●リプレイ本文
●楽しみな新メニュー
「おばちゃんの作ったタコライスを食べるです。タコの炊き込みご飯も美味しいと思うです」
そう思っていたヨグ=ニグラス(
gb1949)は、学園の新メニューが食べられるらしいということで、カンパネラ学園制服を身にまとった友人のサンディ(
gb4343)をエスコートして仲良く手をつないで登校。
「制服、似合うかな‥‥?」
「コクコク、似合ってますですー♪」
学生気分で登校はバグアの襲来以来なサンディは、2度とこのように登校することは無いと思っていたが、チャンスは意外なところにあった。
「登校は楽しめたけど、学園生活を楽しめないのは残念‥‥」
「学園の新メニューを食べるのも、楽しみのひとつなのです。うまくいけば、おばちゃんが作ったタコライスが食べられるのです」
2人の登校中、稗田・盟子(gz0150)は聴講生が食べたいと要望した『タコライス』を作るべく学園食堂の調理室にいた。
「材料はご飯、レタス、トマト、挽き肉、チーズ、サルサソース、タコス用シーズニングね〜。うん、全部あるわね〜」
材料とレシピが書いてあるメモを片手に、調理手順を間違えないよう念入りにチェック。
フードを目深に被ったファタ・モルガナ(
gc0598)は、食堂のテーブルに置いてある塩、コショウ等の調味料の配置を地味に弄りつつ盟子の様子を見て感心。
「立派な学校だと、食堂も立派だねぃ。いやぁ〜こういうとこで学びたいもんだよ。自分は学がナイからねぇ〜。やっぱ無理かな〜?」
一通り弄り終えると食堂の窓から周囲を見渡したりと落ち着きがないが、仲良く食堂にやって来たヨグとサンディ、恋人同士の長門修也(
gb5202)と有栖 真宵(
gc0162)を見るとズイっと進めようと言い出した。
「うかうかしてると、食堂を血で染めそうで怖いんでね」
血で染めそうって‥‥一体、何をするんですか?
●要望聞いて!
「皆〜食べたいソウルフードがあったら遠慮なく言ってね〜。材料はある程度揃えてあるけど〜、無いかもしれないってことをあらかじめ言っておくわね〜」
この日のために多くの食材を揃えたのだが、万が一、ということもあるので。
「盟子さん、はじめまして、今日はよろしくお願いいたします!」
いつもの明るい笑顔で挨拶する椎野 のぞみ(
ga8736)に続き、サンディ、真宵も挨拶を。
「あなたがメイコ・ヒエダね。私はサンディ、よろしくね」
「盟子さんお疲れ様です。いつも美味しいご飯をありがとうございます。今回、ボクは盟子さん同様、皆さんから郷里の味を習いに来ました」
こちらこそよろしくね〜♪ と、糸目を細めて笑顔で応える盟子。
「早速だけど〜、皆が食べたいお料理を聞かせてちょうだ〜い」
レシピがわかれば何だって作るわよ〜、と盟子は大張り切りだ。
「ソウルフード、か‥‥。そう言えば、故郷にはあまり良い思い出は無かった気も。ずっと遠くに行きたいと思っていたが‥‥いざ離れてみると恋しくなるものだな」
瀬上 結月(
gb8413)は「ちなみに私、料理はできません」と言うが、「問題ないから大丈夫よ〜」という盟子の言葉を聞き安心したような表情に。
「ボクの出身地だと、ハンバーガーとかホットドッグくらいしか思い浮かばないのですけどもー‥‥魂の食べ物だから好きなプリンでも良いよね?」
直訳するとソウルは『魂』、フードは『食べ物』なのでそれでも良いかもしれない。
「そ、そうね〜。考えてみるわね〜」
●各国のスープはいかが?
