●リプレイ本文
●駆けつけた能力者達
「蹴りでもダメージが与えられればいいのだけど、結局はエミタの力を使えるSES搭載武器でないと駄目なんだよね。エミタの力を足で解放できればいいんだけど‥‥」
一人でキメラと戦っているロサのためにも、今は住民の避難が先決と考える高村・綺羅(
ga2052)。
「故郷を守る。世界なんて漠然としたものよりも、余程説得力のある『戦う理由』だと思うわ。そういうものを持つ人間の強さを、バグアは知らないんじゃないかしら? 新人の私が言うのもどうかとは思うけれどね。あなたがロサね。自己紹介が遅れたわ。私はエリアノーラ・カーゾン(
ga9802)。ネルでいいわ」
村を守りたいと言うロサの気持ちに打たれ、この依頼に参加したエリアノーラ。
彼女と同じ理由でこの依頼に参加したトリストラム(
gb0815)は、初任務ということで緊張している。
「自分にとっては、これが初任務ですが‥‥必ず成功させます!」
ロサに共感し、故郷と村人のために戦う彼女に自分を重ね見て、手助け出来れば強く願うトリストラムは、誰よりも意気込んだ。
「カポエイラか‥‥。グラップラーの俺としては、見てみる価値がありそうだな。どれどれ‥‥」
コインを弾いて表が出たので依頼参加、というのが動機のレイヴァー(
gb0805)は「コインは表だったんだ。なんとかなるだろ」と長い付き合いのトリストラムと共に参戦。
「頑張ろう、トリス」
「はい!」
「姉ちゃんがロサか? 随分と鼻っ柱が強ぇな。けど、気の強い女は嫌いじゃねえ。まあ、姉ちゃんが気に入ろうと気に入らないらなかろうと、俺様達は勝手に手伝わせて貰うからぜ」
パニクって蜘蛛の子を散らすように村人が避難しないよう、誘導班に回り村民に避難場所を聞き出し、そこへ迅速に誘導するダーギル・サファー(
ga4328)。
「勝手に動いちゃ、個別にキメラに襲ってくれと言わんばかりだ。俺達に指示に従うんだ! なるべく安全で広い場所に固まっていてくれた方が守りやすいってモンだ」
本当は穏和な面構えの奴が落ち着かせて安心させるのに向いているんだろうけどと思いつつ、部屋の片隅で震えている子供を見つけたダーギルの顔を見て泣き出したのを無視し、問答無用で担いで避難所に連れて行った。
その後、最後に村の中を一回り見て逃げ遅れがいないのをチェック。幸い、逃げ遅れた村民はいなかったので、仲間に無線で状況報告確認をしてから前線の援護に向かった。
「うはっ! 俺、カポエイラとか見たことねーんスよ! しかも気が強いオネーサンだって!? 見逃す手はねえッス!!」
女性カポエイリスタが珍しいのか、ロサが美人なのか気に入ったのか植松・カルマ(
ga8288)は説得を口実にロサに接近。
「ロサちゃん、避難班と前衛班、どっちに回る?」
「馴れ馴れしく呼ぶな。あたしは前衛に決まっているだろう! この村はあたしが守るんだ!」
ロサが前衛班を希望したので、カルマは避難班としてダーギルと共に行動。
当面の生活資金のため依頼を受けた来栖 晶(
ga6109)も、避難班として行動開始。
避難場所は村の中心。そこへダーギル、カルマと共に村人を避難させ、キメラ奇襲に備えて迎撃の準備をした。
「僕も‥‥避難を手伝います‥‥」
結城加依理(
ga9556)は自主的に村人の護衛と避難誘導を行い、キメラが接近しても村人が安心して避難できるように最後尾に付いて護衛をしている。
「援軍が来るまで足止めとは、また男前な姐さんだな。いい女じゃないか。私は來島・榊(
gb0098)だ、宜しく。ところで、あだ名と本名、どっちで呼べば良いんだい? 名は人を表すものだ。私にとって、初対面じゃ結構重要なことなんでね」
ロサと合流した榊は、村人達の安否を気遣いながらも彼女にそう尋ねた。
「ロサでいい。ここでは皆、あたしをそう呼ぶ」
「わかったよ、ロサ」
現状把握が必要と判断した榊は、覚醒すると迅速な撃退と体勢の立て直しを優先的に行動した。
櫻杜・眞耶(
ga8467)は現地に到着するなり、双眼鏡で周囲を確認するなどして状況を見た上で動けるように準備をしている。
