●リプレイ本文
●年末決戦! 集え援軍!
永一のビーストソウルが最初に援軍要請したのは、断崖絶壁の上で腕組みをして遠くを見つめている美空・桃2(
gb9509)。
「来たか」
カッと瞳を見開いて呟くと、心の呼びかけに応じたかのように愛機が4本足で大地を疾駆。美空はひらりと宙を舞い、頭部着地すると他の仲間と合流すべくビーストソウルに付いていく。
流叶・デュノフガリオ(
gb6275)とタクティカルゴーグルを利用して観測しているエシック・ランカスター(
gc4778)はビルの屋上で蕎麦大蛇が暴れているのを目撃。
「でかいですね」
「迫るのが早過ぎる‥‥援軍が来るまで間に合わない‥‥?」
街の建物の屋上から蕎麦大蛇が暴れているのを見た流叶は、それと逆方向に手を翳して愛機を呼ぶ。
「来い、皇騎!」
凛とした声と共に愛機が後ろから滑空してきたので飛び乗ろうとしたが、エシックに「援軍が到着するまで待ちましょう」と待ったを。
「援軍が来るまで私が時間を稼ぐ。来てくれてありがとう、皇騎。行けるかい?」
『無理だっつっても聞かねぇんだろ?』
呆れた皇騎は斜に構えた青年風にそう返す。
「良く分かってるじゃないか‥‥行くぞ!」
笑みを浮かべ、援軍を引きつれ駆けつけるまで1機で足止めをすべく漁港へ。
「しかたないですね。Come Here!」
天に握り締めた【OR】隼のペンダントを掲げると一陣の風が起こり、辺りの景色が微かに歪む。風が止むと同時に、フレーム「ギリードゥ」で擬態していた愛機『Black tailed Gull』が姿を現した。
「行きましょう」
愛機に飛び乗り流叶の後を追う途中、ビーストソウルと合流し行動を共に。
「ともかく、やるしかなさそうですね」
KVマニュアルに目を通しているうちに眠ってしまったらKV戦をすることになっていた沖田 護(
gc0208)。一年の傭兵生活に加え、異常事態への適応が早くなったので気持ちの切り替えは誰よりも早い。
漁港に向かう途中、酒屋を探している夢守 ルキア(
gb9436)とキヨシ(
gb5991)に会った。
「沖田君じゃないか。きみも酒屋乗っ取りをしないかい?」
「酒屋乗っ取り? 神話で酒に酔わせて退治したから?」
「そう。大蛇って言ったらやっぱりお酒だよねー」
八岐大蛇は酒で酔ったところをスサノオノミコトに退治されたので、蕎麦大蛇も同じ方法で倒せると思っている。
護を巻き込み酒屋を探し、キメラ退治に酒が必要だからと説得して乗っ取りに成功、とはいかなかった。店を乗っ取られたら年始挨拶用の酒が無くなる! と店主に泣きつかれたからだ。困らせるのは悪いと観念したルキアは、キメラに飲ませる分だけちょうだいと交渉。キメラ退治のためなら、と店主は渋々応じた。
「乗っ取りは失敗かー。酒が用意できただけでもいいか。キヨシ君、ナイトフォーゲルを呼ぼう」
キヨシと『ルンルンルキア、プロミネンス、ドレスアップ!』と息の合ったポーズで呼ぶとルキア機『イクシオン』は赤いフリフリ服、頭部にアンテナを2本。キヨシ機『ヴィルーパークシャ』は水色を基調としたフリフリ服、頭部に縦ロールカツラをつけた魔法少女のような姿で登場。
ヴィルーパークシャに飛び乗るなり『三十路過ぎのオヤジのやることではありませんね』と言われ、出撃前に凹むキヨシ。
「くっくっく‥‥永一も妙なキメラに好かれてンなぁ〜。今回も助っ人するぜぇ☆」
昨年の初夢では黒焦げになり、数年後に発掘という悲惨な目に遭ったピアース・空木(
gb6362)。
「よし、行くぜReaper! シフトだ!」
愛機『Reaper − 死神 −』を変形させようとするが拒否された。
「何故っ!?」
『‥‥当機の威厳に関わるため、バニーは却下‥‥』
移動中に突然システムダウンし、戦闘前に墜落の危機に。
「おぉぉい、墜ちるなぁぁぁっ!? そんなに嫌か!? 最高のオイルご馳走してやっから! 最高級ワックスかけてやっからっ!」
不本意ながらも愛機を白兎なバニーにして出撃させるべく、ウサ耳を付け宥めることに。
『‥‥わかりました』
ピアースに根負けし、Reaperはバニー変形を。
●漁港決戦! 倒せ大蛇!
