タイトル:AU−KV演習仮想訓練マスター:竹科真史

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/12 04:57

●オープニング本文


 メトロポリタンXの陥落から逃れ、人類最後の拠点となった巨大な浮遊島『ラスト・ホープ』。
 UPC本部の重要機関、研究所等、一般人が立ち入ることが出来ない場所もあるが、映画館、広場、ショッピングモール等の娯楽施設も存在している。
 巨大規模な島なので、立ち入り禁止区域を除くすべての場所を回るのは一日では無理だろう。

 その中に、大人の足でもすべて見回るのは骨が折れると言われている大型ショッピングモールがある。
 UPC軍中尉、ソウジ・グンベも言ったことがあるが「ぜーんぶ見るのは骨が折れたぜ」と言うほどだ。
 これをシミュレーションのネタとして使えないかと、ソウジは教官であるアプサラス・マーヤーに相談した。
「大規模ショッピングモールの迷子捜しシミュレーションですか‥‥。ラスト・ホープは管轄外なので、シミュレーションで行うのが賢明でしょう。戦闘系シミュレーションだけでなく、人々の役に立つ内容も悪くはありませんね。あなたにしては良い案です」
 俺にしては良い案は余計だ! と心の中で突っ込むソウジだった。

 こうして、ソウジ監修、アプサラス作成によるシミュレーションプログラムが完成した。

 ソウジとアプサラスは、シミュレーション参加者に内容の説明を始めた。
「シミュレーションに参加するキミ達には、ラスト・ホープにあるやたら広〜いショッピングモールで迷子になっている子供達を捜し出し、迷子センターに送り届けてもらいたい。シミュレーションだが、人物には実際に触れられるようアプサラス教官がプログラミング作成してくれた」
 怪しい人と勘違いされ、子供が泣き出したらどうするんですか? と質問する生徒には
「ヒーローショーの最中に抜け出し、キミを助けに来たと誤魔化せ!」
 とあっけらかんに回答。それでも考案者か、ソウジ。
「ソウジ中尉が言うように、皆様にはAU−KVを実際に装着していただき『迷子捜し』をしていただきます。『竜の翼』の使用は許可します。そうしないと、迅速に迷子センターに辿り着けませんので」
 迷子の保護が優先です、と付け加えるアプサラス。

「あ、言い忘れ。キミ達が捜す箇所はココな」

●ソウジ指定の迷子探索場所
 屋上広場(屋上とはいえ、やたら広い)
 玩具店(多種多様な玩具があるため広いが、通路はやや狭い)
 ゲームコーナー(大規模だが、混雑しているので要注意)
 こども広場(店内の奥にあるので、辿り着くのに一苦労)

●参加者一覧

チェスター・ハインツ(gb1950
17歳・♂・HD
高岡・みなと(gb2800
16歳・♀・DG
黒羽・ベルナール(gb2862
15歳・♂・DG
基町・走太郎(gb3903
16歳・♂・DG
ファーリア・黒金(gb4059
16歳・♀・DG
空木崎・ひふみ(gb4102
15歳・♀・DG

●リプレイ本文

●事前準備
 迷子捜しシミュレーション開始前日。
 黒羽・ベルナール(gb2862)は、皆で協力して迷子を捜し出せるように舞台となるラスト・ホープにある大規模ショッピングモールの入り口にある案内図を参加人数分持っていった。
「これで、館内に何があるかがバッチリ! だな。明日は皆で頑張って迷子捜しするぞ〜!」
 ベルナールは、目的の物を持ち帰ると、店内に入らずに学園に帰っていった。
 本人曰く、「探検したら、俺、迷子になりそうだから」。

 翌日、ベルナールは参加者達に昨日入手した店内案内図を手渡した。
「ありがとうございます。新AU−KV「ミカエル」のテストにも丁度いいですし、頑張っていきますよ」
 テストを兼ねての参加だが、迷子の探索の際の行動を真剣に考えているチェスター・ハインツ(gb1950)。
「アプサラス教官、いろんなシミュレーション考案するね。シミュレーションは参加したことあるけど、こういうのは無い、というか、初めてなんじゃないかなぁ? ま、とにかく迷子をお助けすべく頑張るよ」
 高岡・みなと(gb2800)は、アプサラスの想像力に感心したが、これを考案者が実体験者であるUPC軍中尉、ソウジ・グンベ(gz0017)であることを知らない。
「ひっさびさの依頼〜♪ って、迷子捜しシミュレーションだぁ? こんなのも傭兵の仕事なのかよ!?」
「あたしも同感。まぁ、人助けになるんだから、迷子捜しも依頼にはなるんだろうけど‥‥。シミュレーションとはいえ、これが初依頼だから頑張る!」
 こういうのもあるだな、とあっさり納得した基町・走太郎(gb3903)と空木崎・ひふみ(gb4102)。
「初めてのお仕事、頑張りまっす♪ 性能テストということなので、自分なりにAU−KVを扱ってみようと思います。AU−KV装着状態では、きっと一般人の対応、特に接触とかに十分に気をつけないと大変なことになると思われますので、行動・行為・挙動は最新の注意を払います。皆さん、宜しくお願いします」
 シミュレーションとはいえ、これが初依頼のファーリア・黒金(gb4059)は迷子探索をしながら自己分析をするようだ。

