タイトル:【学園祭】屋台勝負!マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/02 03:26

●オープニング本文


 カンパネラ学園学園祭一ヶ月前。
 各クラス、各部は催し物を何にしようか考えていた。
 生徒だけでなく、各部顧問教師や食堂のおばちゃん達も悩んでいた。

 そんな中、食堂ではあるひとつの提案が可決された。
「みなさ〜ん、食堂では〜、生徒さん達による『屋台儲け勝負』をすることに決めました〜! 勝負判定は〜お客さんが多い屋台が勝ち、ということだけで〜す!」
 提案者である稗田・盟子の一声に「賛成!」と声を揃えて可決する食堂のおばちゃん達。
「決まりね〜。それじゃ〜参加する生徒さん達を募集して〜、料理の指導をしましょう〜。生徒さん達にも〜美味しいものを作っていただきたいですからね〜」
 美味しいものは皆で楽しくいただく。これが食堂のおばちゃん、稗田・盟子のモットーだった。

●食堂主催『屋台儲け勝負』参加者募集!
 参加資格は生徒、聴講生一切問わず。
 勝負前日まで、メニューの作り方を食堂のおばちゃん達が指導します。
 1人2組で参加すること。男女、友人等、組み合わせは問わず。
 料理は軽食、デザート類等、屋台で作れるものであれば何でも良し。
 仮装は許可する。

 食堂のおばちゃん達が企画したこの催し物に参加してみませんか?

●参加者一覧

那智・武流(ga5350
28歳・♂・EL
志羽・翔流(ga8872
28歳・♂・DF
岩崎朋(gb1861
17歳・♀・HD
都築俊哉(gb1948
17歳・♂・HD

●リプレイ本文

●学園祭数日前
 那智・武流(ga5350)は、友人の志羽・翔流(ga8872)とちょっとした揉め事でケンカに。
 その理由は、ラスト・ホープにあるお好み焼き店での出来事。
 彼らは、お好み焼き4人前と焼きそば2人前をわけて食べた。
 武流は家事で手馴れている、翔流は大衆食堂の調理師だけありお好み焼きは上手く焼けたが、その次の焼きそばで問題発生!
「志羽、ソース薄くね?」
「そんなことない。ソースたっーぷしだぜ? これ以上足したら濃すぎだ」
 翔流のその言葉に「薄い!」と武流は反論!
 その後2人は険悪ムードになり、割り勘で支払いするまで互いを無視。
 店を出た後、高校生くらいの少女が店の入り口にチラシを貼り付けたのを目撃。
「何々‥‥カンパネラ学園祭? 屋台出品者募集中?」
 それを見て、翔流はこれでさっきのケリを着けようと言い出し、武流はそれを承知した。
『どっちの売り上げが多いか勝負だ!!』
 この台詞だけは、仲が良い頃のようにハモっていた。

 その翌日のカンパネラ学園掲示板前。
 岩崎朋(gb1861)と都築俊哉(gb1948)の2人は仲良く『屋台出品者募集中』のお知らせを見ていた。
「一緒に屋台やらない? やれることは限られるけど、できることはやるつもりだから〜。トシ、あんたも手伝うのよ?」
「するのは構わないが、何をするんだ?」
 そうね〜、と考え込んだ朋は、材料とか仕込みとか考えると簡単にできる物がいいという結論に達したので『中華料理』に決めた。
「中華がいいかしら〜? 唐揚げとか、肉まんとか、春巻きとか‥‥。衣装は‥‥やっぱりあたしはチャイナドレスかしらね〜☆ トシの方はカンフースーツね」
「中華か‥‥。『火の芸術』と言われているようだが、さすがに屋台ではそこまでは無理だし、所詮は学生が作る代物だしな。俺の役割は、力仕事と火の前での調理になるだろう」
「じゃ、中華にけって〜い♪」
 俊哉が「唐揚げは、数回に分けて余熱などを考えながら揚げるとジューシーになる」と聞いたことがあると言ったので朋は「それやってみよう〜!」と大張り切り。

