●リプレイ本文
●基地から戦場へ
「今度はテッポウウオですか‥‥バグアの方々は随分と地球の生物を勤勉に調べている様ですね〜」
住吉(
gc6879)による開口一番のコメントである。
「艦隊への襲撃はさせません。‥‥軍人さんには家族が待っているのでしょうし、安心して家に帰って頂きます」
ガーネット=クロウ(
gb1717)の言葉に、D・D(
gc0959)は一区切りついて弛緩していた気持ちを引き締め直す。
「そうだな‥‥まだ何も終わってはいない‥‥」
「せっかく生き残ったんですから、こんな所で死ぬわけにはいきません」
同意するマヘル・ハシバス(
gb3207)。
「キューブワームは水の中まで効果があるのですか? いえ、そうでなければこんな作戦は取らないですね‥‥」
資料に目を落としつつ、ガーネットが仲間達と対応を模索する。
「なかなかに厄介な状況ですね。敵を確実に補足するためにも、先にCWから排除しますか」
リュドレイク(
ga8720)の案に、マヘルも口を開く。
「空戦と同時に、水中用KVでキメラをひきつけましょう。私もそちらに参加します」
「空戦とか水中戦って良く分かれてる事が多いけど今回は共同なのかー。‥‥ボク、うまくできるかな」
経験が乏しい橘 咲夜(
gc1306)は不安を抱かずにはいられなかった。
予定通り、空戦担当と海戦担当にわかれ一二機のKVが出撃する。
飛行して現場へ向かうKVは六機。
「ふむふむ、いやはやコノ機体はなかなかに面白いね〜。重装甲なところが実にいいね〜」
元々興味があった機体のため、ドクター・ウェスト(
ga0241)は飛行中も計器のチェックを楽しんでいる。
「卸したてのオロチが間に合ったのは、運が良かったかな〜」
「数がわからないのは難点だけど、無限に沸いてくるわけじゃないだろう。出てくるだけ倒せばいいか」
そのように考えて、那月 ケイ(
gc4469)は割り切ったらしい。
「さてさて‥‥、打ち合わせ通りだと、この辺りでしょうか?」
ルティシア(
gc7178)が気にしたのは、海戦班六機との合流地点である。
それは、敵戦力への襲撃ポイントでもあった。
●空と海から
「この機体の初陣です。頑張って行きましょう」
ウェストと同じく篠崎 美影(
ga2512)の乗機もオロチで、新品という点でも一緒だった。
「海面のCWが邪魔をどかす為にも、テッポウウオを水面に上げない様にしないと」
「こちらはキメラの相手に専念、ですね」
共にリヴァイアサンに搭乗しながら、ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)と風月 明菜(
gb3685)が会話を交わす。
D・Dのパピルサグと、マヘルのビーストソウル改が、ソナーブイを放出して敵の位置把握に務めていた。
「初撃で少しだけでも敵を削る」
遠間からD・Dが「セドナ」を射出し、それを追うようにガーネットやユーリの魚雷がキメラへ襲いかかる。
交戦に突入することなく、ガーネットはアルバトロス改を潜行させる。
「ついて来てくれるかどうかは判りませんが、下を向かせる事が目的ですので」
キメラ達を空戦へ介入させないため、海戦班は深度を取って敵を引きつけようとする。
「特にリュー兄はグリフォンだし、多分着水するだろうから、あまり序盤で水面に上げるのは危険かな」
多分に私情を含むが、ユーリはリュドレイクの安全を優先する。
「フフフ。幾らなんでも、水の中では水鉄砲も弱まるでしょう?」
ガーネットが指摘したとおり、距離がある状況では、テッポウウオキメラの吐き出す水は脅威とは言い難かった。
「あなた達の相手はこっちです」
海面へ向かうキメラを見つけ、マヘルが魚雷を撃ち込んで挑発を狙う。
これに明菜も手を貸した。
「まずは時間稼ぎ、ですね」
明菜はスキルの温存を心がけ、敵の撃破よりも交戦継続を優先する。
距離を詰めてきたキメラの攻撃を、ユーリはアクティブアーマーで受け止めていた。
