●リプレイ本文
●食べ物の恨みは怖い!
カンパネラ学園の廊下を歩いている時、稗田・盟子(gz0150)の放送を聞いてダッシュで食堂にいの一番に駆けつけたのは、新メニュー考案会で『具でかレー』を提案した大槻 大慈(
gb2013)だった。
「おばちゃんっ! 俺のカレーがキメラに喰われたんだって? そいつ、お仕置きしてやるっ!」
巨大ハリセンを手にしながら、カレー(正確にはその材料)を食べられた怒りのオーラを全身に漂わせる大慈だった。
放送を聞き食堂に駆けつけたのは、大慈だけではなかった。
秋は『食欲の秋』です、という赤霧・連(
ga0668)。
「にゃ〜! キメラ退治しないとダメニャ〜! 早く退治して、美味しいカレーを食べるのニャ〜☆」
カレーが食べたくて来たアヤカ(
ga4624)。
「食べ物の恨みは深いわ‥‥覚悟しなさい? 食い荒らしたキメラ」
食料を食い荒らす不届きなキメラを捕獲すべく協力する神無月 るな(
ga9580)。
「カレー、カレー、これが済んだらカレー♪」
大慈、アヤカ同様、カレーが楽しみな朔月(
gb1440)。
「皆〜、来てくれてありがとう〜! たった今、食材が届いたところよ〜。本当なら、今日『具でかレー』だったんだけど、残念ながらお披露目新メニューは『おにぎりバーガー』になっちゃったわ〜」
許せないわ〜! と悔しがる盟子は、普段の相談しやすい、気さくな肝っ玉母ちゃんでは無くなっていた。
「犯人のキメラは『餓鬼』ですって〜。餓鬼地獄にいる下腹部がポッコリした鬼みたいのがいるでしょう〜? 外見、それなのよ〜。逃げ出したのは3匹で〜、み〜んな青白いからするわかるわよ〜」
この知識は、特別研究生の申 永一(gz0058)の受け売りであるが、盟子が言うように極端な飢餓状態に陥った人間の姿に近い。
「皆〜この喰い散らかしキメラを捕獲して頂戴〜! あ、研究用キメラだから倒しちゃ駄目よ〜。倒しちゃったら、ヨン君がまた怒られちゃうから〜」
アヤカが餓鬼についての情報を知りたいニャ、というので、質問を聞く盟子。
「目撃情報はもちろんニャが、食い散らかした後がなかったとか、変な声が聞こえなかったかかニャね〜? 変な足跡があれば一番ニャが‥‥」
それに関し、盟子は変な声も足音もしなかったと答えた。
「それなら、いそうな場所に前に罠とかを仕掛けるみるニャ」
「俺は、食材と食堂のオバさん達を警護をする。辺りに気を配りながら行動すれば、キメラの出現が何時あってもいいように構えられるしな」
朔月はそう言った後、無線機を持っている仲間に、キメラを発見したら連絡、応援要請をするよう提案した。食材警備備え、1〜2人残して行動するのも朔月の案だ。
「ほむ、食欲の秋、やっぱり私も秋はこれだと思います。秋の食材って美味しいですよね。餓鬼さんだけに食べられちゃうのは残念です、というより、ずるいです。頑張って捕獲しますよ?」
表情は微笑だが、内心は食の恨みの炎がメラメラと燃えていると思われる連。
「私は、学園を探索するです。餓鬼を探すことはもちろん、餓鬼の被害を最小限に留めるのが目的です。餓鬼の被害に遭っている人や用具があるかもしれませんし。物が壊れていたら、用務員のおじさんに即ご連絡です!」
全員の行動方針が決まったところで、早速『具でかレー』の敵である餓鬼捕獲に闘志を燃やす協力者達。
「皆〜ありがとう〜。捕獲が終わったら、美味しいカレーをご馳走するわよ〜」
盟子の言葉に、やる気を出した協力者達だった。
「おばちゃん、俺、大盛りな!」
「いいわよ〜」
さあ、作戦開始だ!
