タイトル:【DD】護衛戦力排除マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/03/01 05:59

●オープニング本文


 それは――突然、動き出した。
 インド北部のバグア拠点『マールデウ』より現れし、巨大な壁。
 壁は障壁をなぎ倒しながら前進、進路を妨害するUPC軍は搭載された46センチ主砲で排除していく。
 戦車、と形容するにはあまりにも巨大過ぎる存在。

 移動攻撃要塞『ドゥルガー』。

 デリー攻撃軍指令ナラシンハ(gz0434)が内部で指揮を執るこの要塞は、地面を平らげながら南進。
 目指す先は、UPC軍が先日進軍を果たしたデリーだ。

 ナラシンハはすべてを終わらせるため、ドゥルガーでデリーを壊滅させるつもりだ。
 ランジット・ダルダ(gz0194)へ報復するため。
 虚栄心を満足させるため。

 すべてがナラシンハの野心から始まった悲劇。
 この悲劇は――いよいよ終幕を迎えようとしている。

 ***

 少年傭兵のカレン・M・クオンジ。
 彼はインド南部での依頼を終えると、すぐさまインド北部へ向かった。
 傭兵稼業はこのところ大忙しである。
 それもこれも現在展開されている『デリーの夜明け作戦』の影響‥‥。
 作戦は今まさに、正念場となっていた。

 敵移動要塞『ドゥルガー』の出現。
 それを迎撃すべく、多数の傭兵が駆り出されている。
 UPC正規軍だけではとても手が足りない状況であった‥‥。

 ***

 UPCインド軍某基地。ブリーフィングルーム――。
 カレンが席について間もなく、1人の男性士官が慌ただしく入室してきた。
 男性の額には汗。‥‥軍は『ドゥルガー』の対応に追われているのだろうと思う。
 士官は手短に、今回の作戦内容について話した。

 内容は単純だった。
 ――自分達の任務は『ドゥルガー』を護衛する陸上戦力の排除。
 『ドゥルガー』の内部に侵入して白兵戦を仕掛ける味方のために、
 外の戦力を速やかに排除し、道を切り開く。
 ‥‥どうやら軍は、外部からの攻撃は有効ではないと判断、
 内部へ突入し、機関部を爆破・停止させることにしたらしい。

 ブリーフィング終了後、
 カレンは説明された作戦内容を頭の中で整理しつつ、
 KVハンガーへと向かった――。

 ***

 ‥‥KVハンガーに到着したカレンは、固定されている自分の機体を見つめる。
 デザートカラーに塗装されたシコン。
 以前の依頼で大破したサイファーEに代わる機体。

 カレンは思う。
 あれ‥‥『ドゥルガー』の、デリーへの到達を許せば、
 これまで展開してきた作戦が水泡に帰す‥‥だけではなく、
 あれはデリーの街を蹂躙し、住民の命を根こそぎ奪っていくことだろう‥‥。
 そんなことは許すまいと、今、デリー周辺で戦う者達は皆が皆、必死だった。
 けれども‥‥自分はどうなのだろう。
 あくまで仕事としてこの依頼を受けたつもりだが‥‥。
 再び自分の機体に目をやる。この機体は、大破した機体から乗り換えた機体。
 大破した理由はなんだっただろうか。
 そう。
 敵エース機の攻撃から、味方を庇ったためだ。
 何故。
 ‥‥わからない。
 家族を失い、1人ぼっちになり、ULTに傭兵として登録してからは、
 ただ、『仕事として』依頼をこなしてきた。生活のためだ。
 それ以上の何物でもないはずだった。
 しかし。‥‥機体を大破させたことは、報酬の足しになっただろうか?
 まったくの逆である。乗り換えのために結構な資金を使ってしまった。
(よく‥‥わからない‥‥)
 日々依頼を淡々とこなすだけの自分に、仲間を想う気持ちなどあったのか‥‥。
 家族を失ったあの日。絶望のままに、ひたすらに泣いた。
 だが、本名を捨て、傭兵となってからは一度も泣いたことは無い。
 顔馴染みの軍人が死んだときにも、泣いたことは無かった。
 感情を極力抑えて、生きてきた‥‥。
 それがここ最近、揺れ始めている‥‥気がした。
 あのファルリン・ヌーリというやけに馴れ馴れしい同郷の少女と出会ってからも‥‥、
 何だか心の奥がもやもやする。
 
