タイトル:息子と母親からの依頼マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/21 17:29

●オープニング本文


 カリフォルニア州に引っ越してきたアンナ、ジェフ母子は、新生活にすっかり馴染んだ。
 アンナは夕方までスーパーのレジ係として働き始めたので、ジェフは自分ができる範囲で家の手伝いをしている。
 ジェフだが、カウンセリングと新しい友達ができたことで明るさを取り戻した。

 新天地でのジェフの親友は、右隣家に住んでいる3歳年上のケント、1歳年上のライス兄弟。
 ケントは機械いじりが大好きで、将来は能力者になって機械でキメラを倒すこと。学校の成績はそこそこだが、機械に関しての知識は10歳児にしてはかなりのもの。兄弟の父親が、機械関連企業勤務ということもあってだろう。
 いつものようにケントの部屋で機械いじりをして遊んでいた3人だったが、ケントが突然こう言い出した。
「昨日、機械仕掛けの恐竜の部品を買いにホームセンターに行ったんだ。そしたらさ、知らないおじさんが俺をじーっと見てたんだ。それで終わりか? と思ったんだけど、跡つけてきたんだ。気味悪いから走って逃げ出したよ」
「家がお金持ちだと思っているのかな?」
 ライスの言葉に「家はそんなに金持ちじゃないだろ」と頭を軽く叩くケント。
「午前中、ママに頼まれてスーパーにケチャップ買いに行ったら、今度はヒヨコが尾行してんだ! 本当だって!」
 それはないよね、と笑うジェフとライス。

 夕飯時、ジェフはアンナにケントが言っていたことを話した。
「ケント君、知らないおじさんとヒヨコに跡をつけられたんだって。ママはどう思う?」
「知らないおじさんはわかるけど、ヒヨコが尾行するなんておかしいわね。ケント君の見間違えじゃないかしら」
「そうだね」

 翌日。ケントはまたヒヨコに尾行されたと言い出したが、その正体は、ヒヨコ売りのおじさんと箱から逃げ出したヒヨコだった。
「昨日は驚かせてごめんよ。おじさんは日本から来たんだ。アメリカでもヒヨコが売れるかな〜と思ったんだけど、売れなかったよ。おじさん、甘かったようだね」
「そうだったんだ、脅かさないでよ‥‥」
 ごめんごめん、と謝るヒヨコ売りのおじさんだった。
 お詫びにヒヨコをあげると言われたが、弟のライスが羽毛アレルギーだからと断った。
「そうだったんだ。ケント君、怪しいおじさんじゃなくてよかったね」
「これで安心だね、兄ちゃん」

 これで一件落着かと思いきや‥‥ヒヨコ売りのおじさん以外の尾行はまだ続いていた。
 不安になったケントの両親は警察に連絡したが、何の手がかりも無いので調査できないの一点張り。
 それを知ったジェフは、ケントは引っ越す前の自分と同じ目に遭っているのではないかと思い始めた。
「ママ! ケント君、僕と同じ目に遭っているかもしれないよ! 僕も何度かキメラに襲われかけたでしょ? 今は跡をつけられている程度だけど、そのうちキメラに襲われちゃうよ!」
「‥‥そうかもしれないわね」
 母子はULTを通じて、能力者達にケントの尾行をしている人物の調査を依頼した。

 それと同時刻。
「ケントという少年ですが、能力者の素質十分あり、とみました。如何致しましょう?」
「‥‥素質があるのなら、今のうちに芽を摘んでおくのも良いだろう。始末しろ」
「かしこまりました」
 携帯を切った人物は、ケントをどのようにして始末しようか考えた。
「おまえの出番になりそうだな‥‥」
 隣にいたのは‥‥通常の数10倍ほどの大きなヒヨコだった。
 始末しろと命令した男は、首にかけたロケットを開け中の写真を見た。そこには、家族写真らしきものが。
「いずれは‥‥この手で始末しなければならないだろうな」
 その呟きは、何を意味するのだろうか?

