●リプレイ本文
●サンタの故郷と子供の夢を守れ!
初陣であるが、手芸部主催のサンタクロース衣装披露会会場を死守すべく立ち上がった糸井・創璃(gz0186)のサポートとして真っ先に加勢したのは手芸部に入部したばかりのマルセル・ライスター(
gb4909)と、ボランティアとしてクリスマス会に参加していたアルストロメリア(
gc0112)の2名。
「え〜、なんか大変なことになってますね〜。今、助けに行きま〜すね〜」
「糸井先輩、応援が到着したようです」
マルセルの言葉に安心したのか、ホッとする創璃。
救援一番乗りはエイミ・シーン(
gb9420)。
衣装披露会参加のためヌークを訪れた彼女は「可愛いの着れるかなー♪」と楽しみにしていたが、突如現れたムキムキマッチョなミリタリーファッションのサンタを見て内から何かが燃えてきたようだ。
「なんだ、あのキメラは‥‥」
面倒くさそうに機械剣αを構えるブロンズ(
gb9972)。
「物騒なサンタさんがいるモノですね‥‥。理想像が一気に壊れますね‥‥アレは」
現場に駆けつけ、ミリタリーサンタを見るなり溜息をつく真上銀斗(
gb8516)が言うように、いたいけな子供がアレを見たら100年の恋が一気に冷めてしまうようなものだ。
須佐 武流(
ga1461)は、創璃や仲間が無茶しそうだったらフォローする体勢に。
「戦うならサンタのおっさんがいいな、強そうだし。創璃、無茶するなよ? 危なくなったら俺が助けてやるぜ」
「は、はいっ! よっ、よろしくお願いします!」
緊張のあまり、長弓「草薙」を強く握り締めながら上ずった声で創璃は挨拶した。
「ま、頑張れ。俺はのんびり見ているから」
依頼書を受け取りグリーンランドに来たのは、ジャケットだけでは寒いので防寒ポンチョを着込み、ホットコーヒー入りの水筒を持参した美沙・レイン(
gb9833)。
「な、なんで彼がここに!?」
自分を良くからかう武流を見かけて驚いたが、ミリタリーサンタとトナカイキメラの姿を見てとてつもなく凹んだ。
「私の受ける任務、まともな敵がいたことってないのかしら‥‥」
レインの初任務は、ギャグとしか思えないキメラ戦だった。
今度こそは! と意気込んだのだが‥‥またしてもギャグになりそうだ。
男性用礼装に身を包む祝部 流転(
gb9839)は、面白いことになりそうですとクスリと笑った。
「大丈夫ですか? 今、助けにいきます!」
たまたま近くにいた夕景 憧(
gc0113)が手芸部員の救援に応じた。
「この時期に合わせてこんなキメラを送り込んでくるとは‥‥バグア軍め。ともかく、このまま被害を出させるわけにはいかない。クリスマス会場を守りつつ、糸井さんの手助けをしながらキメラを迎撃するんだ。いくぞ!」
キメラが会場に迫ってきた時に備え、会場護衛につく最年長の木場・純平(
ga3277)の合図でキメラ戦が始まった。
「一般人の近くにいて、安心感を与えるのも自分達の仕事だ。一般人を必ず守る」
順平は無線を携帯し、仲間達に後顧の憂いなくキメラと戦ってもらうことに徹した。
●真っ赤なお鼻のトナカイキメラ
「俺達は最終防衛ラインで、打ち洩れて抜けたキメラを迎撃しましょう」
緊張のため、冷静さを欠いている創璃を落ちつかせるため声を掛けたマルセルは、戦車を牽きながら突撃! な8頭のトナカイにツッコミを。
「赤鼻はルドルフだけ! ルドルフ含めれば9頭だし!」
赤鼻トナカイの話を知らない人には、ちょっとわからないツッコミである。
それが終わると、マルセルはAL−011「ミカエル」を装着。
「楽しみですね、披露会。‥‥大丈夫、糸井先輩は上手くやれます。それに、あなたは一人じゃない。俺を、皆を信じて」
部長として恥ずかしいです‥‥と心の中で呟く創璃は、その言葉を聞き闘志を燃やした。
「うは〜トナカイキメラがいっぱいいる〜。トナカイの丸焼きです〜」
超機械「守鶴」で1頭ずつ攻撃して楽しむアルストロメリア。
レインは、初の長弓の感触を確かめながら物陰に潜み覚醒すると『鋭覚狙撃』と『影撃ち』を使い分け、市街地に一番近い場所にいるキメラに狙いを定めて矢を放っている。
「私の夢を壊すような存在は許さないわ! 消えなさいっ!!」
鬱憤を晴らしながら頭を狙い撃ち。
エイミとブロンズは連携でトナカイを攻撃。
「エイミ、あとはよろしく!」
ブロンズが空中に全力で蹴り上げ、エイミが高々とジャンプで追いかけてロケットパンチβでロケットパンチで叩き落す!
「OK! 行くよ! メテオストレート!」
放たれたロケットパンチは、トナカイキメラの鳩尾に直撃!
