タイトル:10月の運動会衣装披露マスター:竹科真史

シナリオ形態: イベント
難易度: やや易
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/18 11:17

●オープニング本文


 9月に手芸部が行った『ヒエダ貸衣装店』主催の衣装披露会だが、予想以上に好評だったので手芸部員達は話し合った結果、10月も衣装披露会を開催することを決めた。
 手芸部員は、食堂のおばちゃん・稗田盟子に今回もヒエダ夫人こと稗田令子に協力してくれるよう頼んだところ、喜んで協力させてもらうという返事が。
 ラスト・ホープにいるヒエダ夫人は、今月の衣装披露会ができるのね〜と楽しみにしていた。

 今月のテーマは『運動会』。
 衣装は体操着と限られてるが、創意工夫をすればファッションショーが開催できるだろう。
「部長、体操着をアレンジするってどうするんですか?」
 部員のひとりが尋ねると、運動会は競技に参加する人だけとは限りませんよ? と悪戯な笑みで答えた。
 運動会には、参加する生徒、応援団、チアガール等がいる。
 仮装大会もあるだろうし、借り物競争もある。
「そう考えれば、衣装のバリエーションも増えるでしょう? ね?」
 部長の一言で納得する手芸部員達。
「でもぉ、単なるファッションショーだけじゃ面白くないですよぉ。運動会なら、競技を取り入れたらぁ?」
 ファッションショー+運動会の競技。
「それ、いいかも! 部長、それやろうよ!」
「そうですね…。面白そうだからやりましょうか」

 ファッションショー+競技と決まったので、披露会場は学園グラウンドに決まった。
 参加者の人数によるが、競技は『パン食い競争』『借り物競争』をすることに。

 開催数日前、学園に訪れたヒエダ夫人との打ち合わせを行った。
「ファッションショーと運動会競技とは面白いわね〜。これなら〜観客に楽しんで見てもらえるわよ〜」
 ヒエダ夫人も、手芸部員の企画に大賛成。

 こうして、10月の衣装披露会のテーマは『運動会』で、実際その衣装で競技を行ってもらうことに。
 余談。司会だが、ヒエダ夫人のラブコール、もとい、強い要望でUPC軍中尉のソウジ・グンベが行うことに。

●参加者一覧

/ ミオ・リトマイネン(ga4310) / 百地・悠季(ga8270) / 神鳥 歩夢(ga8600) / イスル・イェーガー(gb0925) / 朔月(gb1440) / 小麟(gb1863) / 鮫島 流(gb1867) / 御門 砕斗(gb1876) / 千祭・刃(gb1900) / 鳳(gb3210

●リプレイ本文

●今度は運動会だ
 先月の部活動説明会で行われた『ヒエダ貸衣装店』主催、協力で行われた手芸部による『月見衣装披露会』が成功したので、今月も衣装披露会を行うことにした。
 テーマは『運動会』と決まったが、ファッションモデルのようにただ歩いて衣装を披露するだけでは面白くないので、実際に運動会で行われている競技をモデルにしてもらうこととなった。
 競技は『パン食い競走』『借り物競走』の二種目。
 これなら体育館で行うことができるので、雨天中止の心配はない。
 ポスターを作製していた手芸部員は、完成すると早速学園掲示板に張り出しに行った。
「皆さん、今日は主催者であるヒエダ夫人がいらっしゃいます。今月も先月同様、手芸部で衣装を借りる方とヒエダ貸衣装店で衣装を借りる方に別れると思いますので宜しくお願いします」
 手芸部部長がそういうと、他の手芸部員達はやる気を漲らせた。

●衣装打ち合わせ一週間前
 話は、衣装披露会のテーマが決まる数日前に遡る。
 先月の『月見衣装披露会』に出場した千祭・刃(gb1900)が、自前のあずき色に白ラインのジャージを持って手芸部部室を訪れた。
「あの、どのようなご用件でしょうか?」
 刃を対応したのは手芸部部長。
「お願いがあります。ジャージの上着後ろ部分に『侍魂』という文字を刺繍をしてください!」
 刺繍は時間がかかるとわかっているのか、開催数日前に頼みに来たようだ。ちなみに、この時点ではまだテーマは決まっていなかったのだが刃は予測していたのかもしれない。
「お願いします、サムライは日本男児の象徴なんです!」
「わ、わかりました‥‥」
 押しに弱い手芸部部長は、根負けして刃の頼みをきき刺繍をすることに。
(「こ、これは徹夜になりそうですね‥‥」)