 自分の機体を見上げたまま、胸を抑えるカレン。そこへ――
「カレン、元気にしてたかしら」
「胸でも痛いの? まさか恋とか?」
 横から声がかけられた。2人の女性‥‥しかも色っぽい声。
 カレンは声のしたほうへ首を向ける。
「ブラック姉妹‥‥」
 1人は桃色がかった長い銀髪の、柔らかくやや幼い容姿をした美人。
 ――姉のリリィ・ブラック。
 もう1人は紫がかった長い銀髪の、ツンとした大人っぽい容姿の美人。
 ――妹のロザリィ・ブラック。
 2人とも、光沢のある黒色をした、身体にぴったりとフィットし、
 ボディラインがはっきりと浮き出るセクシーなパイロットスーツを身に纏っている。
 容姿は、リリィのほうは幼い感じだが‥‥2人とも豊満な肉体の持ち主だ。
 ちなみに2人はカレンより年上。身長もカレンより高い。
「‥‥お久しぶりです」
 軽く会釈するカレン。それだけで済まそうとする。
「あら、冷たいわね」
「もっとこう、フレンドリーにしましょうよ」
 だぎゅ。
 左右より攻撃。もとい、左右から美人姉妹に抱き付かれた。
 むにむにとした感触に包まれる‥‥。
「‥‥」
 しかしカレンは無言。表情も変えない。
「うーん、反応が鈍いわね」
「いつも通りだけど」
「‥‥離れて下さい」
 カレンが言うと美人姉妹は「いけず」と言ってカレンを解放した。
「私達がこんなことするの、あなたくらいなのよ?」
「そうそう、もうちょっと嬉しそうにしたっていいじゃない」
「‥‥知りません」
 カレンは顔を背ける。
「ところで‥‥今回の依頼、一緒なんですね」
 カレンはデザートカラーのシコン‥‥の近くに固定されている、
 メタルブラックに塗られた2機のガンスリンガー改に目をやりながら、言った。
「そうよ。さっきのブリーフィングにも居たのに」
「あなた気付いてくれないんだもの」
「‥‥すみません」
 美人姉妹は「うふふ」と妖艶に笑う。
「ともかく、今回はよろしくね。中々ハードみたいだけど、死なないでね」
「死んだら私達、泣いちゃうから。‥‥それじゃ」
 美人姉妹はカレンに向かってウィンクしてハートを飛ばすと、去って行った。
「‥‥」
 カレンはふう、とため息をつく。
 鬱陶しいのに捕まってしまったと思う。
 ‥‥あの姉妹は正直苦手だ。
 会うたびにべたべたと引っ付いて来る。
「‥‥」
 さっきまでの思考が吹っ飛んでしまった。
 ――まあ、良い。
 今は、今の任務に集中するだけ‥‥。

 カレンは砂漠色のシコンを、黄金の双眸で、じっと見つめた。

●参加者一覧

鷹代 由稀(ga1601
27歳・♀・JG
百地・悠季(ga8270
20歳・♀・ER
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
ロゼア・ヴァラナウト(gb1055
18歳・♀・JG
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
ハンフリー(gc3092
23歳・♂・ER
巳沢 涼(gc3648
23歳・♂・HD
アルテミス(gc6467
17歳・♂・JG

●リプレイ本文

●『巨大な壁』を守る盾
 インド北部のバグア拠点『マールデウ』より現れし、巨大な壁――、
 移動攻撃要塞『ドゥルガー』。それの陸上護衛部隊を排除すべく、
 傭兵部隊のKV11機――カレン・M・クオンジ(gz0438)とブラック姉妹を含む――と、
 UPC軍のゼカリア小隊(4機)が地を駆け、または地を踏みならし、
 現場へと急ぐ。今回の作戦は、時間との戦いだった‥‥。

