●リプレイ本文
●お得意様ご来店
漸 王零(
ga2930)、ラウル・カミーユ(
ga7242)、リュイン・カミーユ(
ga3871)兄妹、アンジェリナ(
ga6940)、IMP所属アイドルの常夜ケイ(
ga4803)と加賀 弓(
ga8749)、ミスティ・グラムランド(
ga9164)の7名は、ラスト・ホープにある『ヒエダ貸衣装店』に各自借りたいものを店主のヒエダ夫人に用意するよう頼みに来た。
「いらっしゃ〜い、待ってたわよ〜♪」
お得意様がいらっしゃったわ〜♪ と大喜びのヒエダ夫人。
「可愛いお嬢さん達は何を借りたいのかしら〜?」
最初にレンタルしたいものを言ったのはリュイン。
「我は黒のホルターネックワンピースに合うロングパレオを借りたい。こういう水着なのだが‥‥」
水着の写真を見せ、どのようなものが良いかと相談するリュイン。
「そうねぇ〜。あ、カスミちゃ〜ん、この子のコーディネイトしてちょうだ〜い」
カスミと呼ばれた若い店員は、リュインを水着コーナーに案内して色々と見立てた。
「私は麦わら帽子、ビーチサンダル、水色のパーカー、バケツを借りたい」
「私もビーチサンダルをお借りしたいです」
アンジェリナのバケツは何に使うのだろうかと考えたヒエダ夫人だったが、理由は聞かないでくれと言いたげな視線に気づき何も言わなかった。ケイは、自己アピールに使うのだろうと思っている。
「私は、以前お借りした藍色で蛍柄の浴衣を今回もお借りしたいですが宜しいでしょうか?」
「今回も使ってくれるのね〜、嬉しいわ〜」
気に入ってもらえたみたいね〜、とヒエダ夫人は大喜び。
「女の子達は、小物はカタログの中から選んでね〜。そこのイケメンさんお2人は何を借りたいのかしら〜?」
王零は大漁旗と銛を借りたいと言い出したが、そのようなものがあるのだろうか?
「大丈夫よ〜。うちはだいたいのものは取り揃えているから〜」
ということで、無事2品レンタルできた王零は「今すぐ借りたいのだが良いか?」と尋ねたが、今すぐ用意できないと言われたので諦めた。
「僕は、黒に青鼻緒のビーチサンダルと吸盤矢4本、リンゴ3個に目隠し用の布ネ」
「リンゴは作り物でいいのかしら〜?」
「構わないヨ」
アンジェリナ、弓が借りたいものをカタログを見せながらヒエダ夫人に「これをお願いします」と準備を頼んだ。
ケイは早替わり用の衣装として、薄いグリーンの水着に合うようなウェディングドレスとリゾートドレス、黒の大人っぽいカクテルドレスのレンタル要望。
「え、ええと‥‥私にはどの様な水着が良いのでしょう?」
おどおどとヒエダ夫人に尋ねるミスティの要望は、余り肌を見せないような水着。
「そういえば、以前に日本の学校を見学した時に見た様な‥‥ええと、紺色の水着‥‥何でしたっけ‥‥?」
「スクール水着のことかしら〜?」
そ、それです‥‥と答えたミスティは、普段着である黒を基調としたフリルを付けてほしいとお願いした。
「大丈夫よ〜。それは私がやってあげるから安心して〜」
可愛いお嬢さんの頼みですもの〜、と張り切るヒエダ夫人。
「え、ええと‥‥サンダルもそれに合わせた色で‥‥。バラのコサージュも付けていただけますか‥‥?」
それもいいわよ〜とヒエダ夫人の了承を得たのでホッとしたミスティ。
「それじゃ〜皆が頼んだものは直接会場に届けるわね〜。どれが誰のものかわかるようにするから安心してね〜♪」
宜しくお願いします、と挨拶をして能力者達は『ヒエダ貸衣装店』を後にした。
その数分後、事務所で待っていたソウジ・グンベは青褪めた。
「ソウジ君〜どの褌がいいかしら〜?」
「どれも嫌だっ! それに何で褌なんだ!?」
「褌は日本男児の象徴です〜! あなた日本人でしょう〜?」
ソウジは日本人だが、帰化したので国籍はアメリカである。まぁ、それでも日本男児には変わりないが。
「この赤い褌が似合いそうね〜。私が締めてあげるわ〜♪」
「そ、それだけはやめてくれぇー!!」
結局どうなったかというと‥‥ソウジは観念し、褌姿で司会を務めることに。