●衣装打ち合わせ当日
 衣装披露会3日前、ヒエダ夫人が貸衣装数点を持って従業員数名を引き連れて学園に訪れた。
「お待ちしてました、ヒエダ夫人。今月も宜しくお願いします」
「今月も衣装披露会が開催できて嬉しいわ〜♪ こちらこそ宜しくね〜。あ、司会のソウジ君だけど、大規模作戦の書類作成とかで少し遅れるそうよ〜」
 大規模作戦の書類、というのは実は嘘で、本当は始末書である。ソウジ、見栄をはったね?
 手芸部に集まっていたモデル兼運動会参加者は以下のとおり。

 IMP所属のアイドル、ミオ・リトマイネン(ga4310)。
 前回に引き続き参加の百地・悠季(ga8270)。
 女装少年の神鳥 歩夢(ga8600)。
 人付き合いが苦手そうなイスル・イェーガー(gb0925)。
 着ぐるみパフォーマー、朔月(gb1440)。
 初参加の中華娘、小麟(gb1863)。
 気が早いな〜と思いつつ参加の鮫島 流(gb1867)。
 運動会は久しぶりだという御門 砕斗(gb1876)。
 誰よりも張り切っている、前回に引き続き参加の千祭。
 明るく元気な鳳(gb3210)。

「今月の衣装披露会ですが、ただ衣装を披露するだけでは先月の二番煎じとなりますので、参加される皆さんには簡単な競技を行ってもらいます。種目は『パン食い競走』と『借り物競走』のふたつです」
 手芸部部長の説明を聞いた後、ミオは折角のチャンスなので少しでもIMPをアピールしないと、と頑張ろうと決めた。
 歩夢は、ミオがいることですごく緊張している。
 彼女には依頼で大変世話になり好意を持っているが、歩夢は女性、特に豊満な女性には免疫が無く、極度に緊張してしまうので女装をし、女性になりきることで緊張を和らげようと彼なりに努力している。ミオが現役アイドルということもあり、男として接するのは外聞が悪い、というのも女装理由ではあるが。
「しっかし、入学式もまだやのに運動会かいな。ホンマ気が早いやっちゃな〜」
 流の言うとおり、入学式は大規模作戦の影響によりまだ行われていない。それなのに行事は通常通り行われているのが不思議でならないようで。
「予行とはいえ、体育祭なんて久しぶりだな。まったく‥‥」
 友人である流と参加した砕斗はあまり乗り気ではないようだが、参加するからにはきちんとやると決め、トップを目指してみるのも悪くはないだろうと思った。
「運動会ですか‥‥わくわくします。体を動かすのが大好きなので参加します!」
 誰よりも意気込んでいる刃。

「それでは〜衣装の打ち合わせを始めましょう〜。今回は〜手芸部の皆さんと一緒に衣装の打ち合わせをしますね〜。試着は〜男子は隣の空き部屋で行ってくださいね〜」
「衣装ですが、手芸部のほうでも用意しましたのであるものはお貸しできます。その前に、皆さんには赤組と白組に分かれてもらいます。これから、組み分けを発表します」
 組み分けは以下のとおり。