 鷹代 由稀(ga1601)の機体はガンスリンガー改『ジェイナス』。
「あまり時間食うわけにもいかないわね‥‥さっさと片付けましょうか」
 コクピット内にて煙草をふかしながら彼女は言う。
 ‥‥AU−KV対応であり、それなりの広さがあるコクピットだが‥‥、
 そこで喫煙するのはどうなのだろうか。
 まあ、彼女の機体には特別な換気システムが備わっているのかもしれない。
 ベビースモーカーである彼女には、例えそこが戦場だとしても煙草は必須‥‥。

 百地・悠季(ga8270)の機体はサイファー『Heralldia』。
(また繰り返した‥‥。
 両親が死んだときと同じ。
 言わば誤爆よね‥‥。
 それも目の届かない処で、
 責任の分担すら出来ず悶々とせざるえなくて、
 だから感情の基盤に立ち返って思うの‥‥。
 バグアも嫌いだけどそれにも増して、
 『能力者』が大っ嫌い!)
 悠季は救えなかった、手を差し伸べることすら叶わなかった命に対し、
 悔やみ、悩み、いろいろなものを呪う‥‥、自分自身すらも‥‥。
「そういう自分も嫌いだから好きに暴れさせて貰うわよ」
 顔には、暗い笑みが浮かんでいた‥‥。

 Anbar(ga9009)の機体はシコン『ルムア』。
「さて、多くの仲間達があのデカブツを相手に奮闘しているんだ。
 俺達もきちんと自分の任務を果たして援護してやろうぜ」
 味方各機に通信。そののち、
「また一緒だな、兄弟。
 シコン乗り同士だ。連携を組んで上手く立ち回ろうぜ」
 カレンへ通信。「了解」との短い返答。
 容姿だけならばAnbarとカレンの2人は、
 本当の兄弟だと言っても皆が信じることだろう。
 実際は他人であるが‥‥Anbarからすれば、
 戦友=兄弟なのかもしれない。

 ロゼア・ヴァラナウト(gb1055)の機体はロビン改『鴻鵠【狼火】』。
「ドゥルガー‥‥一刻も早くあれを止めるためにも‥‥、
 護衛部隊を早く片付けないと‥‥いけませんね‥‥」
 おどおどしてはいるが、言葉には芯が通っているように聞こえる。
 デリーの街を蹂躙させるわけにはいかない、住民の命を守る。という想い。

 ティリア=シルフィード(gb4903)の機体は、
 スピリットゴースト・ファントム『Merkabah』。
(移動攻撃要塞‥‥こんなものをまだ隠していたなんて。
 好き勝手に蹂躙されでもしたら大惨事になるのは確実です。
 ボクたちの仕事は直衛戦力の排除‥‥。
 内部突入班を導き入れるためにも、しっかりと露払いしなければ‥‥!)
 ロゼアと同じような心構えのティリア。
 こちらはそちらよりもはっきりとしている。
 任務に臨む前の、きりりとした表情。
 一見すると単なるボーイッシュな少女だが、彼女は数々の激戦を潜り抜けてきた。
(‥‥そういえば、カレンさん、以前一緒に戦った時に比べて、
 雰囲気が少し変わったような‥‥気のせいかな?)
 ティリアはふと、カレンの顔を思い出す。
 彼に何か、変化があったように思える‥‥。
 ‥‥実際のところ、カレン自身は何も変わっていないのだが。
 気持ちに若干の揺らぎが出ているのは事実。
 ティリアはそういうこと――人の気持ちの変化に敏感なのだろうか。
 もしかすると、『恋』というものを経験したから、かもしれない。

 ハンフリー(gc3092)の機体はスフィーダ。
「ドゥルガーか。実に分かりやすい野心の象徴だな」
 皮肉めいた口調で銀髪の青年が言った。
 移動攻撃要塞。あれは――『城』。
 まさしく、自らを王と称して憚らない、ナラシンハの野心の象徴である。

