タイトル:ブラジル料理食べさせてマスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/21 16:45

●オープニング本文


 ULT支援企業1つである大企業のご子息は、ブラジル在住の能力者『ロサ』ことエストレーラ・ミサキに恋をした。
 以前、能力者に頼んでロサの情報を聞き出したが、父親がUPC南中央軍所属軍人であること、エミタ不適合者であるため能力者となりロサと共に戦いたい! という夢は破れた。
 恋も駄目、能力者にもなれないショックから、ご子息は相当落ち込んでしまった。

 幼少時からご子息に付き添っている老執事は、能力者達にこのような依頼を要請した。
「能力者の皆様にお願いがあります。お坊ちゃまは、エストレーラという女性とお付き合いできないことで相当落ち込んでおられます。そのため、お父様である社長補佐の仕事も疎かになっております。エストレーラ様とお坊ちゃまを結ばせてくれとは申しません。夏バテしやすいお坊ちゃまのために、ブラジル料理を作っておただけないでしょうか? エストレーラ様の故郷の料理を味わえば、少しは元気が出ると思うのです。この老いぼれの頼み、聞き届けてください」
 何度も頭を下げ、ブラジル料理を作ってくれと頼む老執事だった。
 モニターでこの依頼をチェックしたソウジ・グンベは「あのお坊ちゃん、相当落ち込んでいるようだな」と呆れた。
 料理依頼というが、ソウジは簡単なものしか作れない。食事は兵舎の食堂、コンビニに頼るのがほとんどである。
 あの人だったら料理上手そうだとある人物を思い付いたソウジは、ある場所に電話した。

 その頃の『実践訓練センター』では、アプサラス・マーヤー教官が新人能力者の指導講習を終え教官室に戻ってきた。
「グッドタイミング! マーヤー教官、UPC軍のソウジ・グンベ中尉からお電話です」
「グンベ中尉からですか?」
 何の用でしょう? と電話を代わると、いきなり「頼む、料理作ってくれ!!」と頼まれた。
「随分と失礼な頼み方ですね。どういうことか詳しく説明していただけないでしょうか?」
 アプサラスに注意されたことで冷静になったソウジは、料理依頼のことを話した。
「そういうことですか‥‥。料理は得意ですが、ブラジル料理は作ったことがありません。それでも宜しいのでしたらご協力します」
「それでも構いません! お願いします! それと、先ほどは失礼しました!」
 他人に物事を押し付ける、もとい、お願いするときは敬語を使うソウジだった。

「『実践訓練センター』教官のアプサラス・マーヤーと申します。皆様に依頼を要請します。内容は、ULT
企業支援の1つである企業のご子息にブラジル料理をご馳走することです。料理ですが、皆様に作っていただきます。私も協力しますので、多くの方のご協力をお待ちしております」
 以来要請を終えたアプサラスはUPC南中央軍に連絡をし、南中央軍所属の三崎・裕士中尉に代わるよう電話に出た兵士に頼んだ。ロサのことは、ソウジから聞いたので大体のことは把握している。
「三崎だ。自分に何用だ?」
「突然のお電話、失礼致します。私はラスト・ホープにある『実践訓練センター』の教官を務めておりますアプサラス・マーヤーと申します。お嬢さんのことでお話があるのですが‥‥」
「エストレーラの話だと? 何故、そのようなことを」
 訝しげな顔をする三崎だったが、ロサからブラジル料理のレシピを聞いてほしいと聞くと安心したのか「わかった、娘に聞いておこう」と承諾した。
「ご協力、感謝します。お忙しいところ、失礼致しました」

 翌日、実践訓練センターにFAXが届いた。内容はブラジル料理のレシピ数点。
「これで何とかなりますね。後は協力してくれる能力者を待つだけです」

 ロサの故郷であるブラジル料理を食せば、ご子息は少しは元気になるだろうか?