 赤組:イスル、小麟、流
 白組:ミオ、悠季、歩夢、朔月、砕斗、刃、鳳

 事前にくじ引きで決めたのだが、何故か白組のほうが人数が多くなってしまった。

「では、本格的に衣装打ち合わせを始めましょうか」
 手芸部部長の一言で、衣装打ち合わせ開始。
 最初に希望を述べたのは、月見衣装披露会で観客に『ヒエダ貸衣装店』の宣伝と観客サービスを行った悠季だった。
「貸衣装店主催の衣装披露会10月版ね。今度は季節柄『運動会』関連で示し合わせみたいだから、参加しない手は無いわね。今回は手持ちだと物足りないから、全面的にヒエダ衣装店に委託するわ」
 そんな彼女が希望した衣装は、白地に青星を散りばめた臍出しタンクトップとオレンジ地で白縞縁のミニスカートのチアガール衣装とアンダスコート。小道具は白のポンポン。アンダースコートを穿くのは、見られても構わない下着だから。
(「動いてる最中にあえて意識的に覗こうとする輩には、蹴り上げるお仕置きを考えても良いわね」)
 こっそり邪笑しながら、そんなことを考える悠季だったりする。
 チアガールの衣装はこの時期には肌寒いだろうが、音楽に合わせて踊っていれば自然と身体が温まるだろう。
 もう1着は、黒を貴重とした華美なデザインの執事服。
 スーツとズボン着こなし、それなりの振る舞いをする計画があってのことだ。
「チアガールの衣装は手芸部でご用意できますが、執事服はヒエダ夫人のところで借りてください。ヒエダ夫人、宜しいでしょうか?」
「もちろんよ〜。悠季ちゃん、今回もヘアセットは私がしてあげるわね〜♪」
 もちろん、そのつもりよとヒエダ夫人にヘアセットを頼んだ悠季。
「私も‥‥衣装を2着用意してほしいです。1着は悠季さん同様、応援用のチアガール服で‥‥」
 同じチアガール服だが、ミオの注文はIMPのイメージカラーらしく黒・紫・白の3色でスカートは短め、身体に密着する物が希望だった。小道具は同じだった。
「スカートは、試着の際に丈直しするね。上着は、披露会当日に間に合うよう手芸部が作成するよ」
 ありがとう‥‥と手芸部員の1人に礼を述べた後、2着目の希望を言った。
 もう1着は競技用の体操服。
 白地のシャツに『みお』とひらがなで書かれたゼッケンを付け、お尻にフィットした紺色のブルマを要望。これで、アイドルらしく少しセクシーさをアピール。
「体操服は、カンパネラ学園のものにゼッケンをつけますね。ブルマはありませんので、ヒエダ夫人のところで借りてください」
「大丈夫よ〜。ブルマなら昔懐かし提灯ブルマからアニメスキーなものまで取り揃えているから〜」
 ヒエダ夫人、最近の若者事情を勉強したんですか?
(「UPCから支給されてしまったレオタードは、恥ずかし過ぎます‥‥」)
 歩夢は、ミオに頼んでブルマを選んでもらうことにした。ブルマを穿くのには若干抵抗感があったが、女装せざるを得ないので仕方が無い。
「ボクに似合うかは判りませんが‥‥」
 ミオが選んだブルマは、彼女と同じ紺色のものだった。
 イスルは、バイトで着ている半分自前のメイド服を着るとのことなので借りないことに。
「あ、部長さん、お願いしたアレ、出来てる?」
 イスルが自前の服を着る、と言ったことで、刃は手芸部部長に頼んだ刺繍のことを思い出した。
「これですね? 上手くできているか自信ありませんが‥‥」
 刃が受け取ったのは、あずき色に白ラインのジャージの上着。背中部分には金糸で注文どおりの文字が刺繍されている。
「ありがとうございます! 僕、これで頑張りますね!」
 良い出来に大満足の刃。
「ヒエダ貸衣装店主催のファッションショーと運動会の競技アルネ。良く分からないけど、面白そうアルね。ボクが借りたいのは、スパッツとTシャツの組み合わせアル。あ、赤組の鉢巻に目の穴を開けてマスクのようにしてほしいアルね。できるアルか?」
「わかりました。打ち合わせが終わりましたら、後で穴の大きさを合わせましょう」
 手芸部部長がマスクを作成してくれるので、やったアル! と大喜びの小麟。
「スパッツは自前アルが、Tシャツは手芸部作のものを着るアルね。あ、これで頼むアルよ」
 そう言って小麟が手芸部部長に手渡したのは、Tシャツデザインが書かれたメモだった。
「Tシャツのデザイン? それは当日のお楽しみネ♪」
 気になる参加者達にウィンクして誤魔化す小麟だった。
 流が希望したのは、背中に『応援夜露死苦』と刺繍された特攻服とチアリーダーの衣装(女性用)だった。
「あ、後胸パットも用意してくれ」
 女装に関しては、歩夢と違い抵抗感がないようだ。
「チアリーダーの衣装は〜大きいサイズもあるから大丈夫よ〜」
 ヒエダ貸衣装店は、なんでもアリなようで‥‥。
「ヒエダ夫人、今回は宜しく頼む。俺が希望する衣装は、応援団が着るような白長ランとワンタックの白学生ズボン、白い鉢巻とさらしだ」
 別名『ゾクの総長スタイル』ともいえる応援団衣装を希望する砕斗は、参加当日は眼鏡は危ないから外しておくようだ。外しても周囲が見えるとのことだが大丈夫だろうか?
「部長、前に頼んだもの出来てるか?」
「はい、出来てますよ。どうぞ」
 朔月も刃同様、手芸部に何かを頼んでいたようだ。手芸部部長が手渡したのは、白地の布に茶色の糸で『必勝祈願』と刺繍された鉢巻だった。
「おばさん、今回は白熊の着ぐるみかりるぜ」
 朔月が希望したのは、先月の月見衣装披露会同様、着ぐるみだった。
 体部分と頭部部分が分かれ、頭部分だけを取り外せる感じのものを希望した。着ぐるみの鼻口から外の様子を見る感じになっているので、行動の不自由さは感じられない。
 手芸部作の鉢巻は、白熊の頭に締めるものであった。
 最後に借りたい衣装を言ったのは鳳。
「俺が着ると仮装にならんかも知れんけど、衣装はカンフー服や。一応運動用の服やしな。赤地で、金色の糸で竜の刺繍してあって、袖無の男性用長袍でスリットの深いやつな」
 本当なら手芸部で自前のものを手直ししてもらおうと思いいらなくなった普段着を持ってきたのだが、展示されていた貸衣装の中で「これや!」と思うものを発見したので衣装を借りることにしたのだった。
「これで〜、皆それぞれ衣装を用意できたわね〜。うちで借りる人は〜当日持ってくるわね〜」
 当日を楽しみにしててね〜、と言いながらヒエダ夫人は帰っていった。
 手芸部の仕事は、ミオのスカート丈直しと小麟のTシャツ作成のみであるが‥‥Tシャツは当日まで間に合うのだろうか?