 巳沢 涼(gc3648)の機体はゼカリア改『シャークティ』。
「ゼカリアがこれだけ揃うと壮観だねぇ。
 大規模作戦でもなけりゃそうそうお目にかかれねぇや」
 併走するUPC軍のKV小隊――4機のゼカリア改の映像を、
 コクピットのモニターに表示しながら彼は言う。どこか嬉しそう。
 やはり自分と同じ機体が多数揃っていると心が躍るのだろうか。
 だが。
(移動要塞にゃロマンを感じるが‥‥、
 デリーに行かせるわけにゃいかんのよ)
 彼は表情を引き締めた。決して任務の内容を忘れてはいない。
 あれは決して通してはならぬ物。ここで止めなければならぬ物‥‥。

 アルテミス(gc6467)の機体はガンスリンガー改『オリオン』。
「雪辱戦! 自分のせいで大切な人が傷付かないように、
 ちゃんと成長してるっとこを見せるのさ」
 気合を入れ、はりきった様子の美少女と見紛う美少年。
 今回の敵――ドゥルガー陸上護衛部隊には、
 以前、あいまみえ、自分の命を狙ってきた紅色の敵エース、
 指揮官機のゴーレムが確認されている。
 そしてその際、アルテミスが好意を寄せている(?)カレンが、
 敵エースの攻撃からアルテミスを庇って負傷していた。
 カレンの機体は大破したものの、大した怪我ではなかったが‥‥、
 アルテミスにとってそれはショックだったようで、今度はそんなことが無いように、
 自分の身は自分で守れるまでに成長したことを見せ付けようとしている次第。

 ほどなく戦域に到達。接敵。

 ***

「敵部隊を確認しました‥‥。ゴーレム6、陸戦型HW20‥‥です。
 ゴーレムのうち1機は‥‥他と形状がかなり異なっています‥‥。
 恐らく‥‥指揮官機と思われます‥‥気を付けて‥‥ください‥‥」
 ロゼアより各機へ通信。

 傭兵部隊(+ゼカリア小隊)はすぐさま対応に動く。

「いくぜ、兄弟」
「了解」
 事前の打ち合わせ通り――2機の鎧武者、シコンが長大な砲を構える。
 照準。目標、前方に展開する無人HW群。
 Anbarとカレンは、同時にトリガーを引く。
 固定武装の高出力レーザー砲『種子島』を同時に発射、掃射を行う。
 閃光が奔り、無人HW群を呑み込んだ‥‥。
 これは敵に先制攻撃を加え、怯ませ、道を作ることが目的。

「‥‥ジェイナス、目標を狙い撃つ」
 由稀機、DFスナイピングシュートを起動。
 精細動性アクチュエーター、狙撃型シフト。
 高分子レーザー砲『ラバグルート』で有人ゴーレムを狙撃。
 例の、紅色の指揮官機に対してはTFハイサイトを使用。腕や武装を狙う。
 ――が、敵指揮官機は回避して見せた。
 他の有人ゴーレム2機には命中。装甲を焼き焦がした。

「ファーストシュート完了。次、いってくれ!」
 Anbar機より通信。
「了解です。――ファルコン・スナイプ起動。‥‥こいつも喰らえッ!!」
 ティリア機は『種子島』の射線から外れた敵機へ向けて、
 ファルコン・スナイプBを使用したM−181大型榴弾砲の砲撃を連続で行う。
 ちなみに、AとBの併用は不可能。今回は命中率を優先し、Bを選択。

「ほんじゃま、露払いを始めるか」
 涼機、およびUPC軍のゼカリア小隊は対空榴弾を装填。
「軍人さん達、よろしく頼むぜ」
 ゼカリア改各機から「了解」との返答。
 連続で砲撃。榴弾をばら撒き、『種子島』により切り開かれた道を維持する。

