●リプレイ本文
●復興準備
三崎・裕士(gz0096)は、村の復旧作業を志願した能力者達と密林付近の小さな村へと向かった。
交通の便は悪くは無いのだが、キメラに襲撃され車両通行ができない状況下なため途中から徒歩に。
「さて、戦って壊すだけが傭兵の在り方ではないことを示すとするか」
ヘイル(
gc4085)は疲れを見せず復旧作業に乗り出し、アルヴァイム(
ga5051)と共に村の被害状況、住民数等を調べることに。
戦時中の戦闘の激しさから道路、通信、公共施設等の被害や住民の精神を含む負荷状況を推察しながら、アルヴァイムは必要な資材を試算し、廃材や現地の資材を回収を提案。
「先に資材を集めましょう。昨年の瀋陽以来ですかね、こういうのは」
少し離れた町に、丁度いい具合に復旧に適した廃材があった。
事情を丁寧に説明して分けてもらえないかと交渉したところ、彼が能力者とわかると町民は快く分け、ついでにと工具を貸してくれた。
その頃、ソウマ(
gc0505)は眩しいものを見るように村を見渡していた。
「パイプラインの復旧の目処は立っていないと聞いてますが、皆、表情は明るいですね。さすがは陽気なラテン系ってところですか。僕達も見習わないといけませんね」
復旧作業をしている村民達を見て、どんな苦境に立たされても、笑って乗り越える強さをと心に刻んだ。
「三崎さん、現状はどんな感じですか?」
復旧するにはまず現状把握、ということで村の状況を三崎に訊ねる。
「そうだな。ここに来る際に通った村唯一の交通手段である道路は、キメラの襲撃で穴が大小いくつも開いている。民家はさほどでもないようだな」
とにかく段取りをしっかりとしておかないと、ということで【OR】特殊NPCで情報をまとめる。
ソウマはどちらかというと頭脳派と自認しているので、無駄なく、効率的に行動できるよう計画はきっちりと立てておくほうだ。というが、決して肉体労働が苦手なわけでない。
「復興作業か‥‥こんな依頼も悪くない。壊すだけ倒すだけよりも、よほどいい依頼だな」
秋月 愁矢(
gc1971)は、子供に笑顔が戻るのが一番いいだろうと菓子を用意。
「あと必要なのは、医療品か‥‥」
三崎に風邪薬や包帯、ガーゼ、消毒液等の簡易的な物を詰め合わせた簡易医療キット、チョコレート系を中心とした日持ちする甘いお菓子をたくさん用意してほしいと頼んだ。
「機械の手配もしておかないと。大掛かりなものは無理でも、役に立ちそうなものはありますからね」
「まあ、学業やってるよりもマシさね。医療品は俺が持ってきたものを使ってくれ。一応、簡単な医薬品類は持ってきたぞ。消毒液とか絆創膏とか、湿布とか。あと市販の薬類もろもろ」
AL−011「ミカエル」に可能な限り積み込んだ食料品や市販の薬品を主とした医療品、ウォッカの瓶、ウォッカ入りの【OR】チタン・スキットルを降ろすリック・オルコット(
gc4548)が荷物を指差して言う。
「ありがとう、助かる」
リックの申し出に愁矢は感謝した。
「酒も持ってきたが、飲むのは仕事が終ってからか?」
「当然だ」
大規模作戦に巻き込んだ原因の一端について、多少見覚えがあるので苦しい限りの百地・悠季(
ga8270)は、少しでも負担が軽減できたら良いと思っていたところに慰安行為ともいえる今回の依頼が嬉しかった。
「まあ、ある意味元凶を確保できたおかげで今回は勝ちとは言えるんだろうけど。そこに至るまでの道程で色々災禍がもたらされたと中立を標榜して安穏を維持するために両軍を遠ざけてた気持ちはわかるけど、その結果がこうなったからね」
料理の腕をふるい、存分に復興を手伝うことに。この手に関しては、裏方辣腕をふるう夫のアルヴァイムがいるから大丈夫だろう。
ヘイルの情報をもとに、悠季は配給人数を見極めそれに応じた素材の分量を用意。
皿、フォーク、スプーン類を準備し、覚えたレシピを現地で即座に調理完了できるよう下拵えを。
「ふむ。結構な人数が焼け出されているな。まずは食糧の確保が優先か?」
何か食糧になるものはないかと、ヘイルは辺りを探し始めた。
●作業開始
復旧作業を通し、国内外の交流を促進、戦争被害によるわだかまり解消を狙うアルヴァイムはインフラ整備に注力し、後続への参考資料編纂も行うことに。
村民に土木作業経験者、力自慢の助力を仰ぎつつ作業を実施。
