●リプレイ本文
●ミーティング
二回目の『ナイトフォーゲル・シミュレーション』の参加者は8名。
不破 梓(
ga3236)を除いた能力者は皆、ナイトフォーゲル実戦経験皆無である。
(「大規模作戦では、僕は広報のいい広告塔みたいですけど‥‥実際はどの程度の技量なんでしょうか‥‥?」)
大規模作戦以外の経験を積む、自分の実力を確かめることが参加動機の金城 エンタ(
ga4154)は緊張気味。
「ぶっつけ本番で失敗する訳にはいきませんわ! 実戦は、シミュレーターで慣らしてからに致しましょう」
ナイチンゲールを購入したのは良いが、ジュリエット・リーゲン(
ga8384)はまだ出撃できない腕前なので機体使用可能依頼に参加できず、地団駄を踏んでいる。
「早く慣れて、ナイチンゲールで戦いたいですわ‥‥」
シミュレーションで腕を磨き、ナイトフォーゲルに慣れて出撃できるよう頑張ってもらいたい。
「シュミレーションで何か掴めたらいいな‥‥」
ナイトフォーゲルの操作に不安なサルファ(
ga9419)は、それを解消しようと参加。
「本日は、実戦のつもりで取り組ませて戴きます!」
シミュレーションとはいえ、ナイトフォーゲル初搭乗の赤宮 リア(
ga9958)は来たるべき次回の大規模作戦に備えてナイトフォーゲルでの戦闘経験を積むため参加。
「皆さん揃いましたね。本シミュレーション企画、プログラム作成者の『実践訓練センター』教官、アプサラス・マーヤーです。『ナイトフォーゲル・シミュレーション』の説明を行います」
アプサラスは、能力者にシミュレーション内容、操作方法のレポートを手渡した。
「お手元のレポートをご覧ください。最初は、シミュレーションシステムに設置されているキーボードを使用し各自の機体、装備を入力してもらいます。装備の無い方はプログラミングデータ内のものを貸与できます。次に、TACを登録してもらいます。シミュレーション中は、名前ではなくTACでお呼びしてください。データは登録漏れのが無いよう。では、シミュレーションシステム装置内へどうぞ」
シミュレーション装置は、ナイトフォーゲル飛行形態のコックピットの形状、内部は各機体に対応できるようなものである。
能力者が椅子に腰掛けると、操縦席中央部からキーボードが出現。
四苦八苦の者もいれば、ラクラクと登録している者もいる。
データは以下の通り。
梓はH−114 岩龍、TAC『Ogre』。
「普段乗らない機体に乗ることで、見えてくるものもある」
シミュレーションでディスタンと岩龍の感覚のズレを体感してみたいとのこと。
熊谷真帆(
ga3826)機はF−104改 バイパー、TAC『ミーシャ』。
「空戦仕様と陸戦仕様、使いこなせるかどうか‥‥」
空中戦は経験済みだが、初陸上戦の真帆。
エンタ機はF−108 ディアブロ、TAC『Sugar』。
「シュガーは砂糖です‥‥」
女性に間違えられやすいエンタらしいTACである。
ジュリエット機はXN−01改 ナイチンゲール。
『ジュリエットさん、TACが登録されておりません。必須事項ですので、入力願います』
アプサラスに指示されたので、ジュリエットは『HIME』と入力。
ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)機はR−01改、TAC『シトラス』。
「空戦、陸戦での装備変更はしない。現状の機体データのままで」
サルファ機はF−104改 バイパー、TAC『ステイシス』。
「ナイトフォーゲル操作の今後の課題発見。シュミレーション成功という目標のために頑張ろう‥‥。TACは‥‥大規模の時と同じで」
