タイトル:【コミ】コスプレ広報2マスター:トーゴーヘーゾー

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/19 06:23

●オープニング本文


「今回もコスプレで参加することになった」
 8月1日。大阪では二次創作を扱うコミックレザレクションというイベントが開催される。
 12月に開催された時にも、マルコは同様の依頼で希望者を募って参加していた。
 基本的な仕事は、ULTの広報活動の一環としてプラカードなどを持ち、コスプレ姿で会場内を練り歩いたり、ブースで物品頒布を行うことだ。
「今回は運営側でも、コスプレ警備員として傭兵を雇うつもりらしいから、こちらでも手を貸そうと考えている。具体的には、要請があった場合に最寄りの人間が手を貸しに行くという形だ。正規の警備スタッフに比べたら報酬は少ないが、追加で発生するから特だろうな。
 通信用の無線は広報部で貸し出すつもりだから、自前で所有していなくても心配はいらない。
 ブースの方では、ULTや能力者について詳しく説明している『傭兵ノススメ 2010』の配布や、近々オープン予定のULTタウンの宣伝を行う。特撮ネタが好きな人間も集まりそうだし、ナナレンジャー本人が会場警備に参加していたら、これも話題になると思うんだ。
 食事なども含めて、休憩時間は取れるはずだし、コミレザを見て回る余裕はあるぞ。趣味と実益を兼ねて参加して欲しい」

●参加者一覧

篠崎 美影(ga2512
23歳・♀・ER
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
要(ga8365
15歳・♀・AA
禍神 滅(gb9271
17歳・♂・GD
如月 芹佳(gc0928
17歳・♀・FC
鈴木悠司(gc1251
20歳・♂・BM
和泉譜琶(gc1967
14歳・♀・JG
ユウ・ターナー(gc2715
12歳・♀・JG
ニコラス・福山(gc4423
12歳・♂・ER
月読井草(gc4439
16歳・♀・AA

●リプレイ本文


●開演前

「コミレザでの広報活動、前回に引き続いて2回目になりますけど、相変らず、人が多いです‥‥」
 リゼット・ランドルフ(ga5171)がつぶやきを漏らす。
「人に流されないように頑張らないと、ですね!」
「なんという人間の多さ、まるでアリの行列だな。随分と多くの人間がこちらに向かっていたが、皆このイベントの参加者か。こんな朝早くから驚いた」
 失礼な表現を口にするニコラス・福山(gc4423)。
「‥‥こみれざ? んっと‥‥人がいっぱいなのー! 迷子になっちゃいそうだねっ☆」
「皆が良い一日を過ごせる様、頑張ろうね!」
 ユウ・ターナー(gc2715)に鈴木悠司(gc1251)が明るく応じてみせる。
「マルコさんお久しぶりです! お元気そうでなによりですー」
(「それは、こっちのセリフかなぁ‥‥」)
 要(ga8365)の挨拶に、マルコ・ヴィスコンティ(gz0279)が内心で苦笑する。
 4ヶ月程前までは頻繁に顔を合わせていたため、マルコの方でも心配していたのだ。
「またお会いできて嬉しいです。今回はナナレンジャー布教のために来ました! がんばりますのでよろしくお願いしますね♪」
 現在の彼女を見ると、心配する必要はなさそうに思えて、マルコが胸をなで下ろす。
「マルコさん、今回もよろしくお願いしまーす! 一般の人たちが興味持ってくれるようにがんばります!」
 和泉譜琶(gc1967)もまた元気いっぱいで挨拶する。
 この依頼への意気込みとして、彼女は『明るく! 楽しく! にぎやかに!』をモットーとして頑張るつもりだ。
 今のところ、それは十分に体現されていた。