途中で永一を乗せたビーストソウルと援軍が漁港に向かう間、流叶は空戦に突入していた。GP−7ミサイルポッドで他の首を止め、KA−01試作型エネルギー集積砲とRA.2.7in.プラズマライフルで近寄る首から迎撃。
皇騎は苦戦を強いられているが、皆が来るまで倒れるわけにはいかない。
『援軍が来るまで待ったほうがいいんじゃないのか?』
「大丈夫、皆が来るまでの辛抱だ。いざとなったら」
『愛する旦那様が来てくれる、だろ? おあついねぇ』
照れながら狙撃するも、蕎麦大蛇の猛攻でダメージをくらい奮戦虚しく撃墜、流叶は脱出ポットに乗り込んだ。
(ひとりでの戦闘は無謀だったか‥‥!)
「あれは‥‥流叶!」
不時着する皇騎を見たヴァレス・デュノフガリオ(
ga8280)は愛機『Deneb Cygni』で高速突入し、蕎麦大蛇を射程に捕らえると同時にK−02小型ホーミングミサイルで射撃して目晦ましを。
「目標補足、受けろよっ!」
『バーニア消耗率危険域到達』
最大出力での戦域突入に機体が悲鳴を上げたのか、無感動な女性オペレーター音声がが。
「保たせろ! ンなヤワに出来てねぇだろ!」
このまま終わるのかと諦めかけた時、多弾ミサイルで目を眩ませたヴァレスが墜落した皇騎に接近し脱出ポットを回収。
「流叶、大丈夫か!? 今、助け出すからっ!」
「‥‥遅い、じゃないか‥‥。待ちくたびれたよ」
憎まれ口を叩き、笑みを浮かべるも戦闘手段が無くなったのでため息をひとつ吐く。
「もう少し、持ち堪えれば良かったんだけど‥‥」
コックピット内で墜落した皇騎を見て小さく呟く。
「まだだ、まだあいつは倒されていない。倒すんだ、2人で!」
「‥‥わかった。キミがそういうのなら」
力を求めらたので、頷いて力を合わせて倒す決意を。
2人でコックピットに乗るのは良いが、密着しているため流叶の高鳴る鼓動は抑えられないが攻撃照準の補正、視野を広く持ち危険回避等の行動補佐を。その間、ヴァレスは攻撃と回避に全神経を集中。
「蕎麦大蛇を退治してレディとらぶらぶなんだねっ!」
ルキアの言葉に首を傾げたが、大蛇退治後にスサノオノミコトがクシナダヒメを妻にしたことか、とわかった永一。
「水中キット持ってないから、永一君、ビーストソウルで追い立ててね。サーベイジを使って、逃げる方が楽って思わせるくらい強い打撃で」
イクシオンに「泳いでよ」と頼むが「カナヅチなので無理ーっ」と断られた。
「永一! しっかり追い立て頼むぜぇ♪」
ビーストソウルの追い立てに加え、陸上から狙撃する美空とエシックの射程内に留めるため位置取りに気をつけながらピアースは火力低めのG−M1マシンガンで牽制し、蕎麦大蛇の動きを規制するため、他機の発射に合わせI−01「パンテオン」での掃射も交える。
「出てきましたね。あれの首をかけて勝負であります。勝ったほうが負けたほうを好きにできる、というのはどうですか?」
「面白いですね、いいでしょう」
2人はどちらが先に蕎麦大蛇の真ん中の首を仕留められるか競争することに。
「100戦100引き分けですが、今日こそ決着をつけるであります」
空戦の仲間を援護しつつ『リンクス・スナイプ』を発動し、大蛇の8本の首を左右から狙撃する美空。
「少々風がありますね‥‥面倒です」
風見を立てて測定し、単色で擬態しやすそうな場所を見つけ狙撃位置の目処をつけると腹這いになり『テールアンカー』で機体を固定させたエシックは、スナイパーライフルLPM‐1とD‐013ロングレンジライフルを使用して狙撃。