●参加者一覧

ルシオン・L・F(ga4347
19歳・♂・ER
サイト(gb0817
36歳・♂・ST
朔月(gb1440
13歳・♀・BM
美空(gb1906
13歳・♀・HD
メイフィア(gb1934
18歳・♀・DG
大槻 大慈(gb2013
13歳・♂・DG

●リプレイ本文

●ご子息元気付け作戦
「お金持ちらしい、ってことは気づいてたけど、まさかULTを支援している大企業のお坊ちゃんだったとはねぇ。そういうのが後継者の親父さんの会社、大丈夫なのか?」
 口にはしないものの、ご子息の認識は『馬鹿坊ちゃん』という朔月(gb1440)は心配しているが、それ以上に企業の心配なようで。
「俺は大槻 大慈(gb2013)、宜しくな。ブラジル料理かぁ、食ったことねぇんだよなぁ。お坊ちゃんのために作ったヤツ、俺達も食えるのか?」
 大慈は、ご子息のことより料理のことが気になる様子。
「皆さんが調理したブラジル料理ですが、まずはご子息に召し上がっていただきます。ご子息が薦められた場合のみ召し上がれます。余った料理はお持ち帰り可能ですが、お早めにお召し上がりくださいね」
 やりぃ! と喜ぶ大慈。
「美空(gb1906)であります。兄上こと大慈さんのお手伝いのために馳せ参じたであります!」
 大慈が何やら隠れて楽しそうにコソコソしているのを見つけた美空は、こっそり参加しようとしたが見つかってしまったので手伝いをする羽目に。
「‥‥アプサラス‥‥例のものは用意できましたか‥‥?」
 ルアム フロンティア(ga4347)にそう言われたので、これですね? とアプサラスは白衣のポケットから1枚の写真を取り出した。
「‥‥助かります‥‥」
 アプサラスが手渡したのは、カポエイラの道着を着たロサの写真だった。ルアムは、これを見ながらあるものを作ろうとしている。
「‥‥私も何か、作らねば参加した意味がありません‥‥。私のような依頼初心者は、試行錯誤と突っ走りが命‥‥どうにでもなります‥‥」
 ルアムの調理補助として参加したメイフィア(gb1934)は、自分にも何かが出来るはずと思っている。
「ブラジル料理は初めて作ります。上手に出来ると嬉しいんですけどねぇ。ご子息君の企業は、かなりのお力を持っているようですね。恋の悩みは誰にでもあるものです。私達で、できる限りのことをしましょう」
 サイト(gb0817)はにこやかに微笑みながら、ご子息の力になりたいと思った。

●何を作りましょう
「皆さん、何を調理するか決めましたか?」
 アプサラスが、能力者達に担当料理を尋ねた。
「‥‥当方は‥‥指導のもとシュラスコを作成‥‥」
「‥‥私は、ルアムの調理補助担当です‥‥」
 ルアムはその他に飴細工も作るが、余裕と料理の量次第では『ポンデケイジョ(ブラジルの母の味であるチーズパン)』と『カンジャ(ブラジルのお粥)』を追加作成することに。
「‥‥これで‥‥ご子息が‥‥元気に‥‥なれると‥‥いいの‥‥です‥‥が‥‥」
 サイトはアプサラス指導のもと『フェイジョアーダ・コンプレッタ』を作ることに。
「ロサ君の味が再現出来ていればいいのですけど‥‥。豆を煮ている間、タコスも作ります」
 タコスはメキシコ料理なのだが、ロサの好物なので食べてもらえると考え、胃もたれ防止と食欲増進にバッチリのパイナップルジュースも追加作成することに。
 ブラジル料理は、意外と思われるが胃もたれしやすい。
 朔月は『水出しアイスコーヒー』と『カルル・ド・パラ』、大慈は『アロス・イ・フェイジャン』と『ヴィラド・エ・パウリスタ』、美空は『ドーセデレイチ(甘いミルク菓子)』と『ブラジル風プディング』。
 豆料理を担当する能力者は、アプサラスと共にご子息にブラジル料理を振舞う前日にご子息宅の調理場を借りる段取りになっている。豆類は、煮込むのに時間がかかるので当日作成だと間に合わない。
「それでは、豆料理を担当する方は私と一緒にご子息宅に向かいましょう」