試着の際は、男性店員に締めてもらった。これだけでは恥ずかしいので士官服の上着を前開きで着用してもいいかと尋ねたところ、褌が見えるなら構わないというお許しをヒエダ夫人からいただいたのでホッとした。
●サンフランシスコでの熱闘
水着コンテストの会場はサンフランシスコ・ベイエリア。夕刻、設置された特設ステージで行われる。
「ビーチ‥‥それは強者が弱者を蹂躙する容赦なき戦場‥‥」
他の女性出場者を見やり、皇 千糸(
ga0843)が呟く。強者は巨乳、弱者は貧乳を意味しているのだが、結果は胸の大小とボディの魅力の決定的差で決まるものではない。
「いろいろな賞があるな。我が身を省みれば年齢的にはクィーンだが、体型はプリティというジレンマ‥‥。嗚呼、グラマーな人が恨め‥‥もとい、羨ましい」
「コンテストも勝負事、真剣に勝ちに行くとしましょう。わたくし、負けず嫌いですのよ?」
清楚なお嬢様とは思えない鷹司 小雛(
ga1008)の挑発的発言。
(「私より胸が大きい‥‥!」)
小雛の胸を見て愕然となる千糸は、いっそのこと開き直ってスクール水着でも着ようかと思ったがネタに走るにしてもそれだけでは芸が無いと思い直し、水色のAラインワンピース水着を選んだ。ビーチサンダルは、全体的にハイビスカスをイメージした花デザイン付きのもの。
イメージは『南国の花』というのは、今決めたようで。
「うーん‥‥水着なんだからボトムが見えても全く問題ないんだけど‥‥」
感覚的に超ミニスカを着ているような気恥ずかしさがあるらしい。
普段から軽装ではあるリュインだが、水着の露出は普段着とは違うので何となく落ち着かない様子。
「スタッフ‥‥あまり見るな」
頬をほんのり赤く染めて照れるリュインを見て「純粋な子だ」と呟く男性スタッフ達は、より取り見取りな水着姿を女性を見れて眼福、眼福と内心喜んでいる。
「ジロジロ凝視してるんじゃない」
「は、はいぃ!」
照れていたかと思いきや、リュインは鼻の下を伸ばしていた男性スタッフに跳び蹴りを食らわせそうな雰囲気となった。ニッコリ笑いながらなのが怖い‥‥。
リュインの傍にいるラウルの参加動機は賞金目当てでもあるが、本来の目的はソウジ弄りだった。
(「大事な妹の水着姿を鼻の下伸ばして見やがったら狙撃してやる!」)
というブラック思考中。
ソウジが他の女性参加者に目移りしたら、ラウルは何をしでかすかわからないだろう。
「どうするか分からないネ、僕。フッフッフ‥‥」
ブラックな微笑が怖いです、お兄さん。
6月に行われた『結婚式コンテスト』では惜しくも入賞を逃したキョーコ・クルック(
ga4770)は、その時のリベンジとして参加、アンジェリナ(
ga6940)とロック・スティル(
ga9875)は、互いに無理矢理参加させられた。
友人に無理矢理参加させられたアンジェリナは、コンテストの内容が分からないでいるし、ロックに至っては相棒に「賞金ゲット確実!」とそそのかされたので乗り気ではない。
アンジェリナはカナヅチなので水着を着ること自体初めてである。
(「こ‥‥こんな面積の狭い服で人前に出ろと言うのか‥‥?」)
着用しているのは白のスクール水着なのだが、それでも面積が狭いと思うアンジェリナ。
一方のロックは、早く着替えたいとイラついている模様。
「おまえも何かと苦労しているようだな。水着コンテストは、女に相応しいものだと思わないか? 男の水着を見て面白いと思う奴がいると思えん」
ロックの問いに「‥‥さあ」とそっけない返答をするアンジェリナ。
「皆、準備は良いか? そろそろ始まるぞ」
赤い褌、前開き士官服姿のソウジがスタンバイするよう出場者達に言うが、1人足りないことに気づいた。
「王零はどうした? 彼も参加するんだろう?」
「魚を捕るとか言って出かけたきりだ」
ロックの言葉に「ここで魚が捕れるとは思えないんだがなぁ」と呆れるソウジ。
今回の出場順は、ヒエダ夫人手製の割り箸くじで決定。順番はまだ内緒。
「ソウジく〜ん、そろそろ始まるから司会お願いね〜」
ヒエダ夫人がソウジにスタンバイするよう合図。
さあ、コンテスト開催だ!
