タイトル:【出雲】永一の悪夢2010マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/18 17:43

●オープニング本文


※これは申 永一(gz0058)の夢の中の出来事です。実在地は無関係、実際のキメラ戦ではありません。

 2008年4月。
 永一は出雲市某所のリゾート開発工事現場付近で活動していた。
 発掘現場で1口の銅鐸が発見された直後、突然地響き、いや、地震が起きた。
 雲ひとつない晴天だったが、発掘現場の一部が曇り始めた。

「な、何だよコイツ!?」

 何事? と発掘チームの一員が見上げたら、そこにいたのは‥‥どでかい土偶だった。
『どぐーん!』
 と叫びながら。
 マヌケな叫びだ、と突っ込んだその場にいた発掘チームの面々。
 見上げた人はぽかーんとしたまんまだった。

「このままでは、発掘現場が滅茶苦茶にされてしまう! 何とかしなければ‥‥」
 SES搭載武器は常備しているが、ナイトフォーゲルまでは用意できない。
 生身で立ち向かうことは自殺行為に等しい。
 こんな時にナイトフォーゲルが自動的に来れば‥‥と永一が考えたその時。
 都合良く彼の愛機が出現! しかも援軍を引き連れて!
「このようなことが以前にもあったような‥‥。い、いや、そんなことを言っている場合ではない!」
 デジャヴか? と永一は考えたが、今は発掘現場を守り、仲間を避難させることが最優先だ。
『急いでください、マスター』
 愛機が喋ることに関しては突っ込まない永一であった。

『調査チームの皆さん、ここは俺、申 永一が何とかします。早く逃げてください! ここに駆けつけてくれた皆さんに伝達です。発掘現場を荒らさないよう、気をつけてください』

 デカブツ土偶対能力者達、どちらが勝つかは‥‥出雲の神のみぞ知る?

●参加者一覧

ミンティア・タブレット(ga6672
18歳・♀・ER
絶斗(ga9337
25歳・♂・GP
鈴木 一成(gb3878
23歳・♂・GD
雲空獣兵衛(gb4393
45歳・♂・ER
ピアース・空木(gb6362
23歳・♂・FC
ゼンラー(gb8572
27歳・♂・ER
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
希崎 十夜(gb9800
19歳・♂・PN

●リプレイ本文

●能力者出動! 出雲に向かえ!
 ミンティア・タブレット(ga6672)は、謎の司令部にて出雲市に出現したキメラ『ドグーン』をフレア弾で殲滅せよという指令を受けていた。
「待ってください、キメラが出現した遺跡では重要な発掘作業を行なっています。フレア弾では、一般人である発掘チームの巻き込んでしまいます」
 バグア、キメラの殲滅が使命、そのための方法は問わず、多少の犠牲もいとわずという司令部に躊躇したが、ミンティアは現場に集結している能力者の小隊に任せ、負けるようなことがあれば作戦を実行することにした。
「その方が、世論の反発も少ないでしょう」
 最終的にキメラを倒せれば良い、と彼女にすべてを任せる司令部。
「発掘現場を荒らさないようという通信も入っているし、どうしようか‥‥」

 ミンティアが出雲に向かっている最中、申 永一(gz0058)はナイトフォーゲルで孤軍奮闘中。
「大切な発掘現場を荒らされてたまるか!」
 一刻も早く倒したい! という焦りからか、永一機の攻撃は隙だらけ。それを突かれ、ドグーンの体当たりであっけなく撃墜された。
「くっ‥‥ここまでか‥‥」
 永一が諦めかけたその時、ミンティアの岩龍を含む8機が集った。
(「こんなふざけたヤツに負ける訳にはいかねぇ‥‥」)
 気が付いたら出撃していた少々人見知りの希崎 十夜(gb9800)は、画面越しだとそれを気にせず対応できるので任務は忠実に行うことに。
「人の悪夢を祓うのが拙僧の役目‥‥ゼンラの神の使徒、ゼンラー(gb8572)、推して参るっ!」
 高速2輪状態にし、爆炎と共にウィリーで登場したゼンラーのヘルヘブン750からは『ヒャッハー!』というオーラが滲み出ていた。
「人の悪夢は祓わなくてはいけないねぃ。それがゼンラの神様の望みなのだよぅ。土偶やご都合主義ごときに邪魔させるものか!」
 永一の悪夢を祓うべくやって来た自分の格好が悪夢とは言わせない! というのは本人談。

