●リプレイ本文
●憤慨
「傭兵になってから初の帰郷が、このようなものになろうとはな‥‥」
破壊された故郷を目の当たりにし、ウチナーンチュ(沖縄県人)の風閂(
ga8357)は拳を強く握り憤りを覚えた。
「モアイのキメラ‥‥? 何だそれは」
頭の中で想像する見るゴドー(
gc3363)。
「優さんと一緒にお仕事するのは初めてですね。うふふっ、優さんが一緒だと心強いです」
信頼できる優(
ga8480)が側にいることもあり、小笠原 恋(
gb4844)は依頼を成功させようと張り切っている。
「モアイが動くって伝説は、見ない方が良かったね」
そうぼやきながらおばぁの写真とお気に入りの場所を書いたメモ、工房付近の地図を四十万 碧(
gc3359)が全員に配った。
「この人がトミさんですか。写真があったほうが捜索しやすいですね。ここに来る前に依頼人からお話を伺ったところ、トミさんは臆病な性格とのことです。なので、キメラ襲撃時には足が竦み、さほど遠くに逃げていないのではないかと‥‥」
佐治 容(
gc1456)が言うように本人の外見がわかるものがある、遠くに逃げていないのであれば探索の手間は多少だが省ける。
「おばあさんを助けるんだよ! 絶対! こんなことで終わりになんてさせないんだから!」
セラ(
gc2672)の言うとおり、破壊された村でおばぁの命を灯火を消すわけはいかない。
「イースター島の石像がなんでこんなところに‥‥キメラですが。バグアの考えは未だ理解しがたいですが、危険なのできっちり排除したいところです」
壊滅状態で生きていたら正直言うと厳しいが、それでもおばぁ救出が最優先と辰巳 空(
ga4698)は難しい状況下でもやるしかないと腹をくくった。
「今回の依頼は、キメラを倒すこととトミさんの救出です。二手に分かれて行動したほうが良さそうですね」
「何はともあれ、おばぁさんを無事に救出せねば。人命最優先だ。キメラ戦と救出を同時に行うのは大変だが、やるしかないだろう」
おばぁの写真を見ながら、木場・純平(
ga3277)が意見する。
話し合いの結果、純平、風閂、恋、守原有希(
ga8582)、碧、セラ、ゴドーの7名が探索、キメラの足止めは空、優、五十嵐 八九十(
gb7911)、湊 獅子鷹(
gc0233)、容が行うことに。
恋は優と別行動となったが、互いを信じているので何も言わず。
「行動開始です!」
有希が動き出すと、それぞれが行動を開始した。
●陽動
足止め班は、空を中心に作戦会議。
「基本的には、トミさんがいそうな所からモアイを引き離しつつ各個撃破を狙って活動します。注意点は‥‥そうですね‥‥建物を崩すと大変なことになるので、突進をある程度コントロールしないといけないことですねかね。まあ、直撃を食らうと私でも痛いでは済まなそうなので注意して戦いますが」
話を聞きながら、八九十は地図で村の地理を確認し、キメラの誘導場所を決めるべく目的地を確認している。戦闘に適した地形情報を事前に収集していたので、戦闘区域の選定は素早かった。
「皆さん、準備ができたようですね。これからモアイの挑発、誘導に入ります。色々突っ込み所満載過ぎて、どっから突っ込めばいいやらと言いたいですがそれは無事に終わってからにしましょう」
選定した戦闘区域へとモアイを誘導しつつ、八九十はメンバーとの連携を駆使し行動開始。
「おばあさんが無事だといいのですが‥‥。救出がスムーズに行えるよう、キメラを何としても引き付けます」
恋の無事を祈りつつ、優は周囲の地形を確認しつつ目的地に向かう。
「こっちは石垣が崩れ‥‥ん? 地面に何か引きずったような後が」