「大変お待たせ致しました。ただいまより『ヒエダ貸衣装店』主催の水着コンテストを開催致します。前回の浴衣コンテストに引き続き、私、ソウジ・グンベが司会を務めさせていただきます」
待ってました! と言わんばかりの拍手が送られた。
●水着姿の戦いの火蓋は切って落とされた
前回は男性部門、女性部門と分けていたが、今回は出場者が少ないため男女混合で行われることに。
「最初の方に登場していただきましょう。エントリーナンバー1番、皇 千糸嬢です、どうぞ!」
盛り上がる声援の中、ファッションショー感覚でステージの上を歩いたりするのかしらと悩みつつ、自然体でステージ中央まで軽くハミングしながら歩く千糸は中央に着くとUターンする時にお尻の食い込みを直す仕草をしてみた。
これには、最前列の男性客の一部は興奮気味。
「皇 千糸です、宜しくお願いします。皆さん、応援宜しくお願いしますね」
自己紹介を終えると、回れ右して登場時同様、ハミングしながら退場。
自分の出番が終わると、ステージ裏辺りで焼きソバを食べ始めた。
「あーやっとで出番が終わったわ。後はまったり過ごすだけねー」
後は、他の出場者の様子をステージ裏から拝見することにした千糸。
「続きましてはエントリーナンバー2番、篠崎美影嬢です。どうぞ!」
美影が登場するなり、男性観客が沸き始めた。
何故なら、彼女の水着は中央部を銀のリングで止めてある右半分が黒、左半分が白のビキニに近い大胆なデザインのものだった。露出は高めなのは当然!
「篠崎美影です。能力者としてのクラスはサイエンティストになります。宜しくお願いします」
美影のアピールポイントは、自身のスタイルの良さと水着のデザイン。髪型は結い上げたポニーテールなので、背中からうなじへのラインも見せるようにしてあるので後ろ姿も堪能できるというおまけ付き。
コスプレが趣味というだけあり、自身を魅せるのが上手い。見られるのも慣れているということもあり、最後まで堂々としていた彼女だが、人妻であることは男性観客のために内緒ということで。
「うはぁ、何あの胸のボリューム! きっと、私とはDNAの配列の仕方からして違うんだわ‥‥」
焼きソバを食べるのを中断した千糸のコメントだった。
「続きましてはエントリーナンバー3番、『サマープリティばでぃ!』、水着コンで紺☆ツンデレってすぐ暴発・脅威の阿野次侵食率100%! 君は生き残ることが出来るか!? 阿野次 のもじ(
ga5480)嬢です、どうぞ!」
ソウジの紹介が終えると、スタッフはステージ中央に机を用意し始めた。
何に使うんだ? と観客達が不思議がっていたところ、ツカツカと歩いて登場したスクール水着姿、左二の腕に赤いリボンを結び、足首にヒマワリ付きのビーズアクセサリをつけ、名前入りの赤いマイビート板を両脇に抱えたのもじが元気良く登場したかと思うと、机の上に乗る元気に挨拶を始めた。
「私の名前は阿野次のもじ。好きな言葉は『成り上がり』! 気軽にいっちゃんって呼んでね♪」
何故机の上なのかは、本人に聞いてください。
「フハハハハハ! 『赤い水仙のいッちゃん』の実力、思い知るがいい! ビートBANサーベル!」
そう言い出したかと思うとビート板をブンブン振り回しての回転乱舞。しかも2枚両持ち二刀流。ステージは無人なので被害は無いものの、のもじの勢いは誰も止められそうも無いので続行させた。
「強大なる敵(バグア)を打て! 打て! 打て! HEY☆ あなたに涼しげな夏の風を送るっ!」