双眼鏡で暫く辺りの様子を見ていると、砂煙を上げて突進する何かが見えた。
「キメラが3体出現と言う情報、ほんまやったんやね‥‥」
キメラを発見したので、眞耶はすぐ仲間にトランシーバーでキメラ出現を報告。
「こちら眞耶! 前方よりキメラ2体が猛接近しています。村人を至急避難させ、皆さんは戦闘準備を行ってください!」
報告を終えると、眞耶自身も覚醒した。
●村を守る戦い
「キメラは迎撃班に任せる」
綺羅は逃げ遅れ、戸惑っている村民、特に親とはぐれた小さな子供を避難場所を素早く誘導し、キメラが襲い来るかもしれないと警護も担当。
キメラはブラジルバグ。体重約170キログラムなので、相撲取りかプロレスラーと戦うようなものだ。
そのうちの1体が避難村民に接近してきたので、綺羅は時間稼ぎのため『瞬天速』でナイフでの接近戦に持ち込んだ。
銃撃は敵を引き込む可能性もあるし、村民が怯えてしまうかもしれない。
キメラバクの攻撃を左手で受け。右手で攻撃姿勢を取り攻撃。
「倒す必要は無い。時間稼ぎができればそれでいいから‥‥」
キメラを倒すのは、村を守る立派な戦士・ロサの役目だからと必要以上の攻撃は仕掛けなかった。
護衛班として行動していた晶は、村民を避難させた後にキメラ奇襲に備えて迎撃準備をしておき、『瞬天速』でキメラの前に立ち囮となった‥‥のは良いが、被っているアフロカツラから高級煙草とジッポライターを取り出し一服し始めた。
「あんた、何を考えているんだ!」
キメラ戦の最中でありながらも、晶を注意するロサ。
「護衛って仕事は、暇なほうがいいもんだよ。おまえさんの「村を守る」という誇りも必要だが、それだけじゃ人は救えないさ。ま、こう見えても守るのは慣れてる」
一服終えると吸殻をジャングルブーツで踏み付け、火を消した。
「そこのキメラ、アフロをなめるな。アフロは便利なんだよ!」
アフロカツラとキメラがどういう関係があるんですか!? と突っ込みたいところだが、棍棒と夏落を器用に使い分けて攻撃をする晶は真剣な表情をしていた。
「あんた、不真面目そうで結構やるじゃない。見直したよ」
晶を見直したロサのサーベルによる二刀流攻撃が、キメラバグに止めを刺した。
1体退治したのは良いが、まだ2体残っている。
●誇りを守る戦い
ロサが苦戦しているかと思いきや、仲間の手助けあって1体退治したのを確認したレイヴァーは『先手必勝』『急所突き』でロサめがけて突進するキメラバグの前に立ち塞がり、足止めして彼女を守った。
「男としては、目の前で女性がピンチなら助けるべきですから。それにしても、バグアバクって‥‥。あれはブタの親戚か何かですか?」
バクはレイヴァーが言うようにブタのような体つきをし、ゾウの鼻のような口吻を持つ哺乳類だが、奇蹄目バク科なのでブタの仲間ではない。
「榊さん、援護お願いします!」
榊に援護を頼み、前線を突破されそうになったのでレイヴァーは『瞬天速』で追撃を試みた。
「戦術としては悪くないけど、非戦闘員である村民を狙うのはフェアじゃないな」
倒すことより、引き付ける事を重視して仲間との連携攻撃を行うレイヴァー。
「僕だって、皆さんに迷惑をかけたくて此処にいるわけではないんです! 村の人を、ロサさんを守るために来たんです!」
キメラを撃破できないので、精一杯食い止めるレイヴァーを援護する榊。
「良く言った。それでこそ男ってもんだ」
「同感。行くよ、えっと‥‥」
「榊。來島・榊だ。ロサは村民を守ってやってくれ。ロサが傍にいるだけでも、村民は安心するんじゃないか? 一人で背負い込んで無理する事を選ぶのも良いけど、責任感の強さは村の皆の力になる。無論私達能力者にとっても、ね」
そう説得されたロサは避難所に向かい、そこにキメラが来ないようサーベルを構えて仁王立ちしている。
戦闘時は間合いを維持し、射手として攻撃援護を主軸に撃破のチャンスを見逃さず、長弓「クロネリア」で畳み掛けする榊。
面倒なのはゾウのような鼻だが、レイヴァーとのペアは互いに強襲型なので交互に鼻の動きを牽制しつつ、攻撃をして鼻を封じている。
「榊さん、危ない!」
レイヴァーが叫ぶので何事かと思い振り向くと、榊めがけてキメラバクが突進!