「カリフォルニア州サンフランシスコ近辺に住むカーネス一家の長男、ケント少年が何者かに尾行されているのでその人物の正体を突き止めてほしいという調査要請があった。依頼主は、知っている能力者もいると思うがアンナ・ジェフ母子だ。カーネス家は母子のお隣さんで、そこの息子達とジェフは仲が良いそうだ。俺が思うに‥‥尾行しているのはバグアだろう。だとしたら、キメラ出現の可能性もあるので十分気をつけてくれ。報告は以上だ」
 報告を終えたソウジ・グンベ中尉は「あの人が関わっていないだろうな‥‥」と不安になった。 

●参加者一覧

リディス(ga0022
28歳・♀・PN
鷹代 朋(ga1602
27歳・♂・GD
翠の肥満(ga2348
31歳・♂・JG
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
神森 静(ga5165
25歳・♀・EL
レールズ(ga5293
22歳・♂・AA
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
フィオナ・シュトリエ(gb0790
19歳・♀・GD

●リプレイ本文

●ジェフへの頼み
 依頼人であるジェフと親しい間柄の鷹代 朋(ga1602)は、事前にソウジ・グンベにジェフ宅に連絡を取ってもらい、ケントを尾行していた男の容姿を聞きだしていた。
「ジェフ君? 朋だよ。きみに聞きたいことがあるんだ。友達のケント君は俺達が必ず守るよ。そのためには、ジェフ君の協力が必要なんだ。お願いできるかな?」
 慕っている朋の頼みということもあり、ジェフはケントを尾行している男の容姿を説明できる範囲で教えた。
 ジェフの話だと、男は身長は低めでやや小太り体型。ヒヨコが入っている木箱を持ち歩いているのですぐわかるという。
「ありがとう。きみとの約束‥‥必ず守るからね」
「約束だよ、朋お兄ちゃん!」

 その数分後、リュイン・カミーユ(ga3871)から電話があり、朋同様の話をソウジに持ちかけた。
「そのことなら、さっき朋にも聞かれた。朋はジェフ経由で聞きだしたが、キミには俺が知っている範囲で話す」
 ソウジから男の話を聞いたリュインは「如何にも胡散臭いな」と呟いた。日本ならまだしも、アメリカでヒヨコ売りとは何とも珍妙な存在であるからだ。

 更にその数分後、翠の肥満(ga2348)からケントの写真を送ってほしいという連絡があったのでFAXで送った。
「依頼熱心なのは良いことで‥‥」
 どっと疲れたソウジだった。

●ケント尾行作戦
「バグアにせよ何にせよ、ヒヨコに尾行されるのはなかなか珍しい体験ですな‥‥。何かちょっとホンワカな光景だ。シュールでもあるけど。そして、僕もその尾行に加わるわけだからシュールどころではないな」
 翠の肥満の言葉に苦笑いを浮かべる他の能力者達。
「ヒヨコ売りがケント君を尾行するのなら、何かしらの理由があるはずですね‥‥。その子に何かがあるのか気になります」
 リディス(ga0022)が言うように、バグアと思わしきヒヨコ売りに尾行されるということは、ジェフがキメラに狙われること同様、何かあるに違いない。
「狙われているのがジェフでないとは言え、新天地の順調な生活に暗雲‥‥か。ジェフの大切な友人をしっかり守らねばな。我に出来るのは、目の前で起こる事への対処のみだから見えない場所で起ころうとしている何かには‥‥何もできん」
 尾行時に周囲に怪しまれぬよう、ロッドケースを準備し武器を収納しながらリュインと武器を収納しているバッグの中身を確認するフィオナ・シュトリエ(gb0790)は依頼を成功させたいと願う。
「バッグの中に銃のホルスターを取り付けOK、後はより素早く取り出せるように工夫するだけだね。周辺の地図を入手したから、襲撃しやすそうな場所をチェックできると。もしもに備えて準備は念入りに、ね」
 入念にチェックするフィオナ。
「ソウジさん、尾行の前にジェフ君と話ができないかしら? 元気なあの子を見てみたいわ」
 ジェフ関連の依頼に何度か関わった神森 静(ga5165)は、新天地で明るくなったジェフに会ってみたいと申し出た。
「ちょっと待ってな。今、ジェフがいるかどうかアンナさんに聞いてみるから」
 ソウジは携帯を取り出すと、ジェフ宅に電話をかけた。丁度良いタイミングでアンナが出たので、ジェフはいるかと訊ねたところカーネス家にいるという返答があった。
「ジェフだが、今はカーネス家にいるそうだ。ケント君を守るんだ! と張り切っているとアンナさんが言っていた。静、カーネス家に今すぐ行くか?」
「ええ」
 朋もジェフに会いたいと申し出たので、ソウジと共にカーネス家に向かった。その他の能力者は、カーネス家付近で待機することに。
「ソウジ、何時はジェフと共にカーネス家で待機しているほうが望ましい。ケントには依頼の事を伏せ、ジェフ母子の知人として上がり込め」
 そのほうが安全だ、というリュインの言葉に従うソウジ。

