●リプレイ本文
●交流の架け橋行事
8月14日、カリフォルニア州と姉妹都市島根県の交流を深めるために『ボン・ダンス』が開催された。
島根県の友好大使に任命されたソウジ・グンベ(gz0017)中尉は、島根県知事に付き添い、カリフォルニア州知事に挨拶を。アメリカ生活が長いソウジは、英語も話せるので通訳も任されている。
ソウジにボン・ダンスに来るよう言われたULTオペレーターのシェリル・クレメンス(gz0076)は、ソウジに紹介されたラスト・ホープにある『ヒエダ貸衣装店』で借りた朝顔柄の浴衣を着て大はしゃぎ。
「やれやれ‥‥。おとなしくイベントを楽しませてくれる気はまったく無いようだな、バグアとキメラって奴は‥‥。空気の読めなさっぷりは、ある意味で感動すら覚える。せめて手元のたこ焼きとお好み焼きを食べ終わってからにしてほしいもんだぜ‥‥」
たこ焼きをあっという間にたいらげた須佐 武流(
ga1461)は、ついでにコーラも買おうと出店に向かった。
誰か知り合いがいないかと辺りを見回したシェリルは、あがり性克服に協力してくれたリュイン・カミーユ(
ga3871)を見かけたので声をかけた。
「シェリルではないか。ソウジの手伝いに来たのか?」
「いえ。ボン・ダンスを楽しめとグンベ中尉に言われたのはいいんですが、知り合いがいなくて困っていたんです」
「そうか‥‥。なら、我と共に楽しむか?」
顔見知りであるリュインがいれば心強いので、シェリルはホッと一安心。
「ボン・ダンスか‥‥。名前は聞いたことあるのだ、実際にどんなダンスは見たことがないので楽しみだ‥‥。と言うには、いささか良い立場とは言えん。キメラが来るかもしれんので、そうなった場合は参加者の安全を護らねばならん。気をつけろ」
「はい。お気遣い、ありがとうございます」
「しかし、ソウジは本当に忙しいヤツだな。依頼が済んだら、何か奢らせるか」
「グンベ中尉も大変そうですね‥‥」
2人がソウジが真面目に友好大使として務めているかを見ると、普段はお気楽極楽なソウジが州知事と県知事の会話を円滑にするため真剣な表情で役目を果たしている。
●夏が終わる前に
気がつけばもうすぐ夏も終わるというのに、まだ一度も祭りに行っていないことに気づいた旭(
ga6764)は「行ける時に行かなければ来年に持ち越しになります!」という理由もありボン・ダンス会場に来たが、キメラ退治もあるかもとちょっと気が重くなった。
「お祭りを邪魔する不届き者が居たら、ゴミと一緒にお掃除しましょう。そうなった場合、ボン・ダンスを楽しむことと護ることが同じになるような気がするんですが‥‥」
まぁ、どうにかなるでしょうと旭は気分を切り替えた。
「てめぇもそう思うか? 俺も同感だぜ。盆踊りでも、夏らしいことせずにこのまま夏が終わるのも嫌だしな。とゆーワケで来てみた」
旭と似たような理由で来た武藤 煉(
gb1042)だった。
「日本に『盆踊り』という風習があるのは知っていましたが、まさかここまで国際化していたとは。少々驚きましたよ。いやはや、浴衣を着てきて良かった良かった」
参加する気満々で会場に来たナナヤ・オスター(
ga8771)。
「あなたも盆踊りを楽しみに来たのですか? わたくしもですわ」
盆踊りが開催されるというので、浴衣「朝顔」を着て、うちわを持っている天小路桜子(
gb1928)がナナヤに話しかけた。
「はい、そうです。私は、盆踊りがどのようなものか興味があって来ました。宜しかったら、ご一緒しませんか?」
ナナヤの誘いに「はい、喜んで」と微笑む桜子は、会場を見て回ることに。何やら大きな荷物を持っているが、ナナヤはまったく気にしていなかった。
「盆踊りですか、夏の風物詩ですね? たくさんの参加者いるのかしら?」
広いボン・ダンス会場を回りながら、面識ある能力者がいるかもしれないわね、と捜している神森 静(