「それじゃ、まずは自分から。実演できたら、それにこしたことはないんだろうけどさ。というワケでー」
ファタはフリップをどーん! と出すと『世界のご当地スープフェア』を提案。
「アメリカならクラムチャウダー、ジャポネならミソスープ! そんな感じでさ、世界には色んなスープ料理がある訳さ。様々な出身国の家庭で親しまれているスープがあると嬉しくなるもんだと思うのよ。ということで、週替わりとか月替わりで各国のスープを単品で出さない? 私のオススメはロシアのボルシチ、スペインのガスパチョ、イタリアのミネストローネ、メキシコのトルティージャだね!」
全部赤いね‥‥。
「あなたの出身のスープは何かしら〜?」
盟子にそう聞かれたが「自分の? んー‥‥アレね、アレ。スープフェアすればいつか出てくるよ」とはぐらかした。
●芋煮はいかが?
「これで鯉のうま煮を‥‥。法事には欠かせないよな」
そう言って結月が持ってきた食材は、水槽で窮屈そうに泳いでいる錦鯉。
「それ、どこから持ってきたのかしら‥‥?」
まさかとは思うけど〜‥‥と盟子が訊ねると、学園内を歩いていたら丁度良い食材を見つけたので池から持ってきたとのこと。水槽は池のそばに偶然置いてあったものを拝借。
「これでおばさんの負担も軽減されるかな‥‥。この前もおばさんの‥‥」
元の場所に戻してらっしゃい! と盟子に注意されたので「仕方ないな」とぼやきつつ錦鯉を戻しに行った。バレたら後が怖い。
戻し終え、食堂に帰ると早速「さんま羊羹を」と薦めだした。
「何それ〜?」
「知らないんですか? 羊羹の真ん中に秋刀魚が入っててこれがまたうみゃー‥‥」
方言が出た、と慌てて手で口を塞ぐ結月はどこの出身なのだろうか?
「と、冗談はさておき、普通に芋煮を‥‥。秋になると芋煮会たるものがあって、よく川原で昼間から飲んでたな。晩夏にこっちに来たから、今年は食べてないけど」
それでも、彼女にとってソウルフードであることには変わらない。
「こんにゃく、里芋、ごぼうを気持ち大きめに切って鍋に入れて、灰汁をとりながら良く煮て、柔らかくなったら牛肉を入れて、味付けに醤油と砂糖とお酒を‥‥。最後に大きめに切ったネギを入れて一煮立ちさせればできあがり。簡単でしょう?」
●漁村料理はいかが?
「あ、実際に作ってみた方がいいかなっと、材料持ってきました! 下ごしらえ済みですよ!」
のぞみが用意してきた材料は鮭と野菜、調味料一式。
「わざわざ材料を持ってきてくれたのね〜」
「はい、料理好きの本領発揮です!」
そう言って最初に提案したのは、鮭などの魚と野菜を鉄板で焼いた『ちゃんちゃん焼き』。ちゃん(お父さん)が焼いて調理するという説からつけられた名前だ。
「ネギ、じゃがいも、もやし、キャベツ等の野菜をステーキとかを焼くのに使う鉄板で炒め、その上に塩、コショウをしておいた鮭の切り身を乗せ、ホイルをかぶせて蒸し焼きにします。ある程度火が通ったら、そこに白味噌に酒、ショウガ、砂糖等でといたものをかけ、さらに蒸し焼きにします。味噌の味つけは家によって違いますが、ボクの家ではショウガたっぷりでした。鮭と野菜を混ぜて食べるとご飯に合います!」
ちゃんちゃん焼きで実際に使う鮭は半身だが、食堂で出すとしたら切り身の大きさを工夫しなければならない。
「次は『三平汁』です。鮭を用いた石狩鍋と混同されがちですが、これは魚自体が含む塩味が特徴なんです。鮭のあら(主に捨てる残りの骨や頭)を半日以上塩漬けにして、昆布のだし汁に根菜類、じゃがいもを入れて、塩抜きしたあらを入れて煮ます。地域によっては酒粕や味噌を入れるところもあります。鮭の代わりにマスや鱈もいいよ!」
寒い時期にはもってこいの料理だ。
「最後は『ザンギ』です。鶏や魚介等を醤油、ショウガ、にんにくで濃目の味付けをして揚げたものなんですが、道産子でも鶏肉の唐揚と勘違いしてる人いて‥‥」
材料が固定されてないザンギの語源は、中国語で鶏の唐揚げを意味する『ザーチ』がなまったものとの説が有力であるがゆえの誤解といえよう。
「ボクの故郷、北海道の漁村料理は美味しいよ! 定食には持ってこいだよ!」
●コーンブレッドはいかが?