 カーネス家には、ケントとライスの兄弟とジェフがいた。
「キミがケントだな? 両親はいないのか?」
 ソウジの問いに、パパもママもお仕事でいないよと答えるライス。
(「こいつは都合がいい‥‥」)
 ソウジが安心したのには理由がある。
 両親がいると、詳細を話さなければいけないので手間がかかる。
「あ、朋お兄ちゃんと静お姉ちゃんだ! ソウジのおじさんも!」
 ケントが戻ってくるのが遅いので気になって玄関に来たジェフは、能力者達に気づき大喜び。
「お久し振りね? 元気になったみたいで安心したわ。お友達が危ないと聞いたから助けに来たわ‥‥。良い報告を待っていなさい。私達が何とかしてあげるから‥‥。その間、くれぐれも無茶したら駄目よ?」
 ジェフの頭を優しく撫でながら、静は色っぽい笑みを浮かべた。
「きみがケント君だね。俺は鷹代 朋っていうんだ。ジェフ君の友達だよ」
「よ、宜しく‥‥」
 初対面の朋に挨拶されて戸惑うケント。
「ねえ、おじさん、俺ショッピングセンターに買い物に行きたいんだけどいいかな?」
 初対面のケントに「おじさん」と言われ内心カチンときたソウジだったが、反対はしなかった。
「わかった、行ってこい。その間、弟とジェフは俺が面倒みてやるから」
 ソウジが許可したのは、能力者達がケントを尾行するからである。
「ソウジのおじさん、ケント君を行かせて大丈夫なの?」
 不安がるジェフに、そのために俺達が来たんだよと安心させる朋。
「安心しなさい、ケント君は私達が守ってあげるからね?」
 ライスとジェフの護衛をソウジに任せ、朋と静は尾行する能力者のもとへ向かった。

●ケント尾行開始
 尾行の班分けは以下のとおり。
 専任:翠の肥満
 A班:朋、静、フィオナ
 B班:リディス、レールズ
 C班:リュイン、アンジェリナ(ga6940
 
 尾行ローテーションは、A班、B班、C班の順で、バグア及びキメラ出現時はA班はケントの保護と民間人の避難を担当することに。
 あらかじめケントの顔を覚えた翠の肥満の服装は、作業服にランニング、バンダナ、更にトレードマークのサングラスで若者風に変装して一足先に尾行開始。武器の『小銃「S−01」』は懐のホルスターに吊して隠匿し、なるべく早い段階で朋に無線でジェフからの情報を入手し、ヒヨコ売りの特徴を認識した。尾行時は、いつ出てくるかわからないヒヨコも警戒するよう気をつけることに。

 A班の能力者達は、バグア発見ならびキメラの殲滅が完了するまでは仲間以外をケントに近づけさせないように張り付くように尾行中。
 静は『蛍火』をバックに隠し、拳銃はスカ−トの中に隠し持っている。
 フィオナはケントに気付かれないよう注意しながら尾行し、朋、静と協力しつつケントを見失わないように物陰に隠れている。気になった箇所は『探査の眼』を使用し、罠がしかけられていないか、何者かが待ち伏せしていないかを探っている。
「それじゃ、男の正体探りといきますか」
「そうね‥‥。このままだと、ジェフ君が不安がるだけだしね?」
「それは同感だ。ジェフ君のためにも、ケント君を守ろう!」
 団結力が固いA班だった。