●参加者構成
 学園祭2日前。
 聴講生の武流と翔流、生徒の朋と俊哉の4人は食堂でおばちゃん達主催の調理講習に参加。
「武流く〜ん、職業衣装披露会の時はカッコ良かったわよ〜。屋台勝負は、お友達と一緒に参加〜?」
 衣装披露会の司会は稗田・盟子(gz0150)だったので、その時参加していた武流の顔を覚えていた。
「俺1人で参加だ。本職料理人と一緒にできるかっての!」
「おまえに言われたかねぇよ!!」
 今にもケンカしそうな2人だったが、盟子は「まあまあ〜」と宥めた。
「とにかく! 俺だって料理はできるんだぜ?」
 参加するからには武流の料理の腕はそれなりだろう。
 まだケンカ中の翔流と武流は、自分達が調理するからおばちゃん達に手伝って欲しいと要望。
「朋ちゃんと俊哉くんは〜、食堂の新メニュー提案以来ね〜。2人は一緒に参加でいいのね〜?」
 もちろん! と元気に答える朋。
「それじゃ〜武流くんとお友達の料理人くんは〜、食堂のおばちゃんと一緒ね〜」
 武流のパートナーはパンチパーマのおばちゃん、翔流のパートナーは、眼鏡のおばちゃんとなった。
 2人はパートナーとなったおばちゃん達と、朋と俊哉は、盟子とメニューの話し合いをした後、調理講習を受けることに。

●何を作る?
「きみは何を作る気?」
 パンチパーマのおばちゃんは、武流が「肉野菜炒め!」と言ったのを聞いて唖然。
「肉野菜炒め!? そういうのお客様にお出しするの!?」
「駄目?」
「今夜のおかずじゃないんだから、お好み焼きか焼きそばにしなさい!」
 何でケンカ原因メニューが出てくるんだよ‥‥と肩を竦める武流だったが、良く考えると、発端は味付けが原因だったことを思い出した。
「焼きそばにす‥‥いえ、し、します。ご指導、よろしくお願いします!」
 普段敬語を使わない武流だが、美味い焼きそば作りのためだと敬語を使い挨拶。
「美味しい焼きそばの作り方教えてください!」
 本職料理人の腕とはいかなくとも、美味しい、と言ってもらえる焼きそばを作りたいという熱意に「いい根性ね、頑張りましょう!」と武流の手を握り締め、感涙するパンチパーマの食堂のおばちゃん。

「食堂のおば‥‥もとい、お姉さん、よろしくお願いします」
 翔流も武流同様、普段使わない敬語で挨拶。
 おばちゃんパワーというものを職場で知っているので、機嫌を取る方法を自然と会得しているようで。
 それが良かったのか、眼鏡の食堂のおばちゃんは「若く見える?」と喜んだ。
「俺が作りたいのは『鍋』なんですけど。石狩鍋、鴨鍋、キムチ鍋、水炊きの4種類なんですが‥‥いかがでしょうか?」
「今の時期にはちょうどいいメニューね。作るのはいいけど、仕込みは大変よ」
「わかってます。だから、仕込みは前日のうちに行います。食堂も使用するでしょうから、屋台で作りますんで。仕込みはともかく、この時期で野宿は辛いんで稗田さんに寮の休憩所かどっかで寝泊りできるようお願いしてくれませんか?」
 わかったわ、と交渉OKしてくれた眼鏡の食堂のおばちゃんが一瞬女神に見えた‥‥ような気がした翔流だった。

「朋ちゃんと俊哉くんは〜何を作るのかしら〜?」
 2人の調理指導は、盟子が担当。
「あたし達は、中華屋台にしようと思ってるの。ね、トシ?」
「ああ」
 中華は〜けっこうハードよ〜、と心配する盟子だったが、メニュー考案の時に2人の料理の腕前を拝見したので「この2人なら大丈夫かも〜」と思った。
「中華料理は火を使ったりする作業だから、調理はトシに任せて、あたしは仕込みと販売の方かしらね? 客寄せもしなくちゃ行けないしね〜」
 客寄せも、屋台勝負の勝敗を握るカギとなる。味が良くても、肝心の客が来なければ話にならない。
「前日までに仕込みをして、後は焼くか蒸すか揚げるかだけにすれば大丈夫にすればいいかな?」
 朋の疑問に、そのほうがいいわね〜とアドバイスする盟子。
「メイン料理は、トシ提案の唐揚げ。とりあえず‥‥揚げた後に竹串に刺して販売するのがいいかもね〜」
 食べやすい、手が汚れないという長所があるものの、一番最初に刺した唐揚げが食べにくいという欠点があるが、朋の細やかな気遣いに、盟子は客のことを考えていると感心。
「唐揚げは適当な大きさのもも肉に日本酒、みりん、しょう油、すりおろしショウガ、塩、コショウ、すりおろしたニンニク等をを混ぜた物に付けて‥‥って感じかしらね?」
「そうだな。唐揚げ作りは任せてくれ」
 唐揚げの他に、肉まんも作ることに。
 生地にホットケーキミックスを使うと簡単と聞いたので、それを一度試してみたいらしい。
「中身は挽肉と椎茸とたけのこかな?」
「それが一般的な材料ね〜。他に何を作るの〜?」
 春巻きも作ります! と元気良く答える朋を見て「それも俺が作るのか‥‥」と溜息をつく俊哉。
「春巻きは〜包んだ物を冷凍にしておいて当日揚げたほうがいいかしらね〜?」
「そうだな。そのほうが早くできる」

