●リプレイ本文
●セッティング開始
葵宙華(
ga4067)と買い出しから戻ってきた奉丈・遮那(
ga0352)は、アプサラス・マーヤーのマンションに着くと買い物したものを取り出し、会場のセッティングを早速始めた。
用意したものは、ソウジが来た時に使うクラッカー、会場盛り付け用のパーティ雑貨が揃っている店で購入した飾りやすく、片付けやすいペーパーバナーやスパークルガーランド等。
「遅くなったかしら?」
色気ある笑みを浮かべながら、神森 静(
ga5165)がアプサラス宅を訪れた。
「僕達も今来たところです。アプサラスさんは今、料理する方々と何を作るかキッチンで話し合い中です」
「今日はソウジさんの誕生日なんですって? 思いっきり驚かせてあげないといけませんね」
クスクスと笑いながら、静はどうしようか思案中。
遮那と宙華が壁の飾りつけをしている間、静は、中央に置いてあるテーブルに真っ白なテーブルクロスを敷き、中央に花瓶を置き、スターチスの花を一輪挿した。
スターチスは、5月7日の誕生花。ソウジの誕生日に合わせたのだろう。
「飾りつけ終わったよ」
「結構大変でしたね。ソウジさん、喜んでくれるでしょうか」
遮那に「大丈夫よ、私達の気持ちが籠もっているですもの」と微笑む静。
「あたし、皆で遊べるもの持ってきたよ」
宙華が取り出したのは、トランプ等のカードゲーム。
●メニューは何に
「ソウジさんは、お野菜を摂っていらっしゃらないでしょうから‥‥できるだけ、色の濃いお野菜をたくさん食べさせてあげたいものです‥‥」
野菜不足を心配する大曽根櫻(
ga0005)。
「私は、お手伝いをしたいです。お雑煮作った時、ソウジさんに褒めてもらったので」
ソウジの依頼(おねだり)で作った手作り雑煮を褒めてもらったことが忘れられない赤霧・連(
ga0668)は、料理は手際も肝心と下ごしらえを手伝うことに。
ソウジとアプサラスに『バグア百体撃破シミュレーション』で世話になったお礼と恩返しをしたいと参加した九条院つばめ(
ga6530)は、その後も依頼に参加し、実力を磨いている。
「楽しいパーティになるといいですね」
ニッコリ笑うつばめに、料理担当の女性陣は頷く。
(「こっそりとパーティ準備‥‥何だかわくわくします」)
「大曽根さんは和食、櫻杜さんは手巻き寿司を提案されていますが、他の皆さんはどのような料理を?」
中心的存在のアプサラスが、集まっている全員に尋ねた。
櫻杜・眞耶(
ga8467)は、寿司飯作りのため皆が集まる4時間前にアプサラスのマンションに到着。
「手巻き寿司の寿司飯は、こしらえるのがしんどいさかい。協力してくれまへんか?」
「手巻き寿司ですか。それなら、皆で美味しく食べられますね」
「私も賛成です。できればお手伝いしつつ、櫻さんと眞耶さんのお料理の腕を少しでも盗めたらいいなぁ、と思います」
手巻き寿司に賛成な連とつばめ。
「ほな、早速寿司飯をこしらえましょ。1人やと大変なんよ。連はんとつばめはんが手伝うてくれて助かるわぁ」
寿司は、酢飯作りが重要である。
「手巻き寿司の具、まだ買っていませんでしたね。私、奉丈さんに買い出しを頼んできます」
酢飯を仰いでいた団扇の手を止め、遮那に食材を買って来てもらおうと頼みに行ったつばめは、イクラを持参したが、今は冷蔵庫入り。
連は、眞耶の注文通りに野菜を切ったり、使い終わったボールを洗ったりと動いている。
「皆で頑張れば、愛情たっぷりの素敵料理完成です♪」
やることがすべて終わったので、連はお菓子作り開始。
アプサラスの冷蔵庫から卵を見つけ、調理台に砂糖が入っている調味料入れを発見。
クッキーが作れるかなと思っていたところ、アプサラスに見つかってしまった。
