タイトル:ジューンブライドガードマスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/26 07:00

●オープニング本文


 June bride、『6月の花嫁』。
 6月に結婚した花嫁は幸せになれるという言い伝えあるため、大抵の女性は皆、それに憧れる。
 子供の頃からの夢だった『6月の花嫁』になることになったシェリル・クレメンスの親友であるキャロルは、長年付き合っていた幼馴染みの男性と6月に結婚することに。
 大好きな人と結婚し、幸せな家庭を築き、大好きな人の子供を生み、育てる。
 それが、キャロルのささやかな願いだった。

 しかし、問題がひとつだけあった。結婚式を挙げる教会は、競合区域と安全区域の境界線に近い場所にあるのだ。これでは、挙式の最中にキメラが襲撃される可能性もある。
 親友のために何とかしてあげられないかとシェリルは先輩であるリネーア・ベリィルンドに相談したが、キメラ戦に関することは、自分よりUPC士官に相談したほうがいいとアドバイス。
 UPC士官でシェリルが思いついた人物は、以前UPC本部で会ったことがあるソウジ・グンベだった。
 ソウジは普段は陽気で気さくな人物だが、キメラ戦の指揮を執るときは真面目な人物となるので良きアドバイザーになるはず。

 携帯を取り出すとシェリルはUPC本部に連絡し、ソウジに話があるので繋いで欲しいと対応した受付嬢に頼んだ。
「はい、ソウジ・グンベ‥‥ああ、シェリルか。俺に何か用か?」
「じ、実は‥‥」
 シェリルは、キャロルの結婚式会場が危ない区域にあること、キメラが出没するかもしれないことをソウジに話した。
「成る程、そういうことか。キミも親友の結婚式に出席するんだろう? その件に関しては、俺が能力者に説明しておく。親友の晴れ姿、ちゃんと見てこいよ?」
「ありがとうございます、ソウジ中尉!」

 一通りシェリルから説明を聞き終えたソウジは、能力者達に依頼要請をした。
「能力者諸君に依頼だ。6月16日に、競合区域と安全区域の中間位置にある教会で結婚式が行われる。そこにキメラが出現する可能性があるので、能力者諸君には教会護衛とキメラ退治を行って欲しい。キメラを見たという目撃者の証言によると、白い馬だそうだ。って、白馬の王子様がおまけでついてくるんかね? ‥‥コホン、それはどうでもいいとして。とにかく、新郎新婦の晴れ舞台を守るのがキミ達の仕事だ。頼んだぞ!」
 波乱に満ちるかもしれないキャロルの結婚式は、無事終わるのだろうか?

●参加者一覧

鯨井昼寝(ga0488
23歳・♀・PN
赤霧・連(ga0668
21歳・♀・SN
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
ブレッド・シーブス(ga8861
11歳・♂・DF
麻宮 光(ga9696
27歳・♂・PN
ユーリ・クルック(gb0255
22歳・♂・SN

●リプレイ本文

●結婚式
 6月16日。シェリル・クレメンスの親友、キャロルの結婚式当日。
 大安吉日、天候に恵まれたので順調に行われると思われそうだが、教会は競合区域と安全区域の中間位置にあるのでいつキメラが出現するかわからない状況下にある。
 キメラは数日前から目撃されているので、式の最中に出現する可能性は十分ある。
 そのため、能力者達は数時間前から警護にあたっている。

「こないだの結婚式コンテストで着たウェディングドレスも悪くないけど、やっぱり私には軍服が合っているね」
 動きやすいといわんばかりに、鯨井昼寝(ga0488)はキメラを倒し、無事に結婚式を進行させようと撃破に臨む。
 能力者達は、昼寝が指揮担当のUPC軍中尉であるソウジ・グンベに提案した『教会護衛はツーマンセルで四方を警護する』という手筈にし、必要以上にキメラや自分達の姿を参列者に見られないよう配慮を怠らないことを心がけた。
「キメラ自体、非常に特徴的な外見だから見逃す可能性は低いだろう。警戒されたら、見つけるのが厄介だけどね」
 過剰な戦闘欲求を隠さず、堂々とキメラを待つ昼寝。
「新郎新婦の幸せを奪う不届きなキメラは、神様だって許しません! 6月の花嫁さんは必ずお守りいたします。だって、同じ女の子ですから‥‥」
 頬を少し赤く染めながらも、キャロルを守ると張り切る赤霧・連(ga0668)。
「私も結婚式を無事に終了させるため、キメラに邪魔させません。乙女の夢である『6月の花嫁』を守ります。ということで、頑張ります」
 せっかくの晴れ舞台をキメラに台無しにさせまいと、連同様、キャロルを守るとリゼット・ランドルフ(ga5171)も張り切る。

「このような危険な場所で場所で式を挙げるとは‥‥何か思い入れでもあるのでしょうか? ソウジさんも教会での式をお考えですか?」
 従姉妹が昼寝が参加していた結婚式コンテストに出場したことを知っているユーリ・クルック(gb0255)は、その時特別参加していたソウジに尋ねた。
「結婚はまだ考えてない」
 ソウジはきっぱり即答。恋人いるのにそう言っていいのか!