「まあ、こんなゴッツイもん着込んでるんだ。力仕事は任せておけ」
リックはミカエルを使用しての力仕事をメインとし、道路の再舗装や建造物の補修手伝いを土木作業員だった村民の指示に従いてきぱきとこなしている。
「まあ、やるだけやってサヨウナラって訳にはいかないさね。後始末はしっかりとしていかないと」
学園にいるよりは、こういうふうに依頼をこなしているほうが性に合っているようだ。
「勉強なんてやってられるかっての。人助けってやつも悪くない。カタギじゃない仕事についていた俺には、ね。お、三崎、いいところに来た。これどかすからそっち持ってくれ。さすがに俺だけじゃバランスが取れない」
側を通りがかった三崎に、大きな岩をどかすのを手伝ってくれと頼む。AU−KVを装着しているとはいえ、1人で出来ないこともある。
「サンキュー、助かった」
「ここは任せた。自分は、配給の様子を窺いにいく」
「任せとけ」
アルヴァイムはあらかた歩道の整備を終えると、倒された街路樹の撤去と植樹を始めた。
今後の復旧活動に伴う重機の搬入、復旧作業を意識して主幹部分から広げる形を取りながら、人数が不足気味な箇所への補填を高性能多目的ツール等の手持ちのキットを有効活用しながら行っている。
三崎から支給された機械をフル活用し、ソウマは村民と歌を歌いながら作業中。
ラテン系ということなので歌いながら作業をするのかと思っていたら案の定。
キメラに襲撃されたことを忘れるかのように、復旧作業を手伝う村民達は陽気に歌い、踊りながら作業をしている。
せっかくの機会なので現地の歌を覚えて帰りたいと思っていたら、ガタイの良い土木作業員風の男が「歌を教えてやるよ、土産にならんだろうが」と声をかけてきた。
お言葉に甘え、ソウマは歌を教わることに。その間、作業の手を休めていない。
復旧作業中に負傷した村民達は、アルヴァイムの応急キットで治療された。
「政府組織へ治療を打診しますので、病院に搬送する人がいましたら言ってください。改善希望点や不足している物資もです」
柔和な態度で村民達の要望を伺い、後で資料をまとめることに。
●炊き出し
悠季とヘイルは調理を担当。
村の中央広場が丁度良い具合に開いていたのでそこにテントを張り、配給所兼治療所とした。2人だけでは大変だろうと、様子を見に来た三崎も手伝った。
メニューは、ボリビアで主に朝食に供される惣菜パンの一種で形状が餃子に似ているサルテーニャ、チーズ粥、蒸しジャガイモと牛肉が多めのパエリア、バナナのフライ、鶏肉や牛肉、たまねぎやトマト、パセリ等を煮込んだ濃厚なシチューであるピカンテに決定。
「作る料理はこんな感じね。あたしは揚げ物と炒め物を担当するわね。煮物、蒸し物はヘイルさんやお手伝いしてくれる人に任せておくわね」
「わかった。三崎氏、周囲の人達を集めてくれ。協力を仰ぎ、作業の手配や手伝いを頼もう。やることさえあれば活力も出るだろう」
「わかった」
数分後、調理の手伝いに来た村民数人が三崎に連れられて来た。
「あの‥‥これを。わずかですが‥‥」
村民が差し出したのは、自分達が作った野菜や持ち寄った果物だった。その中には、チチャと呼ばれる現地の発酵酒やマンゴーやパパイヤといったフルーツもある。
「ありがたい、これで子供向けのジュースが作れる。では、調理――開始」
手早く調理するヘイルの手つきに、村民達は「おおーっ」と感心。
「こんなものかしらね」
小麦粉で作った生地に具材をくるみ、サルテーニャの形を整える悠季の様子を何人かの子供が瞳を輝かせて見ている。
「初めて作るから美味しいかどうかわからないけど、期待しててね」
●配給作業
人数が増えたこともあり、調理は思ったより時間がかからなかった。
料理がおおかた出来上がったので、悠季は周辺の村民を呼び、好きなものを選んでもらうことに。料理が盛られた食器を揃え、笑顔で手渡した。
「さあ、できたわ。順番に並んで。チーズ粥以外は喉が渇くと思うから、お茶を飲んでね。あ、未成年はお酒厳禁よ?」
配膳の間、我慢しきれず割り込んでこっそりとつまみ食いをする少年が。
「おっと、そこの少年。つまみ食いは無しだぞ。こっちに来てジュースの味見をしてくれないか?」
手作りのマンゴージュースが入った紙コップを手渡したヘイルがつまみ食いを阻止。
「これ、美味しい!」
「そうか。悪いが、作るのを手伝ってくれないか? 友達も誘って来るといい」