●調理講習・武流編
 野菜の切り方は、日頃から家事全般をこなしているだけあって上手に切れている。
「材料の下ごしらえは手際いいわね。それで、何焼きそばを作るの? 焼きそばと言ってもソースだけじゃなく、塩焼きそば、五目あんかけ焼きそば、かた焼きそばといろいろよ」
 焼きそば=ソース味、という認識しかない武流は『ソース焼きそば』を作る気でいたが、塩も捨てがたいと考えた。
「ソースと塩、両方できませんかね? 鉄板を2つに分ければ、味が混ざらないと思うんですが」
「1人で2種類作れる?」
「‥‥無理です。協力してください」
 頭をペコペコ下げ、パンチパーマの食堂のおばちゃんに協力を求めた。
「わかったわ。あたしも学園祭に来るお客さん達に美味しい焼きそば食べてもらいたいからね」
 その後、おばちゃんによる徹底した指導が行われた。
「ソースも塩も味が濃い! 最初から濃いめにしない! 最初は薄めで、徐々に味付けするのが基本よ!」
「はい、師匠!」
 いつの間にか『師弟関係』になってしまったんでしょう?

●調理講習・翔流編
 本職料理人とあって、材料の準備はとても手際が良い。大根は煮崩れしないよう面取りし、ニンジンは花型に切っている。
「料理は味もだけど、見た目も大事なんだよな」
「さすがね。材料の準備は言うことなし。スープだけど、手作りなのかしら?」
「モチロン!」
 石狩鍋は味噌味、鴨鍋はしょうゆベースの翔流アレンジ。
「キムチ鍋のみ、スーパーで売ってるものに頼るけどな。水炊きは、昆布とかつおだしにポンズを加え薄味に」
 眼鏡の食堂のおばちゃんは、翔流があらかじめ作ってきた鴨鍋用だしを味見。
「美味しい! これならいけるわね」
 指導なし! ということで、この組が当日の打ち合わせのみで終了。

●調理講習・朋&俊哉組
「メニューは揚げ物と蒸し物だから、揚げ物用お鍋とせいろが必要ね〜」
 その通りよ〜、と感心する盟子。
 唐揚げと春巻きは揚げ物、肉まんは蒸して調理する。蒸すのは時間がかかるのが欠点だが、屋台勝負開催前に蒸しておけば問題ない。
「朋、時折調理を変わってくれ」
「わかってるって〜」
 俊哉は、餃子とシューマイもと考えたが、これはできればと考えていたのでやめた。
「鶏ガラと醤油で、簡単なスープが作れるな‥‥。これも追加していいか?」
 盟子のOKが出たので、鶏ガラスープも追加。
 メニューが決まったところで、2人は盟子の調理指導を受けることに。
 鶏ガラスープは、俊哉がじっくり味を研究しながら煮込み、唐揚げは、油が朋に跳ねないよう注意しながら調理。
 朋は、肉まんの蒸し方、春巻きの揚げ方を盟子に教わった。
「春巻きが最初はじっくり揚げて、最後に一気に温度を上げて揚げるっと〜。蒸し時間は〜‥‥」
 メモを取りつつ、当日が楽しみでしかたがない朋と、彼女の手助けがしたいと願う俊哉だった。

 それぞれの調理講習が終わったので、残るは前日に仕込みをするのみに。
 翔流はスープの仕込みがあるので、泊り込みで調理をすることに。
「さ、さぶ〜!」
 寒風吹く中、客の笑顔のため孤軍奮闘する翔流、頑張れ!」

●屋台勝負開催!
 学園祭当日は、雲ひとつ無い晴天の下で行われることに。
「ん〜、絶好の勝負日和だ。志羽の奴には負けないぜ!」
 打倒・翔流に燃え焼きそばを焼き始める武流だったが、服装は普段着とも言える神職姿の上にパンチパーマのおばちゃんから借りた白いエプロンと三角巾を着用。
「よっしゃ! おばちゃんの特訓の成果見せてやる! 焼きそばは、手際良く焼くのがコツ! ソースの香ばしい匂いを漂わせるのもコツ! 呼び込みもあればなお良し!」
 そういうこともあり、武流は焼きそばを焼きながら大声で呼び込みもしている。
「さーさー寄ってらっしゃいみてらっしゃい! 美味い焼きそばだよー!」
 焼くのは武流の仕事で、パンチパーマのおばちゃんは盛り付け担当。
 ソースの良い匂いに誘われたのか、客が何人か来て焼きそばを購入。
「毎度!」
 焼きそばを買った客だが、食べた後「美味しい!」と喜んでいた。