「他人の家の冷蔵庫を勝手に開けるのは不謹慎なことですが‥‥今日は、サプライズパーティなので大目にみます。何を作りたいのですか?」
クッキーを‥‥と、おどおどと答える連に、私もお手伝いしますと協力を申し出たアプサラス。
「私は、お手伝いをするだけです。作るのはあなたです」
「任せて下さい♪」
こうして、お菓子作りが始まった。
「手巻き寿司という話でまとまっていらっしゃるようですね。手巻き寿司ですか‥‥。では、私は、それに合う料理を作ることに致しましょう。肉じゃが、おすましあたりでしょうか? ちょうど、新じゃがの季節ですし」
「そらええな。手巻き寿司にちょうど合うわ。ほな、頼むわ」
こうして、櫻は肉じゃがとおすまし、連、つばめ、眞耶は手巻き寿司を作ることに。
櫻は材料を用意すると割烹着をつけ、用意した大きく切ったジャガイモ、ニンジン、新タマネギ、牛肉を使い調理開始。下ごしらえは、自宅で済ませてあるので、後は煮込んで、味付けするだけ。
肉は豚、鶏も用意してあるのだが、パーティ用なので奮発して牛肉に。
その他のに肉は、他の料理で使うことに。
もう一品は、残った豚肉と鶏肉とピーマン、ニンジン等の緑黄色野菜と塩昆布の炒め物。
「味見してみてください。シンプルですが、凄く美味しいですよ」
とニッコリ勧める櫻から小皿を受け取り、味見するアプサラス。意外と美味しい。
「完成しましたので、手巻き寿司のネタを用意しておきますね」
櫻は、眞耶と共に酢飯作りを始めた。
●料理完成
櫻と眞耶が酢飯を作り終えた頃、買い物を頼まれた遮那が帰宅。
「ありがとうございます、助かりました」
「いえ」
まだ会場のセッティングがありますので、と、キッチンを去る遮那。
買ってきたのは、かにかまとツナマヨ。
眞耶が用意してきたのは、マグロやイカ等の魚介類の刺身、梅シソ、アボガドの鰹削り節和え、玉子焼き、ウナギの蒸し焼き、マグロの醤油漬け等。
ソウジの好物であるブリの照り焼きは、手巻き寿司の具を作る傍らで作った。
「マヤちゃ、頼まれた塩味の効いた梅干だけど、冷蔵庫に入っているからね。あたしも何か作りますか」
宙華の料理は和食で野菜中心だが、ハーブソーセージ(ゆでて縦割り、酸味が合うレモンバジル風味)を添えたものだった。
「あたし、会場チェックがあるからー」
作り終えると、会場の最終チェックに行った宙華だった。
●メイン登場
マンションのチャイムが鳴ったので、アプサラスが対応。
玄関前にいたのは、ケーキの材料をスーパーの袋を両手に持っているリュイン・カミーユ(
ga3871)。
双子の兄にレシピを書かせ、数日前から兄宅のキッチンを占領して一人特訓していた成果は実るのか。
居候している遮那の兵舎のキッチンは大惨事となった、というのは、ここだけの話。
スポンジは先に作ってあるので、デコレーション等は、アプサラスのマンションで行うことに。
(「スポンジはかなり失敗したが、今日のは数少ない成功品、いや、レア物だ!!」)
それほど、リュインは人一倍、いや、百倍の努力をしたのだ。
「アプサラス、ケーキ作りの道具はあるか」
「はい。ヘラ、ハケ、軽量カップ等、一通り揃っています」
お菓子作りが得意というだけあって、一通り道具が揃っている。
「我は、ケーキ作りをしたいのだが」
「あなたは、グンベ中尉と親密なご関係のようですからきっと喜ぶでしょう」
クスクス笑いながら、手巻き寿司の盛り付けを手伝うアプサラス。
リュインは、自分の腕は自覚しているので、凝ったケーキは作らず、シンプルな生クリームと、苺をメインにフルーツで彩りを添えたケーキを作ることに。
スポンジの間にもクリームを塗り、フルーツをサンド。その後、全体をナマクリームでコーティングし、上に苺を飾る。
仕上げは、チョコペンで『Happy Birthday Souji』の文字を書けば完成!