 砲撃により敵が怯んでいる隙に、
 由稀機、Anbar機、ロゼア機、ハンフリー機、カレン機は無人HW群を突破。
 有人ゴーレムの対応へ向かう。

 悠季機、アルテミス機も同じくブーストを使用して突破。
 敵指揮官機の対応へ向かった。

●VS無人HW
 ブラック姉妹機は前衛として無人HWと交戦。

 ティリア機は後衛より無人HW群に対し、
 十式高性能長距離バルカンによって弾幕を展開し敵の装甲を削り、
 スナイパーライフルD−03で狙撃し、トドメを刺していく。
「相手のほうが数で勝っていたとしても‥‥火力なら、負けない‥‥!」
 その多大な火力に、無人HWは次々と撃破されていった。

 涼機はゼカリア小隊と共に420mm大口径滑腔砲で有人機対応班を火力支援。
「デカイの行くぞ、近くの奴は気を付けろよ!」
 味方に注意を促しつつ、旺盛な砲撃を加える。

●VS有人ゴーレム
 Anbar機はカレン機と共に前衛を張っていた。
 先にスナイパーライフルRによる狙撃や、
 試作型『スラスターライフル』での弾幕で敵を分断。
 そののちに接近し、近接戦闘へ移行。
 ストライク・アクセラレータと超伝導アクチュエータVer.4を使用し、
 一気に量産型機槍『宇部ノ守』の間合いへ踏み込み、
 突きを繰り出し、敵機の装甲を抉る。
 反撃のプロトン砲が来る。咄嗟に超伝導AEC・Type.Bで防御。
「‥‥効かないぜ」
 特殊電磁装甲によってほぼ無効化。表面装甲が少し焼けたのみ。
「まあ、3発までだけど‥‥な!」
 再び槍を構え、突き出す。

 カレン機は二刀を振るって有人ゴーレムと互角以上の戦いを見せる。

 由稀機は後衛として行動。
 基本は高分子レーザー砲『ラバグルート』で狙撃し、前衛をフォロー。
 正確な射撃により、前衛は大いに助けられた。
 しかし。
「チッ‥‥」
 接近してくる有人ゴーレム。
 数の上では互角なので、どうしてもフリーの敵が出てしまう。
 兵装をプラズマライフルとビームコーティングナイフに切り替え、
 DFバレットファストを起動して対応。
 プラズマ弾を浴びせつつ、BCナイフで装甲を斬り裂く。

 ロゼア機はハンフリー機と連携し、前衛を担当。
 マイクロブースターを常時使用。
 基本は敵の移動先を予測し、3.2cm高分子レーザー砲で射撃。
 マイクロブースターの効果もあり、レーザーは確実に敵の装甲を焼く。

 ロゼアは僚機のフォローも行う。
 その場合はレーザーガン『フィロソフィー』に切り替えた。
「牽制‥‥なら、当たらなくても‥‥!」
 ハンフリー機の援護。

 避けられない攻撃は機盾『レグルス』で的確に防御。
 単調な動きではなく、ランダムな機動を心がける。

 ハンフリー機、有人ゴーレムと近接格闘戦を演じる。
 牽制しつつ、ゴーレムの曲刀の射程外、機槍斧『アニマ』の間合いから攻撃。
「その程度で騎士の進撃を阻めるものか!」
 だが敵機の武装は曲刀だけではなく、チェーンガンやプロトン砲もあるので、
 旺盛な砲撃によりこちらの攻撃を潰されてしまうこともあった。

 連続での格闘攻撃ののち、虚を突く形でショットガン――M−SG10で射撃を加える。
 有人ゴーレムの機体が揺らぐ。
 変則的な攻撃を何度も行い、敵機のダメージが蓄積したところを見計らい――
 メテオ・ブーストを使用。
「アニマが奏でる葬送曲を、死出の手向けとして受け取るが良い」
 突撃、強烈な一撃を叩き込む。