●衣装披露会+運動会開催!
 衣装披露会開催当日は生憎の雨模様だったので、グラウンドで行う予定だった運動会を体育館で行うこととなった。競技が室内でも可能なものを選んだのが不幸中の幸いだった。
「残念だったな、雨が降って」
 紺色ジャージを着た司会のソウジ・グンベ(gz0017)が手芸部員達に挨拶がてら声をかけた。
「いえ、雨が降っても運動会はできますから。ソウジ中尉、今回も司会宜しくお願いします」
 手芸部部長の挨拶に「こちらこそ」と挨拶するソウジ。

『これより、ヒエダ貸衣装店主催による運動会衣装披露会を開催致します。今回は、衣装披露と運動会を兼ねております。競技に参加される皆様の衣装をお楽しみください』

 手芸部部長のアナウンス終了後、第1競技の準備が行われた。

●パン食い競走開始
 パン食い競走に参加するのは、赤組は小麟のみで、残るミオ、歩夢、砕斗、刃、鳳は白組だった。
(「完成が間に合って良かったアルよ」)
 小麟のTシャツは、体操着を改良したものだった。
 黄色地に黒の縞が入った虎柄の半袖Tシャツで、裾は真上から着ている姿を見ると星型になるカット。胸元が円形に開いているのがちょっぴり大胆。虎柄の膝下まである靴下と、同じく虎柄の肘まで隠れる薄手のフィンガーレスタイプの手袋付き。
 それに前もって作成された赤鉢巻のマスクという出で立ちは、覆面ヒーローを彷彿させるものだった。
 スタート位置についた時のインパクトは、観客達は忘れはしないだろう。
「学園特風カンパリオン3号、只今参上アル♪」
 ズバーン! ギャ〜ン! とカッコ良さげな効果音を出すのは、手芸部員の仕事だった。おまけとして、お情け程度のドライアイスによるスモーク演出をプラス。