「ほむ、ベルさんもウェディングドレス似合いそうです♪」
 連にそう言われたベル(ga0924)は、不機嫌そうな顔をして連の傍を離れた。
「てへへ、冗談‥‥怒っちゃヤですー」
 すぐに謝ったが、時既に遅し。
 良く女性と間違われるのが悩みのベルは、少し前に知り合いにウェディングドレスを無理やり着せられてしまったので、正直なところ、ウェディングドレスには少しトラウマがあった。
(「ウェディングドレスは嫌だが、依頼はこなさないと」)
 この依頼で彼のトラウマが克服できれば良いのだが‥‥。

●作戦
 参列者達が次々とやって来たので、能力者達は教会から少し離れた場所で作戦会議を始めた。
 ソウジが用意した教会周辺の地図をチェックし、どのようにしてキメラを教会から引き離し、どう退治するかを皆で考えた。
「地形が分っていれば、キメラを引き離す時に行動しやすいですね」
 リゼットの意見に頷く能力者達。
「キメラは馬だったよな。ユニコーンだったっけ? 絶対にとは言えねぇけどさ、馬の性質から考えると競合区域から広い道を通ってやって来るんじゃないの? 馬って、狭いところ嫌いだから。これ知ってっか? 馬ってのは、上のほうへの視界が殆どないんだぜ。草原で進化した大型獣だから、構造上高低差に弱い生き物なんだと」
 最年少のブレッド・シーブス(ga8861)の知識に「ほう」と感心するソウジ。
「キメラが出現したら戦闘開始だな。その前に、シェリルさんを含めた招待客を避難させ、他のメンバーと2人1組による行動ってとこか?」
 麻宮 光(ga9696)は、同じタイプの能力者と行動することになるだろう。
「俺も同じことを考えてた。前衛クラスが教会入り口付近を警備し、いつキメラとの戦闘がが起きてもその場を離れず、参列者や新郎新婦達、近隣民間人の安全を優先しないとな」
 ベルも、一般人の安全対策を練っていたようだ。
「キメラ戦は、できるだけ教会から引き離すようなかたちで行おう。教会へ危害が及びそうな距離での戦闘は極力避け、相手の動きに合わせて進路を塞ぐような形で動く。これでどうだ?」
「私はそれで構わないよ」
 光の意見に賛成する昼寝。
「俺はコレを使うぜ」
 ブレッドが持っていた袋には、前日、付近の住民にも手伝ってもらい量産した時期外れのイースターエッグ。中にはコショウ、ニンニク、タマネギ、食事の余りもの等が詰められている。
「キメラが来たらこいつを高い所からドカドカ投げる! 嫌な物を投げつけることで心理的ダメージを与え、教会から追い払うことが目的だ!」
「ほむ‥‥良くそんなこと思いつきますね」
 イースターエッグをひとつ手にして感心する連。
「それは面白そうだけどさ、最悪なのはユニコーン登場によって肝心の結婚式がおかしなムードになってしまうことだよ。空気をまるで読めないキメラなんだから、私としては一刻も早くご退場願いたいところだね。ユニコーン出現だけど、確認した人がトランシーバーで連絡するってのはどう?」
 昼寝の提案に乗れるのは、トランシーバーを持っている連、威龍(ga3859)、リゼットの3人だけだ。他の能力者は、昼寝を含めた誰かと共に行動しなければならない。
「キメラが教会に近付く前に、俺達が殲滅すればいい」
 威龍は拳をパンと掌に叩きつけ、倒す気マンマンでいる。
「そろそろ、結婚式が始まるようです。いつ、キメラが襲ってくるか分らないので、東西南北に分かれて教会の周りを警戒しませんか? 敵が何処から来るのか分りませんので、油断しないようにしましょう」
 2人1組で教会の四方を囲んでユニコーンを見張る方針に関しては、ソウジは反対しなかった。
「キメラを発見した場合は、トランシーバーを持った能力者が連絡するように。俺が発見した場合は即座に連絡する。作戦開始!」
『イエッサー!』
 敬礼し、四方に散らばる4組。