●打ち合わせ
「全員揃ったな、ミーティング始めるぞー」
 ソウジがシミュレーションルームに入室すると、彼のもとに集うドラグーン達。
「これから、シミュレーション舞台の大型ショッピングモールの見取り図を配る」
 あ、それならいいです、と言うベルナール。
「僕が事前に、皆に店の案内図を手渡したんで大丈夫です!」
「そ、そうか。キミは準備いいな‥‥」
 俺の立場って‥‥と苦笑いするソウジは、5分間、全員で話し合うようにと伝達。
 話し合いは、案内図を持ってきたベルナール、これまでのシミュレーションで冷静な分析力で皆をまとめたチェスターの2人を中心に行われた。
「ショッピングモールの迷子の人数も多そうですし、全員バラけて探索したほうがいいでしょう。僕はこども広場に向かいます。随分と奥のほうにあるみたいです。まず皆がすべきことは、案内図を確認してルートをしっかりと暗記することです」
 そうしないと、自分達が迷子になってしまいますからねと苦笑するチェスター。
「じゃあ、ボクは玩具店で迷子捜しするね。子供はおもちゃが大好きだから、夢中でおもちゃを見ている間に親とはぐれちゃうケースが多いんだよね。経験者は語る、ってことで‥‥」
 幼い頃、デパートの玩具売り場でおもちゃに見蕩れていたのはいいが、両親と兄に置いていかれて迷子になったことがある過去を持つみなと。
「俺も、みなとさんみたいに昔迷子になったことある。そんな時って、すごい不安でしょうがなかったって思い出がしかないね。姉さんとか、兄さんが必死になって捜してくれたっけなぁ〜って。迷子になった妹を探した時は、すっごく大変だったなぁ〜って思い出もあるし」
「ベルナールくんも迷子になったことあるんだ。ボクの時は、アナウンスで親を呼び出してもなーんの反応もなかったから、迷子センター行きだったよ。だから、今回の依頼は他人事だと思えないよ」
 だからこそ、皆が早く親を見つけられるようサポートして、迷子を安心させてあげたいと思うベルナールだった。
「チェスターさんの『ルートをしっかり覚える』って案は賛成! あたしまで迷子になっちゃいそうだよ。案内図見ただけでも、バカでかいショッピングモールだってわかるもん。誰? こんなの作ったの? まぁ、それはともかく‥‥あたしはゲームコーナーを捜すね」
 15にもなって迷子になるのは、すっごく恥ずかしいからね! と照れるひふみ。
「最初に言っておく。俺はガキは苦手だ。だから、泣こうが喚こうが、強引に迷子センターに連れていく!」
 幼い子供=騒がしいという解釈なのか、走太郎はキッパリそう言った。
「探索場所は屋上にするぜ。親が一緒だから迷子はいないだろう‥‥と思ったら大間違い! いるんだな、これが」
「きみも経験者なの?」
 みなとの質問に「あくまでも予測だ!」と反論する走太郎だったが、ムキになっているので経験者であることは間違いない。
「私もひふみさん同様、探索する場所はゲームコーナーです。AU−KV装着して入場すると、迷子以外の子供にも囲まれてしまいそうですね。ですが、慌てず、冷静に行動します」
 ファーリアが言うように、AU−KVを珍しがる子供が群がって来そうだ。

●ソウジの解説
「話し合いが終わったな? んじゃ、シミュレーションの説明するぞー。迷子だが、一発でわかるようにしてある。頭の上に、丸の中に泣き顔が描かれている『迷子マーク』がついている子供がそうだ。ショッピングモール内にいる大人の中に、迷子たちの親がいる。父親の頭の上には『メガネマーク』、母親の頭の上には『ハートマーク』がついているからすぐわかる。なお、各ドラグーンによってマークの色が違うので間違えることはないんで安心するように」
 マークの色は、チェスターは緑色、みなとは水色、ベルナールはオレンジ色、走太郎は青色、ファーリアは黄色、ひふみは赤色となっている。
「説明は以上だ、質問あったら今のうちだぞー」
 ソウジはドラグーン達に尋ねるが、返事がないのでシミュレーションを開始することに。
「んじゃ、さっそく開始な。皆、AU−KVを装着してくれ」
 ソウジはシミュレーション装置室に移動すると、シミュレーションルームをショッピングモール画面に切り替えた。
「シミュレーション、始めるぞー。頑張って迷子お助けしろよー」
 お気楽ソウジの言葉で、迷子捜しシミュレーションは始まった。