●餓鬼捕獲作戦
班分けは以下の通り。
食材死守のA班は大慈、るな。
キメラ捜索のB班は連、アヤカ、朔月。
「では、作戦実行しましょう」
るなの一言で、作戦は実行された。
A班のるなは、まず食堂周辺に簡易なワイヤートラップを仕掛け、近寄ってきたら分かるようにしておいた。勝手口周辺にも、同様のトラップを仕掛けた。
「これで、接近してきたら分かるかもしれませんね」
その頃、大慈は齧られた食材を適当に刻んで、塩コショウで炒めて餌作り中。
濃い目の味付けで匂い立つように仕上げ、完成後、食堂内の机・椅子で食堂出入り口を残してバリケード作成。
「俺のカレーを食った罪は重いぜ! 容赦しないからな!」
食の恨み、恐ろや!
「美味しそうな香りは、危険な誘惑です♪ お料理は食堂の中央席に盛り付け、キメラが寄って来るの待ちましょう。上手くひっかかるといいですね‥‥」
クスクス、とキメラがひっかかる様子を想像して楽しむるなに、バリケード作り手伝ってくれよ! と応援要請する大慈に仕方なく従うことに。
大慈の料理は、食堂の中央席に盛られ、後はキメラが寄って来るのを食堂入り口にて待つだけだ。
「美味なる香りは、危険な香りです‥‥。フフ‥‥さあ、いらっしゃい、キメラ‥‥」
「俺のカレーを食った恨みは、超怖いぜ!」
餓鬼が来るのを待ちわびている大慈とるなだった。
B班の連は学園内を探索していたが、餓鬼らしきモノは見当たらなかったと思いきや‥‥腕を噛み付かれたのか、袖口に血が滲み出て泣いている女の子に遭った。
「ほむ、どうしたのですか?」
「小さいヘンなお化けに、いきなり噛み付かれたの‥‥」
餓鬼の仕業と分かった連は、女の子を宥めながら保健室に連れて行った。
「この子の手当て、お願いしますです」
か弱い女の子に危害を加えるとは許せないです! と怒りながら保健室を去ると、餓鬼探索中にケンカをしている男子生徒がいたので仲裁した。
どうやら、バトミントンの結果でもめたらしい。
「私も仲間に入れてくださいです」
これ以上ケンカされてはたまらないと思ったのか、連は仲間に入れてもらうことに。
「‥‥あれ? ちょこっと目的を見失いましたです?」
ガビーン! となるものの、生徒の身の安全を守るためと開き直りバトミントンを始める連だった。それでいいのか?
「必殺、熱血スマッシュです!」
目をキラーン! とさせながら、強烈なスマッシュで先取点ゲット。
「ふふふ、少年、上には上がいるのです!」
背中で語っているつもりなのか、後ろ向きでそう言う連。
連がバトミントンに夢中になっている時、アヤカと朔月ハカレー作り中。
「エサは、食用に使わない場所で十分ニャかね〜? どうせ、捨てる部分何ニャから遠慮無く使うニャ。後は匂いが立つように、ニンニクとか葱とかの切れ端を炒めたりして置いておくニャ! これでおびき寄せて〜上手くやってきたらそれを素早い動きで捕獲するニャ!」
金網製のゲージを用意してあるので、捕獲の準備万端である。
「アヤカは準備いいな、料理は任せた。食材と食堂のおばさん達の警護は、俺に任せてくれ」
覚醒し、辺りに気を配りながら行動する朔月はキメラの出現がいつあってもいいように『長弓「黒蝶」』を握り締めて身構えている。
●餓鬼出現
食堂にはバリケードがしてあるが、小柄な餓鬼にとってはわずかな隙間があればそこから進入できる。
クンクンと匂いを嗅ぐと、大慈とアヤカが作った囮用に餌があるテーブルめがけて走り出したが、速度は遅い。ヒョロヒョロ体型なので、体力はあまりないとみた。
これではテーブルの上に上がれないのかと思いきや! 匂いを嗅ぐなり、ダッシュして椅子を伝い、テーブルに辿り着くなり大慈とアヤカが作った料理をがっつき始めた。