ga5165)。
「静ではないか、汝も来ていたのか」
リュインに声をかけられたので「ええ」と答える静。
「あら? そちらのお嬢さんはどなたかしら?」
「はじめまして、ULTオペレーターのシェリル・クレメンスといいます! よろしくお願いします!」
自己紹介は自分からすべきだったわね? と反省し、静も自己紹介を始めた。
「盆踊りは良いですが、キメラが来る予感がするのよね?」
色っぽい笑みを浮かべて言う静に、我もそう思って来たと言うリュイン。
「大勢の人がいるところにキメラが来れば、会場は混乱に陥ってしまう。そうなった場合は、我ら能力者が護られば」
●ボン・ダンス・フィーバー
「ひゃっほう! アメリカで盆踊りが出来るとは思ってなかったっ! でも、バグアかキメラが出そうな気がする‥‥。カリフォルニアの人達にも盆踊りを楽しんでもらえるといいなぁ」
水色地に朝顔柄の浴衣を着てボン・ダンス会場に来た篠原 悠(
ga1826)の目的は、ここで本場(日本)の『ボン・ダンス』ソングを披露することであった。
最初は日本で一般的な物がメインだったが、日本語が理解できない外国人(日本人もいるが割愛)がいることをいいことに『ふんどしーちょ音頭』という音頭を西海岸風HipHopテイストにアレンジしたものをノリノリで披露中。
「OH! ジャパニーズ・ボン・ダンス・ソング、オモシロイデース!」
「モット、ウタッテクダサーイ!」
片言の日本語で、外国人達は大喜び。それがきっかけとなったのか、多くの外国人が賞賛し始めた。
その頃、遠くにいる作詞作曲担当者はくしゃみをしているのだろうか?
「盆踊りというものは、先祖を敬い、先祖の霊と一緒に楽しむものだというのに‥‥いつのまにこのようなものになったのだ」
その様子を見ていた漸 王零(
ga2930)は、クールな顔を崩さずそう思った。
●キメラ出現注意報
「痛い! ちょっとアンタ、アタシ蹴ったでしょ!」
盆踊りの輪の中にいた中年女性が、後ろにいた男性の腕を掴んで怒鳴った。何のことだかわからない男性は、自分に非がないのだが「すいません‥‥」と謝った。
それを機に、盆踊りの輪にいた人達や見物客が蹴られたり、何かに叩かれたり、ひっかかれたりという被害が続出した。
何事か? と、カリフォルニア州知事が、ソウジに尋ねた。
「キメラが出現したのかもしれません。能力者が参加していると思われますのでアナウンスで呼びかけてみます。この場を離れますが構わないでしょうか?」
キメラの仕業であれば、早期に解決して欲しい、との答えに、ソウジはありがとうございます! と敬礼し、アナウンス用テントに向かった。
『この会場にいる能力者諸君全員に告ぐ! 自分はUPC軍中尉のソウジ・グンベだ。キメラが会場に出現したとの報告あり。会場警護、巡回をし、見つけ次第退治せよ!』
ソウジのアナウンスを聞いた能力者達は、アナウンス用テントに集まることに。
「恐れていたことが起きたようね?」
静の一言に頷くリュイン。
そこに「お好み焼きまだ全部食ってねぇのに!」と腹を立てる武流と、盆踊りでノリノリだったところを中断されてやや不機嫌な悠、駆けつけた能力者達を見かけて合流した旭と煉、ナナヤと桜子、見物中の王零を含めた9名の能力者が集まった。
「能力者の呼びかけがあったのはここか? ソウジ殿、皆、お初にお目にかかる。俺は風閂(
ga8357)と申す。カリフォルニアと島根の交友を目的とした盆踊りを邪魔するキメラは、我等が倒さねばならぬ!」
風閂は日本、特に故郷の琉球文化を愛する故、キメラ出現に憤った。
彼を含めた10名の能力者は、2班に分かれて会場警護、一般人護衛にあたることに。
班編成はA班は武流、リュイン、ナナヤ、煉、桜子。
B班は悠、旭、王零、静、風閂。
まずはB班が警護し、A班が一般人護衛と決まったので早速行動開始!