麻宮 光(
ga9696)機はXA−08B 阿修羅、TAC『エクセ』。
「さーて、行こうか。いうこと聞いてくれよ、阿修羅!」
リア機はPM−J8 アンジェリカ、TAC『Arrow』。
「頑張りますっ!」
●シミュレーション開始
『登録、お疲れ様でした。では、シミュレーションを開始します。戦場は南米基地。突如出現したゴーレム二機撃破のため、そこに向かってもらいますが、行く手にはヘルメットワーム二機がいます。天候は出撃時は曇天、強風。基地到着時は曇天、強風による砂嵐発生。成功条件はヘルメットワーム、ゴーレム全機撃破。今回は前回よりレベルが高い内容になっております』
アプサラスの説明後、『ナイトフォーゲル・シミュレーション』が始まった。
各自スタンバイ確認後、アプサラスはシステム内にあるディスプレイに滑走路とライトを振り、各機を誘導する発艦士官の映像を映し出した。
『離陸順は未経験者からです。Arrow、準備は良いですか?』
「はいっ!」
『Arrow、離陸せよ!』
無線機越しに聞こえるアプサラスの指示、発艦士官の発進合図に従いリアは出撃。
その後はジュリエット、エンタ、サルファ、ユーリ、光、真帆、梓の順で間隔を置き離陸。
南米基地一帯は風速15メートルなので、皆、悪戦苦闘しながら飛行。
ユーリは離陸時に向かい風になるよう機体の向きを調整し、横風に注意しながらバランスを崩しかけても風に向うように旋回気味に加速、強引に飛行。
それが功を奏したのか、安定した飛行状態を保てた。
「すごい臨場感‥‥! シュミレーションとは思えません!」
シミュレーション感覚に感心するリア。
「Arrow、感心している場合じゃない。皆、チーム編成を始める」
梓の一言で、シミュレーションが始まったと気を引き締めるリア。
チーム編成はA班は梓、真帆、ジュリエット、サルファ。
B班はエンタ、ユーリ、光、リア。
「凄い強風! 機体がブレないよう注意しないと‥‥」
「わわっ‥‥結構揺れますねぇ‥‥」
リアル体感に驚くリアとエンタ。
「強風で隊列が崩れないよう気をつけろ。HIMEは初めてで不安だろうが、上手くいくと信じればできる」
「わかってますわ」
光はジュリエットが戸惑っているかと思い励ましたが、彼女らしい返事に一安心。
「こちらOgre。ヘルメットワーム二機発見した。A班は私に続いて移動せよ!」
「B班は俺に続け!」
『了解!』
ナイトフォーゲル実戦経験者であるA班梓は当然だが、経験が浅いB班ユーリがリーダーシップを発揮していることに驚くアプサラス。
能力者達は強風の中、隊列を崩さないよう操縦に集中している。
「A班の皆様、精一杯の援護をさせて頂きますので宜しくお願い致しますわ」
緊張で声を震わせながらも、仲間に挨拶するジュリエット。
●強風内での戦闘
梓の戦法は特殊能力は常時使用、ヘルメットワームがミサイル射程内に入ったら一発撃ち込み、強風による照準や射撃のズレを測定しながら参考データを各機に伝達している。
「こちらOgre。ヘルメットワーム発見。一機にミサイルを撃ち込んだが、墜落するに至らなかったので迎撃を頼む。風は弱まっているので短距離高速型AAMの連続攻撃も可能だ」
先程攻撃したヘルメットワームに追いついた梓は、近距離ではライフル、遠距離ではガトリングを使い分け、移動先を予測して火線を置くような射撃を行いながら迎撃。
真帆とサルファは、梓機の周囲200メートル内を徹底援護しながら二機一組で行動し、風情報を基にリロード間隔を補いつつ弾幕を張り接近を阻止し、射程に捕らえ次第敵編隊右端を短距離高速型AAMで攻撃、同時にホーミングミサイルG−01で牽制。
