●リプレイ本文
●屋台出店2時間前
調理師免許所持者のホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)は、挑戦し甲斐のある美味しい海苔料理作り、生徒を喜ばせることに意欲を燃やす。
「‥‥創作するか」
準備しているのは、下拵えを済ませたクッキー生地と海苔。
脱和風を意識した『海苔クッキー』『海苔チーズ煎餅』『海苔サーモンサンド』の3点を出品。
「和食と洋菓子、洋食のコラボね〜」
様子を見に来た稗田・盟子(gz0150)は、どのようなものができるのか興味津々。
「どのようなものができるか、楽しみにしてくれ」
大槻 大慈(
gb2013)は『豆腐の磯辺揚げ』『海苔の天麩羅』『海苔蕎麦』の3点を出品。
磯辺揚げと天麩羅を包む新聞紙は、1つずつ紙袋に。食べる際に手が汚れないようにという配慮から作成。
「おばちゃん、屋台盛り上げような〜!」
トレードマークといえる緑色の竜の着ぐるみを着てせっせと作業に励む大慈を見て、盟子は「頑張っているわね〜」と応援。
「お祭りか、学生時代を思い出すねえ‥‥」
他出店者の手伝いをする前に、望月・純平(
gb8843)は『焼きおにぎり』と『あおさ汁』の下拵えを始めた。
「あなたは、はじめましてね〜? 頑張ってね〜」
様子を見に来た盟子は、海をこよなく愛する純平の浜料理がどのようなものか楽しみで仕方が無いようだ。
「ああ、はじめまして。楽しい祭りになるといいな。俺、頑張るよ」
ジョゼット・レヴィナス(
gb9207)は、日本にいた頃に板前に教わった『太巻き』を作ることに。手でとって食べやすく、こぼれても服が汚れないと思ってのことだ。
「皆のお口に合うかどうかわからないけど、頑張って作るわ」
「その意気よ〜頑張ってね〜」
彼女の心遣いが伝わることを祈る盟子だった。
ユーフォルビア(
gb9529)は、頭に鉢巻という如何にも寿司職人という格好で参加。
「私は、オリジナルメニューに挑戦します」
ふわふわ〜な性格の彼女が作るオリジナル海苔料理は、どのようなものか?
「楽しみにしてるわね〜」
ワクワク感が隠せない盟子。
鳥の着ぐるみ姿の火絵 楓(
gb0095)は大地守(gb0745)、滝岡海(gb0746)を引き連れて屋台を設置。
屋台の看板は無駄に大きく、派手なピンク色だ。
(「新感覚癒し系屋台ドントコイ、ってね♪」)
2、3個のミニテーブルイス、テーブルの数だけのミニコンロを手際良く用意。
「楓ちゃ〜ん、そのコンロ、何に使うの〜?」
良くぞ聞いてくれた! と胸を張り盟子の質問に答える楓。
「これは『おにぎり鍋』と『おにぎり汁』に使うものなのだ〜。それは何か、というのは見てのお楽しみ〜♪」
どのようなものなんでしょう?
リティシア(
gb8630)は、食堂のおばちゃん数人と協力してくれている出店者と『恵方巻き』を作成中。
「大きいわね〜」
盟子が驚くのは無理もない。巨大な恵方巻きなのだから。
「早食い・大食いコンテストを開くためのものです。これで盛り上げますね」
これを完食する猛者は現れるのだろうか? いたらスゴイぞ!