「すげー食欲‥‥」
「美味しそうに食べてるニャ〜」
感心している場合ではないだろう、大慈、アヤカ。
2人は餓鬼が食べ終わるのを見計らうと、金網製のゲージを用意し、素手で掴むと餓鬼をポイッと投げ入れた。
「やったニャ☆」
喜びアヤカに対し、大慈は何かがおかしいと思った。
「逃げ出した餓鬼って、全部で3匹だったよな? 一匹足りなくね?」
そういわれてみればそうだ。
「困ったニャ‥‥。あたいは、こいつらが逃げ出さないように見張ってるニャ!」
「んじゃ、俺はその間に残る1匹を捜すぜ! おっと、仲間に連絡っと」
大慈はトランシーバーを取り出すと、餓鬼2匹捕獲成功、残る1匹がまだ見つかっていないことを仲間に報告した。
バドミントンに夢中になっていた連は、中断して餓鬼捜しを再開した。
「仲間に入れてくれてありがとうです!」
餓鬼に噛まれた生徒がいるので学園内をうろついている可能性も高いが、空腹には勝てないだろうから食堂に向かっているに違いないと判断し、そこに向かった。
「ほむ、新メニューを先に食べたキメラは許せないです!」
食堂にいたアヤカと大慈は、餓鬼が金網ゲージから逃げないよう巨大ハリセンを持って監視中。
「逃げ出したら、ハリセンでおしおきニャ!」
「カレーの恨み、思い知らせてやる!」
巨大ハリセンはSES搭載ではないので攻撃はできないが、痛めつけることはできる。『具でかレー』を楽しみにしていた大慈は、巨大ハリセンで鬱憤を晴らす用意万端、お仕置きするきマンマンである。
連が食堂に来たが、食堂の入り口はバリケードで固められているので入れない。
「連です! 開けてくださいです!」
食堂のドアを叩き、中に入れてくれと頼む連。
バリケード作戦を考えた大慈は、仲間が入れないことをすっかり忘れていた様子。
「悪い、今、開ける!」
バリケードをどかし、連が入れる程度に開ける大慈は「悪い」と謝った。
「餓鬼ですが、生徒に危害を加えたようです。噛まれた女の子がいたです!」
なんてことしやがるんだ、と憤る大慈。
その隙をついて、残る餓鬼がどさくさに紛れ進入してきた。
それを発見した連は『隠密潜行』『先手必勝』を使い、巨大ハリセンで不意打ち。
その後、るなは覚醒して捕獲しよう考えたが、逃げられないようにサーベルで餓鬼の両手、両足を容赦なく貫いた。
「手が使えなくなれば、再度の脱走は難しいでしょう‥‥。手癖の悪い子には、きついお仕置きが必要ね♪ しつこいと嫌われるわよ? うふふ‥‥♪ お口もお仕置きして欲しいのかしら?」
覚醒することで、るなの性格はややサディスティックになっている。
おばちゃんの身の安全を確認した朔月も、餓鬼お仕置きに加わった。両手両足を貫かれたのでその痛みにもがいているが、朔月は容赦なく弓の柄を使って殴り倒した。
弱っている餓鬼は、朔月に噛み付く気力は既に無くしている。いや、抵抗すらできない。
「殴り倒されるか、歯を全部抜かれるか‥‥2つの選択肢のどっちかを選ばしせてやるよ♪ どっちがいい?」
るなと朔月の選択肢は、餓鬼にとっては『究極の選択』だった。
金網ゲージに入れられた餓鬼2匹はというと‥‥一旦出され、連、アヤカ、大慈、食堂のおばちゃん数名に巨大ハリセンでどつかれていた。
「俺のカレーの恨み、思い知れ!」
「食べ物の恨みは怖いのニャ!」
「ふふ、食材を食べたこと、それと、生徒さんを傷つけたことは許せませんです!」
『食材食べたお仕置きよ!!』
それぞれの主張を口にしながら、八つ当たりともいえる攻撃。食堂のおばちゃん達だが、見事にハモっている。ナイス!
