タイトル:ULTタウン準備委員2マスター:トーゴーヘーゾー

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/03/23 22:48

●オープニング本文


「ULTタウンで設置するゲームなんだが、ドローム社の協力を得て、実機に近づけたKVシミュレーターを設置するつもりなんだ。今回頼みたいのは、シミュレーターに搭乗させる『敵機』のデータ収集になる」
 これがマルコの持ち込んだ依頼の主旨である。
「敵に奪われたKVに対して、みんなの機体データや操縦技術から個性づけを行うつもりだ。みんなには陸上戦、空中戦、水中戦のどれか、得意なフィールドで戦ってもらう」
 その際の、戦闘条件や戦う敵に関しては後ほど詳細な説明を行われるらしい。
「自分の機体をバグア側として扱われるのは納得いかないだろうから、色やデザインを変更したうえで、個別の認識名称をつけて別個の機体に仕立てる。本人から希望があるならそれを採用するから、『鋼鉄の荒鷲』でも『レッドファルコン』でも、まあ、好みの名前を申し出てくれ」
 ここまでが、KVのデータ取得に関する内容だ。
「参加メンバーには、ULTタウンのイベントについても意見を聞きたいから、時間が空いてるならつきあってくれ」
 データ収集はラストホープ内にあるドローム社支社で、第九KV兵装開発室が協力してくれる予定だ。打ち合わせというのは、ドローム支社の会議室を借りて行うことになる。
「前の委員会で上げられた意見にもあったが、ULTタウンでは傭兵の疑似体験を行ってもらう予定なんだ」
 マルコがそのシステム概要を説明する。
 ULTタウン内での通貨は『ULTドル』ということになっており、来場者は換金しなければ買い物ができず、身分証も兼ねたカードを使用して決済するのだ。
 KVのゲームや、体感ゲームや、射的ゲームなどはその訓練という位置づけで、その回数や技術力によってポイントが貯まり、依頼イベントへの参加が可能になる。
 能力者(あるいは扮した人物)がアドバイザーとして参加し、ホログラム映像を相手にキメラ退治や、KVシミュレーターを使用した機体依頼等に参加する。この時の報酬は『ULTドル』として支払われる。
 メインの客層は子供を考えており、家族が買い物をしたい場合は子供に購入を頼むしかない。クレジットによる追加換金は可能なので、あまり不都合はないと思われた。
 レストランと屋内ステージのみ、『ULTドル』の対象外となっていた。
「堅苦しい話ではなく、茶飲み話のつもりで気軽に参加してくれ。他にも意見があれば聞いておきたいしな」

●参加者一覧

伊藤 毅(ga2610
33歳・♂・JG
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
緑川安則(ga4773
27歳・♂・BM
要(ga8365
15歳・♀・AA
三枝 雄二(ga9107
25歳・♂・JG
火絵 楓(gb0095
20歳・♀・DF
賢木 幸介(gb5011
12歳・♂・EL
諌山詠(gb7651
20歳・♂・FT

●リプレイ本文


●敵パイロット達

「待ちに待ったULT準備委員会の2回目なのです♪ オープンに向けてがんばりましょー!」
 要(ga8365)は相変わらず元気溌剌であった。
「正義の味方の次はよいこの敵さんなのです」
「私も既に、毎日がナナカーキーの気分や」
 頷いたのはブルマ姿の三島玲奈(ga3848)。それらのセリフはULTタウンの特撮ヒーローに参加しているから出たのだろう。
「KVに関わるのは大規模作戦以外では初めてなんですよね。大して上手い訳でもないですが、倒し易い敵キャラとしては十分でしょう」
 自己分析して諌山詠(gb7651)が苦笑を浮かべる。
「子供に認知されて人気が出てくれるなら、私はもう量産型の役でも‥‥」
 UNKNOWN(ga4276)の口から、ずいぶんと殊勝な言葉が漏れた。
「いや、是非、量産型という夢を‥‥」
 レア機体による悲哀を大いに実感した切実な嘆きのようだ。
 マルコ・ヴィスコンティ(gz0279)は参加者から、名前や色などの簡単な要望を汲み上げることにした。
「ビーストソウルは、アラブ・アフリカのバグア拠点に対抗するために開発された水中機ですので、バグア側に回ったのなら、アラビア語のバハムートという名がぴったりだと思うのです」
 と要は名前の由来を口にする。
「私は戦車とサムライの融合を目指した」
 緑川安則(ga4773)はデザイン画を手渡した。
「ちょうど手元にサムライソードとサムライフレームがあるからなあ。ナイトフォーゲルならぬ武者フォーゲルという感じか。ちょっとレアな感じだろ?」
 KV本体だけでなく、20mmガトリング砲は種子島に、420mm大口径滑腔砲は大筒風にアレンジされていた。
「こっちの企画書が、濡れてベコベコになってるのはなんでだ?」
「よ、涎じゃないよ! 水をこぼしただけだよっ!」
 力説するのは、ピンク色の鳥の着ぐるみ姿である火絵 楓(gb0095)だ。
「これは‥‥? 難しい漢字が多すぎて、読めないし、覚えきれないぞ」
 玲奈の設定集を目にしてマルコが首を捻る。
「仕方ないなぁ」
 彼女の熱心なレクチャーが始まった。
「ゲーム感覚ね。‥‥まあ、こうでもねえとこんなセッティング普段しねえけど」
 壁に体重を預けるようにして、賢木 幸介(gb5011)は参加者や技術者の様子を眺めていた。