「今は耐えて、ひたすら引き付けて時間を稼ぐよ」
ソナーブイを介して逐一変わる戦況を、D・Dが空戦部隊へ伝達する。
「敵キメラの数は九体。CWの排除状況についても逐次教えてもらいたい」
「水中班が、うまくひきつけているようですね」
ルティシアの言葉に頷き、ケイのパラディンが空中からソナーブイを投下する。
「データリンク‥‥はできても、今のところはレーダーによる探知は難しいようですね」
リュドレイクに応じるように、咲夜が気勢を上げる。
「それなら、いまのうちにボク達がキューブワームを叩くっ!」
海戦に数分遅れで、空戦の火蓋も斬って落とされた。
「ミサイルだと妨害でうまく飛びそうにないですからね」
CWに向けて、咲夜のディアブロは滑腔砲やキャノンを多用していく。実際にミサイルより当たりやすいかというと疑問が残るようだったが、弾道を確かめながら、二度三度と発砲した。
「っつ‥‥これは、なかなかうっとおしいな‥‥」
ヒラヒラと回避するCWに眉をひそめるケイ。
こちらもミサイルは温存して、ライフルによる射撃を繰り返している。
「キメラは水中部隊に任せて、まずは目の前の敵に集中‥‥」
それが、彼等への最大の援護だと考え、撃ち出した弾丸をCWへ命中させる。
「高度と速度には注意して、海面へ突っ込まない様に気をつけないといけませんね〜」
独白しながら住吉はシュテルン・Gを降下させ、バルカン砲によって撃墜数を増やしていく。
彼女よりもさらに低い位置に、リュドレイクはいた。
ステップ・エアによってグリフォンを水面上に立たせた彼は、近距離からCWに向けて「ツングースカ」を発砲する。
僚機の活躍に負けじと、ウェスト機がCWめがけてミサイルをばらまいた。彼にしてみれば、ミサイルの温存はあまり意味がなかったからだ。
外れた銃弾の雨のみならず、残骸となったCWが海面に降り注ぐ。
「‥‥よし、これで全部か。あとはキメラだな」
CW十三機を撃破し終えると、すかさずケイの通信が水中へ向けて発せられた。
●空と海の間で
「迦具土の機能はどうかね〜」
オロチならではの変形着水機能を使って、ウェスト機が水中戦へ参戦する。
彼だけでなく、残りのメンバーも攻撃に加わりたかったが、現状では有効な攻撃手段は限られていた。
D・D達は下方から回り込むようにして、敵を海面上へ追い立てようとする。
これに抗戦するテッポウウオキメラ。
肉迫したキメラ達が爪やヒレを引っかけて、明菜やマヘルの機体を損傷させる。
水中班が仕事をこなしていたからこそ、キメラの目はこれまで通りに海中の敵に向けられいた。
「ここは、キメラが海上の僚機に反応するのを待ちましょう」
美影の提案を、住吉が請け負ってくれた。
敵の配置を見ながらD・Dが誘導すると、住吉のシュテルン・Gが撒き餌替わりに空対潜ミサイル「爆雷」を投下する。
「食いついてくださいね〜」
敵のいる深度よりも浅いところで、爆発が起こった。
海水を揺らして響き渡る爆発音。
餌をねだる鯉のごとく、テッポウウオキメラは海上目指して浮上していく。
「敵浮上タイミングを宜しくお願いします」
ルティシアの要望に応えて、ソナーブイを稼働させていたケイがカウントダウンを行う。
「いくよー、5、4、3、2、1」
「投下」
二度目の爆発が、何体もの敵を巻き込んでいた。
「なんだかあれを思い出しますね、こう海面から顔を出した敵を叩いていると‥‥そう、もぐら叩きゲームですね〜」
そんな風に例える住吉。
「やったかしら?」
ルティシアの確認に、水中から返されたのは否定の言葉だった。
そして、残存キメラ達による海対空水流攻撃であった。
再び、水中班が下方から攻撃を加え、上からと下からによる攻撃でサンドイッチにする。
システム・インヴィディアで強化したユーリの「エキドナ」は、その爆発でキメラの身体を海面上まで押し上げ、爆散した死体を海面にばらまいた。
「ウェストさん、包囲指示を願います」