「スタートの前に、出場選手と衣装のご説明をさせていただきます。司会は先月に引き続きソウジ・グンベが務めます。第1コースは現役アイドル、体操着とブルマで出場のミオ・リトマイネン嬢です」
 ブルマスキーには萌え〜な衣装なのと、彼女のファンは「ミオちゃーん!」と大声で声援。
「第2コースは、キュートな体操着少女に扮した神鳥 歩夢くんです」
 えー! 男の子ー!? というがっかりする男子生徒と、可愛い〜♪ とうっとりする女子生徒が半々だった。
「第3コースは‥‥先ほどインパクトある登場をされた小麟嬢です」
 登場時に派手な登場をしたので、紹介のしようがないので簡潔に紹介したソウジ。
「第4コースは、バリバリなゾク、もとい、硬派な応援団長に扮した御門 砕斗くんです」
 宜しくぅ! とビシッとポーズを決める砕斗。ノリいいね。
「第5コースは、運動会のお約束、あずき色に白ラインジャージの血祭・刃氏です。背中の「侍魂」は伊達じゃない! というのは本人のコメントです」
 頑張るぞー! とやる気を漲らせている刃。
「第6コースは‥‥まだ来ていないようですが‥‥」
 待たせたなー! とバク転し、途中で宙返りをして登場した鳳。金竜のカンフー服が映えるようにカッコ良く登場!
「たった今、到着しましたね。昇龍をイメージさせるカンフー服の鳳くんです。以上がパン食い競走の出場者です」
 全員揃ったところで、手芸部員達がパンをぶら下げた糸付きの棒を持って登場。
 6個あるパンには、1つは激辛、1つは変り種が混ざっているが参加者達はどれがそうなのかわからない。
「GO! GO! れっつGO! 1、2、レッツGO!」
 覚醒することにより瞳が黄金色になり、髪の毛が銀色に変色し腰の辺りまでふわりと伸びた流が、チアリーダー姿で応援している。その隣では、白熊の着ぐるみ姿の朔月がドスドスと動き回り、飛び跳ねたり踊ったりしながら流の真似をして応援を盛り上げている。
 負けないわよ! と髪型をポニーテールにした悠季も足を高く上げて応援を開始。案の定、スカートの中を覗こうとする輩がいたが、アンダースコートであることにガッカリ。それでも構わない! と覗きをする不届き者は容赦なく蹴り上げるお仕置きをくらった。
 応援団の熱い応援は、参加者達の気分を高揚させた。

「位置について、よーい」
 ソウジの掛け声と同時に、駆け出す準備をする参加者達。
 パーン! とスタートピストルが発砲されると同時に、一斉に駆け出した。
 中央地点に辿り着いたのはミオ、小麟、刃、砕斗、歩夢、鳳の順だった。先に辿り着いても、パンを銜えるのに苦戦していると順番が変わる。
 先に辿り着いたミオは、何度もパンに食いつこうとチャレンジしている最中、胸が揺れている。実はこれ、彼女の狙いだったりする。
 一番最初にパンに食いついたのは歩無だったが、食べた途端、顔色が悪くなった。歩夢が食べたのは、イスルが仕込んだ『青汁パン』だった。棄権したい気持ちを堪え、パンを銜えてゴールに向かったが足取りは重い。
 小麟が銜えたのは『焼肉パン』。コチジャンで味付けされた激辛高級カルビ焼肉たっぷりのパンだ。色んな意味で当たりといえよう。美味しそうに食べながらゴールに一直線。
 彼女に追いついたのは白あんぱんを銜えた刃、黒糖パンを銜えた砕斗の2人。
(「‥‥水分もないのに食えっつーのは、ある意味地獄だな」)
 心の中でそう愚痴りながらも、取ったパンを銜えて走る砕斗だった。
 鳳が当てたのは、ハズレともいえる激辛パン。中身は麻婆豆腐。それでも平気な顔をしてパクリと食いつき、ゴールに一直線。
 観客達は「あいつ、美味しいパン当たったな?」と思っているようだが、残念ながらそれはハズレ。何かわかったら、鳳は「俺の勝ちや」と思っただろう。
 パン食い競走1着は小麟。
「やったアル♪」
 ウィンクして、観客達に手を振り大喜び。
 2着は砕斗、3着は刃、4着は鳳。
 鳳がゴールした頃、ミオはやっとのことでパンを銜えることに成功。当てたのはジャムパンだった。
 5着は歩夢で、それから1分遅れでミオがゴールイン。