●ブラジル料理調理:前日編
 アプサラス、サイト、大慈、朔月、の4人はご子息宅へ。
「アプサラス・マーヤー様と豆の仕込みに来られた方ですね。お待ちしておりました」
 出迎えたのは、依頼人である執事とご子息宅の料理長。
「ご子息の様子ですが、今はどのような状態ですか?」
 サイトの問いに答えたのは料理長。
 ロサの情報を知って以来食欲が減り、自宅にいる最中はいつも溜息をついてばかりだという。
「お父様である社長も、お坊ちゃまを心配されてます。仕事に集中できないようでは我が社は破産だ! と嘆いておられるほどですので。それに、元々夏バテしやすい体質ですので‥‥」
 料理長の言葉と顔を察すればあっさりとわかるほど、ご子息の恋煩い(+夏バテ)はかなり深刻なようで。
「恋煩い前のご子息って、どんなヤツなんだ?」
 大慈は、ご子息がどのような人物か気になるようで。
「お坊ちゃまは、社長の右腕的存在で仕事熱心な方です。社長は、お坊ちゃまを次期社長にしようと仕事中は厳しく接しておられてます」
「仕事はできても、恋はてんで駄目なんだな。じいさん、俺達に任せとけって。ご子息を立ち直らせてみせる!」
 大慈の言葉に、私もそのつもりで来ましたとサイトも同意。
「早速ですが、調理場に案内していただけますか? 仕込みに取り掛かりたいので」
 アプサラスがそう言い出したので、コック長は能力者達を調理場に案内した。

 最初の調理作業は豆の煮込み。豆は一晩水に浸けておかないいけないうえ、2〜3時間に1度は水を替えなければならない。こうすることで豆の塩味が抜けるのだ。
「根気がいる作業ですね。ですが、ご子息君のために頑張らないと‥‥」
「俺も手伝うよ。水出しコーヒーも時間かかるし」
 朔月の水出しアイスコーヒーは、ブラジル産コーヒー豆を挽いて粉にしたものを多めにコーヒーポットに水と一緒に入れるというもの。粉にする作業も手間隙がかかる。
「ついでだから、俺のも頼む」
 サイトと朔月に豆を押し付けるちゃっかり者の大慈。

 サイトが作る『フェイジョアーダ・コンプレッタ』は本来は豚の耳と舌が材料にあるのだが、簡単に調理できるようにアプサラスがアレンジを施した。本格的なものも良いが、少しでも調理しやすいよう工夫したのだ。
「豆を水に漬けている間、ニンニク、タマネギ、ピーマン、トマト、ベーコンをすぐに調理できるよう準備しましょう。私も手伝います」
「助かります、アプサラス君」
「お礼はまだ早いですよ。豆を圧力鍋で柔らかくなるまで煮込む行程が残っているのですから」
 手間がかかりますね‥‥とため息をつくサイトの隣では、大慈が『アロス・イ・フェイジャン』『ヴィラド・エ・パウリスタ』の調理支度を始めている。
 朔月に押し付けた豆は、良く使われる黒豆を使用。
『ヴィラド・エ・パウリスタ』は米とキャッサバ粉をまぶした豆、煮込んだキャベツ、そして豚肉の盛り合わせでなのでその間にキャベツの煮込みを始めた。

●ブラジル料理調理:当日編
 ご子息にブラジル料理を振る舞う当日は、晴天に恵まれた。
 バーベキューの意味である『シュラスコ』は、ブラジルの一般家庭で行う場合もこう呼ぶので中庭で調理を行うことに。野外で調理すれば、2階にあるご子息の部屋に匂いが届くだろう。
 ルアムとメイフィアは鉄串に牛肉や豚肉、鶏肉、剥きエビ等を刺し、荒塩を振って下味をつけた後に炭火でじっくりと焼き始めた。ルアムがネギ類アレルギーなので、それは除外。バーベキューセットと鉄串は、ルアムがレシピブックと共に持ってきたものを使用している。
「‥‥メイフィア‥‥すみませんが‥‥肉の焼き加減を‥‥見て‥‥頂け‥‥ます‥? ‥‥当方は‥‥別に‥‥作るものが‥‥ある‥‥ので‥‥」
「‥‥わかりました‥‥」
 メイフィアに『シュラスコ』を任せ、ルアムは調理場に向かった。彼が作成するものは、カポエイラの練習に励むロサの飴細工。飴細工は熱いうちに加工しないと失敗するので、慎重に作成しなければならない。原料は既に完成しているので、後はロサの写真を見ながら工夫しながら創作するだけだ。