「体当たりには『流し斬り』で回りこみ近距離射撃だ!」
キメラバクの眉間めがけて放った矢は、見事にヒットしたが致命傷に至らなかった。
避難所前にいるロサの状態を確認したトリストラムは、戦闘が困難、危険と判断した場合はロサを下がらせようと思ったが、その心配は無かった。
「エストレーラさん、お願いがあります。あなたは村民を守ってください。ここにキメラが来るようでしたら、別の場所に避難誘導してください。お願いします。土地勘と人気があれば、皆、安心して避難することができます。自分もあなたと同じく、大切な人達を守るために能力者となり、戦うことを決意した身です。キメラと戦うことは自分や仲間達でやります。ですからあなたは、大切な人達を守ってください」
わかったよ‥‥と観念したロサは、トリストラムの指示に従うことした。
「俺も‥‥きみと皆を守る‥‥」
誰かがいたほうが良いと判断した加依理は、ロサと共に村民の護衛についた。
「カルマさん、援護お願いします。行きますよ!」
「オッケーっッス!」
トリストラムは無理をせず、機を見て『レイ・エンチャント』『急所突き』『布斬逆刃』で非物理攻撃を狙い、眼前に迫ったキメラ撃破を試みた。
「くっ‥‥掠った程度のダメージですか‥‥」
「俺に任せるッス! 接近戦でバッサリ斬っていくッスよー」
カルマは『流し斬り』『両断剣』を併用して攻撃。
「俺のスッゲェ一撃を喰らうといいッス!!」
俊敏そうだが、動きが鈍いキメラバクの側面に回りつつ攻撃するカルマは、それでも突破されては元も子もないと、インターセプトすることを最優先に攻撃を続けた。
二人のコンビネーションにより、キメラバク2体目退治成功!
「体力減ったんで自己回復するッス‥‥」
へたり込んだカルマは『活性化』で体力回復中。
●思いはひとつ
カルマからキメラバクを2体退治したという連絡を受けた眞耶は、残る1体を仲間と共に村の入り口付近で待ち構えていた。
「キメラがおいでなすったぜ、姉ちゃん」
村民を誘導し終え、キメラバクが接近しつつあると聞いたダーギルは村に手出しさせないよう囮となり、前線組と合流するようにキメラも誘導することに。
戦い方としては、白兵戦担当者の補佐的といった感じだ。
覚醒したことで髪と瞳の色が青に、耳形がヒレと化し、サディストに変化した眞耶は『両断剣』や『ソニックブーム』を駆使してキメラバクが逃亡しないように容赦無く弱めるつもり攻撃している。
「ふふっ‥‥ブタならブタらしく大人しくミンチにおなりっ!」
ダーギルも『急所突き』『影撃ち』等のスキルでキメラバクの隙を突いたり、気をそらしたりして仲間が動きやすいように攻撃をしている。
「ガキを小脇に抱えてのアサルトは、流石の俺様も無理があるしな。ま、村民が皆、無事に避難したからいいか」
豪快に笑いながら、更に攻撃するダーギルだった。
エリアノーラが戦闘中に注意しているのは、2人以上で1体を相手にすること、キメラバクの注意を村民に向けさせず確実に足止め、ロサを倒させないことだった。
ロサに関しては、村民護衛についているので大丈夫。
いざとなれば自分が盾になるつもりでいたエリアノーラは『自身障壁』と『ロウ・ヒール』中心の持久戦に持ち込んだ。
「眞耶、あなたの火力に期待しているわよ‥‥」
「お任せなさい! 確実に仕留めてみせるわよ!」
眞耶の止めの一撃により、残る1体の退治成功!