「みな一様に目を輝かせて、遠足当日を迎えた子供の目。ふふっ滑稽かな、斯く言う私も早く見てみたくてワクワクしてる」
 ニコラスの衣装はセーラー服に白衣、そしてランドセル。
「その方面に詳しい知人より借りた週刊漫画誌に、似たような服装のキャラクターがいたので大丈夫だと思う」
 幼く愛らしい姿のため補足しておくが、『成人男性』である。
「篠崎 美影(ga2512)、サイエンティストです。今日は警備員としてお手伝いに来ました」
 こちらはミカガミを模したKV少女のコスプレだった。『ポニーテールのサムライガール』という設定通りに、髪も結い上げている。
 自作したため、暑さ対策に装甲が薄くなっており、露出が多い辺りは見物客の目を楽しませることだろう。
「コスプレとかよく分かんないけど、仮装して来たよ」
 美影とは反対に、如月 芹佳(gc0928)は全身を覆う竜の着ぐるみ姿だった。現場ではおそらく暑さとの戦いになると予想された。
「えへへ、似合うかなァ‥‥?」
 兎耳と尻尾を付けたメイドさん姿のユウが、おねだりするように悠司の感想を求めた。
「似合ってるよー! とっても可愛い!」
 応じる悠司の方は彼女の衣装を知っていたため、それにあわせて執事コスとなっている。アクセントに、犬のヘアバンドと犬のベルトをつけていた。
「俺も如何? 執事、出来そう?」
「悠司おにーちゃんのお耳と尻尾、可愛いのー♪」
 仲良しの悠司とお揃いという事が、ユウには嬉しくてしょうがないらしい。
「警備のお仕事もしますので、動き易い服にしたつもりですけど‥‥おかしくないですか?」
 リゼットのコンセプトは、『魔女の使い魔が執事になる』というものだ。
 上半身は燕尾服にベスト、下半身はショートパンツとニーハイソックス、ローファーも含めて全て黒だ。白手袋を着用し、左耳にはシンプルなイヤーカフス。
 全体的に少年執事風にまとめ、黒猫的特徴として耳や尻尾が生えている。
 彼女もまた、ユウや悠司と同じ系統のコスプレだ。
「全然問題ないよ」
「そういえば、今回マルコさんはコスプレとかしないんですか?」
「一応責任者だし、対外的にもやりやすいからな」
 上着こそ着てないが、彼はきっちりとネクタイまで締めている。
 広報活動ということで、ほとんどが『ULT』の腕章を着けている。特徴的なのは、月読井草(gc4439)の背中に立っている幟ぐらいだろうか。
(「コミレザに出展側として参加できるなんてラッキー! これで確実に新刊ゲットだわ」)
 彼女はちょっとばかり不届きなことを考えていた。

●第一幕

 水兵服姿で、腰にエアーソフト剣を差した禍神 滅(gb9271)が、会場の巡回中に口論の現場に遭遇する。
 サークルに並ぶ行列が、他のブースの前を塞いでしまったらしい。
「そういう振舞いは皆さんの迷惑になっていますので止めて貰いますか。2列に並べばなんとかなりそうですし」
「関係ねーだろ!」
「黙ってろよ、ガキ!」
 気を荒げている二人が、邪魔者を威圧して追い払おうとするが、これに対する滅が取る対応はいつもと同じだ。
「見た目で粋がると痛い目見るぞ、こらっ! 其の場で、泣かしたろか、われっ!」
 逆に脅し返すのだ。
 覚醒によって般若の面となった彼の顔は、人を怯えさえるに十分な武器となる。
『‥‥すいません』
 事態は早急に解決できた。

「ULTをよろしくね♪」
 ULTのブースでは、井草がニッコリと笑いながら、お客さんに広報誌等を手渡ししている。
 出展側の特権を活かして物販や新刊を素早くゲットした彼女は満面の笑みだった。
 現在の対応を見るかぎり、客からはただのメイドコスと思われているに違いない。
 傍らでは、要がスカイブルーのスーツ姿で、ナナレンジャーのDVDを熱心に売り込んでいる。
 長丁場も覚悟してスポーツドリンクも持参している。
(「ヒーローが倒れるわけにはいきせんからね」)
 開始時からのメンバーでもあるため、あらすじや見所を説明し、知名度を向上すべく頑張っていた。
「見る用・貸す用・保存用に3本いかがですか?」
 本心から勧めているため、要の笑顔には一点の曇りも存在しなかった。

「妙に注目を集めている気がする。あまり目立つ行動をしたつもりはないけど、コスプレ姿のせいか?」
 ニコラスの推測は半ば当たり、半ば外れている。
 行きかう人々の中には多数のコスプレイヤーが存在し、中には外人も混じっていたからだ。
 人目を引いているのは、単純に彼の容姿だろう。
「広報活動としてはいいことかな」
 一般人から要望があれば写真撮影に応じ、ULTの宣伝にも一役買っている。