●海苔料理調理開始
「まずは海苔クッキーから作るか」
薄力粉、グラニュー糖、アーモンドスライスをボウルで混ぜ、卵白をあわ立てたものをまとめて寝かせた生地を乾かしたものを3ミリの厚さに伸ばしたホアキンは、ねじり、ロール、サンド形状の3種類を作り、それらに溶き卵を塗り海苔を貼り付けた。
「焼いている間に、海苔サーモンサンドを作ろう」
まず用意したのはサンドイッチ用のパン。
それらを焼き海苔に合わせて4分の1カットにしてバター、マスタードを塗り、間に海苔、クッキングペーパーに並べて水気を切ったスモークサーモン、ディルを乗せて3枚1組にした後、食べやすい適度な大きさに切り分けた。
サンドイッチがあらかた完成した後は海苔チーズ煎餅の作成。
クッキングペーパーにとろけるチーズ2枚、海苔を載せて電子レンジで4分加熱。
2品が完成し、売るだけ準備を終えると丁度クッキーが焼きあがった。
「うん、我ながら良くできた」
純平は三角結びに中身は岩海苔、焼き握りのタレに、たまり醤油に京七味を混ぜた焼きおにぎり、あおさ海苔を入れたお吸い物を前日のうちに仕込んだ。
用意するのはあおさ汁の出汁のみ。
ジョゼットは、客の要望に合わせて太巻きの具を入れ替えられるよう調整。好き嫌い、アレルギー有無を考えて柔軟に。
そんな彼女が用意した具はわさびマヨネーズ、アボガド、エビ、鮭、ツナ、カニカマ、卵焼き、きゅうり、レタス、鳥の唐揚げ、かまぼこ。
酢飯の代用として蕎麦も用意してある。
リティシア、ユーフォルビアも巻き寿司なので材料はわけることが可能。
「新しい物、いってみよ〜!」
何やら色々な具を揃えているユーフォルビアは楽しそうだった。
角切りにした豆腐を熱湯でサッとひと煮立ちさせた後に水気を切り、山芋と一緒にすりおろして桜海老と塩を良く混ぜ合わせて餅の代わりにした大慈は、その両面に海苔を貼り付けると油で揚げて豆腐の磯辺揚げを作成。
磯辺揚げが完成すると、天麩羅の衣を極薄にして海苔の片面に付け、さっと揚げた。
衣はノーマル、七味唐辛子入り、抹茶入りの3種類。サクサクした食感が売り。
その2品が出来上がると、磯辺揚げ、天麩羅をトッピングした海苔蕎麦の用意。
「ん〜美味そう〜♪」
楓、守、海の3人はおにぎり鍋、おにぎり汁の出汁を作成中。
●販売開始!
「さ〜さ〜、サクっとおやつな海苔はどうだ〜?」
愛用のハリセンをバナナの叩き売りの如くバシバシと叩きながら客寄せする大慈。
おやつ、というフレーズに誘われ、数人の客が買いに来た。
「毎度、磯辺揚げに天麩羅な!」
買うなり1口食べた客は「美味しい♪」とホクホク顔。
別の客が海苔蕎麦を注文。
「毎度っ!」
大慈作の3品はおやつ、食事としては申し分無い。
「らっしゃい! サーファーの作る浜料理だよ、美味いよー!」
呼び込みをしながら、純平は握ってあるおにぎりにたまり醤油をハケで塗り、炭火でこんがりと炙り焼き。
「あおさ汁ちょうだい」
「あいよ!」
あおさ汁は、携帯性を重視してカップに出汁とあおさ海苔と三つ葉を注いだ。
香ばしい匂いの焼きおにぎり、磯の香りがするあおさ汁は冷えた身体を温めるには丁度良い料理だ。
「コレでも店長しゃんなんだゾ♪」
屋台の目立つ部分に設置してある自作の『自動寿司マスィーン』を、何やら怪しげな手つきで操作する楓。
それに興味を示した客は早速注文。
寿司マスィーンでまず作ったものはメンマ軍艦。その名の通り、メンマを軍艦巻きにしたものだ。
「うん、コレは‥‥イケる! コレでメンマ帝国1億6千万年の野望が‥‥ふふふふふふっふうううう‥‥」
笑い疲れた楓はちょっと休憩。
屋台前のテーブルでは、おにぎり鍋とおにぎり汁を注文した客が唖然。
何故なら、それらは、魚ベースのだし汁を1人前の鍋で沸騰させ野菜を入れ、それに卵と海苔で包んだ丸おにぎりを投入したものだったからだ。
「何だよコレ!?」
「イヤだなぁ〜お客さん。そんな事言ってると‥‥燃やしますよ?」
ニヤリ☆ と笑いつつ、楓は武器をちらつかせて強引に説得、というか、ねじ伏せ。
おにぎり鍋の簡易版である魚ベースのだし汁と野菜を煮たものにおにぎりの入った器にスープを注いだおにぎり汁も同様の反応だった。
「むむぅ〜これじゃあ、真のおにぎり鍋じゃないんだけどな〜?」
お味のほうは‥‥どうなんでしょう?