容は崩れた石垣付近の地面に何かが通った形跡を発見。
それを辿って歩くと、自分の背丈以上の大きな岩にばったり。良く見ると、それは顔だけのモアイだった。
大急ぎで覚醒すると『迅雷』で捜索班や工房から離れた場所へと走って誘導。足止め班にトランシーバーでの報告を忘れない。
「世界遺産に追っかけられるなんて‥‥! 容です、モアイ発見しました!」
「わかりました、これからキメラと接触します。時間稼ぎは私達に任せ、恋さん達探索班はおばあさんの救出をお願いします」
確認されたのは容発見の2メートルの顔モアイと優発見の1メートルの手足つきモアイ1体、70センチのふんどし着用と50センチのプカオモアイ3体。
「来なさい!」
大声でキメラの気を引こうとした優だったが、反応が悪いので呼笛を使った。それに気づき、手足つきモアイが突進した。
●探索
ゴドーと行動している有希は、地図を頼りに退避可能な場所を確認していた。
「最悪の事態覚悟の捜索です、生存時は救出しましょう」
「‥‥まあ、死なれても後味が悪い。無事に救助したいところだ」
足止め班がモアイを食い止めている間、恋は『探査の眼』を使って奇襲に備え工房に向かい、日本酒を飲んで覚醒状態を維持した碧は木に登り、双眼鏡で工房周辺を警戒。
「碧だ。今んところ、周囲には奴らの姿は見えないぜ」
「了解。碧殿、引き続き警戒を頼む」
地図を見て、現在地を確認しながら風閂はおばぁ探索を続けた。読谷村育ちなので地理を知り尽くしているのだろうが、帰郷している間に様変わりしている箇所があるので自信が無い。工房の瓦礫を払い退けながら、写真を頼りにおばぁを捜した。
「下敷きになっていなければ良いのだが‥‥」
時間が惜しいと、純平と組んでいるセラは『探査の眼』『GooDLuck』を駆使して迅速かつ丁寧におばぁ探索にあたった。
「トランシーバーで連絡を密に行おう、情報は命さ」
「そうだな。おばぁさん、いるなら返事をしてくれ!」
磁石で方角を確認しつつ、おばぁがどこかに隠れているかもしれないと純平は声を上げて捜す。
そこから数100メートルほど離れた工房内を探索している際、ゴドーは瓦礫が崩れる音に混じり、別の音を聞いたような気がした。気のせいか? と思ったが、耳を澄ますと、人のうめき声のような音が。
「小さいが誰かの声が聞こえた。下敷きになっているかもしれん」
「うちにも聞こえました」
瓦礫の隙間から確認したところ、下敷きになっていたのは捜していたおばぁだった。
急いで救出しようとしたが、下半身が大きな瓦礫に挟まれているので2人だけでは無理だ。
「一気に崩れては大変です!」と有希は探索班全員にトランシーバーでおばぁ発見を報告、救出を手伝って欲しいと頼んだ。
●救出
「足止め班が頑張っているようだが、モアイがここに近づくのを見た。救出は慎重にしないとな。風閂さん、瓦礫撤去を手伝ってくれないか」
「わかった」
力自慢の純平と風閂、『豪力発現』を使用した有希が瓦礫を静かに除去し、恋とゴドーが振動に注意しつつおばぁを救出。
「もう大丈夫ですよ、トミさん。お孫さんが待っています。行きましょう」
恋が『蘇生術』でおばぁを治療したが、意識が少し朦朧としているうえ、足の具合は芳しくない。どうやら骨折しているようだ。
有希は救急セットとエマージェンシーキットで処置し、右足に瓦礫付近にあった柱の破片を添木に加工した。
「工房の木ば、使うてごめん」
「さっさと行こう、ここで狙われるのも面倒だ」
「ここは我らにまかせ、ゴドー殿と有希殿はおばぁを安全なところへ」