 メイド服姿のイスルは、パン食い競走の参加者達に飲み物を配った。
「‥‥はい、どうぞ‥‥」
「おっ、気が利くなぁ。おおきに」
 鳳、小麟はお茶、砕斗はコーラ、刃はスポーツドリンクを受け取った。
 青汁パンを食べたことで気分が悪くなった歩夢は、ミオに介抱されながらドキドキしていた。
「‥‥水、飲む‥‥?」
「いただきます‥‥」
 イスルが差し出したミネラルウォーターを一気に飲み干し、青汁パンの不味さを解消させた歩夢だった。
 パン食い競走が終わっても、流と白熊着ぐるみ姿の朔月は応援していた。

●借り物競走開始
 パン食い競走が終わった10分後、次の競技である借り物競走が行われた。
 引き続き競技に参加する者の中には、衣装替えした者もいた。
 参加者は、パン食い競走に引き続いて登場するのは歩夢、小麟、砕斗、刃。
 借り物競走のみに参加は白組の悠季、赤組のイスルと流の計7名。
 悠季の衣装は、髪をシニョンアップにして執事の衣装に。登場も、執事っぽく振舞いながら登場。イスルはメイド服のままで、流は特攻服に着替えていた。
 応援団は、IMPのイメージカラーのチアリーダー服に着替え、ポンポンを高く掲げて応援するミオ。スカートが短いので、下着がチラリと見えるかと思いきや‥‥パン食い競走時に穿いていたブルマだったので期待していた彼女のファンはがっかり‥‥はしなかった。激しい動きで胸が揺れていたので。朔月はミオの真似をしながらドスドスと動いていたが、足がもつれてこけてしまったので観客の中には笑う者もいた。これは、観客を楽しませる朔月の計算どおりの行動だった。
 スタート前に、手芸部員と鳳が借り物を書かれたメモをコース中間地点に置いた。

「ただいまより、借り物競走を行います。パン食い競走に引き続き参加する4名の他、3名の参加者が加わりましたのでご紹介します。第1コースは、執事服で登場の百地・悠季嬢、第6コースは、メイド服で登場のイスル・イェーガーくん、第7コースは、応援団風特攻服で登場の鮫島 流くんです」
 観客達は「今回のテーマって、運動会だよね‥‥?」と首をかしげた。それなのに何故、執事にメイドがいるのだろうと思ったが、借り物で何かしてくれるのだろうと考えることにした。

「位置について‥‥よーい」
 ソウジがスタートピストルを鳴らすと、参加者達は一斉に駆け出し、中央地点にある借り物がメモってある紙を手にした。
 最初にメモを拾ったのは小麟だったが、借り物を見て呆然となった。
「借りてくるもの‥‥『人体模型ドヴォルザークくん』アルか‥‥」
 理科準備室の体模型の1体「ドヴォルザーク」と落書きしてあったのを思い出した小麟は、急いで理科準備室に向かった。そこには、誰かが接着剤で口ひげを付けられた人体模型『ドヴォルザーク』があった。
 見つけたのはいいが、持っていくのは一苦労しそうだ。

 悠季の借り物は『紅茶セット』。
 執事の衣装に似合いすぎる借り物だが、一体どこに?
「給湯室辺りを探せば見つかるでしょ」
 そういうと、給湯室に向かって走り出した。

 イスルは、メモを見るなり困った顔をした。
「‥‥借りるもの、って‥‥食堂のおばちゃん‥‥?」
 誰だ、こんなの入れたの? と突っ込んではいけない。借り物は何でもアリなのだから。食堂のおばちゃん達は皆、食堂の厨房にいる時間帯なのでイスルは食堂までいく羽目に。

 刃の借り物は『扇子』だった。
「誰か、扇子持ってませんかー」
 そう言いながら借り物を探していたところ。観客席最前列にいた中年男性が扇子を持っていたので「お願いします、貸してください!」と頭を下げて頼んで借りた。
 後はゴールに向かうのみ! だったが‥‥かなり離れていた。

 砕斗の借り物は『西凱連先生の数珠』。
 無茶な物でなければ借りられると思ったが‥‥西を探すのに一苦労した。

 歩夢の借り物は『現役アイドル』。
「そんな人が都合よく‥‥あ‥‥」
 応援中のミオを見て、彼女もアイドルだったと思い出した。
「あ、あの‥‥ボクの借り物はミオさんなんです。付いてきて‥‥くれますか?」
 微妙に恥ずかしいセリフと共に手を引いて行こうとするが、間に合いそうも無いので我を忘れて思い切ってお姫様抱っこしてゴールに向かった。

