タイトル:【崩月】乙女の築城マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/06/05 07:21

●オープニング本文


 数日前。月面基地『崑崙』。KVドックエリア――。
「やっぱりしょっぺぇよなぁ‥‥」
「しょっぱいですねぇ‥‥」
 深いため息を吐く、作業服姿をした男二人。
 現場責任者の大平真弘(gz0494)とその部下だ。
 二人が頭を悩ませている理由、それは――
 KVの格納数だった。
「10機はないわー少なすぎるわー」
 この格納庫はKVを10機しか格納することができない。
 敵の襲撃が相次ぐ中、これでは大変困る。
 ほとんどのKVは駐留している輸送艦内で整備をしている状態だった。
「軍のお偉いさん方もそこを問題視しているようで、近々増築されるらしいです」
 書類を手に、部下が言った。
 数日後、KV格納庫増築用の資材を乗せた輸送艦体が来るそうな。
「そりゃまあ‥‥そうだろうな」
 ‥‥増設されるのはいいのだが、増築『する』のは、実際に作業をするのは自分たちなのだからあまり喜べない。
 しかしながら、段々と基地が立派になっていくのは嬉しく思う。現場責任者として。
「んじゃ、輸送艦の到着を待つとするか」

 ***

 そして現在。
「――そういうわけで、輸送艦の護衛任務に当てられたんですね」
「ええ、そういうこと」
 リギルケンタウルス級宇宙輸送艦の戦闘指揮所でUPC軍の士官服を着た女性二人が話している。
 一人は大人の魅力溢れる女性であり、少佐の階級章を付けていた。
 もう一人はまだ幼さの残る顔立ち。可愛い容姿と言える。こちらの階級は中尉。
 ちなみに二人とも、彼氏あり。
 ‥‥艦長の片瀬・歩美少佐と、艦載KV部隊(α−01部隊・通称乙女隊)隊長である早乙女・美咲(gz0215)中尉だった。
 現在、リギルケンタウルス級宇宙輸送艦(乙女隊母艦)は、月面基地KV格納庫増築用の資材を満載した宇宙輸送艦三隻を引き連れ、月付近宙域を『崑崙』へ向けて航行中である。
「本来なら、こういう輸送艦体の護衛はエクスカリバー級の役目なんだけどね‥‥」
 片瀬艦長は『破軍星』旗艦『オニキリマル』の艦長を務める男の顔を思い浮かべる。
 顔を合わす度にちょっかいをかけてくる鬱陶しいあの男は今頃、相当に多忙なことだろう。
(あの男の容姿は‥‥何故、あの人に――)
「『今は』無理でしょうね」
 早乙女中尉が言った。片瀬艦長ははっと我に返り、彼女を見る。
 大規模作戦が展開中の現在、大きな打撃力を持つエクスカリバー級宇宙巡洋艦は引っ張りだこだ。
 ただでさえ数が揃っていないのに‥‥。このような任務にエクスカリバー級を回している余裕はUPC軍には無かった。
 そこで、乙女隊の出番というわけである。
 打撃力が期待できない輸送艦のリギルケンタウルス級が母艦とはいえ、常時16機の高性能KVが配備されているのだ。
 それに傭兵部隊を加えれば、輸送艦体の護衛には十分だと判断されたのだろう。
「まあ、敵襲が無いことを祈るしか――」
 片瀬艦長が言いかけたそのとき、戦闘指揮所に警報が鳴り響いた。
「‥‥やっぱりね。敵種別を知らせて」
 オペレーターに尋ねる片瀬艦長。
「500m級のビッグフィッシュです。高速型と思われます」
 即座に若い女性オペレーターの返答。
「‥‥高速型、か」
 片瀬艦長は少し難しい表情をする。
 高速型。しかも500m級ともなればけっこうな数のワームか、あるいは宇宙キメラを抱えているのだろう。
 逃げ切れるとは思えない。
「早乙女中尉、α−01部隊の出撃準備急いで」
「了解しました!」
 早乙女中尉は敬礼して素早く戦闘指揮所を出て行った。
「傭兵部隊も全機発進」
「了解です」
 オペレーターは指示通りに、待機中の傭兵たちに連絡。
「全艦戦闘配置。敵艦は高速型‥‥とても振り切れない。よって、我々の作戦目的は敵艦・敵部隊の撃破、または撃退とする。守り通すわよ!」
 片瀬艦長の凛とした声が、戦闘指揮所に響いた――。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
風間・夕姫(ga8525
25歳・♀・DF
時枝・悠(ga8810
19歳・♀・AA
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
大神 直人(gb1865
18歳・♂・DG
夏目 リョウ(gb2267
16歳・♂・HD
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN

●リプレイ本文

●月面基地『崑崙』KV格納庫拡張計画
 乙女隊母艦。KV格納庫――。
 出撃を控えた10名の傭兵が自機の前に佇んでいた‥‥。

「この艦隊を無事送り届ければ、崑崙もより防衛体制が組み易くなる訳か。責任重大だな」
 威風堂々とした青年、白鐘剣一郎(ga0184)は天馬のエンブレムがペイントされた愛機を見上げる。
(ハンガー拡大に伴って、次は人手の問題が出てきそうだが‥‥それはまた別の話か)

「格納庫増築ですか‥‥」
 浅黄色の髪をした活発そうな少年、ノエル・アレノア(ga0237)はふむりと顎に手を当てる。
(工事現場の人達も、戦闘を行う僕達と同じ位大変なんだ‥‥。宇宙だから、地上よりも作業は難航しそう)
「僕達に出来ることはこの補給物資を精一杯、その方達へ届けるだけだよね。護り切ってみせます」

 ノエルの横に佇む、風を思わせる空色の髪の少女、ティリア=シルフィード(gb4903)は恋人である彼の言葉に「ええ、全力で守り抜きます」と頷く。
 しかし‥‥ティリアの表情は難しい物だった。
(いくら建造途中とは言え、曲がりなりにも月面での人類の拠点である基地に10機しかKVを格納できないと言うのはちょっと‥‥所か大分問題です‥‥)
 月面基地『崑崙』は設計初期段階で拡張性を最優先にして建設された為に不足している所が多々あった。
 その不足分は今後、拡張していく他無いだろう。
「早急に拡張工事を行う為にも、この物資はすべて無事に『崑崙』まで届けないといけませんね」
 ティリアの言う通り。資材を輸送する艦艇をしっかりと護衛するのが『崑崙』完成への一歩だ。

「うーん、奴さんも割りとやる気だねぇ。しかしウチらの仕事は、その気合をのしつけて返してやることなわけで」
 百瀬 香澄(ga4089)は接近中の敵艦が500m級の高速型BFだと聞き、両手を後頭部に当てる。
「じゃ、さっさと済ましてひとっ風呂浴びようかな」
『崑崙』には一応ながら風呂がある。ただし、ユニットバスだが。
 軍事施設の拡張が優先される中、流石に大浴場という訳にはいかなかった。

「戦闘後の楽しみを用意してある。そっちも頑張れよ」
 ボディラインがはっきりと浮かぶパイロットスーツ姿のワイルドな雰囲気の美人が言った。
 程良く引き締まった肉付きの良い肢体を見せ付けて、乙女隊の面々に向かって微笑む彼女の名は風間・夕姫(ga8525)。
 乙女隊の皆は「楽しみとは何ぞや?」と首をかしげていた。

「敵が来るだろうと思ってはいたけれど。この数は流石に厭になるな」
 軽量化された宇宙服を身に纏う時枝・悠(ga8810)はうんざりとした表情。
「あれか、楽して儲けようなんて性根が駄目なのか。ままならんもんだな、中々」
 楽な仕事など無い‥‥のだと思う。

「崑崙の格納数拡張は急務。此処はきっちり守っていきたいですね」
(人類の英知と努力の結晶‥‥『崑崙』。発展とその守護に必要な増築資材‥‥欠ける事無く送り届けたいものです)
 恰幅の良い体型の男性、米本 剛(gb0843)はそう言い、思った。
 だが‥‥彼の表情はしょんぼりとしている。
(歩美さんとは依頼後にゆっくりとお会いしたい物ですな‥‥)
 正式なお付き合いをしている女性と‥‥最近はドタバタとしていてあまり会う時間が取れていない気がしていた‥‥。
 お相手の女性、片瀬・歩美はこの艦の艦長なのだから多忙なのは仕方ないと思うが‥‥。