●ショッピングセンター内での尾行
 B班のレールズ(ga5293)は『パイルスピア』をゴルフバッグに入れて偽装してケントを尾行している。
「こちらレールズ。ケント君は今、ショッピングセンターで買い物中。怪しい人物はいません。連絡は以上です」
 無線機で、他の班の能力者達にケントの無事を報告した。
「それにしても‥‥能力者適正者を尾行してどうこうするなんて、非効率的な気がするんですがね〜。そもそも尾行すれば、適性があるってわかるもんなんでしょうか?」
「バグアにそういう能力があるとは思えませんね。ケント君は機械知識に長けているようなので、それに目をつけたバグアが能力者の適正があると思い込んだだけかもしれません」
 ケントを尾行しているヒヨコ売りに自分達の居場所を悟られないよう慎重に行動しているリディスは、武器は懐やポケットに隠し持って見えないようにしている。片手爪は小さいので問題ないと思ったが、一般人に見られるとまずいのでバッグにしまった。
「ある程度調べてみれば、彼らの目的もはっきりしそうですね。そうなったら動く時でしょうか」
「そうでしょうね」
 B班の2人は見つからないように尾行しているようだが、客達と店員は「何、あの2人」という目で見ていた。
 買い物を済ませたケントがショッピングセンターから出たので、2人はC班に連絡した後尾行を続行。

●帰宅するまでの尾行
 C班のリュインとアンジェリナは、上手く行動を合わせながら家路に向かうケントを尾行している。
 アンジェリナは『蛍火』を安物のバッグに隠し持ち、鍔を外した『氷雨』はすぐに使用できるようにして服の中に隠している。
「今のところ、バグアと思わしきヒヨコ売りもヒヨコもいないようだな」
「ああ‥‥。だが、油断はできない。リュイン、注意を怠らないように」
「わかっている」
 あともう少しでカーネス家に到着というところで、ヒヨコの大群が2人の前を横切った。
「キメラ登場間近‥‥といったところか」
 自分達の尾行時にキメラが出現した場合、すぐに応戦できるように準備していたリュインとアンジェリナだったが、無線機で連絡した他班が駆けつけるまでケントの護衛を優先することにした。
 ケントが自宅付近に差し掛かったのを見計らったかのように、どこからともなく地響きに近い足音がした。
「な、何だよこいつ!」
 2人が足音に気を取られている隙に、キメラ『ビッグ・ピヨ』がケントの前に出現!
(「他の奴らはまだ来ないのか!」)
 ロッドケースから『鬼蛍』と『刹那の爪』を装備したリュインは焦っていた。

「待たせたね、遅れてゴメン」
 最初に駆けつけたのは翠の肥満だった。
「さぁて、ヒヨコとはいえ、ストーカー行為は許せないね。尾行時間はおしまいだ。ケント君、後で牛乳あげるからお兄さんに付いといでっ!」
 怪しい‥‥とジト目で見るケントの様子を見た翠の肥満は「僕は怪しい者ではない」と説得し、ケントを自分のもとに来させた。
 それに続き、アンジェリナから連絡を受けたA班、B班の能力者も駆けつけた。

●愛らしき尾行者?
「こ、これで鶏の雛鳥‥‥? しかもでかい‥‥」
 レールズが驚くのは無理も無い。何せ、通常のヒヨコよりはるかに大きいのだから。
「愛らしいヒヨコか‥‥。だが、敵と分かっている以上容赦はしない」
 アンジェリナは『蛍火』を構えながらビッグ・ピヨを睨む。外見はヒヨコそのものだが、凶暴なキメラである。
「一般人の安全確保はあたしに任せて!」
 速攻で覚醒したフィオナは、ケントと一般人の安全を最優先とするためバッグから武器を取り出した。今のところ一般人の通行は無いが、いつ来るかわからない。
「子供を怖がらせる輩は許せないな‥‥。その報い、受けてもらおう」
 リディスも覚醒し、爪武器を装備してビッグ・ピヨを睨みつけ、いつでも攻撃可能なようにスタンバイしている。
「ケント君だね? 俺は、きみの友達のジェフ君から頼まれて尾行してる連中を探ってたんだ。危ないから、俺の傍を離れないで。翠の肥満さん、共にケント君を守ろう!」
「わかってるよ」
 ケントの護衛は、翠の肥満と朋が担当。
「友達との約束は守らないとな‥‥。ジェフ君のためにも、ケント君には指一本触れさせないっ!」
 これ以上ジェフを悲しませたくないという決意が、朋の原動力となっている。
「見た目は可愛いが、それに騙されると思っているのか? フフ‥‥炎があればこんがりだな?」
 覚醒した静は『蛍火』を取り出すと、冷酷な表情でそう言った。
 その言葉にカチンと来たのか、ビッグ・ピヨは静に向かい突進し始めた。
「そうはさせません!」
 動きが速くないと判断したレールズは『豪破斬撃』と『流し斬り』を併用した攻撃で静を庇った。
「とりあえず、礼を言おう‥‥」