●祝福を邪魔するモノ
 光は、昼寝と共に教会の南側である入り口付近を警護。
 キメラはバカ正直に正面突破するかもしれないかも、というソウジの意見を考慮し、キメラが出現したらできるだけ遠くに引き離し、教会に危害が及びそうな距離での戦闘にならないよう極力離れてから相手の動きに合わせて教会への進路を塞ぐような形で動くけるようにスタンバイ。
「さて、キメラを捜しますか。ユニコーンって、角がある白い馬だから見たらすぐ分かるよね。教会近辺からいこうか」
 トランシーバーを持っている昼寝が、メインで他の能力者にキメラ出現合図の担当になっている。
 能力者達は、結婚式が行われている最中なので静かに、慎重に行動中。
 その頃、教会では父親と共に新婦・キャロルがバージンロードをしずしずと歩いていた。

 東側を警護している連とベルの2人は、教会から離れすぎずにユニコーンを探索。連は、覚醒状態を維持して視野を広く保ちながら探索している。
「連、キメラを発見したら他の班に連絡頼む。俺は、教会から遠ざけるように誘導するから」
「わかりました」

 教会の裏に当たる北側警護は、威龍とブレッドが担当。
「ユニコーンなんてややっこしいモンが来たらさー、結婚式が進まねーよな」
 男女のアレコレの意味で、ということらしいが、それは指輪交換や誓いのキスのことだろう。少年であるブレッドにとっては結婚式は退屈なものかもしれない。
「そう言うな」
 双眼鏡を覗きながら、ユニコーンを確認している威龍。

 西側を警護しているのは、リゼットとユーリ。
「ユニコーンがいつ襲ってくるか分からないので緊張しますね‥‥」
 不安がりながらも、油断することなくユーリとそれぞれ方向を決めて見張っているリゼット。
「大丈夫ですよ。ユニコーンは女性を襲わないそうですから。リゼットさんは可愛いお嬢さんですから」
 安心させようと、咄嗟にそう言ったユーリ。
「ユーリさん、あれは」
「間違いない、キメラだね」
 西側から見える細い道から、角がある白い馬が走ってくるのが見えた。
 それと同時に、ソウジからトランシーバーを持っている能力者に連絡が入った。

『こちらソウジ! 西方からキメラ出現! 各自、殲滅準備に取り掛かれ!』
『了解!』

●花嫁を襲うモノ
 昼寝からソウジからの連絡を聞いた光は覚醒すると、教会入り口防衛を優先とし、参列客や新郎新婦達に被害が及ばぬようにドアをバン! と開け「ここにキメラが近づいてくるから気をつけろ。大丈夫、俺たちが必ず守るから安心しろ!!」と教会にいる全員に声をかけた。
「光、そっちは任せたよ! 私はキメラを教会から敵を引き離す囮になる。威龍もヤツが来たことが分かっているだろうから連携して追い立てる!」
 昼寝は『瞬天速』を使い、ユニコーンに近づくのを試みた。
「遅いぞ、威龍! ほら、キメラ、こっちにおいで!」
 昼寝、威龍は『瞬天速』を使い、ユニコーンを教会からできるだけ遠ざけるように移動。
 
 2人がユニコーンを誘導中、護衛班の能力者達は教会にいる人々にここから出ないよう指示している。
「キメラが現れたので、教会から出ないように!」
「俺達はキメラ退治のプロです。ですから皆さん、安心して教会の中で待機していてください」
 微笑んで言うユーリを信頼したのか、参列者達は安心したかのように見えた。
(「俺はキメラ退治は初めてなんです、なんてこと、とても言えないな‥‥」)
 と思った。
「ユーリ、教会内は俺が護衛する。キミは他の能力者と共にキメラ退治に向かえ」
「イエッサー!」
 敬礼した後、外に駆け出そたユーリは扉を閉めてから外で覚醒した。
「初仕事、必ず完遂してみせます!」

