タイトル:【崩月】チェラルとEX級マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/06/26 13:42

●オープニング本文


 数日前。某宙域。
 そこではUPC軍とバグア軍の艦隊同士が正面から殴り合いの戦闘を行っていた――。

 ***

「見つけたぜ‥‥あれがUPCの巡洋艦か」
 UPC軍艦隊の側面から近づく影が複数。カスタマイズされたタロスだった。
「隊長、KV部隊が接近してきます」
 副官からの通信。護衛に出てきたか、と隊長機に乗る強化人間は思う。
 機種はS−02リヴァティーとPT−100ラスヴィエート。
 しかし隊長は敵なら即倒す! という主義なのでそんなことはどうでもよかった。
「しゃらくせぇ!」
 両腕部の機関砲で弾幕を張りつつ接近。
 さらに両腕部から練剣を伸ばし、KV1機を両断した。
 爆発。率いる他のカスタムタロスも次々に敵を屠っている。
「いくぜ、UPCの巡洋艦! 速攻で沈めてやる!」
 KVを多数撃破し、一際戦果を挙げていた隊長機が再度練剣を伸ばしたそのとき。
「隊長!」
 また副官から通信。切迫した声だった。
「どうした? これからってときに」
「‥‥我が隊の母艦が‥‥撃沈されました‥‥。再編成のために帰投せよとのことです‥‥」
「なんだとぉ!?」
 彼らの母艦――バグア巡洋艦はUPC軍のエクスカリバー級宇宙巡洋艦のG光線ブラスター砲に撃ち抜かれ、G5弾頭ミサイルをしこたま浴び、爆沈していた‥‥。

 ***

 現在。
 漆黒の宇宙空間をのろのろと航行する1隻の船。
「艦長、ランデブーポイントに到着しました」
「了解した。全艦停止。‥‥しかしなんとまあ、情けないものだな」
「そうですね‥‥」
 戦闘指揮所での、艦長と副長の会話。
 この艦長、UPC軍の中佐が指揮を執っているのはエクスカリバー級宇宙巡洋艦である。
 しかし、先の艦隊戦により中破。甚大な損傷を受けてしまった。
 それにより戦線を離脱。宇宙要塞カンパネラで補修を受けることとなった。
 現在、エスコートしてくれる護衛部隊とのランデブー待ち。
 艦には4機のS−02リヴァティーが護衛のために張り付いている。
「‥‥」
 艦長はメインスクリーンの端に映るそれを見てため息をついた。
 この艦載(正確には繋留)護衛部隊‥‥元は12機の中隊規模だったのだ。それがここまで損耗‥‥。
 残っている4機も装甲はボロボロで、少なからず損傷しており、護衛としては心許ない。
 というわけで護衛部隊を手配した次第。
 ‥‥ほどなく、護衛部隊を載せた小型宇宙輸送艦2隻の船影がメインスクリーンに映し出される。
 そして通信。
「やっほー、艦長さん、元気してるかな?」
 身体にぴったりとフィットする宇宙服を兼ねたパイロットスーツを着た活発そうな少女が画面に映った。
 ――チェラル・ウィリン(gz0027)。人類側のトップエースチーム、『ブルーファントム』の1人。
 彼女とこの巡洋艦は何度か作戦を共にしたことがあったため、艦長とも面識がある。
 艦長は苦笑して口を開いた。
「元気とは言えないが‥‥なんとか生き延びているよ。艦はご覧の有り様だがね」
「確かに‥‥これはひどい」
「武装はほとんどが使用不能。『ブルーファントム』の力、頼りにさせてもらう」
「合点承知!」
『ブルーファントム』のリーダーから教わった言葉を口にし、チェラルは敬礼した。
「ボクたちの他にも傭兵さんたちがいるから百人力! 安心していいよ☆」
「ははは。それではよろしく頼む」
 画面いっぱいに映し出されたチェラルのにっこり笑顔に、艦長はまた苦笑した。

