●リプレイ本文
●組み合わせ
「何か面白そうだし、一度他の能力者とも戦ってみたかったんだよね〜♪ 当然、手は抜かないけど」
沙姫・リュドヴィック(
gb2003)は、勝負前から闘志を燃やしている。
「今回はドラグーンの訓練ですけど、真剣勝負ということで臨みます。私にとっても対「犯罪能力者戦」の訓練にもなりますので、こちらもハンデを付けた以上はルールは守って事故に気を付けつつ全力で行こうと思います。ビーストマンは、ドラグーン以上に希少なので‥‥そのお披露目ということになりますが、獣化能力を失いただの能力者と変わらない覚醒しか出来なくなりました‥‥」
地味ですけどね‥‥とドラグーン達に自嘲気味に言う辰巳 空(
ga4698)は、唯一多くの戦闘依頼をこなしている能力者だ。
「ドラグーンの実戦データ収集ができそうですね。できれば、模擬戦に勝ちたいです」
チェスター・ハインツ(
gb1950)は、他クラスの能力者と対戦することでドラグーンの力が通用するかというデータ収集を楽しみにしているように見える。
「模擬戦だし、お父さんと戦うよりは気が楽かもね」
心の中に居る姉の人格『真白』に話しかける白雪(
gb2228)。姉も、心の中では戦闘を楽しみにしていることだろう。
「キメラ退治に挑戦する前の訓練って感じかな? 相手が先輩傭兵だろうと、戦うからには負ける気はないよ〜。ま、せっかく皆で試合するわけだし楽しくいこう!」
黒羽・ベルナール(
gb2862)は、脱力するような笑みで皆に挨拶した。
「よ〜し、あたし達ドラグーンの力、見せてやろうじゃない! 皆、頑張ろうねっ!」
えいえいおー! と腕を掲げ、元気良くドラグーンのやる気を引き出そうとレミィ・バートン(
gb2575)は大張り切り。
「皆さん、揃いましたね。模擬戦の審判を務めますアプサラス・マーヤー(gz0032)です。皆さんの能力を考慮し、対戦相手を決めました」
アプサラスはそう言うと、演習場のホワイトボードに対戦表を貼り付けた。
第1試合:黒羽・ベルナールVS鳳覚羅(
gb3095)
第2試合:レミィ・バートンVSルンバ・ルンバ(
ga9442)
第3試合:白雪VS沙姫・リュドヴィック
第4試合:辰巳 空VSチェスター・ハインツ&白雪
「第4試合ですが、辰巳さんのレベルが高いのでハンディキャップとして1対2の変則試合とさせていただきました。辰巳さん、宜しいでしょうか」
「異存ありません」
空としても、ドラグーン同士、あるいはドラグーンと他クラスの誰かと対戦したいと思っていたので丁度良い組み合わせとなった。
●第1試合
まずは、ベルナールと覚羅の対戦。
模擬戦場に来た2人は、試合前に礼儀正しく挨拶。
「試合は真剣にいくよ! 挨拶の時の雰囲気じゃいけないからさっ」
覚醒した覚羅は、髪が漆黒、瞳が金色に変わり、体の周囲に渦巻くように黒いオーラが漂い出した。
「最初に言っておくよ‥‥.実戦と思って手加減はしないからね?」
槍を構えながら冷静に言う覚羅に対し「もちろん!」と返事するベルナール。
『はじめ!』
アプサラスの号令と共に、二人は間合いを詰め始めた。
先手を取ったのは、ベルナールに素早く接近して側面に回り込みパイルスピアで『流し斬り』を仕掛けた覚羅だった。
「なんの!」
ベルナールは咄嗟に回避しようとしたが間に合わず、一撃を喰らったが気にすることなく『竜の翼』で覚羅に即座に接近し、『竜の爪』でヒュドラスピアの能力を高めてかから足めがめて反撃。見事にヒット!
