タイトル:出雲より来たりし巨鳥マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/02 15:51

●オープニング本文


 山陰UPC軍からカンパネラ学園に送られた出雲蕎麦が学食メニューに加わって1年。
 出雲蕎麦が好評だったため、毎月、山陰UPC軍から派遣された高速移動艇が蕎麦を運搬している。
 大量の蕎麦が輸送されるため在庫切れの心配は無いが、定期的に送るようにと食堂の責任者が念を押している。

「おかしいわね〜。そろそろお蕎麦が到着する頃なのにどうしたのかしら〜?」
 いつもの時間になっても蕎麦が届けられないので稗田・盟子(gz0150)は首をかしげた。
「何かあったのかしら〜?」
 年末とはいえ、帰省せずに学園寮に残る生徒達に年越し蕎麦を食べさせたいという盟子が心配していた頃、あと少しでカンパネラ学園に到着という地点で山陰UPC軍の高速移動艇が墜落したという報告が学園に。
 操縦士が重傷で済んだのが不幸中の幸いといえよう。

 病院に搬送された操縦士の話によると、学園に向かう途中で巨大な鳥らしきものに激突したらしい。
 らしきもの、というのは、はっきりと見えなかったからである。
 その鳥は出雲市の上空から姿を見かけたが、襲撃する気配がないので無視していたが後をついてきて学園付近の上空で運悪く激突。
 その鳥だが、今も学園付近上空を飛行中。
 高速移動艇を墜落させた鳥がキメラならば、放置しておくと学園を襲撃するかもしれない。
 そう懸念した学園は教官のアプサラス・マーヤー(gz0032)に出撃する生徒、聴講生を指揮するよう要請。
「カンパネラ学園教官のアプサラス・マーヤーです。学園付近上空に巨大な鳥が飛行中です。今のところ襲撃する気配はありませんが、いつされてもおかしくはありません。そうなる前に撃破するのが任務です。よろしくお願いします」

 学園側の心配を余所に、巨鳥は学園付近を悠々と飛んでいた。

●参加者一覧

幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
月代・千沙夜(ga8259
27歳・♀・AA
アリステア・ラムゼイ(gb6304
19歳・♂・ER
飲兵衛(gb8895
29歳・♂・JG
奏歌 アルブレヒト(gb9003
17歳・♀・ER
セシエル(gb9731
15歳・♀・SF
八尾師 命(gb9785
18歳・♀・ER

●リプレイ本文

●巨鳥飛来
 出雲蕎麦を運搬していた山陰UPC軍の高速移動艇を墜落させたキメラ『アメノトリフネ』は、その後もカンパネラ学園付近の上空を飛んでいる。
 今のところ襲撃する気配はないが、いつ、どうなるかわからないので一瞬たりとも気が抜けない。目撃現場兼戦闘区域に離島、建物が無いものの、下手すれば学園損壊になる。
「何だありゃ?」
 飲兵衛(gb8895)は白鳥に近い外見のアメノトリフネを見て焼き鳥にしてやりたいと思ったが、白鳥は美味いのか? それに食えるのか? と首を傾げた。
「幸い‥‥まだ学園を攻撃する気は‥‥ないらしい‥‥。気が変わる前に‥‥俺達の相手‥‥してもらおうか‥‥」
 幡多野 克(ga0444)は深呼吸した後、目を閉じて覚醒した。
「白鳥焼きってのも美味そうだが、俺は学食の出雲蕎麦が食べたい。さっさと潰して蕎麦食うぞ!」
 空を見上げて意気込む飲兵衛を見て、フッと笑った克。
「この面子なら問題無いとは思うんですが、もしものために後詰めの手配をお願いしますねー」
 アメノトリフネ撃破を指揮するアプサラス・マーヤー(gz0032)に手配要請して出撃体勢に入るアリステア・ラムゼイ(gb6304)。
「‥‥作戦開始します。‥‥アプサラス教官‥‥学園側の援護要請‥‥お願いします」
 奏歌 アルブレヒト(gb9003)も念を押す。学園側に逃げる場合もあるためだ。

 8名の能力者の役割分担は、話し合いの結果で以下のとおりに。

・引き付け班
 幡多野 克、飲兵衛
・追い立て班
 アリステア・ラムゼイ、奏歌 アルブレヒト
・待ち伏せ班
 クラリッサ・メディスン(ga0853)、月代・千沙夜(ga8259)、セシエル(gb9731)、八尾師 命(gb9785

「出撃準備が整ったようですね。全機、キメラを撃破せよ!」
『イエッサー!』
 アプサラスの号令と共に、全機一斉に飛び立った。

●巨鳥誘導
「気まぐれなキメラ誘導といこうか」
 気ままに飛び交うアメノトリフネの様子を窺いつつ、克は適度な場所で方向転換をして誘導。
 克の雷電、飲兵衛のナイチンゲールに気づいたアメノトリフネは、蕎麦を運送した高速移動艇についてきたよう行動に出た。
 2機は、待ち伏せ地点に誘導するまで学園に被害が及ばないと判断した場合のみ回避し、それ以外は反撃せず攻撃を受けた。