●空戦KV

 スピリットゴースト『Axis(アクシズ)』、操縦者・賢木 幸介。

「これで新型の販促に繋がるぜ‥‥多分」
 彼の参加動機はこのあたりにあるらしい。
 登場時には僚機が随伴して前衛を受け持つ。
『Axis』は得意の遠距離や中距離攻撃を行い、敵S−01の放ったミサイルは2種類搭載してあるファランクスで撃ち落とす。
 こちらは機動力が低いのが弱点で、敵機もそこを突いてきた。死角に入り込もうとする敵機に、要所でファルコン・スナイプを活用しつつ反撃を行った。
「折角シュミレーターだし、やってみっか」
 機首を跳ね上げた『Axis』は機体面積を利用したエアブレーキを敢行。敵機をオーバーシュートさせて背後を取った。
 至近距離のキャノン砲がS−01を爆散させる。

 フェニックス『フェニックス・イビル』、操縦者・火絵 楓。

「キシャァァァッァーッ!」
 奇声を発して操縦桿を操る楓。
 オレンジに塗装された『フェニックス・イビル』は回避という概念を忘れ、気まぐれな機動を繰り返す。
「(文章表記不可能)クルァァァアァ!!」
 雄叫びを上げつつ行われるでたらめな動きは、プログラム制御されたS−01では追い切れない。その分、『フェニックス・イビル』もまた的外れな攻撃を行っていた。
 接近戦を見据えた機体であり、ソードウイングや高電磁マニピュレーターを搭載している。
「マルち〜ん必殺技の練習させてにゃん♪」
 宣言した楓は、ブーストを使用し、空中変形スタビライザーAとBを稼働させ、2本の高電磁マニピュレーターで攻撃を繰り出した。
「必殺技パ〜ト、え〜っとその4! フェニちゃんバーストフィンガァーッ! ビートブレイク!」
 その一撃が正面のS−01を撃破した。
 ‥‥かと思いきや、練力を使い切ったために、地表へ向かい不時着していく。
『中ボスというよりは、たまに登場するボーナスキャラ向きだな』
 というマルコの評であった。

 フェニックス『ファフニル1』、操縦者・伊藤 毅(ga2610)。
 フェニックス『ファフニル2』、操縦者・三枝 雄二(ga9107)。

 こちらは『ファフニル隊』として2機がセットで出現する。共に青系統で斑に塗られた『ソトアオ』仕様だ。
「ファフニル1より2、厄介な敵機を止めるぞ」
「ファフニル2了解、信じる神の御許に送って差し上げましょう」
 シザーズのように交差する軌跡を描いていた2機は、S−01に接近すると左右に展開して挟撃の陣形を取る。
「やるな、だが遅い」
 と毅。
「被弾した? やりますね」
 と雄二が応じる。
 彼らが攻撃手段を切り替える端境は100m。そのラインを踏み越えると銃撃を中断し、両機は空中変形を行って近接戦闘を挑むのだ。
『ファフニル1』がなぎ払うようにディフェンダーで斬りかかると、『ファフニル2』はディフェンダーを突き出して襲いかかる。
「推力低下、油圧なし、ここまでですか。脱出します」
『ファフニル2』の離脱により、『ファフニル1』のみがS−01相手に奮戦する。
 このあたりは演出というもので、『ファフニル1』もまた銃弾を浴びて煙を吹き出した。
「くっ、エンジンが‥‥、脱出する」
 パラシュートの花が二つ咲いたかわりに、二機のフェニックスは空中で華々しく散っていった。