「結構やるじゃん♪」
「ベルナール君もね。正攻法だけど‥‥その機動力、取らせてもらうね?」
フッと笑うと『両断剣』を付与したパイルスピアで、ベルナールの両足を薙ぎ払った。
「痛っ‥‥さすがプロの傭兵だね! これでどうだっ!」
攻撃を喰らったのは、わざと隙を見せ、相手の攻撃が入るようにするためのベルナールの戦法だった。
(「どんなに強い奴でも、攻撃の時は隙が出来る!」)
再びヒュドラスピアに『竜の爪』で能力を高めた後、ベルナールはこれでどうだ! と言わんばかりに『竜の咆哮』で覚羅を吹き飛ばすことに成功!
「くっ‥‥なかなかやりますね。でも、踏み込みが甘いですよ」
即座に立ち上がり、再度『流し斬り』で攻撃する覚羅。
それからの2人の試合展開は、即座に相手の側面に回っては攻撃したり、かわしたりの繰り返しだった。
『それまで!』
アプサラスが試合時間終了を告げる。
『勝者、鳳覚羅!』
試合を終えた2人は、模擬戦場の中央に戻り挨拶を。
試合後は握手が基本のベルナールは、最後は笑顔で和やかに覚羅に握手を求めた。
「よっ、お疲れ! いい試合だったよ〜。ありがとなっ」
「こちらこそ。いい訓練になりました」
互いの健闘を称えながら、第1試合は笑顔で終わった。
「覚羅、怪我してるじゃないか! 救急セットですぐ治療する!」
「あ、ありがとう‥‥」
医療小隊所属のベルナールは、手馴れた手つきで覚羅と自分の治療を始めた。
●第2試合
続いての試合は、ボーイッシュなレミィと元気少年ルンバ。
白がベースのカラーリングのAU−KVを身に纏ったレミィは、距離を保ちつつ主兵装による射撃に持ち込もうと考えているようだ。
「おいら、ルンバ・ルンバ。故郷の言葉で『イルカ』って言うんだ。だから、戦い方もイルカみたいなんだけどね。そう簡単に負けないよ! レミィ、それじゃ宜しくね」
覚醒したルンバの姿は、瞳の色が濃紺に変わり、冷静な思考で行動すると思われる表情となることで、先ほどまでの少年らしい笑顔は消え、レミィはAU−KVの上から青い光の翼のようなオーラが背中から発現。
『はじめ!』
「先手必勝っ、てね!」
ルンバは『先手必勝』を使い先手を取ってイアリスで攻撃を仕掛けたが、試合開始と同時に、レミィは『竜の翼』を使い後方のスクエアに移動すると同時に『竜の爪』を使用、真デヴァステイターとイアリスの能力を高め、ルンバが射程内に入ったのを確認すると射撃開始。
「デヴァステイター、セット! ‥‥シュート!」
真デヴァステイターの1弾目は射撃はひょいと避けたルンバだったが、次は避けられず右の二の腕を掠る程度のダメージを喰らってしまった。
「さすがドラグーンって所か、危ないなぁ。隙を突かれるところだったよ。反撃といくよ!」
名前の如くイルカのように跳躍したルンバは、イアリスを投げつけるとリンドブルムに飛びかかり、コンドルズクロウで『急所突き』を使用した。
これにより、レミィの防御力ダウン。
(「まずいなぁ‥‥。以降、毎ターン『竜の爪』使用で短期決戦に持ち込もうと思ったのに」)
計算外の攻撃を喰らっても、レミィは冷静に次の作戦を考える前に『竜の鱗』で防御力を高め、武器をイアリスに持ち替え『竜の爪』を使用。
「接近戦ならこれで‥‥! イアリス・ブレェェードッ! はあああっ!!」
気合一閃の攻撃はルンバにヒットするかと思いきや、イルカのような素早い動きで避けられたため、左足を切る程度のダメージしか与えられなかった。
「いった〜! でも、負けないから!」
反撃しようとしたルンバだったが、そこでアプサラスが試合終了を告げた。
『勝者、ルンバ・ルンバ!』
勝利宣言に飛び跳ねて喜ぶルンバだった。