「被害が出る前に何とかしなきゃ‥‥」
 学園を背にし、守る位置を取り戦闘体勢に入るセシエル。
「妙な状況で、妙なのに出くわすものね。蕎麦の匂いに惹かれてついてきたのか、それとも高速移動艇が良い獲物だと思って来たのか。何にせよ、被害が増えると面倒だしさっさと退散してもらいましょう」
 愛機のヘルヘブンで空戦を行うは新鮮味があって良いのだが、それではただの戦闘機になってしまうと千沙夜は懸念。
「まあ、やってやれないことはないわね」
 結果はどうれあれ、千沙夜はヘルヘブンでできるだけのことをするまでと割り切ることに。
 命は、ナイチンゲールを戦闘機形態にし学園に被害が及ばない場所で待機。
「こっちは準備完了ですよ〜。いつでも行けますよ〜」
 上空を悠々と舞うアメノトリフネを見つつ、流れ弾による被害が発生しない空域に待機し、引き付け班、追い立て班により誘導されてくるキメラを待ち受けるクラリッサ騎乗のシュテルン『アズリエル』を確認。
「学園への被害は最小限に食い止めないといけませんわね。キメラが上手く追い立てられてくれると良いのですけど。待ち伏せ班の皆さん、頑張りましょう」

●巨鳥襲撃
 物々しさにただならぬ雰囲気を察知したのか、自由気ままに空を舞っていたアメノトリフネが攻撃を始めた。
 仲間のところにいち早く引き付けようとした飲兵衛だったが、アメノトリフネが放つ雷撃を喰らってしまった。
「ちっ‥‥撃ってきやがったか。回避に専念つってもなぁ‥‥。早くあいつの頭をぶち抜きたいぜ」
 スナイパーライフルRで反撃したいところだが、味方との連携を優先しているためハイマニューバで素早く回避。
「おらよっと! ふぅ‥‥危ねぇとこだったぜ‥‥」
「飲兵衛さん、大丈夫ですか!」
 その様子を見ていたセシエルが心配する。
「大丈夫だ。こんなヤツにやられてたまるかっての! そろそろ合流地点だ。そっちも気を抜くな」
 そろそろ合流地点というところで、アメノトリフネは反対方向に向かおうとした。
「そうはさせない‥‥!」
 駆けつけた克は、軌道をそらさせないよう威嚇射撃。うまくいったのか、アメノトリフネは待ち伏せ地点付近に向かった。
 追い立て班の奏歌、アリステアは仲間の一斉射撃に巻き込まれないよう、合図や動きに注意しながら加勢し、状況に応じて更に遠距離と近距離を使い分けた。
 心配された雷電の損傷具合だが、アメノトリフネ誘導の際に幾度か攻撃をくらったが大事に至らなかった。
「体当たり攻撃に乗じ、目一杯撃ち込むか」
 接近に乗じてC−2000ミサイルポッド、長距離ショルダーキャノンでの攻撃を仕掛けようとしたが、避け損ねてしまったため激突。
「くっ‥‥! 雷電の防御力ならばこの程度の攻撃は‥‥。カンパネラ学園の大空、薄汚い白鳥に二度と自由に飛ばせはしない!」
 追撃されてたまるか! と克は雷電の体勢を立て直すと同時に反撃。
「おらおらぁ! さっさと進めよ、エセ白鳥キメラが!」
 引き付けようとしてもアメノトリフネが追ってこないため、飲兵衛は奏歌、セシエルの協力を得て、一定の距離を保ちつつ流れ弾になりにくいホーミングミサイルを発射しつつ何とか予定ポイントに追い立てた。
 予定ポイントに到着後、本格的な戦闘を開始。
 スナイパーライフルRによる遠距離戦闘をしつつ一定距離を保ち、仲間との連携を優先。
「その綺麗な羽に風穴を空けてやるよ! 羽をもがれてイカロスのように堕ちろ! キメラ!」