「空での戦いは初めてだけど‥‥援護する」
「ステイシスさん、援護するのはあなただけではなくてよ!」
ジュリエットは装備の都合上、スナイパーライフルRでダメージを与えつつ仲間のフォローに徹し、攻撃の隙を見つけては積極的にスナイパーライフルR、突撃仕様ガドリング砲を発射している。
「とどめだ!」
岩龍の機体依存特殊能力『特殊電子波長装置』を使用した梓は、ホーミングミサイルをヘルメットワームの中央部に狙いを定め発射、見事に命中。
B班は、ユーリ中心の遊撃戦。
ユーリ機のメイン攻撃は遠距離射撃。接近時には3.2cm高分子レーザー砲、ソードウィングで、遠距離戦はH−112長距離バルカンで攻撃。
レーダーと視覚だけでなく、梓からの通信を利用したり、敵機との位置を測定して近場の敵から確実に叩く等、様々な攻撃を繰り出すB班。
エンタは迅速に両側面から敵の背後に展開し、光機と共にヘルメットワーム包囲を試みたが失敗。
「仕方ない、量班連携で仕留めるか」
「そうするしかないようですね、エクセさん」
二機は仲間の援護に向かいつつ、各機の武器で攻撃。
リアは強風での飛行に注意しながら、慎重に後方より試作型G放電装置、スナイパーライフルRで射撃。
「ああっ!」
操縦に気をとられているうちに敵に接近されたので、リア機は急いでドッグファイトに切り替え、ブーストと機体依存特殊能力『ブースト空戦スタビライザー』を併用し、背後から3.2cm高分子レーザー砲で狙いを定め攻撃。その後、絶好のチャンスが到来したことをユーリから聞いたリアは『SESエンハンサー』を使用した攻撃で大ダメージを狙った。
「この好機! 逃しませんっ!」
リアの一撃により、ヘルメットワーム二機撃墜成功!
●砂塵内での戦闘
強風の中での空中戦に勝利した各機は、手間取りながらも南米基地に着陸した。
リア、光は着陸前に人型に変形し、装備を陸戦用に切り替えた。
「酷いですね‥‥砂嵐でろくに見えないです‥‥」
ゴーレムのほうが電子機器に優れている、自分の勘では唯一の岩龍である梓機が狙われる可能性はある。
「Sugarの言うとおり、砂嵐で視界が悪いな。センサーで索敵するのは難しいかもしれないが、地殻変化計測器と赤外線センサーを使ってゴーレムの位置を割り出してみる。皆は、発見するまで待機していてくれ」
梓は、射線の通る高台や遮蔽物を利用できる場所が無いかチェックしながらデータ収集を始めた。ゴーレムを発見するため、できるだけ高い場所に位置取り。
「ゴーレム二体発見! 各班、フォーメーションを整え、周囲の状況変化に注意せよ!」
梓の指示に従い、各班一斉に攻撃準備に取り掛かった。
「目標確認。皆、準備はいいか?」
「宜しくてよ、エクセさん!」
「僕も準備OKです‥‥」
「早く倒しましょう!」
光の言葉にジュリエット、エンタ、リアは闘志を燃やした。
皆、梓機にゴーレムが接近しないようにしようと懸命になっている。
光はゴーレムに接近する際、後衛陣の攻撃に合わせてホーミングミサイル、H−12ミサイルポッドを発射しながら牽制しつつ接近。
「ゴーレムに接近する、援護射撃頼んだぜ!」
「エクセさん、私に任せてください!」
砂嵐で視界が悪いのでレーダーと赤外線装置を活用しながら索敵し、発見次第、隊列を乱さないようにしながらリアはスナイパーライフルRで攻撃した後、徐々に距離を詰め、500メートル位の距離から3.2cm高分子レーザー砲発射を試みたが、寸でのところで避けられ反撃されたが、ヒートディフェンダーで防いだ。