フォース・フィールドが張られているのでダメージは無効だが、集団で襲われる恐怖に餓鬼2匹は怯えた。
「朔月ちゃん、弓でこいつらを殴ってほしいニャ」
「任せとけ!」
朔月の長弓「黒蝶」でのどつき攻撃を喰らうことで、餓鬼2匹気絶。
餓鬼捕獲作戦:成功!
「皆〜ありがとう〜。私は〜これを研究所に持っていくから〜。『具でかレー』は〜今、食堂のおばちゃん達が腕によりをかけて作っているから楽しみにしててね〜」
そう言うと、盟子がピクピクしている餓鬼3匹が入った金網ゲージを持って研究室に向かった。なお、志願した理由は永一に会いたいからである。
●具でかレーを召し上がれ♪
カレーだが、具が大きいため煮込むのに時間がかかったが、何とか完成した。
「皆〜『具でかレー』ができたわよ〜。キメラ捕獲のお礼よ〜遠慮なく食べてちょうだ〜い♪」
盟子の言葉に「待ってました!」と喜ぶ協力者達。
「その前に〜手を良く洗ってね〜」
手を荒い終えた協力者達は、具でかレーを早速試食することに。
『いただきまーす!』
パクッ。さあ、お味はいかが?
「美味しいニャ〜☆ 具もお肉も大きいのが嬉しいニャ〜☆」
大喜びのアヤカ。
「一般聴講生ですが、新メニューを頂いても宜しかったですか?」
遠慮がちにるなが盟子に訊ねる。
「いいわよ〜。食堂のメニューは〜生徒さんも聴講生さん、教師の皆さんに召し上がってもらいために作っているのよ〜」
「それでは、いただきます」
一口食べたるなは、一瞬、微笑んだ。
「具デカとは、これ、美味しいですね♪ 稗田さんが考案したんですか?」
「これを考案したのは、生徒さん達よ〜。喜んで貰えて嬉しいわ〜♪」
作った料理を美味しく食べてもらうこと。これが、盟子の喜びだった。
「んじゃ、俺も早速‥‥」
一口食べた朔月は「美味い! これ、いけるよ!」と満足のご様子。
「ほむ、美味しいのです♪」
連も満足の様子だった。
協力者の中でも、特に喜んだのは大慈だった。
「カレーっ! カレーっ! ご飯にたっぷりルーをかけるのがオツなんだよな〜。ルーはかかっていないご飯の上には、福神漬けとらっきょうが半々の割合で山盛りっ」
盛り付けは各自の自由としたので、大慈の盛り付けは普通の数倍あった。
「おっしゃ〜! いっただっきま〜すっ!」
自分が考案した『具でかレー』を一口ずつ堪能する大慈。
「うんっ! おばちゃん、美味いよっ! 超最高っ!」
カレーを貪りながら、左手でサムズアップしている大慈は大満足。
その後、お替り希望者は各自でよそい食した。
「良い匂いがしますね。稗田さんのお言葉に甘え、ご馳走になりにきました」
「待ってたわよ〜ヨン君♪」
永一を席につかせ、盟子が彼の分の『具でかレー』を用意した。
「いただきます」
永一の反応は‥‥?
「美味しいですね。欲を言うなら、具はもう少し柔らかいほうが良いのではないでしょうか?」
「ごめんなさ〜い。急いで作ったから〜」
食堂には、カレーを食した協力者達の楽しそうな声が響いた。
●後片付け
試食後は、協力者達も協力して食器の後片付け。
「皆のおかげで、早く片付いたわ〜。ありがとう〜。今日はもう遅いから、ゆっくりお休みなさい〜」
ご馳走様でした、と盟子と食堂のおばちゃん達に挨拶してから撤収する協力者達だったが、盟子が大慈を引き止めた。
「何? おばちゃん」
「大慈くんのおかげで〜『具でかレー』の評判は良かったわ〜。これ、少ないけど〜」
盟子が大慈に渡したのは、茶封筒だった。
「アイデア料よ〜。それで〜『具でかレー』をたくさん食べに来てね〜」
ありがと、おばちゃん! と例を言うと、大慈も食堂を去って行った。
翌日、めでたく『具でかレー』が新メニューに加わった。