●こども広場
チェスターは、こども広場に辿り着くまでは『竜の翼』を使用して移動。
「進行方向に人がいる場合は、突っ込んで怪我をさせてしまうかもしれませんね。そうならないよう常に状況を確認し、急ぎつつ冷静に移動していきましょう」
 常に冷静さと分析を忘れないチェスターが向かう場所は、ショッピングモールの置くにあるうえ、客が少ないのでその心配は少なくて済んだ。
 こども広場に着くと「迷子の子はいませんかー?」と声をあげて捜している。
 何度も往復するのは時間がかかるので、できれば1度にここにいる迷子全員を見つけたいと思っていたところ、緑の迷子マークがついた双子らしき男の子と女の子を発見。
 2人が泣いているので、チェスターは「大丈夫、僕は怪しい人じゃないよ。君達をお母さん達のいるところに連れて行ってあげるよ」と言って宥めた。
 それでも双子は泣いている。
「男の子が、そんなに簡単に泣いてちゃいけないな」
 と言いつつ頭を撫で、女の子にはこねこのぬいぐるみを見せて宥めた。
 しばらくすると落ち着いたのか、2人は泣き止んだので迷子センターに連れて行くことに。
「こちらチェスター、こども広場で迷子2名保護。これから迷子センターに連れて行きます」
「了解、気をつけてねー」
 それぞれの場所を捜しているベルナールに無線連絡した後、チェスターは男の子と女の子を抱えてAU−KVで抱えて移動した。『竜の翼』のような高速移動スキルは、子供の体に負担がかかりそうだという理由で使用しなかった。

 チェスターの移動中、ベルナールも迷子保護。おかあさーん! と大声で泣いているので、宥めながら迷子センターに連れて行った。
 その途中、オレンジ色のハートマークがついた女性を発見したので「この子のお母さんですか?」と訊ねると、迷子は女性に抱きついた。
「あ、ハートマークがついている女性は『お母さん』でしたっけ」
 てへ、と舌を出して照れるベルナールに、迷子は手を振りながらお礼を言っていた。

●玩具店
 玩具店担当はみなと。
 自らの体験を思い出しながら、人混みに気をつけながら移動。混雑している状態では『竜の翼』は使えない。
 最初に発見した迷子は、ヒーローフィギュアに夢中になっている男の子だった。
「きみ、迷子?」とメットを取って聞いてみるが、男の子は無反応。頭に『迷子マーク』がついているので、迷子であることに変わりない。
「うるさいなぁ。あ、ひょっとして新しいヒーロー?」
 男の子は、AU−KVを装着したみなとを新ヒーローと間違えたようだ。
「ま、まぁ、そんなもんかな。ボクはシルバードラグン!」と誤魔化した。
「お父さんかお母さんはどうしたの?」
「知らない。というか、はぐれちゃった」
 今時の迷子は、あっけらかんとこう言うんだ‥‥と呆れたみなとは、男の子を抱えると『竜の翼』を発動させ迷子センターに移動。
「どいてー!」
 周囲の人々を避けさせるため、そう叫びながらの移動だったが。
 再び玩具店に戻ると、今度はぬいぐるみに夢中なポニテの女の子の迷子を発見。
「きみも迷子?」
「‥‥みたい」
 みたいって、自覚ないの!? と驚くみなと。
 とりあえず、この子も迷子センターに連れて行こうとしたが「ぬいぐるみ買って!」といきなりねだられた。
「ボク、お金持ってないよ」
 それでも「買って!」と駄々をこねるので、強引、問答無用で女の子を抱えて『竜の翼』で迷子センター直行!
 2人の迷子の親だが、移動中に発見できず。
「みなとだよ、玩具店で迷子2人発見したから迷子センターに連れて行ったよ」
「ご苦労さーん! 俺も今、迷子センターに迷子1人を連れてったとこなんだ」
 ベルナールと情報交換したみなとは、別の場所に向かった。