サンディ紹介のソウルフードは『コーンブレッド』。その名のとおり、トウモロコシの粉を使って焼いたパンを指す。
「昔からアメリカで愛され続けている家庭の味の代表だよ。種類が色々あるけど、今回はオーソドックスなものにするよ。実際に作るから、食堂の厨房を借りるね。ヨグ、手伝って」
「はいです。働かざる者食うべからずと言いますですし」
コーンミール、強力粉、砂糖、ベーキングパウダー、塩、卵、サラダ油、牛乳を用意すると、オーブンに天板を入れて200度に温めた。
その間、ボウルにコーンミール、強力粉、砂糖、塩、ベーキングパウダーを入れ、泡立て器で良く混ぜる。
「良く混ぜるのがコツだよ」
オーブンが温まったので、型に油をひいて天板にのせ、さらに温めた。これはヨグの作業だ。
「まだ粉玉が残っているかもしれないね」
ボウルに卵、油、牛乳も加えて混ぜたサンディは、ここで混ぜすぎないことが重要と慎重に。
それを型に流し、25分〜30分焼き、表面がキツネ色になり、串しを刺してみて何もつかなければ完成。
「焼きあがったら熱いうちに型からはずすよ」
「ボクもお手伝いするです。おぉぉ、くっつくっ! くっつくっ! お腹と背中がくっつきそうだよぉ」
それほどまでに空腹なヨグ君でした。
●朴葉はいかが?
「俺が提案するのは、出身地である岐阜県東濃地方の料理です」
修也オススメのソウルフードは朴葉に酢飯をのせ、その上にいろいろな具をのせて最後に葉を四角くたたんで紐で結んだ『朴葉寿司』と、餅を朴葉で包んだ『朴葉餅』。
「朴葉ね〜。お味噌も美味しいのよね〜」
自家製の味噌にネギなどの薬味、椎茸などの山菜・茸をからめたものを朴葉にのせた『朴葉味噌』も岐阜県のソウルフードといえる。幸いなことに、朴葉も味噌も食材にあったので盟子はこっそりと胸を撫で下ろした。
「作り方は朴の木の葉の上に酢飯をのせ、鮭の切り身、川魚の甘露煮、舞茸、ワラビ、きゃらぶき、紅ショウガ、田麩、しめ鯖、キュウリ、漬け物、卵焼き等をのせ、畳んでできあがり。具は全部のせず、適時好みで乗せていくと良い感じです」
朴葉餅を作りますね、と、修也も厨房へ。
混ぜた米の粉と上新粉に、粉のパラパラ感が無くなるまで熱い湯を入れる。
「この時、湯の量が一番のポイント! 軟らかすぎず、硬すぎずで」
「なるほどね〜」
メモを取りつつ感心する盟子。
適当な大きさに分けて蒸し器で蒸し、箸を刺してくっつかなくなったら取り出し、それをボウルに入れると砂糖を加えよくこねる。
団子状にしたものを平らな物で押し、直径1センチ位にすると中央に餡をのせ、餅の生地を二つ折りにして閉じる。
「大きなギョウザを作る要領ですが、閉じる時に折りヒダはつけません」
最後に餅を朴葉で巻き、もう一度蒸す。
「朴葉の色がやや濃い緑になったら完成です。冷ましてから食べると、朴葉の香りがして美味しいですよ。よし、できた! 僕の郷土料理、とくとご覧あれです」
味噌鍋や焼肉で食す猪料理も推します! と、修也も故郷をアピール。
●ミネストローネはいかが?