連携攻撃は順調に‥‥と思われた時、どこからかアルコールの匂いが。
キメラ襲来の前に、誰かが身体を温めるために飲んでいたウィスキーの瓶がエイミの足元に転がっていた。匂いはそこから漂ってきたのだろう。
「あら、わたくしの出番ですのね? 燃えますわ! ふふふ、トナカイさんの首をフォールドしてそのまま‥‥ですわね?」
エイミは、酒の匂いを嗅いだだけで酔ってしまう体質だった。酔うと口調と人が変わるのはお約束ということで。
「あ〜‥‥エイミ酔っちゃったか‥‥」
しょうがない、と武器をS−01の二丁拳銃に持ち替え援護にまわるブロンズ。
憧は、後衛からの支援を受けて前線のメンバーと連携し夜刀神でトナカイキメラを倒している。
気負いすぎているためか、創璃の攻撃は一発もトナカイキメラに当たらず。突撃するのを無理に止めようとしたため、標的にされたが間一髪のところでブロンズに救われた。
「やばそうだったな‥‥。気をつけろよ、いつでも助けられるとは限らないんだから」
駆けつけたブロンズに「すみません‥‥」と創璃は謝った。
創璃を『竜の鱗』で受防しながらサポートしていたマルセルはすかざず『竜の翼』で一気にトナカイキメラに追いついたが、2頭ほど逃してしまった。
それを見たブロンズは、取りこぼしを後方の仲間に無線連絡。
「すまない‥‥トナカイキメラがそっちへ行った」
●ムキムキサンタをやっつけろ!
ブロンズからの連絡で、会場付近に待機していた仲間はミリタリーサンタとトナカイキメラ数頭の相手をすることとなった。
「奇抜なサンタさんのお相手をしましょうか」
うんざりしつつ、銀斗は狙撃準備。
「ミリタリーなサンタと戦う猛者には、もれなくソニックヴォイス・ブラスターを使いながらの実況中継してさしあげましょう」
周囲の味方に『練成強化』、自身に『GooDLuck』をかけた流転は補助担当。戦闘中は味方の攻撃の間断を埋めるよう留意しながら戦っている。
「トナカイは俺に任せな!」
脚爪「オセ」を用いた回し蹴り、膝蹴り、回転蹴り等を繰り出しながら一気に攻め込む武流。『瞬天速』で間合いを詰めると同時にフェイントや体制の立て直しとしての肘打ちや拳を叩き込んだ。
「須佐様の電光石火攻撃、トナカイに見事に決まりました」
呑気に実況してんじゃねえよ、と武流が突っ込んだが、流転は無視してソニックヴォイス・ブラスターで実況を続けている。
残りのトナカイキメラは、銀斗が遠距離からの狙撃とアーミーナイフを使用した格闘術で倒した。
「是非とも、あのサンタの方とお手合わせしたいですわ! 物理攻撃は効かないそうですが‥‥投げはどうですの? わたくしのパイルドライバーを決めてみたいですわ!」
うずうずして仕方がないエイミだったが、酔いが回りすぎたのかばたんきゅ〜。
「めんどいが‥‥避難させるか」
ブロンズにお姫様抱っこされてご退場。
「変態は消えて下さい!」
退場する2人を庇うようにアルストロメリアは超機械「守鶴」にて攻撃。
「エイミ様、ブロンズ様が離脱されました。この後、どうなるのでしょうか?」
展開を楽しみつつ『電波増幅』を使用する流転。
憧は『迅雷』で死角から一気に間合いを詰めるなり、『刹那』『円閃』で攻撃。
「この腐れ外道サンタめ! ちょっと前まで僕はサンタの存在を信じていたんだ! だから、だから、こういうのめっちゃむかつくんだ!」
おらぁぁ! 天誅ー! と叫びながら追撃。
「夕景様、過去にいろいろとあったご様子ですね。何があったのでしょうか? そう言っている間に、木場様のところに向かっている模様です」
ミリタリーサンタは、ゆっくりと披露会会場に向かって歩いている。
「子供達に凄惨なシーンを見せたくはないが、仕方ない」
指をポキポキ鳴らしながら『限界突破』を使用した純平のSES搭載グローブ【OR】クラッチャーによる空手の突き、同じく『限界突破』を使用した武流の空中で大きく回転し、勢いをつけて急所突きを付与した飛び蹴りが同時にヒット!
「子供の夢を壊すようなキメラ、覚悟!」
地面に叩きつけられたミリタリーサンタは、純平に抱えられるとクラッチしてから投げられ、締め技を喰らった。技から逃れようともがけばもがくほど、ミリタリーサンタの顔は蒼褪め、次第に呼吸できなくなった。
数分後、ミリタリーサンタはぐったりして動かなくなった。
「1・2・3! ミリタリーサンタ、ダウンです!」
いつの間にかレフェリー役になった流転であった。
ミリタリーサンタ、赤鼻トナカイキメラ8体撃破:成功!
