タイトル:【出雲】浮蛭子神マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/27 19:09

●オープニング本文


 申 永一(シン・ヨンイル)は、長い夏休みを利用して大学院生の知人達と出雲市多伎町にあるキララビーチに海水浴に来ていた。
 研究ばかりも疲れるので、気分転換に仲間と遊びに行くのも良いだろうと思い来たのは良いが、大勢の海水浴客に呆然。そのため、ビーチパラソルを立てる場所確保も一苦労だった。
 準備運動を終え、眼鏡を外して泳ごうかとしたその時にどこからともなく悲鳴が。
「何事だ?」
 仲間数名と人だかりに駆けつけた永一達が見たものは一匹のクラゲだったが‥‥
「な、何だこれは!?」
 大きさは幅50センチとやや大きめのクラゲから見えたのは、人間の赤子くらいの大きさの脳と目玉、内臓の類だった。
「大きさからしてビゼンクラゲだろうが、何故このような奇妙なものが‥‥。新種か?」
 海洋学専攻の仲間は、新種と呼べるとどうかわからぬ奇妙なクラゲを捕獲し、研究する気にはなれなかった。中身を調べる勇気が無いからだ。
 医学部の友人は、研究対象としては興味あるという好奇心旺盛の目で見ていた。

「蛭子(ヒルコ)‥‥」

 永一は、自然にそう呟いていた。
「永一君、ヒルコとは何だい?」
 側にいた海洋学専攻の仲間が尋ねた。
「イザナギノミコトとイザナミノミコトの間に生まれた最初の子だが、骨の無い状態で生まれたため葦船に乗せられた流された神だ」
「骨が無いってことは‥‥皮の下は内臓器官だけということか。それとこのクラゲがどういう関係があると言うんだ」
 永一は、仲間に今まで見せたことが無い真剣だが、少し青褪めた表情でこう言った。

「イザナミはクラゲから生まれ、蛭子はクラゲであるという説がある‥‥」
 げぇ! と驚く仲間。
(「何故このようなところに蛭子が‥‥。もしかして、こいつはキメラか?」)
 監視員は、このことを市役所に知らせると同時に、海水浴客達に海に入らないよう注意した。
 普通のクラゲならばこのような騒ぎに発展しないのだが、新種かもしれない奇妙なクラゲとなれば刺された時にどのような症状が出るかわからない。

 翌日、出雲市はクラゲ調査が終了するまでキララビーチの営業を一時中止すると報告した。
 クラゲ調査には、県内外の海洋学者達に混ざり、仲間に頼み込んで加わった永一の姿があった。
 学者達は、口々に「これは新種だ!」「異常進化かも」と言い出すのを冷静に見ていた永一は、キメラかもしれないという不安が拭い去れなかった。
 調査メンバーに加えてもらう力添えをした仲間に礼を述べた後、永一は山陰UPC軍に向かい依頼調査を要請した。
「こちら山陰UPC軍。島根県出雲市多伎町にある『道の駅キララ多伎』付近にあるキララビーチにキメラと思わしきクラゲが多数出現。調査はこちらで行うので、能力者は退治するように。詳細は追って連絡する」

 蛭子が流れてきたのは、先月の恵比寿の影響もあるのだろうかと不安になる永一だった。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
エリク=ユスト=エンク(ga1072
22歳・♂・SN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
ラルス・フェルセン(ga5133
30歳・♂・PN
羽鳥・流(ga5232
18歳・♂・BM
九条・縁(ga8248
22歳・♂・AA
櫻杜・眞耶(ga8467
16歳・♀・DF
櫻小路・あやめ(ga8899
16歳・♀・EP
二条 更紗(gb1862
17歳・♀・HD
沙姫・リュドヴィック(gb2003
13歳・♀・DG