 ***

 中破状態のエクスカリバー級と輸送艦がランデブー中の宙域――。
 そこに潜む影があった‥‥。
「あれだ、間違いねぇ、俺たちの母艦を沈めやがった船だ‥‥!」
 船体にペイントされたあの船籍番号は間違いない。
 先の艦隊戦にて母艦であった巡洋艦を失い、代わりに宛がわれたビッグフィッシュの艦橋で、カスタムタロス部隊を率いる隊長の強化人間がギリギリと奥歯を噛む。
 ‥‥この隊長は宛がわれたBFがえらく気に入らなかった。
 それもこれも、全てあの敵巡洋艦のせい‥‥! 隊長は船影を睨みつける。
「借りはきっちり返してやんよ!!」
「しかし隊長‥‥」
「あぁん?」
 息巻く上官に対し、副官がおずおずと声をかけた。案の定睨まれる。
「あの輸送艦2隻のうち1隻‥‥情報では‥‥『チェラル・ウィリン』が乗艦しているものと一致するのですが‥‥」
 画面に船籍番号を表示する副官。
「誰だそいつは?」
「敵のエースです。しかもすこぶる強いと噂の、『ブルーファントム』の1人――」
「知るかそんなこと! 俺様もエースだ! 船と一緒に落とす!」
「はあ‥‥」
 まあ、言動やら性格やらに問題はあるが、うちの隊長の腕は確かだ‥‥と副官は考える。
「それじゃあ出撃準備だ! いくぜぇ‥‥必ず沈めてやる!!」

●参加者一覧

勇姫 凛(ga5063
18歳・♂・BM
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
美崎 瑠璃(gb0339
16歳・♀・ER
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER
黒羽 拓海(gc7335
20歳・♂・PN
入間 来栖(gc8854
13歳・♀・ER

●リプレイ本文

●エクスカリバー級宇宙巡洋艦護衛任務
 中破した巡洋艦を宇宙要塞カンパネラまで護衛する依頼を受けた7名の傭兵。
 今は随伴する小型宇宙輸送艦のブリーフィングルームで待機中。
 いつ、バグアの襲撃があるか分からない為だ――。

「チェラル、一緒に巡洋艦を護衛して、バグアが襲ってきたらすぐに撃退しようね!」
 少女と見紛う長髪の美少年、アイドル傭兵の勇姫 凛(ga5063)は恋人のチェラル・ウィリン(gz0027)に向かって言う。
「あははっ、凛くんは気合十分だね〜。‥‥勿論、任務は完遂するよっ。その為に呼ばれたんだからねっ」
 直に会う機会の少ない恋人達‥‥。人類側のエースチーム『ブルーファントム』のチェラルは多忙、あちこちの戦域へ引っ張りだこだった。
 そんな訳で‥‥折角の機会なのでチェラルは自分たちの母艦から、わざわざ傭兵達の母艦へ足を運んでいた。

「巡洋艦に戦闘力がない以上、ここは何としても水際で敵を防がないといけませんね。どこまでやれるか分かりませんけれど、全力を尽くします」
 乾 幸香(ga8460)は真剣な表情で拳をきゅっと握る。
 彼女は身体にぴったりフィットするパイロットスーツ姿。健康な男性が目にすれば生唾ものの、豊満な肢体が鮮明に窺える。
 ちなみに他の傭兵達も皆、すぐ出撃できるよう、パイロットスーツを身に着けていた。

「‥‥こーゆー状況で追撃されるのはお約束みたいなモンだよね。ま、そういう事態に備えてのあたし達な訳だし。フネには手出しさせないぞっと!」
 元気溌剌な少女、美崎 瑠璃(gb0339)が凛に負けず劣らずの気合を見せる。
 彼女はパイロットスーツに装甲が施されたハードシェルスーツを着用。
 男子諸君には残念ながら、そのスレンダーなはずのボディラインはあまり浮かんでいない。

「皆は絶対守る、それが我輩の生きる意味‥‥」
 ラサ・ジェネシス(gc2273)は柄にもなく、シリアスな雰囲気を纏っている。
 ‥‥いや、これが彼女の本心なのだろう。

(バグアがこの機会をみすみす逃すとは思えない‥‥恐らく強敵が来る‥‥)
 同じくシリアスな雰囲気のBEATRICE(gc6758)。難しい表情をしている。
 ‥‥エクスカリバー級はUPC軍にとって敵艦艇に打撃を与える事のできる貴重な存在。
 その損失は大きな痛手となる。必ず守り通さなければならない。

(中隊規模の護衛部隊が3分の1にまで損耗か‥‥)
 あごに手を当て、思案する黒髪の青年、黒羽 拓海(gc7335)。
 巡洋艦所属の護衛部隊は現在、リヴァティーが4機。だが元は12機編成だったと聞いた。
 ‥‥それほどまでに、あの艦の潜り抜けた戦闘は激しかったのだろうと、拓海は考える。
「まあいい、降りかかる火の粉は払うまでだ」