「へへっ、何とか勝てたみたいだ。あんた、なかなかやるね。今回のことが、どういう風に役立つのか楽しみだな」
「あたしの負けだね。今度は負けないよ‥‥って、きみ、怪我してるじゃない!」
「そういうあんたもね」
二人が互いの傷を気遣っている最中、アプサラスが割り込むようですみませんと間に入ってきた。
「勝負はルンバさんの勝ちですが、実力は互角でしたよ。レミィさんの攻撃ですが、機動力に優れているようですね。お2人とも、今日の試合を教訓に今後も依頼に励んでください」
はい! と声を揃えて明るく返事する2人だった。
●第3試合
白雪と沙姫は、挨拶から対照的だった。
「宜しくお願いします、白雪さん♪」
明るく挨拶する沙姫に対し、礼儀正しく挨拶する白雪‥‥ではなく、覚醒したことで表に表れた一卵双生児の姉『真白』の人格。
「人との戦いなんて久しぶり‥‥ね。実家を出た時以来かしら。では沙姫さん、宜しくね」
黒い髪が銀色化し、真紅の瞳となった真白が微笑む。沙姫の覚醒姿は、AU−KV装備時には相応のサイズの一対の黒い翼が出現。
『はじめ!』
先手を取ったのは『流し斬り』を仕掛けた真白。
「八葉流参の太刀‥‥乱夏草」
側面から沙姫を蛍火で斬り、更にもう一度『流し斬り』で背面を斬り込んだ。
真白の攻撃を喰らった沙姫は『竜の爪』を使用してから接近時の勢いを殺さずツヴァイハンダーを振り下ろし、床の跳ね返りを利用してそのまま横に薙ぎ払った。
「力ずくだけど、問題ないですよね!」
沙姫の力ずくの一撃は、見事に真白の腹部にヒット‥‥かと思いきや、バックラーで防御されていた。
「なかなかですね‥‥今度はこちらの番です」
真白は距離を少し離してから、『ソニックブーム』で蛍火に最大エネルギーを付与。
「八葉流四の太刀‥‥跳蔓草」
蛍火で地面を跳ねるような衝撃波を繰り出した真白の攻撃を沙姫は慌てて防いだが、それでも大ダメージを喰らうことは免れなかった。
「あたた‥‥」
それに挫けることなく、沙姫は『竜の爪』でツヴァイハンダーの能力を高めてから怒涛の3連撃! 真白はバックラーで即座に防いだが、連続攻撃に耐え切れず転倒してしまい、最後の攻撃を喰らった。
第2試合同様、アプサラスが試合終了を告げるまで攻防一戦が続いた。
『勝者、沙姫・リュドヴィック!』
よっし、勝ったぁ〜♪ と喜ぶ沙姫だったが、真白の怪我を気遣った。
「白雪さん、大丈夫ですか?」
「俗世のぬるま湯に漬かり過ぎたかしら‥‥治療は要らないわ。白雪、後は宜しくね」
そう言うと覚醒状態を解除し、元の人格に戻った。
「2人とも、良く頑張りましたね。今『練成治療』で回復しますから」
アプサラスはそう言うと、2人に治療を施した。
●第4試合
最終戦は、ビーストマンの空とドラグーンのチェスター、ダークファイターの白雪組という変則試合に。
「白雪さん、大丈夫ですか? 先程のダメージがまだ残っているのでは?」
心配するアプサラスだったが「大丈夫です」という返答があったので、試合続行できるものとみなし模擬戦を行うことに。
3人は模擬戦場中央に揃うと挨拶し、覚醒し始めた。
空の覚醒状態は目が真紅に輝き、八重歯並みの長さの二対の牙が生えるビーストマンらしい状態、チェスターはAU−KVに隠れている髪が、全体が緑色に淡く輝くようになっている。白雪は、再び姉『真白』の人格に。
チェスターは、白雪は第3試合の疲れもあるだろうからサポートとして空に近づかれた時、彼を迎撃する感じで戦ってもらいたいと助言した。
「わかったわ‥‥」
銀色の髪の真白は、それに同意した。
『はじめ!』