自己アピール終了かと思いきや、ピンポン玉(机の上に籠入りで置いてあるもの)を手にし「届け! あなたの心にスマッシュアターック♪」と言い出し、ピンポン玉をたくさん取り出し打ち出すのもじだった。
すべてを打ち終えると、すっきりした表情で退場するのもじだった。
その数分前、魚を捕りに行っていた王零が戻ってきた。
「海の男と言えば漁師だと思い魚を振る舞いたかったが‥‥時間が足りなかった‥‥」
そう謝るが、スタッフ達は「仕方ないですよ」としか言いようがなかった。
「そのままで結構ですから、急いでスタンバイしてください。次、あなたの出番なんですから」
王零は、大漁旗を手にすると急いでステージ袖に向かった。
「続きましてはエントリーナンバー4番、漸 王零氏です。どうぞ!」
右肩に大漁旗を担ぎ、左手に銛を持った王零は、豪快に海の漢らしくずぶ濡れのままステージ中央に歩いていった。
「褌とは水陸両用の着衣であり、日本男児の魂だ! そして海の男と言えば漁師! なので魚を捕ってきて捌いて皆にご馳走したかったのだが‥‥残念ながら捕れなかった。すまぬ!」
深々と頭を下げ、観客に謝る王零だったが「気にするな、兄ちゃん!」とおじさん世代の観客達が彼を慰めた。
「応援、感謝する! 次があるならば魚を捕まえ、目の前で捌いて皆に振る舞おう!」
大漁旗を大きく振り、その声援に応える王零はまさに『日本男児』だった。本当は中国人なのだが、それはどうでもいいことにしてほしい。
スタッフ達は、モップでステージを急いで拭いていた。次の出場者が滑って転倒したら大変だからだ。
数分後、次の出場者の出番に。
「続きましてはエントリーナンバー5番、清楚な和風美人、鷹司小雛嬢です。どうぞ!」
小雛の水着は、赤い生地がわりと大きめ、シンプルデザインだが上はストラップレスで中央部分をリング状の金具で止めるタイプ、下は腰の左右を上と同じくリング状の金具で止めてあるタイプのビキニ。豊満な胸を強調できるよう、このビキニを選んだのだろうか。良いスタイルは、セクシーさを醸し出している。
赤は、小雛にとっては『誰にも負けない色気は有る』と自負しているようなものだが、それが彼女の艶のある長い黒髪と白い肌を引き立てている。
「鷹司小雛と申します‥‥宜しくお願い致しますわ」
少し照れつつ、微笑んで自己紹介。その仕草や表情、口調はお嬢様らしい清楚さを前面に打ち出しているが、妖艶なセクシー水着とスタイルが清楚さのギャップあるのは計算ずくでの演出。
自己アピールは『月詠』による演舞披露。
安全面に配慮して、ステージ前方に近づきすぎないよう注意。
セクシーなビキニを纏った眼帯美女が流麗な刀を振るい舞うという非日常感を醸し出したその演舞は、男性客を魅了。刀を振るう際は胸の動きを意識しているのか、美しい円の動きで刀を振るいつつ豊かな胸を揺らしている。
(「これで、殿方の視線を釘付けですわ」)
最後に刀を鞘に収め、前に歩み出て優雅に一礼。
演舞は近くで見れない分、退場前の挨拶は舞台前で行い、近くで見てもらえるようにした。ステージ最前列付近の客達には、小雛の胸の谷間が見えている。それも狙いだったりする。
「続きましてはエントリーナンバー6番、IMP所属アイドルの常夜ケイ嬢です。どうぞ!」
アイドル、というソウジの言葉と同時に、観客達は大盛り上がり。それほどIMPの知名度が高いということだろう。