●リプレイ本文

●捨てられた神
「然れども久美度邇(くみどに)興して生める子は水蛭子。此の子は葦船に入れて流し去てき‥‥ですか」
 古事記の一説を口にし、流された蛭子神も作られたキメラも哀れだが、だからといって、躊躇は一切ないラルス・フェルセン(ga5133)は「海掃除を始めましょうか」とキメラの電撃緩和対策にと購入したビニール合羽を購入し始めた。
 彼だけでなくエリク=ユスト=エンク(ga1072)、クーラーボックス持参で海水浴気分で参加した羽鳥・流(ga5232)、櫻杜・眞耶(ga8467)、二条 更紗(gb1862)も着用し始めた。
 ドラグーンである沙姫・リュドヴィック(gb2003)は、ビニール合羽を『DN−01「リンドヴルム」』の下に着用せざるをえないので大変だ。
 31度という暑さだが、電撃をまともに喰らいたくない能力者達は必死に堪えた。

 真剣な空気が張り詰めている中、セーラー服を着た藤田あやこ(ga0204)と九条・縁(ga8248)のテンションは高かった。
「私は学者、あやこよ〜! 刺激の洪水に溺れないように、脳は『抗暗示障壁』なる拒絶反応を持ってます。火事場の馬鹿力と同じで、潜在脳力の全開がいわゆる念力=フォース・フィールドかもね〜。解剖して調べましょ〜!」
 キメラがフォース・フィールドを張れるなら鍛錬次第で人も張れるはず、という仮説を補強すべくキメラ解剖に挑もうとしているのがあやこの原動力なのだろう。
 一方の縁は、海に向かい大声で歌っていた。
「呑気な気分になれるのはお盆前のみ。水温が上がってクラゲが大量発生した日本の海では、そうは言ってられないよな〜」
 キララビーチで日本神話関連キメラ、蛭子が大量発生した原因は『バグアが海水浴場にいやがらせ目的に送り込んだ刺客』だと思っている縁は、色々邪推したくなる要素満載な状況下にあるこの場所でどうしようかと考えた末、取り合えずクラゲ処分やるかという結論に達した。
「そこのお2人さん、はしゃぐのは依頼終わってからにしようぜ。終わったらスイカ割りやろう。そのために目隠し用の布と棒切れ、スイカを持ってきたんだからさ」
 側にいた櫻小路・あやめ(ga8899)に「羽鳥殿、スイカはどこにあるのですか?」と訊ねられたので、こん中、とクーラーボックスをコンコン叩く流。
「小玉だけど、スイカには変わりないからな」
 アハハと笑う流も、はしゃいでいるあやこと縁と何ら変わりない。

「楽しそうなのは結構だが、そろそろキメラの説明を始めたいのだが良いか?」
 山陰UPC軍の兵士数名と共にキララビーチに到着した永一が、能力者達に出現したキメラ『蛭子』の写真を手渡した後に説明を始めた。
「あなたが‥‥申 永一さんですね‥‥。終夜・無月(ga3084)です‥‥宜しく‥‥」
 依頼で出雲に訪れたことはあるが、永一とは初対面な無月はまず挨拶を。
「戦闘メインの依頼は初めてですが、脚引っ張らないよう頑張りますので宜しくお願いしますぅ」
 更紗も、無月に続き挨拶をした。
「こちらこそ。無月君、きみは以前、出雲の高校に出現した天津神キメラを退治したそうだね。今回も協力頼む」
 永一は、出雲方面の依頼報告書すべてに目を通しているので無月が日本神話系キメラ退治に関わっていたことを知っている。
「クラゲキメラってのはわかるけどさ、何で中身が脳みそと目玉!? グロっ!」
 流が大声で気持ち悪がるので、女性能力者達は口元を押さえつつ写真を見る羽目に。
「こういうのはさっさと海から追い出そうぜ! でないと、海水浴シーズンがあっちゅー間に終わっちまうじゃねぇか!」
「同感だ、同志よ!」
 流と縁がガッチリ握手したことで、真面目な雰囲気は一瞬崩れた。
(「キメラ退治はついで、メインは海で遊ぶことです。でも依頼をこなさないと遊べませんね。見た目グロなこのクラゲを退治しないと」)
 心の中で「グロい」と呟きながらも、更紗はキメラ退治にやる気を出していた。
「今回は『蛭子』ですか。この出雲には、つくづく日本神話に因んでいるキメラが襲撃するようですね」
 永一と共に幾度となく出雲に出現したキメラ退治にあやめは、何故日本神話に因んだキメラが出現するのかを考えながらどう蛭子を倒すか思考中。あやめ同様のラルスも、同じことを考えていることだろう。
「今後も‥‥どんどん出てくるんだろうね‥‥こういうキメラは‥‥」
 無月はキメラ退治で出雲を訪れるのは2度目だが、そう思わずにはいられなかった。それは出雲でのキメラ戦を数多くこなしたラルスも同じだろう。