●ゲームコーナー
 ゲームコーナー担当は、ファーリアとひふみ。
「狭くて、人がいっぱいだね‥‥」
「そうですね。AU−KVで入場すると、迷子以外の子供たちに囲まれるはずです。そうなった場合は、慌てず、冷静に行動しましょう」
 そう言ったファーリアのもとに、興味津々にAU−KVを見ている赤いシャツ、黄色いズボンを履いた男の子が近づいてきた。
「泣いてる子とか見かけませんでしたか?」
 首を横に振る男の子の頭に『迷子マーク』がついていたので、ファーリアはこの子が迷子ですか‥‥と少し困った顔をした。
 ひふみは、男の子の不安を和らげようとヘルメットを脱ぎ、優しく声をかけた。
「大丈夫、お姉ちゃん達がきみのパパかママに会わせてあげるからね」
 きょとんとした顔でひふみを見ている男の子の後ろに、赤い『メガネマーク』を頭につけた男性が近づいてきた。この子の父親だ。
 見つけてくれてありがとうございました、と丁寧にお礼を言うと、父親は男の子の手を繋ぎ、ゲームコーナーを去っていった。
 まだ迷子がいるはずと辺りを見回したひふみは、クレーンゲームの側にいる女の子の迷子を発見。
「ひふみさん、この子のご両親はいないようですね。私が迷子センターに連れて行きます」
「わかった、お願いね」
 ファーリアは、迷子センターに行く前に仲間に無線連絡。対応したのはベルナールだった。
「こちらファーリア、迷子発見。今から迷子センターに向かいます」
「了解っ!」
 女の子を片手で抱き、持ち上げる際は『卵』に触るかのように落ち着いて、そっと扱い『竜の翼』で迷子センターまで進路上の障害物に気をつけて移動した。
 抱えている迷子は、しっかり、かつ柔らかくガードしながらの移動だったので、慎重さを要したのは言うまでもない。

●屋上広場
 走太郎の迷子探索場所は屋上広場。
 家族連れが多いので親が子供を見張っていると思ったら‥‥隙をつき、親から離れて迷子になる子供は必ずといっていいほどいるのだ。
「やっぱりいたか‥‥」
 青い『迷子マーク』をつけた男の子が泣いているので「どうした?」と訊ねるが、無反応なので咄嗟にヒーローの物真似をして気を惹くことにした。
「私は、きみをお父さんかお母さんに会わせるためにやってきたメタルヒーローだ!」
 ビシッ! とポージングして誤魔化したのが成功したのか、男の子は泣き止んだ。
 迷子センターに連れて行こうとしたら『メガネマーク』がついた男性が、男の子に近づいてきた。
「捜したんだぞ?」
 ごめん、と謝る男の子は父親に肩車されて屋上広場から去った。
 屋上は広いというものの、『竜の翼』を使用しなくて済む程度だった。
 次に発見したのは、着ぐるみパンダから離れない女の子の迷子。
『そこのきみ、この子を何とかしてくれ!』
 大振りなジェスチャーで、走太郎に助けを求める着ぐるみパンダ。
「しゃあねぇなぁ。お嬢ちゃん、パンダさんから離れるんだ」
「いやだぁー!」
 強引に引き剥がすわけにはいかないと判断した走太郎がとった行動は‥‥な、何と!
「おりゃあ!!」
 パンダの着ぐるみ+しがみついている迷子を抱えて『竜の翼』を発動‥‥させるはずだったが、重さに耐え切れず不可能に。
 しかたがないので、着ぐるみパンダを連行というかたちで迷子センターへ。
「こちら走太郎、女の子1人を迷子センターに連れてった。でかい荷物つきで‥‥」
 もう休ませてくれ〜! と迷子センターの床にへたり込む走太郎だった。

●迷子捜しの感想
「ご苦労さん。迷子捜し体験はどうだった? キミ達の先輩能力者は、実際のこのショッピングモールで迷子捜ししたんだぞ? スキル未使用で」
 そうですか‥‥と、ドラグーン達は疲れ果てた状態でソウジの話を聞いていた。
「迷子捜しって、骨が折れるもんだね‥‥」
「子供って、迷子になるのが仕事なの?」
「俺、ギブアップ!」
 特に疲れきっていたのは、ひふみ、みなと、走太郎の3人。
「僕達が今日経験したことは、良いトレーニングになったと思えばいいことです」
「そうそう。早く親を見つけて、安心させてやりたいもんな」
 充実した体験でしたと感想を述べるチェスターとベルナール。
「誤って、力を入れたら‥‥迷子が凄い事になりそうな気がしました。これは、怪我人を運ぶ時の訓練も兼ねているんですね?」
 そう解釈し、1人納得するファーリア。

 何はともあれ、迷子捜し、迷子センター預け、ご苦労様でした。