(ブルーファントム‥‥一体どんな方々なんでしょうか‥‥?)
 人類側のトップエースチームと聞いて、小柄で可憐な少女、入間 来栖(gc8854)はタフで屈強なだんでぃ達を想像中。
 しかも今、そのエースがこの艦を訪れているとの事。これはチャンス!
 という事で来栖が噂の『軍曹』の所へ向かうと――
 凛と楽しそうに会話しているチェラルの姿が目に映った。
(す‥‥素敵です‥‥!)
 来栖のチェラルに対する第一印象はデキる素敵なお姉さん! だった。
 両手を胸の前で組んで瞳をきらきらと輝かせる。

 しばらくして、ブリーフィングルームに警報が鳴り響く。――敵襲。
 傭兵達は急いで格納庫へ移動、チェラルは母艦へ戻った。

●出撃・奔る閃光
 小型宇宙輸送艦。格納庫――。
 傭兵達は既にKVへ搭乗し、出撃準備完了。

 凛の機体はフィーニクス。
「傷ついた仲間をバグアの好きにはさせない。紅の翼、凛のフィーニクス初出撃だ!」

 幸香の機体はハヤテ『アエーマ』。
「敵のほうが数が多いようなので傭兵同士の連携が大事です。相互補完を図り、効率的な攻撃を心掛けたほうが良いですね」
 各機より「了解」との返答。

 瑠璃の機体はハヤテ『Lapis Lazuli Mk3』。
「敵部隊にはタロスがいるらしいじゃない。腕が鳴るね!」

 ラサの機体はタマモ『千本毬藻』。
(巡洋艦は必ず我輩達が――)

 BEATRICEの機体はロングボウII『ミサイルキャリア』。
「足手まといにならないと良いのですが‥‥」

 拓海の機体はタマモ『Huckebein』。
「HWは任せた。エースの実力、当てにしている」
 チェラル機へ通信。「任せてっ!」との力強い返答。

 来栖の機体は幻龍『Cya』。
「――行きましょう、『Cya』さんっ!」

 傭兵部隊のKV、全機発進。

 ***

「お疲れ様デス、ゆっくり休んでください」
 母艦から発進後、ラサは巡洋艦に張り付いているリヴァティーへ通信を送った。
 傷だらけの4機‥‥。モニターのウィンドウにそれを映して、ラサは敬礼。
「気遣い感謝する。しかし我々の任務はこの艦の護衛。戦力にはならないかもしれないが‥‥我々は任務を続行し、艦の‥‥最後の守りとなる」
「そうデスか‥‥了解しまシタ」
 ラサは彼らにも矜持があるのだろうと考え、操縦桿を握り締めた。
 
「これ以上は‥‥させませんっ!」
 満身創痍のエクスカリバー級を目の当たりにして決意を固める来栖。
 死傷者0、巡洋艦被害0を貫徹する! と意気込む。
「入間殿、各機とのデータリンクよろしくデス」
 ラサ機より通信。
「ろじゃーですっ! 逆探知を開始します」
 来栖はそのように返答した後、電子波長装置を起動。
 波長放射ユニットが展開。妨害電波を中和すると共にジャミング発生源を探知する。
「ナンバリング完了。データ転送します‥‥!」
 敵部隊のタロス、及びHWにマーカーを付けた来栖は味方全機へ情報を送信。
「軍曹の腕を信じます‥‥!」
 チェラルへ通信しつつ、簡易ブーストの疑似慣性制御により、機首を敵部隊のタロス8機へ向ける。
「健闘を祈るよっ!」
 モニターのウィンドウにチェラルの敬礼する姿が表示された。

 ***

「データリンクの構築を確認。予定通り飽和攻撃を仕掛けましょう。皆さん、準備は良いですか?」
 幸香よりミサイルでの一斉攻撃を行う各機、及び初撃を担当する凛機へ通信。

 BEATRICE機――
「準備はできています。ここで大きく減らしたい所ですが、タロスには少々豆鉄砲でしょうか‥‥?」

 瑠璃機――
「いつでもいけるよ!」

 ラサ機――
「コンテナの管狐達は早く外に出たいと言っているデス」

 凛機――
「こっちは大丈夫。ターゲットロック‥‥それじゃあいくよ! 宇宙を切り裂く剣になれ! プロトディメントレーザー!」
 彼がトリガーを引くと、敵部隊へ向けて一直線に光が迸る。

 BEATRICE機――
「一足先に仕掛けます‥‥K−02、一斉発射」
 PDレーザーとほぼ同時に投射装置を使用。小型ミサイルを一斉に射出。無数のミサイルが敵部隊へ襲い掛かる。