青地に白く『あおぞら』と書かれた暖簾をかけた屋台を設置したホアキンは、回転率を意識して手際良く料理を心がけた。
「いらっしゃい。良ければ試してくれ」
試食してもらい、気に入ってもらえたなら買ってもらおうという算段。
「このサンド、美味しい♪ 買います♪」
「クッキーも美味しい〜」
「煎餅、美味いよ。ひとついただこう」
老若男女問わず、ホアキン作の海苔料理は好評。
「ありがとう」
笑顔を忘れず接客するホアキンは、とても嬉しかった。
普段着のワンピースに割烹着と三角巾着用のジョゼットは、若者や外国人向けの食材を使った太巻きを販売。
海苔がメインなので、炙って風味を良くするのを忘れていない。
良く売れたのは、わさびマヨネーズ+アボガド+エビ、もしくは鮭が具のものだった。その次は・ツナ+カニカマ+卵焼き+きゅうり+レタス。
『でんぢゃらす巻き』と書かれた怪しげな看板を立てた屋台では、ユーフォルビアが巻物を用意。
まず最初に売れたのはバナナ巻き。
「ぐばっ‥‥!」
インパクトが強すぎたのか、それしか言えない買った客。
次に売れた唐辛子巻きを食べた客は、顔を真っ赤にしながら口から火が出そうな仕草をしていた。
ししゃもん巻き(ししゃもを巻いた寿司)、お好み焼き巻きはまあまあの評価。お好み焼き巻きは「和製クレープ?」という感想が。
見た目は蕎麦巻きと変わらない焼きそば巻きに関しては、新境地開拓か? と思われていた。
メロン巻きはそのままの大きさを寿司にしたのか、食べた客は顎がはずれそうだったようで。
「うぁぁうあ‥‥あ、顎が‥‥!」
みかん巻きはぐしゃぐしゃ、カレー巻きはどろどろで評判はイマイチ。
「あ、合わないっ!」
「口直しにと思って買ったのに、これじゃならないよ‥‥」
餡子巻き、アイスクリーム巻きを食べた客の感想。
海苔の評価を下げてしまったが、変なコア海苔マニアを作ってしまったので結果的にはプラスマイナスゼロに。
でんぢゃらす巻きのいくつかはカンパネラ学園の伝説となったが、それはまた別の話ということで。
●屋台一段落の様子
店番担当の楓は、お昼のピーク時が過ぎたのを見計らい大地と海に学園祭を楽しむように促した。
「あの2人には、結構頑張ってもらったしね。他の子も連れてくれば良かったかな?」
お言葉に甘え、大地と海は学園内を回っていた。
「守ちゃん、あの頃に戻ったみたいで面白いね!」
海が言うあの頃とは、両親が離婚する以前のことだろうか。
(「ダメ‥‥やっぱり気になる。楓一人じゃ、何をしでかすか‥‥」)
大地は屋台、というより店長の楓の行動に不安があるためあまり楽しめなかった。
純平は喫煙場所を求め、空き缶を片手に学園内をウロウロ。ようやく見つけた隅っこの方に腰をおろしてゆっくり喫煙。
「喫煙場所が無いってのは、ヘビースモーカーにとって辛いもんだ」
10代の生徒もいるので、喫煙場所は設けられていない。愛煙家の成人生徒にはたしかに辛いものがある。
●早食い・大食いコンテスト開催!
「ただいまより、巨大恵方巻の早食い、大食いコンテストを開催しまーす。これは、とても良い縁起物でーす!」
リティシア、ジョゼット、ユーフォルビア共同作の巨大恵方巻きを見た観客は「おおーっ!」とビックリ!