「‥‥俺の知る限り、目を攻撃されて怯まない生物はいません。あれに目はあるのでしょうか」
確認したところ、ゴマ粒のような目があったので『リンクス・スナイプ』で正確に狙う。
「水辺の浅い部分ならヘルヘブンでも足が立ちます」
護はビーストソウルから入手した周辺の地形データをチェックしルキア機、キヨシ機の管制範囲内で水際、地上から射撃。
上空から様子を伺っていたキヨシは、隙を見つけて急接近。
「ククク‥‥ハーッハハハハ! くたばれやデカブツ!」
愛機に突っ込まれて落ち込んでいたが、かなりのハイテンションですれ違いざまに127mm2連装ロケット弾ランチャーを叩き込む。その表情はめちゃくちゃ悪人顔なので怖い。
『顔だけ見たら、どっちが悪役かわかりませんね』
ため息混じりに呟くヴィルーパークシャを無視し、ファランクス・アテナイや強化型ショルダーキャノンで援護射撃を。
●一斉攻撃! 大蛇撃沈!
蕎麦大蛇を漁港周辺に近づけないよう警戒していたが、攻撃を逃れようと水中移動で動き回っているうちに接近したのでピアースは愛機を空中変形から首に取り付き地面に叩き伏せ、頭部に機杭「ヴィカラーラ」を撃ち込み岸壁に縫い付けてライトニングファングで縦に3枚下ろしに。
「うなぎじゃねぇけど‥‥まぁ良いだろ♪ そぉ〜れ☆ てめぇらでかけそばをいただいてやるぜぇ!」
首はあっという間に下ろされ麺に。すごく太いが気にしない。
「ターゲットロック。目標相対距離200.25、重力、大気状況による補正完了!」
「‥‥出力変換開始、出力40パーセント‥‥50、60、70‥‥」
出力が最大に達したところで、2人のエミタの力を合わせたアハトを発射。
「いくぞ流叶! ノーザン!」
「クロス!」
「「フル・バーストオォォォ!!」」
必殺技『ノーザンクロス・フル・バースト』が蕎麦大蛇の中央部を貫く。
「トドメだ! バ〜ニシングナッコー♪」
蕎麦大蛇の口を無理矢理抉じ開け『『SES−200』 オーバーブースト改A』付加の必殺技を。
「ひゃははは♪ チビれやぁぁぁ!!」
首をまたひとつ撃破し、更に攻撃を繰り出すピアースを発見したキヨシは背後に回り込むと援護射撃、と見せかけた8式螺旋弾頭ミサイル発射。
「ハーッハハハ、弾けろや!!」
「キヨシ! おめ‥‥何で俺の後ろにまわってンだっ!?」
寸でのところで回避したので墜落は免れた。
「『チッ!』」
外れたので聞こえるようにヴィルーパークシャと共に舌打ち。その後も援護と見せかけた威嚇射撃を繰り出す。
「俺は蕎麦大蛇じゃねぇ! わざとやってんだろっ!」
「わざとやないで」
絶対わざとだ! と蕎麦大蛇に突っ込むが、キヨシの射撃に耐え切ずReaper、戦線離脱。
「や‥‥ちょっ‥‥やめっ!? のぉぉぉぉぉっ!?」
解放されたかに思ったが、Deneb CygniのK−02小型ホーミングミサイルがロックオン、『PRMシステム・改』を攻撃にフル注入したので威力は半端ない。
「あ、ゴメン。つい手が」
ヴァレスが謝るが台詞棒読み。
『‥‥状況報告‥‥『白兎』‥‥system down‥‥』
「だから墜ちるなぁぁぁっ!!」
ヴァレス、テンションMAXで歯止めがきかないキヨシの全弾発射によりピアース・空木、愛機と共に出雲の海の藻屑に。
「俺、今年もこんなのかぁー!?」
墜落したReaperを見て、とりあえず落ち着いたキヨシは「やりすぎたか」と反省。
その様子を見て呆れるも、ルキアはD−02で攻撃しつつ後退し蕎麦大蛇を陸へ惹きつける。