●蛭子神退治作戦
「蛭子退治の作戦で船を使うだろうと思ったので用意してきたが、正解だったな」
 ラルスと無月から作戦概要を聞いた永一は、そのような作戦がなければ宝の持ち腐れになるところだったとぼやいた。
 対蛭子作戦は、船上と浜辺の2箇所で行うことになっている。
 船は2隻いるので、2班に分かれることになうので3班構成で行動することに。
 2隻のボートで漁業用の網を使い、引き漁の要領で動いて蛭子を集めるという戦法を聞き永一は上手くいくかどうか不安だったが、能力者達を信じることにした。
 船での海上戦船担当は、A班はあやこ、エリク、縁。B班は無月、ラルス、眞耶。
 浜辺担当は流、あやめ、更紗、沙姫の4人。
「永一君、きみはどうしますか?」
 ラルスにそう訊ねられた永一は「浜辺に残る」と言った。万一、海上戦の能力者に何かあった場合、山陰UPC軍に連絡要請できるのは彼しかいないので懸命な判断といえよう。

●船上班作戦実行
「先ずは標本ゲット! 抵抗満点のセーラー服の下は雷属性のビキニで勝負よ!」
 セーラー服を脱ぎ捨ていきなりビキニ姿になるあやこだったが、縁は冷やかしたがエリクは無関心だった。
 あやこは船の前衛を陣取ると、海上180度を警戒している。
「今のところ、何の動きも無いわね」
「まだキメラは現れそうもないですね。エリクさん、少し手伝ってくれませんか?」
 2人が会話できるのは、2隻が無線機を使わなくても声が届く範囲内に船を停泊させているためである。ラルスはエリクにA班用の網を渡すと、B班用の網をつなぎ合わせて引漁の要領で蛭子を囲めるよう工夫を施した。エリクは無言だったが、ラルスの指示に従い、黙々と作業中。
「キメラの攻撃により‥‥網が破られたり‥‥船が狙われたりしないよう‥‥俺達が何とかしないと‥‥」
 そう呟く無月は、蛭子が網を破ろうとする前にできるだけ1箇所に集めるよう努力してみることにした。連携した動きができるよう、波の動きを良く見て如何なる状況にも臨機応変に対処できるよう神経を張り詰めていた。
 その気配を感じ取ったのか、同乗していた眞耶も緊張してきた。
 船に乗り込む前に事前に風向き、天候、波の様子を調べた眞耶のおかげで現場にスムーズに向かえたし、戦闘に差し障りがあるような場合に陥った時は彼女の情報は役立つだろう。
「蛭子はんに似たキメラなんて、海神はんにもはた迷惑な話ですね」
 永一と共に松江で退治したキメラに言った言葉を思い出したのか、眞耶はそう呟く。

●船上班戦闘開始!
 網を仕掛け終えたラルスとエリクは、何かがかかった手ごたえを感じた。
「蛭子がかかったようです。キメラ、このままおとなしく運ばれてくださいな。そうでなければ、この場で撃つのみです」
 追い込みからのキメラ漏れに注意し、A班、B班の能力者は各自攻撃体勢に入った。
『ファング・バックル』と『強弾撃』でサブマシンガン掃射の数を減らしつつ、確実に蛭子の脳を狙い撃ちしたが、弾が切れたので『洋弓「アルファル」』に持ち替えて同スキルを使用した後に『急所突き』を加え、残りを精密狙撃。
「脳が飾りでなければ、急所が丸見え‥‥。親切とも言えるのでしょうか?」
 確実に1体ずつ仕留めながら、弱点丸わかりのキメラは珍しいと関心を示すラルス。