●巨鳥合流
 アメノトリフネが引き付け班と合流したのを確認したアリステアは、距離に応じて武装を切り替えながら学園の位置関係を常に確認。
 K−02小型ホーミングミサイル発射前、周辺の味方機に合図と警告を。
「K−02、いきます! ミサイルの軌道の内側に入らないよう気をつけてっ!」
 発射は攻撃より、アメノトリフネの逃げ道を待ち伏せ班のいる方にだけ空けるようにするための手段だ。当たれば上出来なのだが、追い込みが主な目的のなので追い立て後に命中しなかったミサイルを相互にぶつけて消滅させるため、軌道は球体状にセット。
 誘導成功を確信した奏歌はショルダー・レーザーキャノンで援護、追い立てを行っていたが一旦退避。
「‥‥そちらが白鳥なら‥‥こちらはツバメ‥‥。そう易々とは捕まりませんよ」
 奏歌が言うツバメとは、黒を基調とし、機体前面に白も混じるモノトーンカラーにカラーリングされた愛機『シュワルベ』(ドイツで『ツバメ』の意味)のことだ。
 ミサイル軌道が外れたのを確認すると遠距離はショルダー・レーザーキャノン、近距離は高分子レーザー砲とレーザーバルカン、と使い分けて攻撃している。
「‥‥クラリッサの射程に‥‥入ったようですね」
 アメノトリフネがクラリッサ機に狙い定めて雷撃を放とうとしたので、奏歌は側面からショルダー・レーザーキャノンで攻撃した後、すかさず回避体勢に。
 クラリッサは射程範囲内に入り次第、クラリッサはG放電装置による攻撃を開始。
「雷撃は、別段あなたの専売特許ではないですよ。いかがかしら? 自分の攻撃手段で傷を負わされる気分は?」
 クスリと笑いつつ、放電を喰らいもがくアメノトリフネを見る。
 奏歌は近距離では3.2cm高分子レーザー砲、副兵装のレーザーバルカンでとどめをさそうと一斉射撃。

「ここまでは順調順調〜のようですね〜。さあ、ここからが本番ですよ〜」
 命は、戦闘開始からホーミングミサイルを弾切れになるまで使用している。
「弾が切れましたか〜」
 ホーミングミサイル全弾使用後G−M1マシンガンに切り替え援護に徹しているが、できるだけ学園に近づけないよう、方向を調節しながら攻撃。
 迂回して誘導地点で待機していた千沙夜は、アメノトリフネが追い込まれるまで待機。
「追い込まれてきたキメラをフクロにしてジ・エンド、ね」
 周囲との連携重視で戦闘に臨み、127mm2連装ロケット弾ランチャーを使用する際はアメノトリフネが射程内に入ってから発射。スナイパーライフルR、ホーミングミサイル は届く範囲内であった場合に牽制目的で使用した。
「一気に仕留めるわよ、ヘルヘブン!」
 3.2cm高分子レーザー砲を使用するため、ブーストで一気に近づき一撃離脱を仕掛けた。
「落したのは良いけど、角度が妙なことになって学園直行落下コースっていう展開にならないよう気をつけないとね」
 危ない、危ない、とアメノトリフネが学園の方向に向かないよう、千沙夜は方向転換しつつ攻撃の手を休めず攻めて攻めて攻め抜いて、確実に仕留めるためひたすら攻撃。

●巨鳥堕つ
 能力者達に一斉攻撃されたことで怒りが爆発したのか、アメノトリフネは全身に雷をまとい学園に突進!
「させるか‥‥! コレが俺の‥‥切り札だっ!」
 アリステアはブーストを使いアメノトリフネを遮るように割り込みと『SES−200』オーバーブーストAと空中変形スタビライザーを起動し、即座に20mmガトリング砲で牽制、真ツインブレイドですれ違いざまに一撃を加えた。
 それが致命傷となったのか、アメノトリフネは学園付近にある離島に着陸しようとしたが克、飲兵衛の攻撃を喰らったこともあり、あえなく墜落。
「終わった‥‥んだよな‥‥?」
 浮上するのではないかと心配な克に、クラリッサが声をかけた。
「気にすることはないわ。キメラとはいえ、自ら死地に赴くこうなんて哀れですわね。もっとも、私にはバグアの手先にかける温情など欠片もないのですけどね」
「そう‥‥だな‥‥」
 2人がアメノトリフネ墜落を報告すると、アプサラスはナイトフォーゲルS−01改に騎乗し現場に向かった。

 十数分後、アプサラスはアメノトリフネ撃破成功を皆に告げた。

「よかった‥‥学園がキメラに壊されなくて‥‥」
 アメノトリフネの最期を聞き、胸を撫で下ろすセシエル。
「ふぅ、これで俺達の仕事は終わった、かな?」
「‥‥終わった‥‥と言っていいでしょう。‥‥帰る前に‥‥皆でお蕎麦でも食べに‥‥行きましょうか」
 奏歌の提案に賛成する一同。 
「そうだな、せっかくだし蕎麦でも食べて帰るか!」
 キメラに襲われるくらいだから、山陰UPC軍の高速移動艇が運んだ出雲蕎麦は美味いんだろうなと心躍らせる飲兵衛を先頭に、皆は食堂へ。奏歌は非覚醒時は盲目だが、胸と頭に【OR】ペンダント型盲導用カメラアイを装備しているのである程度視力を補っている。

「お疲れ様〜。お蕎麦、いっぱい食べてね〜♪」
 稗田・盟子(gz0150)は、能力者達のために大急ぎで蕎麦を調理。
「お待たせ〜。さあ、召し上がれ〜♪」
『いただきます!』
 飲兵衛は「美味い!」と嬉しそうに食べ、他の能力者達は味わって食べた。

 出雲蕎麦はキメラを誘うほどの何かがあるのだろうか? と蕎麦を初めて食べるアプサラスがそう思ったのはここだけの話である。

 アメノトリフネ撃破、学園防衛:成功!