●警護×巡回×出現
一般人に混ざり、リュインは盆踊りの輪に加わって護衛中。現在の踊りは、説明不要の『安来節』。こんな恥ずかしい踊りができるか! とリュインは踊らず、歩くだけだった。
「こちらリュイン。今のところ、ボン・ダンスの輪に異常なし」
「了解‥‥」
無線機で連絡を受けた静は、キメラが現れたら合流して一斉攻撃になると思うのでそれに備えている。
悠は、キメラのせいで揉めた一般人を宥めていた。
「海外でやる盆踊りも面白いね。何か、不思議な感じで♪ だから喧嘩は駄目だよ♪」
ひとつの揉め事が納まると、次の一般人を宥めたり、落ち着かせたりと悠は大忙しだった。
王零は、踊らず屋台で買ったイカ焼きを食べながら有事に備え周囲を警戒し、キメラが現れたら安全な場所に一般人を誘導できるようにしている。
何かを食べながら警護にあたっているのは王零だけでなく、旭はぽっぽ焼きが無いと残念がりながら綿飴を食べていて、煉は露店で買った焼きそば、たこ焼きを頬張っている。
旭が食べたがっている「ぽっぽ焼き」とは、甲信越地方限定のパンのような焼菓子なので島根県には無い。
B班と交代したA班の桜子は、盆踊りの輪に加わると「幼少以来ですから、本当にしばらくです」と楽しげに一緒に踊った。この時の踊りは『炭坑節』だったが。
ナナヤは、キメラ来襲に備えての見回りを念入りに行いながら、無線機で仲間と連絡をマメに取っている。
「キメラというものは、神出鬼没なうえに姿形も千差万別ですからね。気を引き締めませんと。ふーむ、それにしてもすごい熱気です。さすがボン・ダンスですねぇ」
キメラより、ボン・ダンスの様子が気になるようで。
風閂は、シェリルを連れて会場警護にあたっている。誰がシェリルをエスコートするかで男性能力者達でじゃんけんして決めたところ、負けた彼がすることに。女性との付き合い皆無そうな風閂は、シェリルのエスコートと会場警護を無事こなせるか?
「シェリル殿は‥‥こういう祭は初めてなのか‥‥?」
「はい、あたしの故郷にはこういうお祭りが無いものですから」
ぎこちない雰囲気ながらも話しながら歩いている2人だったが、盆踊りの櫓の上で和太鼓を叩いていた男性が「キメラが出たぞー!」と叫んだ。
穏便に退治したいと能力者達は思っていたが、この一言でそれはぶち壊しに。
「シェリル殿、ソウジ殿のところへ避難致せ!」
「はい!」
シェリルが避難したのを確認した風閂は、素早く覚醒した。
●踊るキメラに踊る能力者
現れたキメラは、キツネの尻尾が生えた狐面を被った少年型キメラと、ひょっとこの面を被り、安来節の格好をした人物だった。
風閂から無線機で連絡を受けた能力者達は、キメラ出現現場に駆けつけた。
「来たぞ、いらん客が。皆、心してかかれ!」
全員揃った時点で、リュインの言葉を合図にキメラ退治が行われた。
「キツネ小僧、場に合わせた姿だけは褒めてやるが、な!」
動きが素早いキツネ小僧だったが、リュインは『瞬天速』で距離を詰め、その勢いのまま足払い攻撃し、休む間もなく『鬼蛍』での『急所突き』も合わせ、足を潰し、機動力を削いでからラッシュ!