 調理場では、サイトがアプサラスの指導のもと『フェイジョアーダ・コンプレッタ』の仕上げに取り掛かっていた。
「ロサ君の味、再現できていればいいのですけど‥‥」
 味見をしながら、これでいいのかと思案しながらも煮込んでいる間に『タコス』を作ることに。
 まずは生地となるトルティーヤを焼き上げ、その後に具材の豚肉の細切れ炒め、レタスの千切り、サルサソースを作成。トルティーヤ、具材、ソースは別々に出すことにしご子息が食べやすいようにした。『タコス』完成後、パイナップルの皮と種の取り、パセリ少々と一緒にミキサーでジュースを作成。
 胃もたれしやすいブラジル料理には、パイナップルジジュースは効果がある。
「胃もたれ防止と食欲増進にバッチリです」
 サイトは、このことを知っていたからパイナップルジュースを追加したのだろう。

 朔月は、前日仕込んだ『水出しアイスコーヒー』を多めにコーヒーポットに水と一緒に入れ、ダッチコーヒーの準備をしておいた。ご子息に出す直前にはコーヒードリッパーにペーパーフィルターを2枚重ねでセットしたものを空のコーヒーポットに乗せ、用意しておいたダッチコーヒーを注ぎ、出す際は冷やして氷を入れたグラスに移し変えたダッチコーヒーを入れて出すことに。
 コーヒーの準備ができたので、ロサのレシピを参考に『カルル・ド・パラ』作成に取り掛かった。レシピ通りに作るが、味の微調整などは味見をしつつ行っている。これには、夏バテに良いオクラが入っているのでご子息の食欲は増すだろう。
 完成後、中庭に行き『シュラスコ』の出来具合を見に行ったらメイフィアから味見を頼まれた。
「うん、美味い!」
「‥‥ありがとうございます‥‥」
 褒めてもらったので、メイフィアは嬉しくなった。その様子を見た朔月は、ご子息も嬉しくなるといいなと言った。

 大慈は、レシピを凝視しながら『アロス・イ・フェイジャン』作りに励んでいる。昨晩のうちに仕込んだキャッサバ粉をまぶした黒豆、米、煮込んだキャベツ、豚肉を煮込むと出来上がり。
「ご飯と煮豆を合わせたものかぁ。なかなかのマッチングだな。美味そう〜♪ あ、もう1品作らないと」
 次に『ヴィラド・エ・パウリスタ』をロサのレシピと格闘しながら忠実に作ろうとするが、ひとつ疑問点が。
「炒め物‥‥だよな? コレ」
 正確には『アロス・イ・フェイジャン』同様煮込み料理なのだが、炒めるようとしたところアプサラスの待ったが。
「大慈さん、『アロス・イ・フェイジャン』は煮込み料理です」
 そう言われた「え? そうなの?」と目をくりっとさせて驚いた。気を取り直して作成する際、持ち帰る事を前提に多めに作った。
「兄上、頑張っているのです。美空も頑張るのです!」
 大慈とアパートに同居している身の上なので家事全般に長けているものの、味音痴のため料理は少々不得意な美空だが、大慈の役に立つべく捻り鉢巻きにたすき掛け姿でレシピの隙間産業に従事すべくデザートを作成することに。大慈から「美空は味音痴だ」と聞いたアプサラスは様子を見つつ、危なくなりそうになったら手助けすることに。
 まずは『ドーセデレイチ』。
 圧力鍋にコンデンスミルクと水を鍋にかぶるくらい加えた後蓋をして火にかけ、重りが回り始めてから40分ほど煮込む。十分煮込終えたら、冷やして出来上がり。ブラジル版『水羊羹』と思っていただきたい。
 ここまでの過程は大丈夫と判断したアプサラスは、一切手出しをしなかった。
 次は『ブラジル風プディング』。作り方はプリンとまったく同じ。
 コンデンスミルク、卵、牛乳を加えてミキサーで混ぜるまでは良かったが、カラメルソースが焦げかけたので見兼ねたアプサラスが代わりに作った。
「すみませんなのです‥‥」
「落ち込まなくても良いですよ。これ以外は皆あなたが1人で頑張ったのですから自信をお持ちなさい」
 良く混ぜた材料を先にカラメルソースを入れた器に入れ、オーブンで焼いた後冷やせば完成。
 デザートは冷えるまで時間がかかるので、美空はテーブルセッティング等の給仕を執事達と行った。くるくると目が回るほど忙しく働く美空だった。