ご馳走様! と紙コップをヘイルに返した少年は、友達を誘ってくると走り出した。
愁矢は大人には医療品を、子供にはお菓子を配給。
「簡易的な物だが役に立つだろう。数が足りないかもしれないから、近隣の人々と分け合って使用してくれ」
多めにもってきてはいるが、足りなくなるかもしれないのでそう説明する。
救助が必要、あるいは早急な治療が必要な村民がいないか確認したが、幸いにも病院に運ばねばならないほど治療を要するのは誰もいなかったので一安心。復旧作業前、治療が必要な村民はアルヴァイムに手伝ってもらい治療済み。
「医療や復旧に関して意見があれば言ってくれ。まとめてこの後の復興担当の部隊に引き継ぐ」
医療品配布の合間に、列に並んでいる子供達にお菓子を配る。
なるべく多くの子供に配れるよう多めに持ってきたのだが、数が足りなかったのでお菓子を巡るケンカが起きた。
「こら、喧嘩両成敗だ。お菓子は奪い合うんじゃなくて分け合いだ。いいな?」
愁矢は子供からチョコレートをひったくると半分にし、ケンカしていた子供達に手渡して仲裁。
「将来を担う子供の笑顔があれば、大人は頑張れるはずだ」
お菓子を食べて喜ぶ子供達の笑顔を見て、自然と笑みがこぼれた。
●親睦会を
復興があらかた終わったので、能力者達は三崎と後片付けを。
その間、調理の際に使用していたテントでアルヴァイムはヘイルと協力して、村民達の聞き込み結果を簡単な数字を添えた資料を編纂中。
主な内容は支援物資や各重機の手配数。今後の都市計画への反映を意識して資料を編纂し、今回の作業内容添付、今後の復旧作業の参考として政府当局へ署名付きで提出することに。
「そっちの作業終わったか? 今から、村の人達と飲み会するんだと」
「飲み会じゃなくて、慰労会を兼ねた親睦会でしょう? アル、そっちが終わったら来てね。待ってるわよ」
様子を見に来たリックと悠季は、終わったら村の広場に集合と伝えるとテントから出た。
後片付けが大方済み、親睦会が始まる頃には日が沈みかけていた。
復旧作業は能力者達が率先して行っていたので、三崎がしたことは資材、食材の調達だけである。そんな自分が乾杯の音頭をとるのは‥‥と断ったのだが、能力者達は復興作業を持ちかけた三崎がやるべきと薦めるので渋々乾杯の音頭をとることに。
「それでは‥‥。この村の復興と今後の発展を願って‥‥乾杯」
『乾杯ー!』
親睦会は、リックが持ち込んだウォッカとヘイルが手伝ってくれた少年と作ったパパイヤとマンゴージュース、こんなこともあろうかと悠季が余分に作った炊き出しが振舞われた。
村民と歓談しつつ、悠季は悩みや展望を訊ねてみた。そうすることで、不安であろうとも今回みたく世界が駆けつけるであろうことを示して元気付けようとしている。
資料編纂を終え、合流したアルヴァイムに「ご苦労様」と差し入れを。
「ありがとう」
「アルに差し入れるのも女房の勤めだから」
ウォッカを飲みたいという村民と飲んでいたリックは、瓶を手に「お2人さん、おあついね」と冷やかす。
「破壊されても再興し活力を生む、これも人の強さだな」
楽しそうな村民を見て、ヘイルは自分達がいなくても大丈夫だろうと思う。
辺りを見回すと、村長らしき老人に挨拶した三崎が村を立ち去るのを見たので、手伝ってくれた少年と作ったパパイヤジュースを詰めた瓶を手にして駆け寄った。
「三崎氏、もう帰るのですか?」
「ああ。エストレーラに復興作業が無事終わったことを報告するのでな」
「そうですか。これ、娘さんへのお土産にどうぞ。お見舞いの品でもありますが」
ありがとう、と礼を述べ、三崎はエストレーラがいる病院に向かった。
「願わくば、この地の人々の笑顔が失われませんように」
慰労会が行われている広場から離れると、ソウマは『GooDLuck』を使用。
これにより彼の『キョウ運』がUPし、普段ありえない事象を招きよせるキョウ運の持ち主になる。「強」運か「凶」運かは運次第だが。
お開きになった時刻、南米一帯の空に流星群が降った。ソウマのキョウ運がもたらした結果だろうか。
復興作業:成功!
後日、能力者達に贈られた三崎のメッセージ
『皆、お疲れ様。村民に希望を与えてくれてありがとう。
エストレーラも、復興にとても喜んでいた。土産のジュースもな。
大規模戦はますます激しさを増すだろうが、今後も頑張ってくれ』