●海戦KV

 ビーストソウル『バハムート』、操縦者・要。

 全体的にパールホワイトに塗られ、メタリックブルーの装飾が為されている外観は、魚をイメージさせるものだった。
「水中戦に興味を持ってもらえるような敵になれれば嬉しいです。そして水中部隊が増えたらもっと嬉しいのです」
 水中用機体での参加が彼女だけ、という現状が全てを物語っている。どんな形でも、水中用機体の魅力をアピールしていきたいようだ。
 迫り来るテンタクルスに対して、遠間からDM5B4重量魚雷と熱源感知型ホーミングミサイルを撃ち込んでいく。敵の魚雷をかいくぐり、全弾を叩き込んで1体目を撃破する。
 変形を終えた敵機がキングフィッシャーを突き立てるが、彼女は構わず反撃に転じた。
 剛装アクチュエータ『インベイジョン』Aを稼働させ、逆に高分子レーザークローで敵の装甲を貫く。
 要本人の要望により、プレイヤーの強さに応じて、『バハムート』のスキル運用を増やす形で補正を行う予定となった。

●陸戦KV

 ゼカリア『サムライランチャー』、操縦者・緑川安則。

 戦場設定は砂漠だ。
 侍的なデザインをこの場で反映させるのは無理なので、この場の『サムライランチャー』は茶色一色で塗装されていた。
「作戦を開始する。敵方位軸合わせ、初弾、弾種対FF。装填良し、420ミリ、発射!」
 射程に入った敵に対し、挨拶代わりに420ミリ大口径砲で存在をアピールする。
「来たな。弾種変更、徹甲散弾。装填良し。受け防御無効の効果をたっぷり味わってもらおうか!」
 敵が接近するまでに、繰り返し散弾を叩き込んで装甲を削っておく。
「御苦労さまと言いたいところだが、対FF徹甲弾が余っているんでな。進呈だ」
 対FF効果は期待できなくとも、その攻撃力を敵に見舞ってやった。
 接近された場合は、ガトリング砲とSAMURAIソードの出番だ。可能と見れば、420mm大口径滑腔砲で零距離を敢行する。
「こんなところかな? 元々ゼカリアは支援型だ。単騎で大量に敵は相手に出来ないさ。長距離からの攻撃を回避して接近し、仕留めるかという連携が問われるね」
 安則はそのような分析を口にした。

 雷電『泰牙主』、操縦者・三島玲奈。

「我はバグア壱弐神将が一人、謀叛神『闘羅吃』いざ参る!」
 虎の顔をした強化人間という設定らしく、玲奈は時代劇めいた口調で演じている。
「ぬぅう猪口才な〜」
『泰牙主』は、精密な『襲斗』による狙撃で敵後衛の連携を崩し、『砲武爛』を併用することで弾幕を張り接近を阻む。
 これらの兵装名も彼女の申請によるもので、列記していくと次のようになる。
 試作型リニア砲『嚆矢炎』。
 強化型ショルダーキャノン『砲武爛』。
 スナイパーライフルD−02『襲斗』。
 チタンヌンチャク 『過危(あぶ)』。
 SAMURAIソード『粉砕抜刀』。
「まだまだ甘いわ〜」
 知覚兵器を嫌うという設定は、自機への搭載状況にとどまらず、知覚兵器を使用した敵にも怒りを向けるのだ。
 弱点はリロードのタイミングで、一瞬の隙を見極めてもらわねばならない。
 超伝導アクチュエータ『跳電動』を駆使して敵を倒すと、勝ちポーズとして大見得を切る。
「絶勝かな〜」
 続いて、わざと攻撃を受けて敗北を演出した。
「無念!」
 負けポーズとして胡坐をかくと、自爆するという設定なのだ。
 詳細かつ多岐に渡る設定の数々は、彼女自身のこだわりであった。

 バイパー『ラングレン』、操縦者・諌山詠。

 その機体は、ほぼ全身が黒で塗装されており、肩や腰の一部だけが赤く塗られていた。
 遠距離装備のない『ラングレン』は様子見を兼ねて、掲げた機盾「アルビオン」だけでなく、障害物を活用しながら接近を試みる。
「さて、どう動きますか?」
 敵の攻撃手法によって、『ラングレン』は戦法を変える。
 近距離戦を望む相手には135mm対戦車砲を撃ち込んで射撃戦に持ち込み、遠距離戦を望む相手にはこちらから前進して格闘戦を挑むのだ。
 盾に身を潜めるように半身に構えると、機刀「雪影」でS−01へ斬りかかった。フェイントを織り交ぜながら、敵機の攻撃は盾で受け流す。
 この機体の切り札は、練剣「雪村」かブースト空戦スタビライザーだ。残念ながら練力不足のため、複数回使用できず、追い込まれたときのための最後の手段として温存される。