 美空が給仕している頃、ルアム作のロサ飴細工が完成したことですべての料理が出来上がった。
 後は、デザートが冷えるのと『シュラスコ』の肉が焼け、煮込み料理が仕上がれば完璧である。

●ブラジル料理を召し上がれ
 天気が良いので、ブラジル料理は外で食べることに。
 執事に連れてこられたご子息は、以前ロサの調査を能力者に依頼した時よりげっそりしていた。
「じい、僕をここに連れてきたのは食事のためかい?」
「そうでございます、お坊ちゃま。能力者の皆様が心配なされて、エストレーラ嬢直伝レシピを基にブラジル料理を作られたのですよ」
「エストレーラ直伝だって!?」
 これにはビックリのご子息。
「皆さん、ありがとうございます!」
 いきなり油っこいものを食べるのは良くないと、まずはルアム作の『カンジャ』を食べることに。
「美味しい‥‥これが、彼女の故郷の味なんだね」
 食欲が湧いてきたのか、ご子息はペロリと『カンジャ』を平らげた。お粥なので物足りないのか、次の料理をご所望。
「次は‥‥『ポンデケイジョ』です‥‥。ブラジルの‥‥母の味と言われる‥‥チーズパンです‥‥」
 差し出された『ポンデケイジョ』も「美味しい!」と召し上がったご子息。
 その後、朔月が淹れた『水出しコーヒー』で口直しをし、一通りのブラジル料理を平らげた。
「あ‥‥すみません。僕1人で食べて。皆さんも一緒に食べましょう。美味しいものは大勢で食べるのが一番です。じいやコック達も一緒にね」
 ご子息の粋な計らいに大喜びしたのは大慈であることは言うまでも無い。
「お、俺も食っていいのか? それじゃ、いっただっきま〜すっ!」
 美味しそうな表情で食べる大慈を見て、薦められた能力者やコック達も食べ始めた。
「そういえば、お名前を伺っていませんでしたね」
 ご子息君、と呼ぶのはおかしいとサイトは名前を訊ねた。
「申し遅れました。僕の名前はアーノルドです。宜しくお願いします」
 ご子息ことアーノルドは、ロサの故郷の味を堪能したことで元気を取り戻した。

 食後、ルアムは作成した飴細工をアーノルドに手渡した。
「これは‥‥エストレーラかい?」
「‥‥はい」
 ありがとう、とルアムの手を取り泣いて喜ぶアーノルドを見て、執事は一安心。
 ルアムが演奏する弦楽器をBGMに美空作のデザート、サイト作の『パイナップルジュース』を堪能する皆はとても楽しそうだった。

 ブラジル料理は、皆の胃袋に収まった。大慈が持参したタッパーに料理を詰めていたので減りが早いというのもあるが。
「皆さん、後片付けをしましょう」
 アプサラスの指示で、能力者達は調理場の清掃と調理器具の後片付けを始めた。

 アーノルド氏復活作戦:大成功!