「はいはーい! みなさん見て行ってくださいねー」
 ナース姿の譜琶がULTブースで客寄せをしていた。ナースキャップには『ULT』と記されている。
「ブース付近で悪いことする人には注射しちゃいますー」
 彼女は巨大注射器を振り回すだけでなく、救護班と間違えてきた相手が軽い怪我なら治療もしていた。
「面白い小説も載ってるから、読んでみてね!」
 抱えていたカルテを開き、挟んであった『能力者ノススメ 2010』を取り出して、来場者へ差し出していく。
「え‥‥、私に似てる人が出てる? えーっと‥‥えへへ」
 写真が掲載されている本人としては、照れ笑いで応じるしかなかった。

 写真週刊誌のカメラマンを名乗る男が、コスプレイヤーにセクシーポーズを強要している。回りを煽っている辺り質が悪い。
「そういうことはいけませんよ」
 微笑を浮かべたKV少女が穏やかにたしなめた。
「君もモデルやってみない? ULTで働くより絶対にモテるよ」
「私、人妻ですよ♪」
 美影にとっては、夫以上の男性というのは存在しないので、彼女を誘う理由としては弱すぎた。
 ハリセンをチラつかせて、彼女は撮影者達を威圧する。
 予備のナイフに出番が無かったのは、お互いにとって幸いだったろう。
 ちなみに、どこへ隠しているかは『ヒ・ミ・ツ♪』らしい。

「害虫は駆除シマス」
 メイド服を着込んだ井草が、キャラを演じるために機械的な口調を再現する。
「秩序への挑戦には死アルノミ」
 列を乱そうとする不届き者に脅しをかけていく。
 そんな最中、倒れている男性を見かけて、井草が駆け寄った。
 体の不調を押して買い物に出ようとする態度に、思わず同情心が湧いてしまう。
「代わりに買ってこようか?」
「なんで、そんなこと‥‥」
「困ったときはお互い様よ」
 戸惑う相手に井草が笑って見せる。
 救護班への案内をリゼットに頼み、彼女はブースへ向かうのだった。

●幕の内

 悠司とユウと連れだって昼食のメニューを検討中だ。
「わー、屋台なんかも在るんだね! ユウさんはどう? 何が欲しい?」
「屋台には何が在るのかなァ。‥‥たこ焼きに焼きそば、カレーも? えへへ、ユウ迷っちゃうなぁ」
「美味しそうな食べ物いっぱいだから迷うけど‥‥。う〜ん、迷うなら、全部買っちゃえ!」
 潔い選択をした悠司がたっぷりと買い込んで、二人はこれからの予定を話し合う。
「ブースも回ってみようね、悠司おにーちゃん! 創作アクセサリーとか無いのかなァ」
「未知の世界! ワクワクだね」

「どんな所なのか非常に興味がある、科学者ゆえの探究心、さがという奴だな」
 ニコラスは好奇心を滲ませて回りに視線を向けている。
 あそこのブースが面白いとか、あそこの同人誌はデキがいいとか、一緒に食事をした井草が熱心に説明していたのだ。
 彼としては運営側や出品物だけでなく、来場者の動向や集団的な行動心理というのも、興味を引く題材だった。
 せっかくの機会なので、警備のついでに心行くまでふらついてみるつもりだ。

 空きスペースの一角に腰を下ろして、芹佳はサンドイッチを頬張っている。
 竜の着ぐるみは脱ぎ捨てたのだが、その下に着ていた三角ビキニ姿となっていたため、余計に人目を引いている。
 チラチラとこちらを眺めている男達の視線を感じ、食事を終えた芹佳が荷物を拾い上げる。
「回収回収っと♪」
 着ぐるみの中には拳銃「黒猫」と苦無を忍ばせているため、手放すわけにはいかないのだ。
 無遠慮に向けられたカメラ達は、芹佳の欠けた風景を虚しく撮影する。
 迅雷を使用した芹佳はすでにこの場から消えていた。

「人が多いので、スリとか置引とかもあるでしょうし、不審人物には要注意ですね」
 前回同様、巨大ぴこぴこハンマーを担ぎ上げて会場内を巡回していたリゼットは、コスプレ集団と遭遇した。その中には、休憩中の美影も混じっていた。
「コスプレ同士で仲良くなったんでしょうか?」
 と推測したが、コスプレ友達と会場で遭遇したというのが真相だ。
 彼女等を取り囲むようにして撮影していたカメラ小僧の一人に、リゼットはハンマーを振り下ろした。
 ピコーン!
「逃がしませんよ、盗撮しようとする不埒な人は成敗です!」
 盗撮用のレンズを覗かせた鞄も確保して、警備事務所へと引っ立てていく。
 これも、ある意味で囮捜査と言えなくもない。