ガーネットの求めに応じて、ウェストが水空両用撮影演算システムで敵影を捉える。
「よし、今だね!」
敵の回避を許さず、ガーネットやマヘルのガウスガンが撃ち込まれていく。
D・Dのパピルサグはブラストシザースで敵を押し上げ、海面上に追い立てようとする。
「入手してから日が浅いので、ろくに強化できていません」
そう嘆く美影は、味方の射線上や海面へ敵を追い込むという方針をとっていた。
彼女に追われて、至近距離に飛び込んできた敵をユーリの水中機槍斧「ベヒモス」が両断する。
「さて、次はこちらですね」
ガウスガンで射撃しつつ、明菜のリヴァイアサンも接近戦を挑んだ。システム・インヴィディアを稼働させて、ツインジャイロを叩きつける。攻撃は一体を葬り去り、次なる敵へ向けられた。
「横から失礼、合わせますね」
ガーネットのガウスガンが負傷したキメラにとどめを刺した。
自分の実力に不安の残る咲夜は、海面の異変に注視して奇襲への警戒を強めていた。
その甲斐か、運によるものか、波の動きに異変を感じ、キメラの出現直後に撃ち出された水鉄砲をなんとかかわした。
安堵する間もなく、咲夜は次の行動を検討する。
「空中でも注意を引けば水中班が楽になるよね」
キメラの鼻っ面目がけて、咲夜が多目的誘導弾を撃ち込んでいく。
「ボク、強くはないから、こういう所でがんばんないとね」
それは仲間に攻撃のチャンスを生んでくれる。
住吉のシュテルン・Gが海面めがけて急降下した。PRMシステム・改を作動させて命中率を高めたバルカンの一斉掃射を行った。
「水中部隊が海面付近までキメラを追い込んで、私達が撃破する‥‥まるで追い込み漁ですね〜」
再び住吉がたとえ話を口にしながら、シュテルンは敵の攻撃を許さずに、すかさず離脱する。
「まだ残っているのですか。‥‥消えなさい」
ルティシアのスカイセイバーが撃ち込むGPSh−30mm重機関砲は、多くの水柱を立てると同時に、キメラを穴だらけにしていた。
敵の数が減ったことで、空戦班のリュドレイクもグリフォンならではの攻撃を試みる。
防御面に自信がないという彼のために、ケイはシステム・ニーベルングを稼働させてアシストを行っている。
「これで少しは楽になるだろう」
リュドレイクは水中用機槍「ハイヴリス」を手に、水面下にいたテッポウウオキメラを串刺しにしてやった。
最後の一体が、仲間に追い立てられてこちらに向かってくる。
「このサイズの敵に接近戦はしたくないんですけどね」
マヘルはこぼしながらも、『インベイジョン』Bを稼働させて迎え撃つ。変形してのレーザークローによる攻撃は、カウンターとなってキメラの頭部を粉砕する。
●戦場から基地へ
研究に邁進する主の求めに応じて、オロチはキメラの死骸近くへと浮上した。
コックピットから身を乗り出すようにしてウェストは細胞片を入手する。
「次は迦具土で離水‥‥。うむ、コレ使えるのではないかね〜♪」
望みの品も手に入れられて、ご満悦のご様子だ。
「ふう、空と水中の連携、いい経験をさせてもらいましたわ。とにかく無事で完了できてよかった‥‥」
味方の損害もなく、ルティシアが安堵する。
「浮れた気分を直すには丁度良かったか‥‥」
仕事を終えた一服‥‥を堪能しようとしたD・Dは、大規模作戦中に全てを吸い尽くしていたことに気づき、非常に残念そうな表情を浮かべていた。
「キメラ相手ならこれ位‥‥。まだまだ、先輩達には及ばないですね」
気落ちしそうな自分を奮い立たせるべく、ガーネットは先の道程へ目を向けるのだった。
基地に戻ると、ウェストは皆の負傷具合を見ながら、救急セットで、ダメージが大きい者には練成治療で治療を施していく。
「‥‥ドクター、良いデータは取れた?」
尋ねるユーリの問いかけに、ウェストが高笑いで応じる。
「けっひゃっひゃっ、我が輩はドクター・ウェストだ〜。抜かりはないね〜」
しかし、治療した仲間達にすら観察の目を向けてしまう自分に、ウェストはやや複雑な思いを抱えていた。