薄いグリーンのツーピースタイプの水着には、さりげなく『IMP』のロゴが入っているが、今はその色に合うウェディングドレスを着ている。
「常夜ケイです。ヒエダ貸衣装店のCMソングを歌います♪」
ケイはマイクを手にすると、アイドルポップ調の曲をアカペラで歌い出した。
ヒエダ貸衣装店CMソング『変身(かわ)りたい季節に』
作詞、作曲、振り付け:常夜ケイ
めぐるめぐる季節〜♪ 夏だ海だ太陽〜♪
じっと汗ばむ日差しに、あ・な・た〜が目線を細める
次の歌詞の前に、ウェディングドレスからリゾートドレスに早替わり!
おおーっ! と観客がざわめく。
ふっと微笑むまなざし、わかっているのよ
今年の私は違うの 魔法の呪文はヒ・エ・ダ〜
人は中身というけど 第一印象カンジン
またしても次の歌詞の間に早替わり。今度は黒の大人びたカクテルドレス。
きっと見つけてみせるよ 素敵な水着やお洋服♪
あなた色のお姫様 バッチリ決めてあげる〜
だから迎えに来てよね ヒエダであなたも王子様〜
歌い終えるとカクテルドレスを脱ぎ捨て、IMPのロゴ入り水着姿に。
足元に置いてある浮き輪を持つと、アイドルスマイルで「ラスト・ホープにあるヒエダ貸衣装店を宜しくお願いしま〜す♪」と宣伝。
ケイが退場すると、IMPファンは名残惜しそうな表情に。
「続きましてはエントリーナンバー7番、ミスティ・グラムランド嬢です。どうぞ!」
ソウジのアナウンス後、おどおどとした仕草でステージ中央に向かうミスティ。
(「ど、どうして私はこの様な依頼に入ってしまったのでしょう‥‥。体型に余り自信がないから水着を着なかったのに‥‥。で、でも‥‥傭兵たる者、やるからにはきちんとやらないと‥‥!」)
誰が彼女を出場させたのかは、永遠の謎だろう。
ミスティの水着は、紺のスクール水着に黒を基調としたフリルと赤いバラのコサージュを付けたカスタム水着。
ヒエダ夫人がちょっと手を加えただけで、萌え〜なスクール水着は可愛らしい水着に変わった。
サンダルの鼻緒にも赤いバラのコザージュ付きで、赤い花柄模様の浮き輪を右手の脇に抱えている。
浮き輪を借りたのは、膝くらいの高さの水位でも溺れてことがあるから‥‥というのは本人談。
「ミ、ミスティ・グラムランドです‥‥。宜しくお願いします‥‥」
もじもじしながら自己紹介をしているので、妹萌え〜な男性観客は一目でメロメロ。
(「こ、これ以上‥‥耐えられません‥‥!」)
恥ずかしくなったミスティは、そそくさと退場。
「続きましてはエントリーナンバー8番、サーファー風の好青年のラウル・カミーユ氏です。どうぞ!」
ステージの登場したラウルの水着は自前の蒼系サーフパンツで、両サイドには竹縞に夏草花の色紙紋様の和柄が。無地と和柄地の組合せがポイントだろう。素足の黒に青鼻緒のビーチサンダルも良く似合っている。
右手には『洋弓「アルファル」』、左手には前日頼んだ吸盤矢4本と目隠し用の布を持っている。
「コンバンハー! ラウル・カミーユでっす♪ どぞヨロシクー。妹のリュンちゃんも出場するから応援ヨロシクー! お兄ちゃんも負けないからネー」
ステージ袖で「やめんか、馬鹿兄‥‥!」と怒りを堪えているリュイン。
陽気な彼の自己アピールは、目隠しして頭に載せたリンゴを射抜く『ウィリアム・テル』パフォーマンス。客席から協力者を募るフリをしつつ、フェイントで指名した人物はソウジだった。
「ソウやんを指名します! 協力ヨロシク♪」
爽やかな笑顔で、ラウルはスタッフにソウジの頭と両手にリンゴを載せるよう指示。