 無月は連力配分を行いつつ『ソニックブーム』での切り裂き攻撃と『スナイパーライフル』での遠距離戦を駆使し、蛭子を仕留めている。
 彼の基本戦闘は刀と銃を組み合わせだが、今回は銃を主攻撃としている。海上にいるキメラには接近戦ができないのが辛い。
 網を破ろうとした蛭子がいたので、率先して網を破られる前に狙撃し、できるだけ1箇所に集まるようにしているが、1人では限界があるので班同士で連携した動きを取りつつ、仲間と敵の動きを見ながら如何なる状況にも臨機応変に対処できるよう行動している。

「クラゲ退治、いくぜ!」
 縁の戦法は個人的戦で、網漁で集まった所に雷属性付きの『小銃「S−01」』を射程範囲に入った時点で届いた! と確信後に発砲。
「海の藻屑にするのは少量にしとく! 気分的に! キメラなんぞ、死んで俺の経験値になれ〜!!」
 発砲は、いつの間にか乱射に変わっていた。

 覚醒した眞耶は、船に繋いだ網で蛭子を網に追い込みながら攻撃をしている。
 蛭子の攻撃、船と網の損傷に気をつけながら、1匹も逃がさないよう浜辺班のもとまで追い込んでいるが、何匹かは網を破り逃げ出した。
「水のある場所で、おイタをしたのが運の尽きだと思って成仏しな!」
 青い髪と瞳、ヒレに変わった耳状態で『小銃「S−01」』で攻撃をしている。その姿は、松江に出現したキメラが恐れた海神といえよう。

 エリクも網でキメラを追い立てながら確実に倒しているが、何匹か逃げたことに気づいていたが浜辺班の仲間を信頼し、蛭子を仕留めている。
 網を破られないよう威嚇射撃をしたものの、それも虚しく逃げられたのは痛いな‥‥と小声で呟いた。

 ビキニ姿で『スナイパーライフルD−713』で射程内に入った蛭子を狙撃するあやこは、倒れるときの反応を把握し、網の方に蛭子を密集させながら散開攻撃を試みた。
 発砲時は際は、当然網の破損に注意している。
「超機械無しでも、前衛後衛どっちでも張れるサイエンティスト、藤田あやこの根性見せたる!」
 船上班は、それぞれの戦法で蛭子を倒している。

●浜辺班の戦い!
 波打ち際に蛭子が来たのに気づいた流は、魚獲り感覚で『イグニート』を銛代わりにして攻撃をはじめようとした。
「動きはそんなに速くないだろうけど、電撃と足での攻撃は要注意だな。狙いは脳みそ部分! 刺されぇ!」
 狙いが上手く定まったこともあり、『イグニート』は蛭子の脳に見事刺さった。
「クラゲキメラ獲ったどー!」
 大声で喜んで叫ぶ流に、まだ終わっていませんよとあやめが冷静に突っ込む。

「うわ、気持ち悪っ‥‥。多いなー‥‥何匹いるのよこれ〜!」
 沙姫は気持ち悪がりながらも追い込んだ蛭子を『アサルトライフル』で確実に仕留めているが、基本的には大剣使いなので『ツヴァイハンダー』に持ち替え、足が少し浸かる辺りまで移動して積極的に斬り払った。クラゲの軟体には、銃弾より剣での攻撃が有効だろう、という考えに至っての行動だ。
「軟らかそうだし、銃よりも剣で真っ二つにするほうが効きそうだよね‥‥」
 その行動は正解だった。蛭子は予想以上に上手く斬ることができた。