それだけデカイ、ということだ。
「大食い大会だって!?」
目をきらーん☆ と輝かせた大慈は、屋台を手伝ってくれている食堂のおばちゃんに後を任せてダッシュで会場へ。
「ちょっと行って来るっ!」
時間がかかりそうね‥‥と溜息をつく食堂のおばちゃん。
コンテスト出場者はホアキン、大慈、主催者のリティシア、その他大勢。
ジョゼットと食堂のおばちゃん達が配膳し終えると即座にコンテスト開始。
「でかい恵方巻だが‥‥負けない」
盛り上げるため、覚醒して勝ちを狙うホアキンは恵方巻きを素早く包丁で一口大に切りると摘んで飲み込んだが、喉が詰まったのでお茶を飲み一旦休憩。
その後、飲み込みは危険と判断したため少し噛むことに。
「喰って喰って食い尽くしてやる〜っ!」
巨大恵方巻きには負けない! と思いつつ挑む大慈だったが、そんなに食べられなかった。
リティシアは参加したのは良いがダウン。
コンテストの結果はというと‥‥
「当分、恵方巻きは見たくもない‥‥」
覚醒したのは良いが、10分ともたなかったホアキンは大食いでは好成績だったが早食いでは負けた。完食しただけでもたいしたものである。
「喰った喰った♪ 俺、超まんぞく〜っ♪」
勝負より味を楽しんだ大慈は、闇の生徒会仲間のリティシアに「またやってくれよな!」とお願い。
「あう‥‥も‥‥もう食べられないです‥‥」
寝言で弱音を吐くリティシア。
早食い、大食い共に学園祭に訪れた客が優勝。
コンテスト終了後、会場で食品衛生学の専門家が海苔の効能の講演を。
専門家だが、リティシアが盟子に頼んで来てもらうよう説得したのだった。盟子にそういう知り合いがいたのが不幸中の幸い。
●海苔料理の評判は如何に?
学園祭終了後、屋台出店者は後片付けを始めた。その後、食堂でミーティング。
「皆〜お疲れ様〜♪ これは〜、食堂のおばちゃん達が作ったお弁当よ〜。召し上がれ〜」
盟子が出店者に配ったのは、余った海苔を使った海苔弁当。
「お弁当を食べながら話を聞いてね〜。皆が作ってくれた海苔料理だけど〜とっても評判が良かったわよ〜。小さい子供からお年寄りまで〜幅広い年齢の人が楽しめたっていう感想が寄せられたわ〜。若い女の子は〜また食べたいって言っていたわよ〜」
その言葉を聞き、皆、頑張って作った甲斐があったと喜んだ。
ホアキンの海苔料理は女性、大慈の海苔料理は若い年齢層、純平の焼きおにぎり、あおさ汁は高めの年齢層、ジョゼットの太巻きは外国人に受け入れられた。
楓の屋台は個性が、ユーフォルビアの巻き寿司は味、見た目のインパクトが強烈だったため忘れられないだろう。
リティシア主催の早食い・大食い大会は大賑わい。
「それを聞いて安心した。屋台を出して良かったもんだ」
「俺も! それに、でかい恵方巻き喰えたしな!」
何かをやり遂げた表情のホアキンと大慈。
「あたしも楽しかったゾ♪」
着ぐるみの羽をばたつかせて喜ぶ楓を見て、大地と海も喜んだ。
「作るのは大変だったけど、俺が作った料理を喜んで食べてもらえたのが何より嬉しかった。学生時代もこうだったな」
懐かしそうな表情をする純平。
「私の作った太巻きが好評と聞いて安心しました」
作り方を教わった板前に感謝するジョゼット。
「新しい寿司を作る意欲が沸いてきました〜」
今度はどのような寿司を作ろうかと思案中のユーフォルビア。
「私はお腹いっぱいです‥‥」
恵方巻きが相当堪えたリティシアだったが、ちびちびと海苔弁当を食べている。
「結果的には〜皆の頑張りで海苔料理は好評だったわ〜。その中のメニューだけど〜、いくつかを食堂のメニューに加えようと検討中なの〜。どれになるかはお楽しみ、ということで〜」
全部加えたいところだが、それはさすがに‥‥というのが食堂のおばちゃん全員の意見だったので話し合い、実際に食べてみて決めることにしたのだ。
出店者達は、自分達が作ったものが加わるのかとワクワクしていた。
海苔料理普及の屋台出店:大成功!