 ‥‥光条と無数のミサイルが着弾。爆発が巻き起こった。
 タロスを狙った攻撃だったが、巻き添えを喰らったHW数機が爆散する。
「冷却モードに移行‥‥まずはこの30秒が勝負か」
 凛機はこれより30秒間、機体性能が低下する。迂闊には動けない‥‥。

 続いて幸香機――
「目標、マルチロック。GP−9ミサイル、発射」

 瑠璃機――
「ロック完了! 必殺! プラズマ・スターダスト! いっけぇー! ‥‥なーんて。マルチロックミサイル、一度撃ってみたかったんだよねー♪」

 ラサ機――
「管狐、行くのダー!」

 無数のプラズマミサイルと、無数の小型ミサイルが敵部隊へ、群れる狼の如く喰らいつく。
 だが、バグアもやられてばかりでは無かった。
 八条の閃光――荷電粒子砲が宇宙の暗闇を斬り裂き、傭兵部隊と艦艇へ――。
「なっ‥‥!」
 幸香は迫る光に目を見開く。
 敵部隊の指揮官は初撃を受けた時点で一斉攻撃を決めていた。時間差での攻撃があだとなった形である。

 ***

「味方の損害はどうなんデス!?」
 慌てた様子のラサ。
「‥‥味方艦に被弾は無しっ! 敵の攻撃は逸れたようです‥‥!」
 管制を担当する来栖機からの報告。
 凛機とBEATRICE機による、軌道の違う二つの攻撃が敵の態勢を崩したのは間違いなかったらしい。
 ラサはほっと胸を撫で下ろす。

「‥‥来るぞ! 迎撃を!」
 拓海が叫んだ。ミサイルの爆炎を抜け、8機のタロスが接近して来る。
 ――タロスは全機健在か、と、拓海は表情を歪めた。

「損傷の大きい敵機を割り出します‥‥!」
 高感度の偵察用カメラを駆使して敵機の状態の把握に努める来栖機。
「出ましたっ! 皆さんあの敵を狙ってください‥‥!」
「了解デス。‥‥上手く釣れるカナ?」
 来栖機からの指示にラサ機が動いた。
 兵装を切り替え。敵機をロックオン。高威力の連装電磁加速砲を発射。

「今度はこちらから――参る!」
 二刀を抜いて拓海機も前へ出る。

●VSカスタムタロス・前半
 傭兵部隊は直接戦闘へ突入。

 凛機――
「冷却完了。絶対に艦をやらせはしないんだからなっ。くらえっ、もう一度っ」
 性能低下状態から回復した凛機は再度PDレーザーを発射。荷電粒子砲を撃たせまいとし、敵の注意をこちらへ向ける。
 補給は後回し。戻っている余裕は無かった。
「お前の相手は、凛達だ!」

 幸香機――
「Aアクセレータ起動。‥‥撃ち抜く!」
 損傷の大きい敵機を狙い、ロケットを発射した後にライフルで射撃。
 被弾した敵機の装甲が更に大きく削られる。

 瑠璃機――
「巡洋艦には行かせない! 残りのミサイル――全弾発射!」
 GP−9ミサイルを放ち、敵の足止めを図る。
「撃ちまくる! さっさと落ちろー!」
 その後にバルカンとライフルに切り替え。弾幕を展開。

 ラサ機――
「無名の貧相な体形のメイド傭兵で済まないがお相手してもらうヨ」
 戦闘機形態にて奉天製アサルトライフルで射撃し、敵機を牽制。
「ちなみにチェラル殿は我輩の200倍強くてスタイルいいヨ」
 などとオープン回線で敵を煽って(?)みる。

 BEATRICE機――
「巡洋艦へは‥‥近づかせはしない‥‥」
 ミサイルを撃ち尽くし、ライフルへと切り替え。
 敵の攻撃を妨害するように射撃を行う。

 拓海機――
「突撃を仕掛ける!」
 マニューバAを使用。二刀による連続の斬撃を敵へ加える。
 敵二機からの反撃。機関砲の弾幕が来る。
「この程度では‥‥!!」
 マニューバBにより回避、撹乱。

 来栖機――
「敵を観察して‥‥少しでも皆さんへ情報を‥‥」
 敵機の損傷具合を確認し、随時味方へ連絡。
 一般的なタロスとは異なった形状。敵はカスタムタロスと思われた。武装も固定武装のみらしい。
「護衛部隊の人達の所へは行かせません‥‥!」
 数の上ではまだ敵が上。抜けてくる敵がいればロケットで牽制し、追い返す。