●VS敵エース
 フィールド・コーティングを展開する悠季機。
 敵指揮官機が放った無数のミサイルを受け止める。
「くぅぅぅ‥‥」
 連続する衝撃。ダメージはそれほど大きくない。まだ、いける‥‥。
 敵の動きに注意しつつ、ハイ・ディフェンダーを振るう悠季機。
 基本的に攻撃ではなく、敵の攻撃を受け流すために。
 銃剣による突きの威力は鋭く、Fコーティングを展開していても装甲が削られる。
 ふと、ショットガンにて側面から銃撃を行っていたアルテミス機に敵の注意が向いた。
 リニアガンが放たれる。そこへ――
「やらせない‥‥」
 敵の死角と思われるところから、ドラゴン・スタッフで殴りかかる。
 すると、敵指揮官機の肘の突起が開き、無数のニードルが射出された。
「‥‥っ!?」
 悠季機の装甲にニードルが突き刺さる。
(隠し武器‥‥ニードルガンか‥‥)
 それでも注意はこちらに戻せた。徹底して足止めを図る。

 アルテミス機はDFバレットファストを常時起動。
 精細動性アクチュエーター、高機動型シフト。
 接近の際にはジグザグな軌道を取る。
 一定の距離を保ちつつ、M−SG10で、
 悠季機の攻撃とは別の角度から射撃。
 ‥‥攻撃はほとんど回避されてしまっているが、
 それでもショットガンによる攻撃はじわじわと敵の装甲を削っていた。

 また、ファランクス・ソウルで牽制し、
 機槍『アテナ』によるチャージアタックを仕掛ける。
 ‥‥しかしこちらの攻撃は攻撃前のモーションが大き過ぎるので見切られてしまった。
 なかなか当たらない。
「くそぅ!」
 悔しそうな声を上げるアルテミス。そのとき――
 敵機が反転、後退を始める。
「‥‥!」
 レーダーを見れば、敵機の数がかなり減っていた。
 距離を空けようとする敵指揮官機。
 ――ブーストと試作型斥力制御スラスターを使用した悠季機が回り込み、退路を塞ぐ。
 だが、悠季機は赤く発光した敵機の蹴りを受け、弾き飛ばされてしまう。
「に、逃げるなぁ!」
 アルテミス機はTFハイサイトを使用、8.8cm高分子レーザーライフルで射撃。
 敵指揮官機は振り返り、アルテミス機を見据えると――
 腰の兵装ラックのような所からダガーのような物を取り出し――アルテミス機に投げつけた。
「えっ――?」
 爆発。

 ***

 しばらくして。
 敵指揮官機の逃走を許したものの、他の敵機は全て撃破。
 作戦完了。

 ***

「今度は大丈夫だったよ♪」
 ベッドに横たわるアルテミスが、傍に座るカレンに向かって言った。
 ‥‥ここはUPCインド軍基地の医務室。
「あまり大丈夫そうには見えませんが‥‥」
 アルテミスは‥‥、敵指揮官機の攻撃を受け、機体が損傷。
 彼自身も傷を受けていた。幸い、命に別状は無かったが。
 激戦の後だったので、今は休息も兼ねてベッドを借りていた。
「全然大丈夫!」
 起き上がり、カレンにべたべた。
「引っ付かないでください。‥‥怪我人は、休んで」
「ぷう‥‥」
 相変わらずの無愛想っぷりに、頬を膨らませるアルテミスであったそうな。

 ‥‥ついでに、見舞いに来たブラック姉妹に対し「がるるぅ」と威嚇しておいた。
 なんでも、アルテミスはブラック姉妹がカレンに抱き付いていたところを目撃したらしい。
 敵対心。恋敵‥‥?
 カレンはノーマル。更に言えば恋愛にはまったく興味なし。
 そこを覆せるか、動かせるかどうかは、誰も知らない。
 現在はカレンの中で戦友扱いのアルテミス、あるいは同郷のお嬢様ファルリン、
 またあるいは年上のお姉さん・傭兵仲間のブラック姉妹の奮闘次第‥‥。

 ***

 こうして、デリーをめぐる戦いは、一応の終結を見せた――。