ユーリは変形直後に即赤外線探査スイッチを入れていたので、視界の悪さは赤外線探査で解消できたのでユニコーンズホーン、3.2cm高分子レーザー砲、ソードウィングで速さを活かして接近格闘戦に持ち込み、『アグレッシヴ・ファング』で攻撃力低下をカバーし、同士討ちを避けるため各機の位置は常にチェックしている。
ヘルメットワーム戦は各班ごとだったが、ゴーレム戦はA班を中央に、左右にB班が展開するという包囲攻撃に。
ユーリは陣形の都合上、射撃系武器の使用はなるべく避け、A班と入れ替わる形で対応。
近接が危険と判断した光は、ユーリと連携してチャンスを待ちながらホーミングミサイルで攻撃を続行。
エンタは遠距離からユーリ、光を援護している。
「エクセさん、今がチャンスです! ゴーレムの動きが鈍くなっています!」
リアからの連絡を聞き、絶好の機会を逃すものかと光機はツインドリルで突撃。
「これで仕留める! くらえええええ!」
渾身の一撃は、ゴーレムの中央部を貫いた。
「まだ一機残っている、油断するな!」
皆にそう伝えながら、梓はガトリング砲の射程内に踏み込まれないよう、一発撃つごとに他に射線の通る場所を選んで移動している。検索した狙撃ポイントをメインにし、無理に仲間からは離れない範囲で行動。移動ポイントは、動くたびに仲間に移動先を連絡を忘れない。
「ミーシャ、A班メンバー、B班メンバー全員は縦列二編隊で待機、ゴーレムを包囲できる隊形にせよ!」
『了解!』
皆、唯一の岩龍である梓機をゴーレムに接近させぬよう、左右側面へ展開、包囲した。
「逃がしません!」
真帆は各機の位置を把握し、サルファ機と連携しつつ友軍誤射しないよう攻撃。
サルファは、赤外線機能を使用しながら遠方にいるゴーレムをスナイパーライフルG−03で援護射撃、機槍ロンゴミニアトの射程内に入ると即効攻撃を仕掛けた。
ジュリエットは、貸与したディフェンダーとスナイパーライフルRで側面から支援。
仲間の機体が危険に晒されたのを目撃したジュリエットは『ハイマニューバ』を使用し、ディフェンダーで止めに入った。
「シトラスさん、お怪我はございませんか?」
「大丈夫だ。ありがとう、HIME」
ユーリに礼を言われたジュリエットは、当たり前のことをしただけですわと照れた。
●それぞれの思い
残る一機も、能力者達の息の合った連携攻撃を受けたことによりダメージが大きい。
「Ogre、止めを刺せ。決着は、皆を引っ張ってきた岩龍の騎乗者であるOgreがするべきだ」
ユーリはここまでやってこれたのは梓のおかげだと感謝したので、彼女に手柄を譲ることにした。それには、他の能力者も同意した。
「では。遠慮なくいくぞ!」
梓は正確に狙いを定めると、スナイパーライフルでゴーレムが倒れるまで攻撃し続けた。
攻撃に耐えられなくなったゴーレムは、その場で崩れ去った。
第二回ナイトフォーゲル・シミュレーション:成功!
「皆さん、お疲れ様でした。前回よりも悪条件の中、良く頑張りましたね。結果は優良、としておきましょう。これにて解散とします。ゆっくり休んでください」
アプサラスがシミュレーションルームを出た後、能力者達は達成感を得た。
「疲れたな‥‥。でも、良い経験にはなった」
「同感だ。私は、余程のことが無い限り岩龍に乗ることは無いからな‥‥」
シミュレーションでの貴重な経験を、梓と光は忘れないだろう。
「これで、何とか実戦には出られそうね‥‥。多分‥‥」
ジュリエットの機体使用可能依頼参加は、まだまだ先のことになりそうだ。
サルファは「ご苦労様‥‥」と皆を労い、リアは絶叫マシーンに乗り終えたような満足感を得た。エンタは胸のドキドキが止まらなかった。
こうして、第二回ナイトフォーゲル・シミュレーションは無事終了した。