「ボク自身は名前以外の過去の記憶がないので、郷里の味というものはないのですが、父の郷里の味である『ミネストローネ』を要望いたします。父はいつも適当に作っているのですが、美味しいです舌が覚えているのでしょうね」
真宵は【OR】高性能PDAを取り出すとレシピを出力。盟子同様、料理上手だがレシピがないと作れないからだ。
ニンジン、ジャガイモ、キャベツ等の野菜とベーコンを包丁で切る手つきを見て盟子は感心。
煮崩れない程度に細かく刻んだ野菜、ベーコンをチキンスープ、ローリエ、白ワイン、ホールトマトを加えて作ったスープに加えてコトコト煮込み、塩コショウで味を調えれば出来上がり。
「お好みでペンネも一緒に煮込めば、立派なご飯スープになりますよ」
【OR】高性能PDAでサンディとヨグ、修也、自分が作った料理を記録しながら説明する真宵だった。
●試食してみましょう
調理組の料理がすべて完成したので、全員で試食することに。
「はい真宵さん、あーんしてくださいね♪」
「は、恥ずかしい‥‥」
餅をあげる、というよりは食べさせなカンジの恋人同士、修也と真宵。
「ボクには故郷がないのでソウルフードなんてないですけど、お父さんの『家庭の味』がありますから‥‥」
「家庭の味もソウルフードです。真宵さんのミネストローネ、美味しいですね。俺もお父さんが作ったものを食べてみたいな」
いつかきっと、2人が真宵父のミネストローネが食べられる日が来るかもしれない。
「ボクが作った郷土料理も食べてください」
満面の笑みでヨグが差し出したのは、こっそり作ったホットドッグとプリン。
ドッグパンはサンディに焼いてもらったものを使用。それに焼いたソーセージを挟み、ケチャップをかければできあがり。
「おおぅ! パンに合いそうな料理もありますねー」
目をキラキラさせて料理を見るヨグに「私が作るタコライスもあるわよ〜」と言う盟子の言葉を聞いた途端、更にキラキラ度が増した。
「稗田さんは料理上手と聞いたので、期待大ですね。他のも美味しそうですし‥‥」
タコライスができあがるまで、結月は芋煮の味見を。
(「お母さんのより美味しー‥‥」)
嬉し泣きを堪えながら食べる芋煮の味は、とても美味しかった。
和食を楽しみにしていたサンディは、ちゃんちゃん焼き、三平汁、朴葉寿司を味わっていた。
「お待たせ〜。私が作ったタコライスができたわよ〜」
できたてアツアツのタコライスご登場に喜んだヨグが真っ先に試食を。
「お、美味しいよー!」
頬を膨らませて食べているヨグはご満悦。
「たくさんあるから、ゆっくりお食べなさ〜い。皆もどうぞ〜」
盟子に薦められ、他の皆もタコライスを食べた。
●ソウルフード決定
一通り試食を終えた後、食堂メニューに追加されたソウルフードが発表された。
発表されたのは、のぞみ要望の『ちゃんちゃん焼き』『三平汁』。これに結月要望の『芋煮』と漬物を加え、定食にすることが決まった。
次は修也提案の『朴葉寿司』とサンディ提案の『コーンブレッド』。
ファタ提案の『世界のご当地スープフェア』は、週替わりで行うことに。真宵要望の『ミネストローネ』も含まれている。
「結果的には〜皆が要望したものを取り入れたことになったわ〜。決め手は〜見た目と食べやすさよ〜」
最終的には、ほぼすべての要望が取り入れられた。
厨房の後片付けを終えた後、サンディとヨグは学園を見て回った。
「ヨグ、今日は楽しかったね。私のソウルフードが加えられたのも嬉しかったよ」
「ボクも楽しかったです♪ 全部美味しかったし」
真宵は、修也と【OR】高性能PDAに記録した各料理を研究。
要望があったソウルフード6品に、盟子が作った『タコライス』が追加された。
カンパネラ学園食堂新メニュー
『ちゃんちゃん焼き定食(ちゃんちゃん焼き、三平汁、芋煮、漬物)』
『コーンブレッド』
『朴葉寿司』
『ご当地スープ(週替わり)』