●満を持して登場! ポーズと名乗りはお約束!
「随分面白ぇキメラじゃねぇかよ。ふっ‥‥俺達が来たからには心配いらンぜ?」
 現場に登場するなり、ピアース・空木(gb6362)は戦隊ものよろしく、ポーズを取りながら名乗った。
「紅蓮の炎を纏いし冥府よりの使者! 漆黒の不死鳥・フェニックス!」
 それにつられて煙幕弾演出で登場の鈴木 一成(gb3878)、夢守 ルキア(gb9436)のナイトフォーゲルもポージング。
「イーヤァッハーッ! ラスト・ホープの使者・斉天ホワイト!」
「同じくラスト・ホープの使者・骸龍ブラック!」
 一成の斉天大聖は全体的に白くアクセントに水色を入れるといったカラーリング、フリルやリボン、ハートのモチーフでデコレート、ルキアの骸龍はピンクのハートとフリフリ付きという可愛らしいフォルムだった。
『ふたりは奉天キュア!』
 どこぞのヒロインのようにビシッ! と息の合った決めポーズ。
 ネーミングは、2機が奉天北方工業公司が設計したナイトフォーゲルだから‥‥なのかも。
「思いっきり不吉なフォルムも今回はプリティーさ! 土偶の時代は終わりだよ!」
 それに合わせて戦隊風のノリでポージングしようとした十夜だったが、タイミングが合わず滑ってしまった。
「‥‥ごめん、今の無し」
 夢ですが、やり直しはききません。あしからず。
 拙者もあれをせねばならぬのか? と戸惑う雲空獣兵衛(gb4393)だったが、結局しなかった。
「だ、大丈夫なのか‥‥?」
 永一は不安を隠せなかった。

●ドグーン覚悟! 一斉攻撃開始!
「俺が援護する‥‥接近する必要のある者は突っ込め‥‥」
 絶斗(ga9337)は射程ギリギリから420mm大口径滑腔砲で先制攻撃を狙いながら仲間が接近しやすくなるよう援護射撃。ドグーンの攻撃がわからない、というのもあるが。
 弾が切れたら接近し、射程ギリギリの距離でガトリングナックルで援護射撃という地味で堅実な戦いを行い、移動も必要以上に行っていない。
 その理由は‥‥乗り物酔いが激しいから。
(「たとえ夢でも‥‥コクピットの中で吐きたくない‥‥」)
 口元を押さえつつ、吐き気を堪えながら必死に戦う絶斗。夢の中であっても無茶しないでほしい。

 前衛はピアース、十夜。中衛は絶斗、ゼンラー、一成。後衛はルキア。
 ミンティアは上空で待機、獣兵衛は皆の意見に従うサポート役に。
 ドグーンに接近し、中衛、後衛の射撃に合わせて十夜は推進力にあたるドグーンの脚をGPSh−30mm重機関砲連射、接近時はRA.0.8in.レーザーバルカンを撃ちながらバイパーを上昇。
「おぉッ!」
 ドグーンの頭上上空へ旋回後、ピアースのフェニックスが空中変型から勢いを使い飛び蹴り。
「ヒャッハー♪ では参りますっ! くらえ、正義の鉄槌! ギャラクティカ・コークスクリュー・フライングキィー‥‥って、間に合わねぇ!? おりゃー!」
 技名をすべて言い終わる前にドグーンが攻撃を仕掛けてきたので避けようとしたが、間に合わず激突。
「な‥‥何ぃ!?」
 そのまま墜落か? と思われたその時、十夜のバイパーが金タライの如くにフェニックスに衝突。2機はバランスを崩しながら不時着。
 