「月‥‥ね。まだまだ拠点が少ないからなぁ」
 宇宙服の機能も備えるAU−KVのヘルメットを片手に持ち、大神 直人(gb1865)が呟く。
 そう‥‥宇宙における人類側の拠点は未だ宇宙要塞カンパネラとここ、月面基地『崑崙』しかない。
 しかも『崑崙』はまだ拠点と言うには心許なかった。

(俺も崑崙の格納庫の拡張、無事に成し遂げたいからな‥‥)
 長い赤髪の少年、夏目 リョウ(gb2267)はぐっと拳を握る。

「大切な荷物を無事届けるのがファリス達の役目なの。だから、邪魔する敵がいるならきちんと倒すの!」
 小さくて、ふんわりふわふわとした容姿のファリス(gb9339)だが、口にした言葉は心強い。

 程無く、艦のオペレーターより「傭兵はKVに搭乗して下さい」との連絡。

●輸送艦隊防衛戦1
 KVに搭乗した傭兵達‥‥。
 彼らは打ち合わせにてBF対応1班、及びHW対応A〜D班に分かれる事としたが、報告書では便宜上、エレメント(2機編隊)1〜5と記述する。

 エレメント1――。
 剣一郎の機体はシュテルン・G『流星皇』。
「艦長、我々は前に出て敵を迎撃します。後は打ち合わせ通りに」
 乙女隊母艦の戦闘指揮所へ通信。
「護りの要は乙女隊に任せた。宜しく頼むな」
 続いて乙女隊各機へ。「了解!」との返答。

 悠の機体はアンジェリカ改『デアボリカ』。
「頼れる味方が居るってのは有難いな」
 剣一郎の映像をモニターのウィンドウに映す。

 ***

 エレメント2――。
 香澄の機体はタマモ『ミズクメ』。
「ふう。それじゃあ行こうか、冴」
 愛する人へ通信を送る香澄。「そちらもご無事で」との返事が返ってくる。

 米本の機体はフィーニクス『青鷺火』。
「行って参ります。戦果を期待していて下さい」
 片瀬艦長へ通信を送る米本。「気を付けて、必ず帰還して」との返答。

 ***

 エレメント3――。
 夕姫の機体はコロナ。
「悪いがその子に傷を付けたら叔父夫婦に私が殺されるんでな、手を出させる訳には行かない」

 ファリスの機体はコロナ『ロスヴァイセ』。
「【ロスヴァイセ】の初陣なの。周りの皆の足手纏いにならないように、ファリス、頑張るの」

 ***

 エレメント4――。
 直人の機体はピュアホワイト。
「索敵管制通信‥‥と、やる事は多いな」

 ティリアの機体はニェーバ『Hedgehog』。
「なるべく後ろに行かせないように努力しますけど‥‥突破されてしまった時は対応、お願いします」
 乙女隊へ通信。「任せて!」と元気な声が返って来た。

 ***

 エレメント5――。
 ノエルの機体はディアブロ改『ゼロ』。
(僕の機体は地上用だから、宇宙用の機体の人ほど自由には動けないけど‥‥援護ぐらいは十分に出来る筈)
 愛機のコンソールを優しく撫でる。
「足を引っ張らないよう頑張らないと。いくよ、ゼロ」
 そして操縦桿を強く握った。

 リョウの機体はスフィーダ『大宇宙(てんくう)』。
「美咲達が艦を護ってくれてるんだ、急いで奴らを片付ける!」

 乙女隊全機に続いて、傭兵部隊全機が輸送艦から発進。

 ***

 乙女隊は予定通り各小隊に分かれ、艦艇の護衛に付いた。
 傭兵部隊は敵の迎撃へ向かう。BFの前面には既に多数のHWが展開。

 エレメント1――。
「やはり先に無人機を繰り出して来たか」
 剣一郎は人型の機体を躍らせる。
「では行こう。ペガサス、エンゲージ!」
 宇宙用フレーム装備の剣一郎機は常時ブーストを噴かす必要がある。
 速度を生かし、突撃砲と機関砲の弾幕でHWを蹴散らし、一気にBFへ向かう。

 悠機はHW群をマルチロックオン。
「早めに邪魔な奴らを片付ける!!」
 声を上げつつ、ミサイルレリーズを押し込んだ。
 小型のミサイルを全弾発射。プラズマの爆発が巻き起こる。