 ユーリが他の能力者のもとに駆けつけた時、ブレッドを除く全員が揃ってユニコーンを囲んでいた。
「あれ? ブレッド君は?」
「あいつは、別のところから攻撃するらしい」
 威龍の言葉に「そうですか‥‥」と答えるユーリ。
「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて何とやらと言うが、まさか白い馬のキメラ、しかも聖獣を作り出して大切な結婚式を邪魔してくるとはな。バグアの連中も、皮肉を効かせてくるモノだな‥‥。まあ、良い。せっかくの晴れの門出を邪魔する無粋なキメラには早々にご退場頂こう。それが、俺からの結婚祝いと言うことでな!」
 結婚式の無事終了こそが何よりも優先な成功条件なので、先頭場所は教会から離れた所である。そう考える威龍は、教会に見つつユニコーンを倒すことに。
「いくぜっ!」
 まずは『疾風脚』で攻撃しようとしたが、ユニコーンは穏やかな表情から目を赤く光らせ、興奮しながら威龍に突進しはじめた。駄目か!? と思った威龍だったが、『疾風脚』はユニコーンの顔面にヒット!
 それに激怒したユニコーンは、威龍に思い切り体当たり。それだけで済むと思いきや、鋭い角で左肩を刺突攻撃、足蹴と連続攻撃。
「ぐはっ‥‥!」
 ダメージが残りつつも立ち続け、ユニコーンを逃がさないよう隙を見て攻撃を仕掛け、ダメージを蓄積させようとした威龍に待ったをかけたリゼット。
「怪我をしたままでは戦えませんよ。私が救急セットで手当てします」
「すまん‥‥」
 威龍の治療を済ませた後、リゼットは覚醒し、ユニコーンの動きを良く見て連携をとりつつ上手く牽制しながら攻撃を当てていくように体力を削ることに。
「チャンスです!」
 隙を見て『豪破斬撃』を使い、距離を置いてから『ソニックブーム』で牽制。
 ユニコーンの角や体当たりは回避し、無理なら受け流してから反撃を試みた。

「それにしても、何でユニコーンは威龍をあんなに攻撃したんだ?」
「ユニコーンは『女性にしか姿を見せない』と言われている聖獣なんです。だから、男性の方には獰猛に襲い掛かったのでは。威龍さん、男らしいですし」
 ニッコリと解説する連の話を聞いたベルは、ユニコーンを見て『ただでさえ女性と間違われてるのでこっちに来るな』と念を送っている。
「私達も行きますよ。足止めを行いますか。素早い相手に対しては、動きを止める所から始めましょうが効率的でしょう? 狙った獲物は逃しません。今回は特別です!」
 6月の花嫁の敵は自分の敵、という認識している連は、獰猛で強力な角があるユニコーンであろうと思いは砕かせないと『鋭覚狙撃』『影撃ち』『即射』の連続攻撃で足を重視して連続攻撃を行った。ベルもそれに続き、足を集中攻撃。
「大丈夫です、任せて下さいっ」
 にへらと笑いつつ、前衛に後を任せることにした連。

「ここまでくれば大丈夫だろう‥‥さっさと片付けてしまおうか」
 光は、ユニコーンを教会に近づせないようにしつつ少しずつ近づき、ユニコーンの動きを見ながら行動し、隙あらば『瞬天速』で間合いを詰め、一気に攻撃を仕掛けた。
「個人的な怨みはないが‥‥ここで倒れてもらう!」

「とどめはコレだぜ!」
 教会の屋根に上っていたブレッドが、イースターエッグをユニコーンに向かって投げつけた。
 ユニコーンと能力者の周りにはコショウが散らばったり、ニンニク、タマネギの強烈な臭いが漂ったり、残り物が散らばったりした。
 ユニコーンに効果ありと思われたが、その大半はフォースフィールドで防がれ、残り物がぶちまけられて汚くなっただけだった。
「キメラにコショウは効かないのか!」
 驚愕するブレッド。
「コショウまみれでカッコ悪いですが‥‥いきます!」
 銃撃を聞かれたくないので、ユーリはユニコーンの胴部を刀で突き刺した。
「十分に教会との距離を取れてるから、本格的に倒しにかかるよ。角さえなければ、ユニコーンといえどただの馬だからね!」
 昼寝は根元から角を叩き折る感じで、気合と共にシュナイザーでの一撃を放った。角が折れたことを見届けた能力者達は、皆で一斉攻撃!

 ユニコーン殲滅、教会防衛:成功!

 ニンニク、タマネギ、残り物の臭いが取れないので、成功を素直に喜べないブレッド以外の能力者達だった。

●幸福な花嫁
 キメラ騒動で中断していた結婚式は、一時間後に無事再開された。
 能力者達は、挙式の様子を外から見ていた。
「こんな時代だからな。今日の二人には、幸せな家庭を築いていってもらいたいな」
 威龍の言葉に頷く仲間達。

 その頃、挙式では誓いのキスの最中だった。
「キャロル、おめでとう‥‥」
「親友の晴れ姿はどうだ?」
「とても素敵です。ソウジ中尉、ありがとうございました」

 新郎新婦がバージンロードから出てきたので、女性能力者はキャロルは投げるブーケを受け取ろうと前に出た。
 キャロルがブーケトスすると、それは光の手元に落ちてきた。
「相手いないのに、俺の所に来るとは‥‥」
 複雑な気分の光に、女性陣の嫉妬の視線が注がれたのはいうまでもない。

 シェリルは、キャロルは幸福になることを神に祈った。