●VSカスタムタロス・後半
 タロスは未だに全機健在だった。敵は練度の高い部隊らしい。
 しかし、傭兵部隊も健闘。確実に敵へダメージを与えている。

 凛機――
「やらせはしないんだぞっ!」
 常に複数のタロスを意識。突破されないように気を配りつつ、レーザーガトリングで弾幕を展開。
 凛機の背後から敵機が接近。練剣を伸ばしている‥‥! 来栖機より警告。
「残念だけど、それは残像だよ」
 スキルを使用して初撃は避けた。だが――
「うわっ!?」
 返しの刃を受け、片方の翼を失ってしまう。
「くぅぅ‥‥」
 凛機は掃射後の冷却中の上、極端な肉抜きにより耐久力が低い。状態は中破といった所。
「でも! まだ戦えるんだからなっ!」

 幸香機――
「自由には撃たせません!」
 ライフルで射撃、およびロケットを発射し、懸命に荷電粒子砲の発射を阻止する。
 敵は隙あらばと巡洋艦を狙って来るので‥‥幸香は必死だった。額に汗が浮かぶ。

 瑠璃機――
「行かせないと言ったぁ! CRブースター点火! 駆け抜けろ! 『Lapis Lazuli Mk3』!!」
 敵一機が巡洋艦へ向かう。それを追う瑠璃機。
 圧倒的速力で追い縋り、弾幕を展開して敵を後退させる。

 ラサ機――
「『千本毬藻』の速さに付いて来られるかッ」
 隊長機と思われるタロスと交戦中。機動力を生かしてかく乱を行う。
「マニューバBからの牽制射撃!」
 この指揮官は侮れないと判断したラサは攻勢に出る。
「直角機動からの――剣翼!」
 肉薄しての斬撃。敵機は回避運動。装甲を掠める。
「ここで、とっておきダー!!」
 距離を取り、疑似慣性制御により反転。
 連装電磁加速砲を発射。――命中。ついに隊長機へ直撃を喰らわせた。装甲が弾け、破片が舞う。

 BEATRICE機――
「なかなかにしぶとい‥‥その上、しつこいですね‥‥」
 変わらず敵の攻撃を妨害中。
 敵部隊は巡洋艦に狙いを絞っているようだった。
 敵機が接近し攻撃、味方が妨害、敵機が後退、という光景が何度も何度も繰り返されている。

 拓海機――
「これを潰せば! 撃たせん!」
 胸部の荷電粒子砲を狙って斬撃を繰り出す。
 敵機は回避しつつ練剣でのカウンターを見舞ってきた。
 一旦距離を取る拓海機。そのとき。
「――っ!?」
 敵機が荷電粒子砲を発射。拓海機の軸線上には‥‥巡洋艦。
 拓海機は即座に反応し、練機刀に兵装を切り替え。それと同時にRAを使用。敵の攻撃を受け止める‥‥!
「‥‥俺の、いや、俺達の役目は巡洋艦を守る事だ」
 直撃を受け、赤熱する拓海機の装甲。再び二刀を構え、敵機へ斬り付ける。

 来栖機――
「ブーストONっ! 白金蜃気楼、展開っ!」
 一気に接近。敵機の至近距離で幻霧を展開。敵の目を眩ませる。

 ***

 ラサ機――
「KV壊したらまたおやっさんに殴られてアホになるッ」
 こちらは激しい攻撃を受けていた。‥‥電磁加速砲を命中させてからというもの、敵の動きが変わった。
 これは‥‥本気になったのだろうか? それともブチキレたのだろうか? と考える。
 とにかく苛烈な攻撃だった。そして、一瞬の隙を突いて隊長機がその機体を巡洋艦へ向ける。
 荷電粒子砲が発射される寸前にラサ機が割り込んだ。RAを使用。
「我輩ってホント、可能を不可能に――」
 光に呑み込まれる、ラサ機‥‥。

 ***

 あれからほどなくして、タロス部隊は撤退して行った。理由はHWが全滅した為と思われる。
 結局、タロスは最後まで全機健在‥‥しかしながら、大ダメージを与えたのは確か。

 襲撃を退け、巡洋艦と共に宇宙空間を航行する小型宇宙輸送艦。そのブリーフィングルームには‥‥
「お疲れ様デス。‥‥おぉ、なんというダイナマイツ」
 元気に無重力空間を泳ぐラサの姿が!
 荷電粒子砲の直撃を受けた物の、RAもあってか、大破は免れた。
 今はチェラルへ挨拶し、その見事なウエストラインに見惚れている。チェラルは恥ずかしそうに照れ笑い。

 そんなこんなで、傭兵達は依頼を無事に完遂。巡洋艦を宇宙要塞カンパネラまで送り届けたのだった。