 ***

 エレメント2――。
「まずは弾幕で叩き落とす!」
 突撃砲とレーザー機関砲を放つ香澄機。
「そっちへは行かせないっての!」
 弾幕を掻い潜り、突破しようとする敵機には多数のミサイルを発射して牽制。
「喰らいな、とっておきの荷電粒子砲だ」
 極太の光条がHWを貫き、爆発を起こした。

 米本機は突撃砲とミサイルを主軸に交戦。
 極力射撃戦に徹するようにしていた。しかし。
 敵の数は多く接近を許す。近接戦用アームが米本機を捉えた――ように見えた。
「残念、其れは残像です」
『残像回避』。米本機は人型に変形し、疑似慣性制御を用いた機動で敵機の背後を取り、機刀の斬撃で敵機を撃破。

 ***

 エレメント3――。
 夕姫機はレーザー砲で射撃しつつ、BFを動きを見ていた。
「ちっ、でかい上に速いとか、厄介極まりないな‥‥剣一郎、悠、頼んだぞ」
 言いながら兵装を機拳に切り替え。接近してきたHWを殴り飛ばす。
 2人から「了解した!」との返答。

「目標、マルチロックなの。なるべく多くの敵にダメージを与えるの!」
 ファリスは複数の目標へ向けてミサイルを発射。プラズマの爆発。
「逃がさないの。落ちて貰うの」
 ダメージを負ったHWに対し、レーザーで追撃をかける。

 ***

 エレメント4――。
「輸送艦3隻相手に無人とはいえHWを40機も出してくるとは敵も張り切ってるな」
 直人はとりあえず、敵機をマルチロックオン。多数のミサイルを射出した。
 ミサイルは多数が命中した物の攻撃力の低い機体では大きな打撃は与えられない。
「やっぱりか‥‥仕方ないな」
 兵装をレーザー砲に切り替えつつ、行動を支援に移行。

「機体の硬さには自信があるから‥‥射撃戦で勝負!」
 ティリア機は狙撃砲と突撃砲で兎に角、敵へ旺盛な砲火を浴びせる。
 それにより接近するHWが火を噴き、数機が爆散した。

 ***

 エレメント5――。
「行くぞ大宇宙、超武装変だっ! ここから先へは通さない!」
 リョウ機は人型に変形。機剣でHWに斬撃を加える。
「敵機の数を減らさないと!」
 ノエル機は狙撃砲とミサイルを主体としてリョウ機をサポート。
「援護、助かる。何せこの機体、相変わらずの耐久力なんでな」
 リョウの機体は‥‥肉抜きの為、相変わらず打たれ弱い。

 ***

 エレメント1――。
 剣一郎機と悠機はHW群を突破、BFに取り付いた。
「一隻だけだが敵のサイズはこちらの艦艇の倍以上‥‥直撃は言わずもがな、かすっただけでも‥‥被害は考えたくないな」
「500m級‥‥そう簡単には落ちてくれないだろうな‥‥」
 砲撃を加えつつ、推進部を狙うべく後方へ回り込む。
 すると――あからさまな四連装外部ブースターを発見。
「これは‥‥」
「破壊以外無いな!」
 連装電磁加速砲とスキルにより強化されたレーザー砲に貫かれ、外部ブースターは爆散した。
 ダメージコントロールか、即座に船体から切り離されたが。

●輸送艦隊防衛戦2
 エレメント2――。
 突撃砲で射撃するが、香澄機はついに敵機の突破を許してしまう。
「すまん、冴、抜けられた。頼む」
 即座に「了解、対応します」との返答。敵機のマーカーが消えた。
「頼むよ米本の旦那。カッコいいとこ見せてやれ!」
 再度レーザーと突撃砲で弾幕を展開。米本機の前方へ敵を誘導する。
「じゃあ私も気張ってこうかな。さぁ、ブチ抜かれたいのから前に並べ!」

 米本は‥‥射線上に敵機がある程度並んだ事を確認。その先にはBFもいる。
「PDレーザー発射準備‥‥各機射線に御注意を!」
 一筋の光が駆け抜けた。HWを多数巻き込んだ後にBFへ命中するが、外装を焼いたのみ。