「ハッ! 出雲で土偶とは片腹痛いんですよ! バグアも文化を勉強してこいって話ですよねぇ、研究員さん!」
 土偶というのは、古代東日本において地母神崇拝の‥‥というマニアックなウンチクがかな〜り続くので以下省略。
「な、なかなか詳しいですね‥‥」
 考古学専攻の永一納得の土偶出土分布に関しては東日本に偏っており、西日本での出土は稀なんです、というウンチクで一成の話題振りは終了。
 ルキアと共に特殊電子波長装置β、高感度偵察用カメラを用いてハイテンションの一成は周辺に伏兵がいないか警戒。
(「土偶ってアレだよね、考古学とかに出てくるアレ。本物って見たこと無いんだよね、ちょっと気になるかも」)
 ルキアがそう思っていた時、タイミング良くドグーンが『どぐーん!』と叫んだので「ハーニーワー!」と返した。
「土偶って、たしか願掛けの一種っていうか、身代わりの一種だっけ? 願かけ終了、全身ぶっ壊したから安泰ってやつかな?」
 残念ながら、土偶は多産や豊饒を祈る地母神崇拝のための人形であり身代わり人形ではありません。
 防御力が低いルキア機は、戦闘機型で20mm高性能バルカンで攻撃しながらホーミングミサイルで後方援護後方をしていたが、その最中、リボンが千切れた。
「はーい、イクシオン、そこは『いやぁーん』って言って」
 そう言われた愛機『イクシオン』は適当に「ごめんねー」と謝った。

 絶斗は射程ギリギリから徹甲散弾を使用し、420mm大口径滑腔砲の弾がある限り撃ち続けながらタイミングを計り、ゼンラーは試作型「スラスターライフル」とファランクス・アテナイで前衛の援護をするゼンラーは、ナナハンなのにとか言わないでねぃ、分かってるからねぃと言いながら援護射撃。
「リュウサイカノン‥‥発射!」
「実弾バラマキ好きにはたまらない状況だねぃ‥‥!」
 前衛が空いたので、その隙にハイ・ディフェンダーで攻撃。
「今のうちに、体勢を立て直すんだよぅ! ナナハンで接近戦ができて嬉しいねぃ!」
 感激しながらキャバリーチャージでドグーンに突撃。
 絶斗、ゼンラーの合間を埋めていくかのように一成はH12ミサイルポッドで援護。
「ひゃはははは! キメラはとっとと土に還りなさいっ!」
 覚醒してハイテンション過ぎな一成。日頃の大人しさは何処へやら‥‥。

 能力者達とマヌケ面キメラ・ドグーンの激戦を永一は呆然と見ていた。
「俺の出番がまったく無いなんて‥‥」
『泣かないでください、マスター』
 愛機に慰められるとは‥‥情けない。

●必殺技発動! かなり過激かも!
 ドグーンとの激戦は、能力者達が不利な状況となった。
「アレを使う時が来たようね」
 ミンティアは煙幕とブーストを使い、直上まで降下するとグーンに対してフレア弾の特攻爆撃。
「をいぃ!? こら、おま‥‥っ」
 ドグーンに撃てる限り攻撃していたピアースだったが、フレア弾特攻に気づき緊急退避しようとしたが‥‥時すでに遅し。爆炎に包まれてしまった。
「な、何するんだぁー!?」
 フレア弾1回目の爆破を見た絶斗は、それが必殺技発動の合図かと思った。
「フッ‥‥たまには遊びに付き合うとするか‥‥。ウオオオオオオ! 吼える大地の龍! ガイアドラゴン!」
 決まったのは良いが吐きそうになったので無茶しすぎた‥‥と反省するも一瞬のうち。
「特殊砲弾装填完了‥‥食らえ、バクサイカノン!」
 見事ドグーンの胴体にヒットしたが、それを確認することなく絶斗は付近にゼカリアを止めると素早く降りた。
「ウッ‥‥もう‥‥駄目‥‥っ!」
 転がり込むようにトイレへと駆け込む絶斗、だがなぜこんな所にトイレがあるのかは誰にも理解できなかった。
 
 ドグーンがひるんだところを全員で連携攻撃。
 一成は如意金箍棒システムで射程を伸ばし、機斧「カフカス」を土偶に思いっきり叩きつけた。
「ひゃははははっ! ブチ割れろ! 土偶キメラ! 粉々に割れて空っぽの脳内惨めに晒せやぁ!」
 ハイテンションはキャラ崩壊を引き起こした‥‥ようだ。
「拙僧の後ろにゼンラの神様の道ができるのだよぅ!」
 ハイ・ディフェンダーによるヘルヘブン750の突破力は折り紙つきだった。