戦闘開始と同時に真白と後方へ飛び退いたチェスターは、即座に『竜の爪』を使用するとM−121ガトリング砲ガトリング砲で攻撃し始め、空に接近されないよう常に相手を正面に捉えひたすら弾幕を張った。
「真白さん、僕の陰に隠れるように待機してください」
真白は指示に従い、チェスターの後方についた。
空は10メートル後退し『真音獣斬』を放って牽制し、自分に向かって来たチェスターを『流し斬り』を織り交ぜつつ体力を削りつつ、要所要所で『真音獣斬』で真白を牽制。
布のような黒い衝撃波に襲われそうになりつつも、チェスターは果敢に空に挑んだ。
チェスターは弾幕が途切れると、空は多少フェイントを加えながら接近戦をして来るだろうと考え、弾丸を装填。完了すると『竜の瞳』を使用し、再び弾幕を形成した。
「弾幕ですか‥‥」
隙を見つけた空は『瞬速縮地』で弾幕内から抜け出すと、チェスターめがけて猛攻を仕掛けようとしたが、真白に阻まれた。
「彼には‥‥近づけさせないわ」
「女性に攻撃はしたくありませんが‥‥模擬戦とはいえ戦闘です。すみません」
朱鳳で真白を薙ぎ払い、チェスターめがけて『瞬速縮地』で接近し、一気に勝負を決めに行った。
「しまった!」
瞬時の接近に対応できなかったチェスターは、空の『流し斬り』を喰らうかと思いきや‥‥真白が身を挺して庇った。
「真白さん!」
「あなたを庇うのが‥‥私の役目でしょう?」
微笑みながらそう言うと、真白はよろめいた。
その隙をつき、二度目の『流し斬り』で空はチェスターを攻撃!
この瞬間、空の勝利が確定した。
『勝者、辰巳 空』
ありがとうございました、と試合終了の挨拶を済ませた後、空は救急セットを用意してチェスターを治療した。
「私は‥‥いいわ」
真白は、残った練力で『活性化』を使い体力を回復させた。
「空さん、あなたも要治療ですよ」
アプサラスが空を『練成治療』で回復させる。
まだ治療を終えていない能力者がいることに気づいたアプサラスは、すみませんと謝りながら回復させた。
●総合結果
「皆さん、お疲れ様でした。この後は各自、体力を回復させるためゆっくりお休みください。その前に、今回の模擬戦の評価を致します。皆さん、各クラスのスキルを活かした戦法で戦っていましたね。中には、創意工夫の戦法の方もいました。実戦依頼では、今回の模擬戦での戦法を活かしてください。努力次第では、ドラグーンの皆様はベテラン能力者に引けを取らない能力を発揮できます」
気になる総合結果は『精進あるのみ』だった。
「では、これで解散します」
解散後、能力者達は集まって感想を述べ合ったり、反省点を考えたりしていた。
「今回は負けちゃったけど、また模擬戦があるんだったら負けないからっ! 練習あるのみだねっ!」
次回も他クラスとの模擬戦があるのなら、もっと練習して勝つぞと意気込むレミィ。
試合が終わった人には声をかけるよ。
「皆、お疲れ!」
ベルナールは皆を労う。
「面白かったね〜♪ 私も次が楽しみ〜」
結果はどうあれ、沙姫はとても楽しめた。
「ドラグーンの実戦データを収集できましたので、次回はこれを活かしましょう」
どのような戦法でいこうかと、今から考えているチェスター。
「良い訓練になりました。ありがとうございました」
ベルナールと対戦した覚羅は、充実した表情で礼を述べた。
「おいらも、次を楽しみにしてるよ」
レミィ同様、次回を楽しみにしているルンバ。
「また‥‥皆さんと対戦できるよう楽しみにしているね」
白雪も、次回があればと期待しているようだ。
「皆さんの戦力、侮れないものでした。本気を出さなければ、俺達が負けていたかもしれません」
良い勉強になりました、と他クラスを代表して挨拶する空。
模擬戦は、互いのクラスにとって良い経験となったようだ。