目隠しを終えると『洋弓「アルファル」』を番え、即射で吸盤矢4連射。吸盤矢3本はリンゴにヒットしたが、残る1本はソウジの額に当たった。
「あはは、1本失敗しちゃったねー♪ 目隠し取ってないのに何故失敗が分かるかとか、リンゴと矢の数合わないじゃんとかそんなの僕、分かんないナ〜♪」
こいつ、わざとだな‥‥とおどけるラウルをジト目で見るソウジ。
「続きましてはエントリーナンバー9番、キョーコ・クルック(
ga4770)嬢です、どうぞ!」
ステージに登場したキョーコの水着は上下真っ赤なビキニで、ビキニのトップの胸元は金色のリングで左右を繋ぎ、ボトムも腰部分を金色のリングで前後を繋いでいる。肩紐は胸の横を通し、胸を強調するデザインになっている。ビキニと同色のヒール付きサンダルは細い紐でかかと、足首に固定するデザインで、小道具として左手に瓶ジュースを2本持ちながらモデルのようにセクシーに歩いている。
ステージ中央に到着すると、先端の一番人から見えやすい位置で左手のジュースを軽く持ち上げ、右手は髪をかき上げて会場の男性陣に誘うような視線を送った。
キョーコの自己アピールは、男性陣の視線を釘付けに。
一通りアピールを終えた後ゆっくりUターンし、チラリと後ろを軽く一瞥してから退場した。
キョーコも美影同様人妻なのだが、これも内緒ということで。
「続きましてはエントリーナンバー10番、リュイン・カミーユ嬢です。どうぞ!」
ラウルの応援に呆れたリュインだったが、気を取り直してステージに登場。
彼女の水着は、バックがビキニに見えるカッティングの淡い蒼銀薔薇のワンポイント柄入りの黒のホルターネックワンピース。白の薄絹ロングシフォンパレオは、ヒエダ衣装店の借り物。足首に付けている鈴付きのアンクレット、手首つけているブレスレットは軽やかに鈴の音を鳴らしている。靴音が邪魔にならないよう、裸足で登場。
パレオを腰に巻いた状態で、涼やかな鈴の音色と共にしなやかにステージ中央まで歩いた。
「リュイン・カミーユだ。その‥‥水着はあまり慣れないので、あまり見ずに宜しく頼む‥‥」
スタッフに渡しておいたBGMが鳴り出すと、自己アピールである舞を始めた。
ロングパレオを外して新体操のリボンの要領でショールのように扱いながらの舞うと、パレオ留めが丁度良い錘の代わりとなり、時折響く鈴の音とマッチングした良いアクセントとなる。
パレオを翻しながらの片足180度上げたスローターン、バックルターンジャンプの後パレオを放り投げ、片足踏切前方伸身宙返り後キャッチ等、徐々にアクロバティックにしなやかさ、優美さは損なないよう集中して舞い、フィニッシュはフェッテターンの後パレオを放り上げ、ロンダート側方伸身宙返りでキャッチし、前後開脚で決めポーズ。
観客達は、ビーチの舞姫に盛大な拍手と喝采を送った。
「続きましてはエントリーナンバー11番、ロック・スティル氏です。どうぞ!」
美しき舞姫の後に登場したのは、獅子を思わせるロック。
水着はスパッツタイプの競泳水着の上にダウンベストというシンプルなものだが、脱帽したことで獅子らしさをより際立たせている。サングラスはかけたままだが。
ステージ中央まで来たのは良いが、自己アピールを何も考えていないロックは何をやれと、と周囲にきこえないようぼやいた。
(「しかし、参加したからには何かしなければ‥‥!」)
ロックが行った自己アピールは、ボディビルダーのポージングだった。筋肉質体型、小麦色の肌なので適当にポージングしてもそれなりに見える。