 ピアースは、炎に巻かれながらドグーンに飛び蹴りでとどめを。
 十夜はタイミングを合わせつつ、上空で戦闘機から人型へ変形し、ドグーンの頭へ垂直落下し機槍「ユスティティア」で頭を潰した。
「あ、あんなことができるのか‥‥」
『そのようですね、マスター』
 十夜の愛機は、換装可能な装備品の豊富さ、自身が行う戦術に応えてくれる機体だ。それゆえ、相手の裏を欠くために、多少の無茶振りもする。
「研ぎ澄ませ‥‥! 研ぎ澄ませ‥‥! そこだぁー!」

●発掘現場炎上! ものすごく強引な終わり!
 十夜とピアースの飛び蹴りがドグーン撃破か? と思ったら‥‥2回目のフレア弾攻撃が。
「総司令、ばんざーいっ!」
 フレア弾はドグーンの頭上に見事に命中し爆発。それに巻き込まれたピアースだったが、熱さにめげず飛び蹴りを。
「これぞホントの燃える男! 不死鳥だーっ! って、あちちちちっ!」
 炎上したナイトフォーゲルはまさにフェニックス。
 捨て身で十夜とダブル飛び蹴りを食らわせたピアース・空木に盛大な拍手ー!

 マヌケ面土偶キメラドグーン、ピアース・空木と希崎 十夜の連携攻撃により撃破!

「わ、悪者にならずに済んだようね‥‥」
 勝利を確信したミンティアは、誰にも気づかれないようそそくさと撤収。見つかったら何を言われるかわからない。
 絶斗は、まだ気分が悪いのかコックピット内で微動だにしない。
 フレア弾が着弾したのを見るなり、ゼンラーは合掌。
「厄払いの護摩‥‥ありがたいねぃ。今年も一年、良い年でありますよう」
 燃える発掘現場を真剣に見つめながら祈祷を始めたゼンラー。護摩壇にしては大きすぎだし、派手すぎないかい?
 というか、消火活動しなくていいのかい?
「夢だから、しなくても良いんだよぅ」
 き、聞こえた!?
「永一ちゃんの悪夢は、祓わせてもらうよぅ‥‥」
「では、拙者も祈祷を‥‥」
 ゼンラーの後ろで獣兵衛も合掌。
 そこから離れた場所では、ドグーンに蹴散らされ、フレア弾で焼かれた斉天大聖と永一機が。
「が、合掌‥‥!」
 手を合わせながら気を失う一成。
「な、何故俺まで‥‥!」
『運が悪かったと思ってください、マスター』
「そういう問題では‥‥がくっ」
 力が一気に抜けたため、永一気絶。
 更にそこから離れた場所で、気絶寸前のピアースは祈祷の様子を虚ろな目で見ていた。
 
 永一の悪夢は、発掘現場一帯炎上という予想だにしない大被害という最悪の結末で終わった。
『キメラが撃破されて良かったですね、マスター』
 夢であっても良くないです。

●おまけだよ! 夢はまだ続きます!
 ドグーン撃破から数年後。
 出雲市某所の発掘現場の地中から、丸焦げのナイトフォーゲルが発見された。
 騎乗していた焼け焦げた包帯を全身に巻きつけた青年は生きていたが、今にも気絶しそうなほど衰弱していた。
「あ、あの時の能力者のひとりじゃないか!」
 その場に偶然居合わせた永一は、青年が即座にピアース・空木であることがわかった。
 ドグーン撃破後、誰も彼らに気づかなかったのか? というツッコミはご遠慮願いたい。夢なのだから。

「ミ‥‥ミイラじゃねぇからな‥‥! 俺は‥‥!」

 蚊の鳴くような声でそう呟くと、ピアースはがくっと項垂れた。
 奇跡だ何だと騒然となったが、このままではやばい! と永一は大急ぎで救急車を呼んだ。
「俺の夢‥‥早く覚めろ‥‥!」
 付き添いで救急車に乗った永一は、一刻も早く夢が覚めることを祈った。

 その後のピアースと永一がどうなったかは‥‥皆の想像にお任せ、ということで。