた。あまりにも似ているので、周囲は盛り上がった。
「この勝負、僕の勝ちですね。姿形は真似できても、声色までは真似できていませんからね」
キメラの弱点が『不完全な物真似』であることが判明したので、ほぼ完璧な変装技術を持つ響の勝利という結果で変身勝負と称した研究は終了。
「更にレベルアップし、お互いを高めあう結果にならなかったのが残念です」
次の研究は、変身能力向上したキメラと決めたが、要注意観察対象かと思った。
「この化け狐、ある意味戦友ともいえます」
種族を超えたシンパシーを感じ取ったので、勝利感だけでなく、友情も感じ取れたのが響は嬉しかった。
『前回のリベンジができたのもそうですが、種族を超えた友情を感じたのも嬉しかったです。僕の変装技術は、化け狐キメラに負けたことがきっかけとなり、更に磨きがかかったといえます。今回は僕が勝ちましたけどね。 美環 響』
●研究終了
すべての研究が終了した後は、研究が終わると帰ったみなとを除いた参加者、研究員全員で後片付け。
眞耶は前回同様、積極的に研究資料をまとめたり、備品の洗浄を手伝っていた。
「眞耶君、今回の研究の成果はどうだったかい?」
「とても充実したものでした。永一兄はん、また‥‥研究員募集したりしません?」
それに関しては、責任者と要相談だなとぎこちない笑みで答える永一。
「お話のところ、お邪魔するようですみません。永一さん、今日は有意義な研究ができて楽しかったです。次回開催する時は、また参加させていただきますね」
「ああ、楽しみにしている。きみは研究熱心だからな」
では、と軽く頭を下げるとレポートを研究員に提出した建は退室。
「次、参加するかどうかが検討しとく。そん時は、とびきり美人なキメラを用意しといてくれ」
焔は、それを期待しつつ永一に挨拶をして退室。
「私も、次回があれば参加を検討します」
天宮は、それなりに充実した研究ができたようだった。
「次もまた、キメラと変身勝負したいですね。今回は狐でしたから、次はタヌキとやってみたいです!」
更に変装技術の腕を磨きたい響は、次に参加した時も変身できるキメラを研究対象に選ぶだろう。
こうして、第2回1日キメラ研究は終わった‥‥ものの、永一の仕事はまだ残っていた。
「今回も、まとめるのが大変そうだ‥‥」
一部のレポートを見て、こめかみに手を当てると鎮痛剤を飲みながらぼやく永一であった。