イアリスとヴァジュラを構え、風閂は周囲を警戒しているゴドー、守られながら体捌きを制御しおばぁを背負う有希、安全な場所に移し終えるまではと同行するセラと純平を仁王立ちで警護。
「おばぁさんを安全地に連れて行く間、俺はキメラの足止めに回るのも良いだろう」
遠慮なくキメラを攻撃しようと純平は覚醒し、キメラ戦に備えた。
碧は近くにいたモアイを双眼鏡で発見次第、トランシーバーで全員に連絡した後にペイント弾で気を引き囮となった。これで少しはおばぁ退避の時間稼ぎになる。
●合流
「安全な場所に移し終えたね。さて、キメラ掃討の手助けに行くとしようか」
有希、ゴドー、純平におばぁの警護を頼み、セラはキメラ退治をしている足止め班の元へ。
おばぁの安全確保を聞いた足止め班、探索班は合流してキメラ総攻撃に。
「無事か、良かった‥‥。今から陽動から殲滅に移ります!」
分かれて誘導を行っているので、容はトランシーバーで連絡を取りつつ合流の手はずを整えながらモアイ同士を正面激突させる作戦に。
「曲がり角などを巧く利用して正面衝突させる、名づけて『マタドール作戦』です!」
マタドール作戦だが、追いかけている顔モアイと突如出没したふんどし着用モアイ1体がタイミング良くぶつかったので成功。そのショックでふんどし着用モアイにヒビが。
「安心するのはまだ早いよ」
合流したセラは、骨人形と続き、石人形が相手なので人形同士縁があることと思いながらも体当たりをアミッシオで受け、体ごと受け流した。
「ヒビが入っているね、シールドアタックを使わせてもらおう」
アミッシオの攻撃でダメージを受けたふんどし着用モアイ、撃破。
「十二分な成果さ、小さな傷の怖さは十分知っているんでね」
キメラであろうと小さな傷が致命傷になる。顔モアイだが、セラが攻撃している間に突進してどこかへ。
「トミさんの安全が確保できましたので、私も戦闘に加わります。今こそ頂いたリアトリスの斬れ味を試す時です」
恋が相手をするのはプカオモアイ。小型だが、体当たりを警戒し正面からの攻撃はしない。ジャンプ後に着地した瞬間を狙いリアトリスで斬りつけようとしたところで体当たりをくらったが、『自身障壁』を使用したのでダメージは無かった。
「恋さん、大丈夫ですか?」
合流した優が恋を心配し駆けつけた。無傷なのを確認し、安心したところで連携を取り早期殲滅に。
2人に接近したペイント弾付き手足つきモアイを月詠と機械刀「凄皇」を扱い『両断剣』『ソニックブーム』を多用してモアイの攻撃を正面から全力で受け止めて隙を作ろうとしたのは良いが、パワーに差があり吹き飛ばされた。
「優さん!」
恋が地面に叩きつけられる前に抱き止めて助けたので、間一髪のところで地面に叩きつけられずにすんだ。
息が合った2人の攻撃でプカオモアイ、手足つきモアイ撃破。
「バアさん助けるより、俺にはドンパチの方が向いてるか。おーおー、こいつは硬そうだな。どんだけ硬いかぶん殴って確かめるか」
獅子鷹が相手にしているのは、ばったり出くわした顔モアイ。
スタンスを広く、両拳を肩の位置に置いて前を重心にした攻撃に重点をおき天拳「アリエル」を用いた摺り足からの飛び込みからの右フック、『両断剣』を使い、前体重を乗せた左ストレートを思い切り叩き込んだ。
「カーッ! 硬ぇなあ! ちったあ砕けろ顔デカ野郎!」
体さばきとタイミング、フットワークを駆使し回避し、円を起点とし天拳「アリエル」を利用して力を受け流すように防御、必要であれば体重付加のカウンターで背面に『流し切り』を用いたバックハンドブローを繰り返すが、防御力が高いので容易く倒せない。
「ワジワジー(「私は怒っている」)! 俺の故郷、これ以上破壊させぬ!」