いくつかポージングを終えた後、スタスタと退場した。
「続きましてはエントリーナンバー12番、2人目のIMP所属アイドルの加賀 弓嬢です。どうぞ!」
(「先月の浴衣コンテストに続いて、これで2回目ですね。今回も前回と同じようにIMPの宣伝を含めて頑張ります。地道な宣伝活動は重要ですからね」)
弓の水着は、持参した白地に青色の枠のビキニの上に前回出場した浴衣コンテストで着た藍色で蛍柄の浴衣を水着の上に着ているが、すぐに脱げるよう細工してある。この細工だが、ヒエダ夫人の許可を得てある。仕掛けたのも夫人だし。
その姿でステージ中央に到着すると、IMPの宣伝と自己紹介を始めた。
「IMP所属の新人アイドル、加賀弓です。先月に引き続き、今回もIMPの宣伝を兼ねて参加させて頂きました。宜しくお願いします」
その後、前回同様ショートバージョンで歌うが、曲を掛ける直前に浴衣が脱げた。夫人手製の仕掛けは見事に成功!
素足でステージを縦横無尽に歩きながら、弓は曲を歌いきった。
「皆さん、これからもIMP応援お願いします」
礼儀正しくお辞儀をした後、ゆっくりと退場。
「水着コンテストですが、残るはエントリーナンバー13番のアンジェリナ嬢のみとなりました。盛大な拍手でお迎えください!」
盛り上がる拍手の中、麦わら帽子で難しい顔で恥ずかしさを隠しながら登場。全体的に隠しきれていないので、あまり意味はないようだった。
アンジェリナの気恥ずかしさは、司会のソウジを見るなり限界に達した。
「なっ‥‥何故、あなたがここに居るっ!」
「何故って言われても、俺、司会だから」
「くっ‥‥! 見知らぬ者ならまだしも、顔の割れている者に‥‥」
顔見知りに見られたこと=大恥をかいたと解釈したアンジェリナは、思いっきりバケツの水を自分にかけた。いうまでもなく、ステージも彼女自身もずぶ濡れ。
ステージに置きっぱなしのメモには、友人の字で『水着は濡れてこそ、だと思います♪』と書かれていた。
ヤケになって行った行為は、濡れた長い黒髪と水着とパーカー、それに強がって恥じらいを隠す表情を不本意にもアピールしたことに。男性の視線を集めるという友人の作戦は、見事に成功した。
ちなみに濡れたステージはどうしたかというと、スタッフにモップを借りたアンジェリナが自分で拭き取っている。律儀な一面も、男性の視線を集めた。
●サンフランシスコ・ベイエリアの覇者
選ばれた観客100名の投票結果、審査委員会の審議は予想以上に長いことかかった。
その間の時間稼ぎは、ラウルによる『ウィリアム・テル』パフォーマンスやリュインの舞、ケイと弓によるIMPアイドルデュエット。
観客達は、出場者達の自己アピールは再度見れたので大喜び。
数10分後、審査結果が発表されることに。
「大変長らくお待たせいたしました。ただいまより、審査結果を発表いたします。その前にひとつお詫び申し上げます。『サマーボーイ賞』ですが、該当出場者がいないため賞自体を取り消します」
一礼した後、ソウジは結果が書かれた紙を見ながら発表を始めた。
「『ビーチガイ賞』は、エントリーナンバー11番のロック・スティル氏です!」
発表を聞いたロックは「俺がか!?」と面食らっていた。
「『ビーチクィーン賞』ですが、お2人いらっしゃいます。1人目はエントリーナンバー9番のキョーコ・クルック嬢、2人目はエントリーナンバー10番のリュイン・カミーユ嬢です。なお、このお2人ですが同票のため同時受賞となります」