 流の借り物は『参加者のうちの誰か』だったので、西凱連である友人の砕斗を引きつれゴールインすることに。
「何をする! 俺には別の借り物が‥‥!」
「黙って俺の借り物になれ!」
 暴れる砕斗を脇に抱え、猛ダッシュで最初にゴールインした流だった。
 2着は歩夢。3着は刃、4着は悠季、5着はイスル、6着は小麟という順でゴールした。流の借り物となった砕斗は、残念ながら棄権という結果に終わった。

 白熊着ぐるみの朔月は『皆、良く頑張った!』といわんばかりにドスドス飛び跳ねたり、ダンスしたりして健闘を称えた。
 時折コミカルな動きもするので、観客達の笑顔は絶える事がなかった。

●改めて衣装披露
「以上をもちまして、ヒエダ貸衣装店主催、手芸部企画の『運動会衣装披露会』を終了致しますが、もう一度、参加者の衣装をご覧ください」
 片付けられた競技場の中央には、いつの間にか赤いカーペットが敷かれ、参加者は1人ずつその中央を歩いた。
「まずは現役アイドル、ミオ・リトマイネン嬢。体操着とお尻にフィットした紺色ブルマがチャーミングですね」
 ミオのファン達は、もう一度ブルマ姿が見れて大喜び!
「続きましては百地・悠季嬢。臍出しタンクトップとミニスカートで応援してくれた彼女に拍手を」
 悠季は「これからも宜しくね♪」と観客に大サービス。ついでに『ヒエダ貸衣装店』の宣伝も。
「続きましては神鳥 歩夢くん。女の子に勝るとも劣らない可愛さで登場です」
 髪を解き、ミオとお揃いの体操着を着て恥ずかしそうに歩く歩夢に「可愛い〜♪」という声援が飛んできた。
「続きましてはイスル・イェーガーくん。メイド服姿で、参加者のお給仕をしてくれた彼に拍手を」
 顔を赤らめ、うつむき加減に歩くイスルだった。
「続きましては朔月嬢。今月は白熊の着ぐるみで選手達を応援してくれました」
 着ぐるみの頭部をはずし、満面の笑みで観客達に手を振る朔月。
「続きましては小麟嬢。ヒーローのような出で立ちで運動会を盛り上げてくれたヒロインに拍手を」
 謝謝♪ と喜んで観客に手を振る小麒。
「続きましては、特攻服コンビの鮫島 流くんと御門 砕斗くんです。硬派な応援団に扮した彼らに拍手を」
 似たような服装だったこと、彼らが友人であることを考慮し、2人一緒の登場にしたのはヒエダ夫人だった。
「続きましては千祭・刃氏。衣装こそスタンダートですが、背中の『侍魂』は二本男児の象徴です」
 ありきたりな衣装だが、背中の刺繍のアレンジが功を奏した。
「最後の登場は鳳くんです。竜を思わせるような衣装とアクロバッティングな動きな彼に拍手を」
 再登場時も、宙返り等の動きで観客を沸かせた鳳だった。

「以上を持ちまして、運動会衣装のお披露目を終了致します。皆様、最後までご覧くださりありがとうございました!」
 ソウジの司会に、盛大な拍手を送る観客達だった。

●運動会が終わった後には
 運動会衣装披露会終了後、悠季は執事姿のまま、借り物の紅茶セットで人数分の紅茶を淹れた。
「皆さん、お疲れ様」
「ありがとう〜。悠季ちゃん、今月も宣伝してくれてありがとう〜♪」
 大喜びのヒエダ夫人。
「それじゃ〜、私は食堂の厨房に戻るわね〜。お茶、ご馳走様〜」
 ヒエダ夫人の従姉妹で食堂のおばちゃん、稗田・盟子は食堂に戻った。

 紅茶で一息つけた後、小麟1人では大変だろうと刃が手伝い、理科室に人体模型を戻しに行き、他の参加者達は披露会場の体育館の後片付けと清掃に取り掛かった。

 今月の衣装披露会は、先月よりも大盛り上がりだったので大成功といえよう。