彼女は料理は苦手だが、他は得意なのでデコレーションを「料理」だはなく「細工」と思っている。クリームの細工は精巧にできているので、その理論は正しいと言える。
ケーキが出来上がる間、連は色付き画用紙を使ったメッセージカードを作っている。
表紙には可愛い猫の挿絵をつけ、後は、参加者の皆にソウジにの贈る言葉を書いてもらえば完成である。
ソウジが喜んでくれることを願い、連は、丁寧に、心を込めてメッセージカードにソウジ宛のメッセージを書いた。
●主役登場
UPC本部前では、元基駆が、ソウジがまだ出てこないかと待っていた。
時刻は19時20分。パーティ開催予定より遅れている。
「まだかよ!」
駆がそう叫ぶと同時に、ソウジが本部から出てきた。
「おっさん、乗れ! 皆、待ってんだぞ!」
ソウジにヘルメットを放り投げて渡し、後ろに乗るよう指示する駆に何でだ! と抗議するソウジだったが、有無を言わさず乗せられ、バイクを飛ばして全速力でアプサラスのマンションに直行。
マンションにソウジが到着するなり、クラッカーが盛大に鳴った。
『誕生日おめでとう!』
「へ?」
「汝は、自分の誕生日を忘れたのか」
リュインの一言で、ようやく思い出したソウジ。
「ささ、中に入った」
駆に背中を押され、アプサラス宅に上がりこむソウジ。
パーティ会場は綺麗に飾り付けられていて、テーブルにはスターチスが一輪花瓶に刺され、女性陣が腕によりをかけて作った料理が並んでいた。
「皆さん、グラスを持ちましたか」
未成年である眞耶、櫻、連、宙華、つばめはシャンメリー、残りはシャンパンが注がれたグラスを持っている。リュインは外見年齢19だが、双子の兄が20なので問題いだろう。
「ソウジ・グンベ中尉の誕生日を祝して乾杯!」
アプサラスの乾杯の音頭で、パーティが始まった。
手巻き寿司だが、日本食に不慣れなアプサラスとリュインは大苦戦していたが、櫻と遮那が、丁寧に手巻き寿司の作り方を二人に教えた。
「ソウジ兄とRUNは、野菜不足なんじゃないかなぁ? あたし達も気をつけなきゃいけないんだけど。二人とも、ちゃんとお野菜食べてね」
そう言って宙華が差し出したのは、彼女お手製の料理だった。
「美味いぜ、これ! おっさんも食ってみろよ」
「うん、美味い!」
良かった、と喜ぶ宙華。
櫻作の肉じゃが、眞耶作のブリの照り焼きは、あっという間にソウジの胃袋に収まった。
●メイン登場
パーティ料理があらかた食べ終えた数十分後、メインのケーキご登場。
ケーキを載せた大皿を持ってきたのはリュイン、紅茶が入っているティーカップを載せたトレイを持ってきたのはつばめ、小皿とフォークを持ってきたのはアプサラス。
「ソウジ、主役のお出ましだ」
「俺は刺身のツマか!」
そういうが、フランス人のリュインにはわからないだろう。
「紅茶は、私がマーヤー教官に教わりつつ淹れました。以前いただいた紅茶が美味しかったので‥‥」
「あの紅茶か。美味かったな」
リュインもつばめと『バグア百体撃破シミュレーション』に参加したので、アプサラスから紅茶葉を貰った。
「ケーキを切り分けます」
アプサラスがケーキを切り分けようとした時、連が待ったをかけた。
「その前に、ソウジさんにプレゼントを渡さないと」
●プレゼント
「まずは、私からです。皆さんとの合作です」
連が手渡したのは、彼女作の可愛い猫の挿絵がついたカード。
そこには、アプサラスを含めた企画者全員のメッセージが書かれていた。