「トゥインクル ブルーミッシュ! 陸に上がれーっ!」
水辺に向かう途中も迎撃。
(たしかお酒に弱かったよね、大蛇‥‥)
誘導先にいる護の側には、酒屋店主に用意してもらった酒樽が置いてあり、上手く誘導できたら飲ませる算段に。
一斉攻撃でほとんどの首が落とされ、胴体に大ダメージをくらったが蕎麦大蛇は攻撃をやめることはない。
惹きつけを待つ護機『マッハランサー』に鎌首をもたげ攻撃しようとしたが、反撃だとSAMURAIランスに貫かれた。
「KV戦は演習くらいしかやってないんだけどな‥‥。とにかく、基礎と、ヘルヘブンの得意分野を生かして戦う!」
蕎麦なら装甲は薄いはず、と首を惹きつけることで皆の助けになる。
「撃って! 突いて! 逃げて!」
押し付ける首のパワーにより車輪が引っかかりマッハランサー転倒。
「転んで‥‥っ!」
素早く起き上がり戦列復帰。
「ルキアさん、俺が食い止めている間に酒を!」
「わかった。たらふく飲んでねー」
樽をポイッと投げ蕎麦大蛇の口に次々と放り込む。酒が全身に回ったのか、蕎麦大蛇は赤くなりフラフラに。
「皆、一斉に叩くよ!」
空中、陸上からの一斉攻撃で酔っ払った蕎麦大蛇は倒された。
●悪夢終了! まだ続く?
「終わったね、行こうか」
「‥‥うん」
戦闘終了後、ヴァレスは流叶を膝の上に座らせてから静かにキスを。その後、2人は空の彼方へと消えていった。
「さて、仕上げやな」
キヨシは海面に浮かぶ墜落させたReaperを引き上げ、ピアースを引き摺り下ろすと不気味な笑顔を浮かべ、白ペンキで気を失っているピアースを真っ白に。
あー面白かったと満足し、良い笑顔でヴィルーパークシャに乗り込み帰還。
「勝負は私の勝ちですね」
エシックが美空をどうしようかと考えていると「実は美空は、男だったのであります」と大胆カミングアウト。証拠を見せますと言われがそこまでしなくてもと制止。
「スサノオが大蛇退治した後に斬ったら剣が出てきたってさ。やってみよーよ。もしかしたら、たくさんお蕎麦が食べられるかもしれないしー」
ルキアはお腹だっけ? と迷うので永一は「尾だ」と教える。
全身蕎麦麺と化した状態なのでどこが尾かわからないので「ここかな?」と適当な箇所を裂くが剣は出てこなかった。
「ちぇ、お蕎麦の剣トカ出ると思ったのに。これもトシコシソバになるのかな?」
あちこち裂かれた蕎麦大蛇はあっという間に蕎麦麺に。
「キメラ蕎麦か、美味そうだな〜」
目を覚ましたピアースは「腹減った〜」とやって来たが、全身白塗り状態なのでその場にいた全員に笑われた。
(あんのやろ〜‥‥おぼえてやがれ!)
蕎麦大蛇は永一とビーストソウルに調理され、あっという間に温かい年越し蕎麦に。
「こんなこともあろうかとフォークもちゃんと持ってきたよっ! いただきまーす!」
ホクホク顔で蕎麦麺をすするルキア。
ピアースはペンキ塗れのまま食べ、エシックは男の娘な美空に食べさせてもらっている。
蕎麦を食べ、お腹いっぱいになった皆は睡魔に襲われたのでその場で眠ってしまった。
「ん‥‥」
2011年元日。目が覚めた護は、お腹がすいたので学園食堂で何か食べることに。
厨房に湯気が漂うのでもしかしたら‥‥と不安に。
「出雲蕎麦? まさか、ね」
気のせい注文すると、出てきたのは頼んでいないのに出雲蕎麦。
「現実でも食べることに‥‥」
アハハ‥‥と苦笑いしながら、できたてアツアツの蕎麦を食べる。
護は気づかなかったが、後ろの席では永一が美味そうに出雲蕎麦を食べていた。