こうして、ロサの誇りと村を守る戦いは終了した。
●戦いの後
キメラバク退治終了後、救急セットを持っている能力者達は互いの怪我を治療し合った。村人に関しては擦り傷、かすり傷程度で済んだが、能力者が駆けつけるまで孤軍奮闘していたロサの怪我は切り傷、打撲、痣と酷い有様だった。
「戦闘中、頭に血が上っていたので忘れてましたけど‥‥バクって、ブタじゃなくて『バク科』に分類分けされていたんでしたね?」
「ああ、そうさ‥‥」
眞耶に治療されながら、苦笑してそう答えるロサ。
「ロサちゃん、歳いくつ? 俺(外見年齢)16ッス! 良ければ、俺と付き合ってほしいッス!」
治療中であるにも関わらず、ロサを口説くカルマ。ロサの答えはというと‥‥。
「あたしはこう見えても19だ。それに、年下にはまったく興味ない」
ガーン! とムンクの叫び状態の表情をするカルマは、振られるか、ぶっ飛ばされるかを覚悟していたが相当ショックを受けた様子。
その様子をにこやかに見ていた晶は、アフロカツラから煙草とジッポライターを取り出すと戦闘終了後の一服。
「ふぅ‥‥キメラ退治後の煙草は美味いな」
「晶さん‥‥アフロは好きなんですね‥‥。村を守ることができたので‥‥僕は‥‥嬉しいです‥‥」
はにかんだ笑顔で勝利を喜ぶ加依理。
●夕陽の下のジョーゴ
レイヴァーは、ロサが怪我をしているので無理だとわかっていたがある頼みごとをした。
「ロサさん、怪我のほうは大丈夫ですか?」
「たいしたこと無いさ。伊達や酔狂で男の猛者相手に戦っているワケじゃないんだよ」
そうですか‥‥と安心すると、改めて頼みごとを言った。
「頼みがある。時間があればで構わないが、ロサのジョーゴを観戦したい。ついでに、カポエイラの技をいくつか教えてもらいたいんだが‥‥いいか?」
ロサの対戦相手であるカポエイリスタ達は無事なので「ジョーゴをやろうか」とロサが言い出した。
「ロサはん、無理はいけません。怪我が治ってないんですから」
眞耶が止めるが、ロサは「やると言ったらやる!」ときかない。
こうして、レイヴァーの頼みであるジョーゴが実現されることに。
能力者達と村民達は、ロサと対戦相手の男性を囲んで観戦している。
ロサの蹴り技は、基本から応用まであだ名の如く見事なものだったので、レイヴァーと彼女に振られたカルマは一瞬見惚れてた。
勝負はというと‥‥言うまでもなくロサの圧勝。
「だらしないね、ベナゥ。あたしに勝てるのはまだまだ先のようだね。もっと練習しな」
口ではキツイことを言うが、尻餅をついたベナゥに手を差し伸べる優しい一面もあるロサだった。
ジョーゴ観戦後、能力者達は本調子で戦えるロサのジョーゴを再び観戦すると約束して帰還した。
「ありがとう。おかげで、村と誇りを守ることができたよ‥‥」
高速艇を見ながら、感謝の言葉を述べるロサだった。