「皆様、落ち着いて避難してください!」
一般人をキメラ戦に巻き込ませてはいけないと、桜子と悠は率先して一般人の避難誘導を行った。
ある程度安全なところまで避難すると、後は桜子に任せたた悠は全体を視野に入れ、援護射撃を行った。攻撃箇所は、リュイン同様、敵の機動力低下を狙った足メイン。
キツネ小僧は、あともう少しで倒れそうなので『影撃ち』で足を仕留めた。
「これで、素早い動きでけんやろ!」
「踊りといえども、これは神聖な儀礼のうちのですので‥‥。すみませんが、キメラはお引取り願います」
ナナヤは『小銃「S−01」』の射撃内にキツネ小僧が入った時点で『影撃ち』『急所突き』を同時に使用した後、攻撃を始めた。逃げようとしたキツネ小僧には『鋭角狙撃』で止めを刺した。
残るは、ひょっとこ男のみとなった。
ひょうきんな外見だが、攻撃力はかなり高く、防御もそこそこなのでうかつに近づけない。
素早いキツネ小僧の相手はしたくなかった風閂は、これ幸いと攻撃を仕掛けた。
「王零殿、共に戦おう!」
「わかった! 輪が刃は、自らが描いた月すら断ち斬らん‥‥喰らうが良い、画月斬断!」
王零は常に接近戦を行い、『流し斬り』と『二段撃』を組み合わせ、円を描くように『月詠』で攻撃し、描いた円を断ち斬るように『名刀「国士無双」』でひょっとこ男を斬った。
「キメラも踊りたかったのかね‥‥にひひ、どちらか倒れるまで存分に舞おうや!」
でないと、出店食い歩きができねぇだろうが! と攻撃しまくる煉。
「素早いようだな? 皆が楽しんでいる所へ邪魔をするんだ。相応の覚悟はできているんだろうな? 力づくでどいてもらう」
覚醒したことで冷酷になった静は、『蛍火』で斬りつけた。
旭は『豪破斬撃』で『月詠』の威力を上げると乱雑に斬りつけたのはいいが
「お祭りでテンションが上がるのは分かりますが、ほどほどになさいっ!」
「ぽっぽ焼きを日本全国共通にっ!」
と、叫びなが攻撃している。叫んだことですっきりした様子だった。
DN−01「リンドヴルム」を装着した桜子は、後方から『洋弓「リセル」』での攻撃を行う前に『竜の瞳』で命中を上げてから狙い撃ちした。
能力者の攻撃を喰らったひょっとこ男はだいぶ弱りつつあったので逃走しようとするが、『アルタイル』に持ち替えた後に『竜の翼』で一気に距離を詰めると急所を狙って攻撃した。
「皆さん、こいつはまだ生きています! 一斉攻撃してください!」
桜子が離れると、近距離戦を得意とする能力者は接近し、遠距離戦の能力者は後方支援で止めを刺した。
「その穢れし躯を捨て聖闇へと還るがいい‥‥。次に会う時は、まっとうに生まれろ」
「楽しんでもらえたかな? うちは楽しかったけど‥‥」
王零はキメラ戦終了を告げ、悠は、キメラ退治楽しかったよと言った。
●レッツ・エンジョイ・ボン・ダンス!
能力者達からキメラ退治が終わったと連絡を受けたソウジは、待機していたUPC軍兵士に死骸の処理をするよう命じた。処理は一般人に見られないよう慎重に行われた。
依頼終了後、能力者達は自由行動に。
桜子は、実行委員会と共にボン・ダンスが再開できるよう手伝い。
武流、静、出店の食べ歩き。静は細身だが、実は大食いだった。
煉は金魚すくい、水ヨーヨー釣り、輪投げ等の縁日ゲームで景品大量ゲット。
旭は、ぽっぽ焼きが食べられない憂さを金魚すくい、亀すくい、型抜きで晴らしていたが。
風閂は屋台を設置し、故郷の代表料理『ゴーヤーチャンプルー』を食べやすく工夫したものを安値で売り、売り上げ金をすべてカリフォルニア州に寄付した。
暑い夏の思い出となるボン・ダンスは、能力者達によって護られた。