 ***

 エレメント3――。
「ぶち抜け!」
 夕姫機は狙いを定めて荷電粒子砲を発射。HW1機が爆散。

「ロックオン、ミサイルを発射するの」
 多弾頭ミサイルを撃ち尽くしたファリス機は単発ミサイルに切り替えて攻撃を継続。
「敵が多すぎるの。対応が間に合わない‥‥少しそちらにお願いするの」
 レーザーで追撃をかけるが対応し切れない。突破される事も増えてきた。
 乙女隊が迅速に対応。
「『ETP』起動なの!」
 囲まれればスキルを起動し、多数のプロトン砲を回避して見せる。

 ***

 エレメント4――。
「電子戦機も気張らないとな」
 直人機は管制に集中。ESMが捉えた情報をリアルタイムで味方に送信。

 必然的にティリア機へ圧力が集中。敵機に包囲されてしまう。
「くっ、やっぱり多い。‥‥落ちろー!!」
 突撃砲で牽制後、ミサイルを連続発射。状況の打破を試みる。

 ***

 エレメント5――。
「絶対に無傷では通さない!」
 狙撃砲では対応が間に合わない為、突撃砲を主体とし、射撃を行うノエル機。

「数が多い‥‥だが美咲達の所へは一機たりとも行かせはしないぜ。この剣の輝きにかけて!」
 機剣でHWを一刀両断! 爆発が起こる。障害物を生かしてリョウ機は敵機に接近、斬撃を加えていた。

 ***

 エレメント1――。
 BFの推進部の破壊に成功した剣一郎機と悠機。巨大な鯨は最早、足を止めている。
 2機が次に目指すのは――艦橋。
「単独では厳しいが‥‥2機でならやりようはある」
 剣一郎機が練剣を。
「勝負を掛ける」
 悠機はスキルを使用したBCアクスを。
 それぞれ振るい、BFの艦橋付近を切り刻む。
 ‥‥許容以上のダメージを受けたBFは小爆発を何度も起こし、ついには大爆発を起こして四散した。

 ***
 
 HWの半数以上を撃破した傭兵部隊各エレメントが剣一郎機と悠機に接近してくる。
「他の皆も来たか。では仕上げと行こう」
 敵母艦は仕留めた。後は残存のHWを片付けるのみ。

 ***

 暫くして、HWを全機撃破。
「目標の掃討を確認。お疲れ様だ」
 輸送艦隊の損害はごく軽微。無事『崑崙』へ送り届ける事に成功した。

●戦闘後‥‥『崑崙』にて
 依頼を無事に完了した傭兵達。
 働き詰めだった乙女隊にも短い休息の許可が出る。

 居住エリア。女性用のお風呂――。
「やっぱりシャワーだけじゃなくお湯に入れるのは気持ちがいいね」
「そうですね。ちょっとキツイですけど」
 香澄は冴と一緒に、1つのバスタブに入っていた。
 ギリギリ2人いけるが‥‥狭い。けれども身体が密着するのは悪くない? とか2人は思う。

 ***

 レストランエリア――。
「そろそろ恋しくなる頃だろうと思って。頑張ってる皆へお姉さんからの差し入れだ」
 夕姫は持参したクーラーボックスを、乙女達の前で開けて見せる。
 そこに詰まっていたのはキラキラと輝くスイーツ群。
 これはどうしたのかと尋ねられると‥‥自費で購入した物もあるが、手作りの物もあると夕姫は答える。
「ん? この位は女として当然の嗜みだぞ」
 乙女達の目には判別が付かなかった。そして夕姫へ視線が集中。
「おい、今‥‥私にお菓子作りなんて似合わないとか誰か失礼な事考えただろ?」
 乙女達は「そんな事ないですよー」と、早速お菓子を口にした。
「うまうま。ですの」
 ファリスもいつの間にか混ざって食べている。

 ***

 乙女隊母艦。艦長室――。
 置かれたソファーに対面で座る歩美と‥‥米本。
「何と言いますか‥‥率直に申しますと二人きりで過ごす時間を少しでも長く欲しいな‥‥と」
 彼は意を決し、本音を吐き出してみる。
「‥‥」
 戦時下で軍人に、しかも艦を任されている多忙な相手に、時間を作れと自分は言っている。
 無茶なお願いだった。予想通り歩美は無言。
「‥‥あまり一緒にはいられないけど、お茶位なら」
 間を置いて、彼女はそう言った。
 2人は紅茶をすすりながら語らう。
 米本はささやかな心休まる一時を噛み締めるのだった‥‥。