「グロイ、グロすぎです‥‥! イヤー! こっちこないでー!」
 グロテスクな蛭子を見るのは正直言うと嫌だが、倒さないといけないという使命感からか、更紗はそう言いながら攻撃している。ちまちまと倒すのが鬱陶しくなったので、『蛇剋』に持ち替えて近接スタイルに変更。
「クラゲを解剖して何か分かればいいですねぇ。特に期待する成果は‥‥何でしょうねぇ?」
 しなびた蛭子を見て、そんなことを考える更紗だった。

 あやめは『探査の眼』を駆使しつつ、波打ち際に近付いてきた蛭子を『血桜』での近接攻撃で的確に倒した。
 集まってきた場合は注意しつつ、危険が潜んでいないかを確認し、もしもの際には仲間に注意を促すよう心がけている。
 チラリと仲間の様子を見ると、流は蛭子が刺さった『イグニート』を掲げ「獲ったどー!」と大喜びし、更紗は「イヤー!」と叫びつつ攻撃。
 真面目なのは、私と沙姫殿だけですか‥‥とポツリとぼやくあやめ。

 何だかんだと言いながらも、船上班、浜辺班共に蛭子退治に成功した。
 網にかかった蛭子は、船上班、特にあやこと縁にフルボッコ。

●貸切のビーチで楽しもう!
「やっと片付いた‥‥。あっつ〜い‥‥まるで蒸し風呂じゃない‥‥」
 戦闘を終えた時の沙姫の全身は真っ赤で、全身には珠のような汗が。
 良くがんばった! と褒めた山陰UPC軍下っ端兵士がいたのは内緒。

 蛭子退治が無事終了したかどうか山陰UPC軍が確認し終えた後、キメラ退治に貢献した能力者を労うためにキララビーチを1日のみ貸切にした。
「純白ビキニの看護婦さん参上ですお☆」
 キメラ戦で負傷した能力者を『練成治療』で治療し終えた後、蛭子を解体しようとしたが山陰UPC軍兵士に「これはUPC軍で解剖します」と没収された。
 研究のための医師が1人くらいいるかと思っていたが、それらしき人物はいなかった。
 あやこの『キメラ解体』という行動は、こうして打ち砕かれた。
「こうなったらヤケよ! お楽しみはこれからよ〜!」
 そう言うと『道の駅キララ多伎』にビキニ姿のままイカ焼きとビールを買いに行き、缶ビールを一気飲みしたあと「暑い夏はコレが一番!」と宣言。
 縁は腹が減ったと『道の駅キララ多伎』の食堂でカレーを食べていた。食後の休憩後、紅白ラインの囚人服のような水着に着替え、クラゲに指されるまで泳ぎ始めた。
「え‥‥水着ですか? えっと‥‥その‥‥。買い出しに行ってきますっ!」
 水着姿になるのは断固反対だった眞耶が、逃げ出す口実として『道の駅キララ多伎』にダッシュで買出しに向かった。
 白から淡い水色に変化しているようなデザインの水着に着替えた更紗は、海を思いっきり楽しんだ。

「皆ー! スイカ割りやろうぜー!」
 クーラーボックスから小玉スイカを取り出し、砂浜にビニールシートを敷いた流の呼びかけに応じたのはあやめ、更紗、沙姫の3人。
 更紗はフラフラ状態でありながらも、見事にスイカを真っ二つにした。
 割ったスイカは、流が包丁で綺麗に切りそろえた後に能力者全員と永一に振る舞われた。 

 エリクは遊びに参加せず、ラルスは購入した飲み物を飲みながら、海のスケッチをしていた。
「そう言えばー、日本の国土自体、最初はクラゲ状態でしたか〜」
 日本とクラゲは縁深いと思いつつ、キララビーチを描いている。

 無月は、永一の興味対象について話をしていた。
「今後も‥‥こういうキメラが出てくるんだろうね‥‥。三貴神‥‥二祖神‥‥。そういうものが‥‥現れたら‥‥かなり厄介な相手なんだろうね‥‥」
 そうだな、と流が差し入れたくれたスイカを一口食べる永一。

 今後も、日本神話の神々を模ったキメラが現れるだろうが、その時は自分も依頼に姿を現すだろうと思う無月だった。