 リュインは『瞬天速』と『疾風脚』を駆使し、接近の勢いを乗せたまま『刹那の爪』でハイキック攻撃し、戻す態勢で円を描くように『鬼蛍』で袈裟斬りにした後『瞬即撃』で腹部を一気に突いた。
「焼き鳥材料にやられる程、我は甘くない!」
「フフ‥‥同意見のようだな。あのヒヨコは美味しいと思うか?」
「いや」
 静とリュインがそのような会話をしている隙に、ビッグ・ピヨは翠の肥満と朋に向かって歩き出したが、フィオナが立ちはだかり、自らの身体を盾にして食い止めた。
「ケント君は、絶対に傷付けさせないよ!」
 そう言いつつ『ロウ・ヒール』で治療を始めるフィオナ。
 リディスはビッグ・ピヨの間に割り込んだ後、速攻勝負に出た。街への被害を出したくないというのもあり、早めに倒そうと『二段撃』と『急所突き』を使って一気に決着をつけようとしたが、予想通りのダメージを与えられなかった。
 愛らしい外見のビッグ・ピヨは思ったより手強かったので、能力者達は多かれ少なかれダメージを受けていた。
「‥‥その命、墨染めの糧となれ」
 そんな中、アンジェリナはビッグ・ピヨに突進し『氷雨』で攻撃。それが致命傷となったのか、ビッグ・ピヨは倒れた。

●果たされた約束
 リュインはソウジにキメラを倒したこと、死骸を始末するようUPC本部に頼んでくれと無線で報告した。
「初めまして、能力者でファイターのレールズです。宜しくね。家に帰ろう、ジェフ君が待っているよ」
 能力者達と共に帰宅するケントだった。
「ケント君、おかえり! 無事だったんだね?」
「あ、ああ‥‥」
 何のことだかさっぱりわからないケントは、曖昧な返事をした。
「やあ、お久しぶり。ジェフ君、俺のこと覚えてるかな?」
「レールズお兄ちゃんでしょう? 前に高速移動艇に一緒に乗ってた」
 覚えていてくれたことも嬉しかったが、ジェフが元気になったことも良かったと微笑むレールズだった。
「お疲れ様、ジェフ君。無茶と無理したら駄目よ? きみのことを心配する人がいるんだから、困ったら誰かに頼るのもありなのよ?」
 いつもの微笑で、優しく言う静。
「朋お兄ちゃん、約束守ってくれてありがとう!」
「どういたしまして」
 約束を果たしてくれたことが嬉しくなり、朋に抱きつくジェフを見てフッと微笑んだアンジェリナは、ジェフに問うた。
「‥‥少年、傭兵は‥‥私達能力者は‥‥正義の味方か?」
 うん! と即答するジェフに「‥‥そうか」と無感情に答えるアンジェリナだったが、以前の約束を果たそうと歩み寄った。
「‥‥そういえば、剣の振り方を教える約束をしていたな」
「うん、約束したね。教えてくれる?」
「‥‥ああ」
 帰還する時間まで、アンジェリナはジェフに剣の振り方を教えていた。

 キメラ退治には成功したが、バグアであるヒヨコ売りは捕縛できなかった。
「あいつは無害そうだからほっといても問題ないだろ。万一上層部から注意があった場合、全責任は俺が負う」
 大丈夫? と不安がる能力者達だった。