 昼食を終えた要が、警備も兼ねてぶらぶらと見て歩いていた。
 創作アクセサリーを売っているブースを見かけて、彼女の足が止まる。
 ヘルメットを外して展示物を眺めている要へ、後押しするように売り子が告げる。
「さっきもULTの人が買ってくれたのよ。女の子へプレゼントしたみたい」
 その言葉を効いた要は、悠司がユウへ買ってあげる場面が容易に想像できた。
「これ‥‥、かわいいですね」

●第二幕

 食事を終えて、仕事に戻るなり滅は異変に気づいた。
 運がいいのか悪いのか‥‥。
 探査の眼を使用していた彼は、階段を下方から狙える位置に身を潜めている男の姿を発見する。
 無線機でスタッフに事情を知らせた声が、男にも聞こえたようだ。
 逃げ出そうとした男の前に、回り込んだ滅が立ちはだかる。
「何所へ逃げようと言うのかい、何所にも逃げられないよ。さぁ 懺悔の準備はOK?」
 つきつけたエアーソフト剣は、真剣のように男を怯えさせた。

「どうぞお持ち下さい、ご主人さま」
 少しだけエプロンの裾を摘みつつ、ユウがぴょこんとお辞儀しながらチラシを差し出す。
「お嬢様、此方をどうぞ」
 悠司の方も執事気分で、かしこまった態度でチラシを配っていた。
 ULTブースで対応していた二人に、井草から応援要請が入った。

 発端は、ある作品のカップリング論争らしく、ヒートアップした両陣営が激しくもみ合っていた。
「ただちに停戦シナサイ」
 井草は一番近場にいた悠司達に応援を要請し、アルティメットフライパンを手に暴徒の鎮圧にあたる。
 頭数が多く手間取っているところへ、援軍が駆けつけた。
「楽しいのは分るけど、羽目の外し過ぎはいただけないよ」
 悠司が巨大ハリセンでツッコミを始め、ユウが巨大ぴこぴこハンマーを振り回す。
 傭兵達は手加減はしつつも、彼等を力ずくで黙らせることになった。
 ようやく落ち着いたかに見えたところへ、新たな騒ぎが起きる。
「‥‥あれ? 売り上げはどこいった!?」
 騒動の最中に、誰かがお金を入れいた袋を盗み出したらしい。
 悠司が不審者の特徴を聞き出して、地図を広げたユウが仲間達に無線で指示を飛ばす。

 容疑者を見つけたのは譜琶だった。
「逃がしません!」
 ブース区画用の門柱の上に立ち、制止の声を上げるのは真っ白なナナレンジャーだ。正規のメンバーではないため、割り当ては劇中に登場しない白である。
「ハッ!」
 行く手を阻むように飛び降りて、巨大ハエタタキを振り回す。
 ヘルメットで顔が隠されているため、恥ずかしさを感じずに派手な立ち回りを演出する。
「あなたたちなど、必殺技やレインボー・アークを使うまでもありません!」
 このセリフを鑑みるに、コスプレのために予習もしてきたらしい。
 容疑者を取り押さえた譜琶は、最後の宣伝も忘れない。
「ULTタウンの平和は私たちが守っています。みなさん遊びに来てね!」

『コミック・レザレクション閉幕します。本日、参加していただきありがとうございました‥‥またの‥‥』
 会場内に流れる放送を背中に聞きながら、一般来場者が会場を後にする。
「イベントにはマナーを守って参加しようネ!」
 井草はそんな言葉と共に問題児達をリリースしていた。
 ULTのブースでは、DVDこそ多少残ったが、無料の配布品は全て配り終えた。
「お疲れ様です。楽しかったですねー」
 譜琶としても頑張った甲斐があるというものだ。
 一仕事終えたことで、竜の着ぐるみがヴァイオリンを奏でている。
「心に響く、旋律を‥‥。なんてね♪」
 演奏を聴いていた要が、ポケットの中の品を思い出す。
「マルコさん。よかったら、これをもらってくれますか? 少し早いけどお誕生日プレゼントです」
「もちろん、受け取るよ。ありがとう」
 お揃いとなる色違いのストラップがもう一つポケットに残っているが、これは要だけの秘密である。
 ヴァイオリンの音色をBGMに作業を進める者もいれば、撤収準備を終えて演奏を聴きに来る者もいた。
 興が載ってきたのか、芹佳は竜の着ぐるみを脱ぎ捨てると、自身の歌声で今日一日頑張った皆を労うのだった。