ウチナーグチ(沖縄の言葉)を交え怒り心頭の風閂が合流し、『両断剣』使用後に『ソニックブーム』で援護しているところに碧も合流。
「獅子鷹さん、援護するからしっかり当てろ!」
顔モアイに貫通弾使用後、最も近い獅子鷹に『援護射撃』で援護、フォルトゥナ・マヨールーで機動力を奪うようにヒット&アウェイ戦法、ゼロ距離での機械剣βでの攻撃を繰り返した。
3人の連携攻撃で顔モアイ撃破。
●殲滅
回避に専念していた八九十は、プカオモアイ2体の同時攻撃を『瞬天足』で接触直前で緊急回避、壁走りをしてモアイ後方へとジャンプし、突進力と後方からの突撃を利用して障害物に激突させたり互いの衝突を試みた。
「そこだぁ!」
『限界突破』と『急所突き』を併用し、衝突成功時に生じたヒビに全体重を乗せた蹴りと正拳で1体ずつ撃破。
空は崩れた建物の影を利用して隠れながら正面を避けて接近し、小型モアイから順に天剣「ラジエル」で削る、間合に注意しつつ戦いやすい場所まで引き付けて『瞬速縮地』で側面に踏み込んで削るを戦況によって使い分けた。その間に小型数体を逃したが仲間が撃破している。
「囲まれしまいましたか」
ふんどし着用モアイ、手足つきモアイに囲まれたが、『獣突』を使いなんとかその場を切り抜けた。ふんどし着用モアイは撃破したが、手足つきモアイに逃げられた。
逃げ出した残り1体だが、運悪くおばぁがいる退避場所に出没。
純平は『限界突破』『疾風脚』使用後に『瞬天速』で回り込み、ゴドーは『竜の咆哮』『竜の鱗』で足止めを。
「おっと残念、一時停止だ」
「此処に希望ば有らしめる!」
脚や腕に攻撃を集め、自らの脚を使い撹乱し有希は手足モアイを逃さない。
最短軌道が基本なので『急所突き』、蝉時雨と蛍火のスイッチヒット二刀流で斬り抉りカウンターや回避、『流し斬り』『豪力発現』での精密制御、剣の重当てを。
「逃がさん!」
それに加え、物理攻撃が通用しそうにないと聞き装着式超機械を装備した純平の一撃、ゴドーの『竜の爪』『竜の咆哮』で徐々に崩れ、しまいには砕け散った。
「やれやれ、硬かったな‥‥」
「ふざけた外見だが、厄介な相手だった」
「終わった‥‥んですね‥‥」
どっと疲れが出たおばぁ護衛の3人だった。
モアイキメラ殲滅:成功!
●再開
「わ、私のモアイ達がっ!」
オーマイガー! と頭を抱え傭兵達の前に現れたのは、キメラを作成したバグア・安珍。
「おまえが安珍か。バグアに読谷山花織のシャツを着る資格なし! 村の伝統と家族の絆、イースター島の怒りを思い知れ!」
邪魔にならない程度にどつこうとした容だったが、得意のカートゥーン走りで逃げられた。空が『瞬速縮地』で突っ込んで滅多切りしかない、反撃に要注意と思ったのと同時に。
カートゥーン走り逃亡には必ずオチがつくというが、安珍も例に漏れず。逃亡中にコケたのだから。
おばぁは無事に依頼人の女性と再会することができたが、念には念をと入院することに。
「これからも、おばぁさんと一緒に素敵な織物を作ってくださいね。トミさんはあまり無理しちゃダメですよ」
恋の言葉におばぁは小さく頷いた。
「二人っきりの家族だもんな、会えてよかった‥‥」
「おばぁには、カジマヤー(数え年97歳の祝い)まで機織をしてもらいたいものだ」
「後は『わたし』に任せて私は失礼するよ」
覚醒を解くと「あれ? セラ、何してたんだろ」ときょとんとなったが、容、風閂と依頼が無事終了したことを喜んだ。
碧は報酬を工房復旧資金として渡そうとしたが丁重に断られ、ゴドーはおばぁ救出時に工房から回収したまだ使えそうな読谷山花織を村に手渡した。
その夜、風閂の三線に合わせ容の踊り、セラの歌が村の集会で披露された。