結婚式コンテストのリベンジ成功〜! と内心喜ぶキョーコと、信じられないと照れるリュイン。
「『サマープリテイ賞』は、エントリーナンバー3番の阿野次のもじ嬢です!」
のもじ自身の可愛さもあるが、インパクトある自己アピールも受賞理由だろう。
「『ビューティマーメイド賞』ですが、こちらも同票です。1人目はエントリーナンバー2番の篠崎 美影嬢、2人目はエントリーナンバー5番の鷹司 小雛嬢です!」
この2人に関しては、ナイスバディが受賞理由だろう。
「『日本男児賞』は、エントリーナンバー4番の漸王零氏です!」
投票数もあるが、褌スキーな審査委員長であるヒエダ夫人の力添えもある。
「『カスタム水着賞』は、エントリーナンバー7番のミスティ・グラムランド嬢です!」
ミスティに関しては、男性票が圧倒的に多かった。
以上で審査結果発表が終わりかと思いきや、ステージにヒエダ夫人が登場。
「皆様〜最後までご観覧くださりありがとうございます〜。私が審査委員長の稗田令子でございます〜。今回も前回同様、切り捨てるのは惜しい方がいらっしゃいますので発表致します〜」
ヒエダ夫人が発表した特別賞受賞者はラウル。
それともう1人。ヒエダ貸衣装店のCMソングを作成したケイには『宣伝賞』が与えられた。
各受賞者には、賞金と賞状はソウジから手渡された。
●熱(暑)き戦い終えて
「ふぅ‥‥やっと着替えられた」
誰よりも早く着替えたがっていたロックは、着替えられてホッとした。
リュインはラウルに「あのようなことを言うな、馬鹿兄!」と怒鳴り、王零は魚が捕れなかったことに関してまだ落ち込んでいる模様。受賞したんだから胸を張れ!
ケイは楽しかったと大はしゃぎで、アンジェリナは内心で「こういうのは御免だ」と呟き、千糸は2杯目の焼きソバを食していた。
「皆、お疲れさん。今回のコンテストも大成功だったんでヒエダ夫人は大喜びだ」
皆を労うソウジを「我に言うことはないのか?」と言いたげな視線で見るリュインだったが、ソウジはあえて気づかない振り。
コンテストが終わったので解散、というところで「ちょっと待ったぁ〜!」とヒエダ夫人が駆けつけて来た。
「ラウルさん、ロックさん! あなた達は、何故褌で出場しなかったのですか!!」
すごい勢いで迫るので、2人は逃げようが無かった。
「は、恥ずかしいから‥‥」
「俺は日本人じゃない!」
と理由を述べるが、言い訳と思われたようで。
「そんなお2人に特別プレゼントです! 来年の水着コンテストはこれで出場するのです!」
言い忘れ。ヒエダ夫人は、興奮するとのほほん口調では無くなる。
そんな彼女がラウルとロックに手渡したのは‥‥褌だった。
「フンドシはTバックになるだろう! 俺はそれが我慢ならんし恥ずかしい! それに、俺はアメリカ人だから褌とは無縁だ!」
「褌に国籍は関係ありません!」
普段はクールなロックだが、ヒエダ夫人と褌について熱く口論していた。
その頃、ソウジとリュインは波打ち際を歩いていた。
「ビーチクィーン賞、おめでとう」
「言うことはそれだけか?」
何を言えと? と悩むソウジだったが、悩むより行動だとリュインの頬に軽いキスをした。
「な‥‥!」
キスされた頬に手を当て、赤面するリュインを見たソウジは「可愛い」と呟いたが、リュインに「美しいの間違いだろう」と修正された。
その頃、ロックとヒエダ夫人の熱き論争はまだ続いていた。