 翔流の屋台からは、湯気と鍋出汁の良い匂いが漂っている。
「さむ〜い時期には、体があったまる鍋が一番! 味噌味石狩、しょうゆ味鴨鍋、ピリ辛キムチ鍋、ポン酢水炊きがあるよ〜! どれでも好きなの頼んでくれい!」
 足りなくなっても大丈夫なよう、仕込みは万端。眼鏡のおばちゃんばかりに配膳させてはいけないと、鍋の様子を見ながら翔流も手伝っている。
 寒い時期なので、温かいものが欲しいという客は食べたいと思った鍋を注文して買い求めた。
 晴天の下で食べる鍋は、冷えた客の身体を暖めてくれるだろう。

 朋と俊哉は、2人で協力して屋台を盛り上げている。
「美味しい中華はいかがですか〜!」
 寒さを堪え、チャイナドレスに身を包み呼び込みをする。
 俊哉はカンフースーツに身を包み、調理に専念している。
 朋のチャイナドレスに釣られてか、男性客数人がやって来て「唐揚げと肉まんちょうだい」と彼女に頼んだ。
「ありがとうございま〜す☆」
「できたてホヤホヤだ。熱いから注意して食べろよ」
 そう言って、俊哉は男性客達に唐揚げと肉まんを詰めた紙袋を手渡した。
「この調子で、一生懸命売るわよ〜☆ トシは調理お願いね〜☆」
 火前での調理なので、俊哉は汗だくだった。彼が忙しなく調理をしている間は、朋も調理に回る。
 唐揚げを揚げている最中、朋の手に跳ねた油が飛んだ。
「あつっ!」
「大丈夫か? すぐ水で冷やせ!」
 見ちゃいられない‥‥と、俊哉は朋の手に水が入った2リットルタンクを持つと急いでかけた。
「ごめん‥‥」
「気にするな。頑張ろう」
 十分水で手を冷やした後、朋は汚名返上といわんばかりに呼び込みに励み、俊哉は調理に専念。
 2人で仕込んだ唐揚げ、肉まん、春巻きは予想以上に売れた。

 どの屋台も忙しくなったのは、昼食の時間帯だった。
 この時点での売り上げトップは、朋&俊哉、続いて武流の焼きそば、翔流の鍋。
「くぁ〜! いっそがしいぜ〜!」
 愚痴りながらも、嬉しそうに焼きそばを作る武流。

「ありがとうございましたー。水炊き、お待たせー!」
 翔流も、配膳に大忙し。種類が多い分、忙しさ倍増!

「毎度〜☆」
 朋&俊哉の屋台は、客が他の屋台より多い分より大忙し!

●勝敗の結果
 夕方、学園祭終了と同時に屋台勝負も終了。
 各々後片付けをした後、食堂で売り上げ金を数え始めた。
 売れ残った料理は、夕飯として食べることに。それでも余ったらお持ち帰り、ということに。

「それでは〜結果を発表しま〜す♪」
 盟子が取り出したメモには、勝敗結果と売り上げ金合計が書かれている。
「屋台勝負の勝者は〜‥‥岩崎朋ちゃんと都築俊哉くんの中華で〜す♪」
 3種類の料理だが、残りわずか。売り上げ金は武流、翔流の2人を大きく突き放していた。
「その次は〜‥‥那智・武流くんと志羽・翔流く〜ん♪ 2人だけど〜メニューの売れ具合も売り上げ金も〜偶然にも同数だったのよ〜」
 そういう偶然が起こるとは‥‥。
「そ、そんなぁ〜! とほほ‥‥」
「‥‥‥」
 がっくりと項垂れる武流と、何も言えない翔流だった。

「皆さ〜ん、今日は本当にお疲れ様〜。売り上げ金は〜学園を通じてボランティア団体
に寄付しま〜す。皆のおかげで〜多くの寄付金が集まったわ〜」
 屋台勝負の参加者に「お疲れ様」と拍手を送るのは、食堂のおばちゃん達。
 夕飯は全屋台の残り物だったが、参加者も食堂のおばちゃんも関係なく料理に舌鼓を打ち、満腹になるまで食べた。
「料理は全部、持ち帰りとしますか」
 タッパーを用意し、各料理を楽しそうに詰める翔流。ちゃっかりしてるね。

 こうして、屋台勝負は幕を閉じた。