●衣装披露会開催
キメラ撃破後は、衣装披露会に参加する能力者と手芸部員総出で会場のセッティングを。
衣装を持参したのは武流とマルセル。
武流の衣装は、赤いレザージャケットとパンツ、超機械「ST−505」をエレキギターに見立てロック風に。
「‥‥どうだ、これ?」
かっこいい! と見惚れる手芸部員。
「そうだろう?」
マルセルの衣装は、上半身はやや薄手だが下半身は見事な半ズボンのサンタ衣装。
ギリギリ股下3センチ丈の半ズボンは狙い過ぎず、かつ、その生足の魅力を引き立たてている。
(「妹に衣装すり返られた‥‥」)
泣いている彼を見て可愛い♪ という手芸部員が数名。
「‥‥着ろと仰るのであれば着ますが、男性用のサンタらしき物をお願いします」
参加者の身の周りの世話、衣服の用意、修繕と裏方に回っていた流転だったが、是非衣装披露会に参加してくださいという手芸部員の頼みを聞くことに。
「ちょ、ちょっと!? 何よ、この格好は! こんなサンタいるわけないでしょ!」
レインが手芸部員に着せられたのは、やけに露出が高いサンタ服。
「わ、私にこんな格好をさせるなんて‥‥」
どうなるかわかっているんでしょうね!? とキツイ視線で訴えているが部員は知らん顔。
「奇抜なサンタさんはこりごりです」
ということで、銀斗は普通のサンタ衣装を希望。
外の寒さで酔いが覚めたエイミは記憶は飛んでいたが、衣装披露会のことは覚えていたようだ。そんな彼女の衣装は、白いタイツのミニスカサンタ
「どう? オシャレに着こなせている?」
「ああ‥‥。しかし、こういうのって俺に似合ってないんじゃ‥‥」
オーソドックスなサンタ衣装のブロンズに「似合ってるよ!」と褒めるエイミ。
「恥ずかしいというより、この衣装寒いです」
エイミ同等、ミニスカサンタのアルストロメリア。
考えてみれば、グリーンランドでミニスカというのは無謀かも‥‥。
サンタの衣装が足りなくなったので、憧の衣装はトナカイの着ぐるみ。
「ただいまより、カンパネラ学園手芸部主催のサンタクロース衣装披露会を開催致します」
司会はロングスカートサンタに扮した創璃が、参加者1人ずつ紹介する。
「子供達をバグアから守るのが能力者たちの役目。子供達に夢を与えるのは大人の役目だ」
サンタ衣装を着た純平は、舞台から降りると子供達ひとりひとりにおもちゃを配った。受け取った子供達は、サンタさんありがとう! と喜んで受け取った。
子供達の笑顔を見て、参加して良かったと微笑む純平だった。
●プレゼントを配りましょう
それを機に、他の参加者達もプレゼントを子供達に配った。
マルセルは手編みの手袋やマフラー、手作りクッキーやパイ。
銀斗は手作りお菓子。
「お菓子にはちょっとした自信があるのですが‥‥いかがでしょうか?」
受け取った子供の1人が美味しいよ、とニッコリ笑って言ってくれたのが幸い。
エイミは手作りアクセサリーを女の子に、ブロンズは男の子に手作りの室内で遊べるおもちゃ。
「まあ、たまにはいいか、こういうのも‥‥」
「でしょ?」
子供達の笑顔に対し、自分も笑えてエイミは嬉しかった。
恥ずかしさを堪え、レインは実家に余っていたティーセットをプレゼントしたがきょとんとする子供達。
「子供向けじゃなかったのかしら‥‥」
アルストロメリアは手編みの手袋、マフラー、お菓子をプレゼント。
不器用なので手袋の指が6本だったり、マフラーが蛇のぬいぐるみみたいになっていた。お菓子に至っては、チョコレートに唐辛子を入れたのか辛くなっていたようで。
キメラ戦で興奮していた一部の子供達は、トナカイに扮した憧をボコボコに。
「痛っ! 痛いって! こらこら、僕はキメラじゃないですって!」
興奮冷めやらぬ子供にボコにされている少年に幸あれ。
衣装披露会終了後、会場の控え室で慰労会を。
「皆さん、キメラ戦でお疲れのところ衣装披露会に参加してくださってありがとうございました」
深々とお辞儀をし、感謝の気持ちを述べる創璃に青いリボンがついた包装紙を手渡すマルセル。
「糸井先輩にクリスマスプレゼントです。毛糸で作った猫さんです」
「私に‥‥ですか? ありがとうございます」
皆さんもどうぞ、とマルセルは全員に毛糸で作った人形をプレゼント。
会場を後にした頃、外は雪で一面真っ白になっていた。
グリーンランドは寒いところだが、サンタクロースからプレゼントを受けとった子供達は暖かい気分になれたことだろう。
能力者達は皆、子供達の笑顔が見られてこと、衣装披露会が成功したことを喜んだ。
サンタクロースの故郷が、今後も子供達に大いなる夢と希望を与える場所となりますように。