『おめでとう』『おじさんに近づきましたね』等、様々な言葉があった。
「僕からはこれです」
遮那のプレゼントは、彼の家でのリュインの様子を撮った写真集ではなく、知り合いのアイドルの写真集とDVDだった。
メッセージカードには『誕生日おめでとうございます。後輩や女性の気持ちも汲めるようになってくださいね』と書かれていた。
彼女って誰だ? と、疑問に思うソウジ。
「我からはこれだ」
気合いを入れねば、ということで、贈ったのはジッポライターだった。
安物ライターしか使わないソウジには、勿体無いくらいの代物だ。
「あたしからはこれ」
宙華のプレゼントは「ヒーリングお風呂セット」。
自然素材の石鹸、歯磨き粉、歯ブラシ、コップ、秘湯めぐり入浴剤、生成りタオル、防水ラジオ等を入れ込んだヒノキ桶のセットである。
「これで、たまにはこざっぱりとしてゆったりしなさい」
「グンベ中尉、受け取ってください!」
つばめが手渡したのは、シルバーのウォレットチェーン。
「家族以外の男の人に贈り物をするのは初めてなので‥‥気に入っていただけるかどうか‥‥」
「ありがとう、嬉しいよ」
ソウジに喜んでもらえて、大喜びのつばめ。
「私は、形ある贈り物はこしらえへんから、料理と気持ちを贈ります。ソウジ兄はんが酔った際、いつでも対処できるように二日酔い対策用にシジミ味噌汁と梅干を用意しましたえ。兄はん、ええ年なんどすからいい加減、酒の飲み方を覚えておくんなまし」
いや、酔ってないから、と言いたげなソウジ。
「我手製のケーキ、食すが良い!」
リュインは、大きく切り分けたケーキが乗った皿をソウジに手渡した。
一口食べたソウジの口の中には、生クリームとフルーツの甘みが広がった。
「美味いっ! リュイン、腕を上げたな」
「喜んでもらえて何よりだ」
強がっているが、内心大喜びのリュイン。
パーティがお開きになった頃、静が記念写真を撮りましょうと言い出した。
アプサラスが写真を撮ることに。理由は、写真に写るのが嫌だから。
「いきますよ」
取り終えた後、カメラを静に返した。静は、写真はできたら送るからと、全員の住所を聞き出した。
「ソウジさん、いい記念になったかしら? こんな事あまり無いと思うし‥‥」
「ま、まぁな‥‥」
ちょっとしたハーレム気分を味わえてご満悦のソウジであった。
「これ、私から」
帰り際に静が渡したプレゼントは、シルバーのブレスレットで、剣の飾りが2つ付いていて、柄に青い石(ラピス)がはめ込まれている。
「お誕生日おめでとうございます。フフっ‥‥今日は、まるでハ−レムみたいでしたわね?」
その一言にギクッ! となるソウジ。
●恋の行方‥‥
「ソウジ、少し話したいから一緒に帰らんか?」
「ああ‥‥」
受付嬢、瀧川朱美の結婚式以来、二人は会話をしていない。
「先日の結婚式の際、殴ってすまん‥‥。いくらでも文句は聞くし、殴っても構わんと言っただろう? だから‥‥汝の気が済むようにしてくれ」
覚悟を決めたリュインは瞳を閉じ、ソウジにぶたれるかと思いきや‥‥ソウジは、リュインの額にキスをした。
「あん時のことは、気にしちゃいねぇ。キミのおかげで失恋からふっきれたんだからな。俺は‥‥不器用な男だから上手い恋の言葉は言えんが、キミのことが気になって、しゃあねぇんだ」
ソウジは、早速リュインのプレゼントであるジッポライターを使おうとしたが‥‥オイルを入れないと使えないことに気づいた。
「これ、今は大事にするよ」
「いずれ使えよ?」
二人の仲は、少し前進したのだろうか‥‥。