 K−111改『イスカリオテ』、操縦者・UNKNOWN。

 実機と同じく艶消漆黒の機体である。
 市街地で建造物を盾に、流麗な足取りが淀むことはない。
 狙撃戦用のライフル、牽制のためのバルカン、接近戦にはソードウィングと、各種兵装も完備。その機動は柔に固執することなく、時には機槍「グングニル」で壁を突き破り強襲をかけることもある。
 壁を蹴ったり腕で柱掴み強引に停まる等、トリッキーな動きで行動の中に、ブーストを使用した直線的な機動で敵に肉迫する。
 当人は『倒す』よりも『弱らす』つもりのようだが、過剰なほどの攻撃力が容赦なく敵を削っていく。
『‥‥強いのはよくわかったが、弱点はないのか?』
 やや呆れ気味にマルコが問いかけた。
「私の機体の、弱点‥‥?」
 意外なことを聞かれたという表情のUNKNOWN。
『強すぎるから、隠しボスにするか‥‥』
「それでも構わないがね」
『登場機会が激減するから、知名度は上がらないぞ』
「な‥‥」
 彼の願いかなうのはまだまだ先のようだ。

●会議中

「銀クラスに偏ったから、多少はアレンジを加えないとまずいかなぁ」
 マルコがつぶやいたものの、データ収集は無事終了したため、彼らは会議室に場所を移していた。
 帽子やコートを脱いでおり、UNKNOWNもくつろいだ様子だ。
「お菓子をありがたくいただきますねー。要は甘い物も大好きなのですよー♪」
 広報部に届けられたクッキーを、マルコが皆に振る舞っている。
(「これがマルコさんからのホワイトデーだったら嬉しかったなぁ‥‥」)
 少しばかり残念に思う要。日本の習慣に疎かったマルコの失態と言うべきだろう。
「カレーは無いのんかカレーは‥‥」
 そう愚痴っていた玲奈は、どこで入手したのかカレースープを飲んでいる。彼女に言わせると、『カレーは飲料』らしい。
 UNKNOWNは楓の持ち込んだ壺入りメンマには興味がないらしく、給湯室で火にかけたオイルサーディンをつまみとして、酒を口に運んでいる。
 健全にコーラを飲んでいる圭介や、興味を示した安則は、楓を模したミニかえでちゃん焼きに手を伸ばしていた。
「個人的には、シューティング・アクションを重視した方向性に持っていくのがいいと思います、いかんせん、シムは子供向けとしてはハードルが高すぎますから」
 テーブルに並べられているのは、毅の持ってきたシューティングゲームやフライトシムの資料だ。
「フライトシミュレーターとして、本格的に作りすぎると、ちびっこは寄り付かなくあると思うっすよ」
 雄二もまた、毅に同調して強く訴える。
「あくまでゲーム。まともに楽しむために実機の知識が必要になるようなのは、絶対止めたほうが安全っす」
「雄二、お前‥‥シューターだったのか」
「え、いやあ、若いころはひたすら100円玉を積み上げて、閉店まで粘ったものっす。‥‥先輩には話してなかったすかね?」
 雄二はそのように応じているが、端から見てると毅もまた同類に見える。
「KVとしての操作性を犠牲にしない範囲で、簡略化していく‥‥。燃料制よりも、制限時間制にしたほうが面白いかもしれません」
「通常ステージは強制スクロールの3D、ボス戦のみ全方位型のドックファイト、とか面白そうっす」
 毅と雄二が代わる代わるゲームへの要望を訴えていた。
「ステージを選択できる、とかどうかね? そのステージでしか選べない、という敵もありだろう」
 UNKNOWNが、平原、山岳、都市、海洋、氷原と事例を上げながら提案した。
 マルコはそれらをメモに控えていく。
「ゲーム以外にも、ULTタウンについて意見はあるか?」
「俺はULTドルの換金率が気になりますね。メインとなるのは子供ですし、お小遣いを使う子もいるでしょうし、ね」
 トリュフチョコをつまみながら、詠が口にする。
「ポイントの貯まりも上手い子下手な子で余り格差が出来ない様になるといいですね」
「そのあたりも考えないとな‥‥」
「はい! は〜い! ドキ♪ 水着美少女だらけの水着相撲大会がやりたで〜す。もちろんあたしは溺れたおんにゃの子をむはにゃにゃ。‥‥いや〜ん♪」
「個人的な趣味を持ち込まれても困るんだが‥‥」
 男連中と極少数の女性が受け入れても、大多数の女性に嫌われそうだ。
「そうだ! かえでちゃん焼き専門店をタウン内に作れば、客ウケがイイのだよ!」
「さすがに専門店は諦めろ。何を入れるかわからないのは非常に不安だし」
 幾度か実害を受けた経験があるため、マルコは無表情のまま却下を告げていた。
「屋台コーナーぐらいで諦めろ」

 こうして、『ULTタウン』も開店に向けて着々と準備が進んでいくのだった。