タイトル:【決戦】智覇の冒険9マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/11/16 16:50

●オープニング本文


 唐突だが、ダークファイターにしてキメラハンターである智覇(gz0258)のこれまでを簡単に説明しよう。
 約半年前に宇宙へ上がった彼女は月面基地『崑崙』を拠点とし、只管に宇宙キメラを狩り続ける日々を過ごしてきた。
 月面に、大量にばら撒かれたキメラプラントの所為で『崑崙』には絶えずキメラの脅威があるため、ハンターの智覇は大忙し。
 そして本日も彼女は――

 ***

「キメラプラントの完全破壊を確認。周囲に敵影は見当たらず」
「了解。こちらでも確認しました。帰投してください」
 今日も今日とて愛機に乗り、キメラ狩りに出撃していた智覇。
 現在は他の傭兵と即席の部隊を組み、『崑崙』周辺に残るキメラプラント一基を破壊したところ。
 周辺には宇宙キメラの無残な亡骸が無数に転がっている‥‥。
(‥‥)
 相も変わらず数ばかり多い‥‥。智覇は基地のオペレーターに通信を入れた後、ヘルメットの中で小さく息を吐いた。
 しかしながら、キメラと言えど中には強力な個体も居るので油断は出来ないのだが。
 とりあえず今回はそのような個体とは出くわさなかった。実に簡単な任務である。そう、簡単ではあるのだが‥‥。
(戦争は終わった‥‥でも‥‥こういった任務はまだまだ続く‥‥)
 正直、月面のキメラプラント全てを排除するのに数年はかかるのではないかと思う。
 バグアとの決戦でUPC軍は大きく疲弊した。唯一無傷で残った宇宙拠点は『崑崙』のみ。そこに大型レーザー砲を設置し、地球の衛星軌道上に漂うデブリを排除するという話も耳にした。
『崑崙』に駐留する正規軍のKVもデブリの撤去に駆り出されることだろう。
 対処すべき問題が多すぎて、キメラプラントへの対応はますます後回しにされるのは目に見えている‥‥。
 そのように思案しつつ、智覇は操縦桿を動かし、機体の方向を転換。他の傭兵と共に帰路についた。

 ***

 月面基地『崑崙』。KVハンガー。
 KVのコクピットハッチが開き、パイロットスーツ姿の智覇が姿を見せ、ヘルメットを脱いで小脇に抱え、床に降り立つ。
「お疲れ様です、智覇さん」
 すると声がかけられた。‥‥顔を向けると、そこに居たのは顔なじみの整備員。
 メガネにそばかす、ブロンドの三つ編みの女の子。年齢は智覇と同じくらい。ただし智覇と違って女性らしい豊満な胸、肉体をしている‥‥。
「‥‥どうかされました?」
「‥‥いえ」
 いけない。智覇は思った。この子を見るたびにジト目になってしまう。
 この子は自分の機体の整備を主に担当してくれていて、腕も確かだ。更に言えば礼儀正しく性格も良い。
「整備、よろしくお願いします」
「はいっ。智覇さんの機体は腕の振るい甲斐があります」
「‥‥」
 それは皮肉だろうかと一瞬思うが、そのような子ではない。屈託のない笑顔を見れば解る。正直者なだけだろう。
「今日は損傷が少ないですね。ちょっと残念。‥‥なんて、冗談です。えへへ。今日も智覇さんが無事で良かった‥‥」
「ありがとうございます。それでは、頼みました」
「はいっ。あとは私達に任せてゆっくり休んでくださいね」
 その言葉を聞くと、智覇は整備員の少女に向かって手を上げ、わずかに微笑んで見せた後に居住エリアへ向かった。

 ***

 自室として宛がわれている部屋に戻った智覇はドアにロックがかかっているのを確認し、すぐに風呂場へ移動。
 するするとパイロットスーツを脱ぎ、一糸まとわぬ姿となり、浴室へ。
 シャワーのバルブを捻り、噴き出した熱めのお湯を全身に浴び、汗を流す。‥‥智覇の瑞々しい滑らかな白い肌が水滴をはじく。
 しばしした後、ボディーソープを適量手に取り、スポンジで泡立てて、素手で全身を丹念に洗う。
「‥‥」
 ふと、両手を胸に当ててみて、しょんぼり。成長する気配のないそこ‥‥。身長は伸びるのに‥‥どうしてなのか? と、智覇は頬を膨らませて自分の身体に抗議の視線を向ける。
「‥‥はぁ」
 などとバカなことをやっている自分に少し頬を染めつつ、全身に纏った泡をさっさと流し終え、お湯を張っておいた浴槽に長い脚を入れる。
 ちゃぷん。と水面の揺れる音が静かに響いた。
 半身まで湯に浸かり、まずは肩にかけ湯をする。しばらく繰り返した後に脚を延ばして肩まで浸かる。
「‥‥ふぅ」
 これが、自分にとって至福の時。智覇は心底そう思った。
 宇宙へ上がり、『崑崙』に来てからはこれだけが楽しみだ。‥‥まあ元々、入浴が唯一の趣味と言えるのだが。
「‥‥」
 しばらく『あの温泉』へ行っていないな‥‥。そのように智覇はぼーっと考える。
 たまにアレなキメラが出現して騒がしいこともあるがあそこの露天風呂は格別だ。このユニットバスとは段違い。
(いろいろ片付いたら‥‥落ち着いたら‥‥また行こう‥‥)
 智覇はぽけーっとした表情で気を緩めていると――
「はぁい。もう帰って来ていたのね」
「!?」
 声と共に浴室の扉が開かれた。思わずビクッとする智覇だったが‥‥。
「まったく、帰って来たなら言いなさい」
 声の主は裸体にバスタオルを巻いた女性だった。詳しく言えば智覇専属の医者であり、主治医(二十代後半から三十代前半の美人)。
 ――傷の絶えない、下手をしなくても重傷という事態が多々ある智覇が健康的な肉体を維持するためには彼女の存在が必要不可欠である。
 そんな主治医と智覇は同室、共に生活していた。つまり、部屋のキーを持っているのは智覇の他に彼女だけ。
 ‥‥心も身体も自分の全てを知っている彼女にならば気の抜けた顔を見られても別に構わない‥‥。
 智覇は顔までお湯に浸かった。
「ちょっとずれて。‥‥ふぅ〜、たまには二人で入るのも良いわね。ちょっと狭いけど」
 主治医はバスタオルを取り、堂々と裸体を晒して智覇と対面になる形で浴槽に入って来る。
 自分とはベクトルが違う、スタイルの良い引き締まった肉体‥‥。
 智覇はまた無意識にジト目になっていることに気付かなかった。

 ***

 入浴タイムが終わり、浴室から出てさほど間が開かないうちに――部屋に設置されている端末がアラームを発した。緊急招集。
 智覇は急いでいつものボディースーツに着替え、髪を乾かし、ブリーフィングルームへ向かう。

 向かった先には既に智覇の他、数名の傭兵が集まっていた。‥‥智覇は説明を聞くべく席に着く。
「この崑崙に向かって一隻のBFが接近中だ」
 UPC軍の士官が言うと、一人の傭兵が挙手し、小惑星帯へ移動中のバグアではないのか? と尋ねる。
「残念ながら違う。BFは哨戒機が警告するとキメラを放出、戦力を展開したそうだ。紛れもなく『敵』だな」
 傭兵達は押し黙る‥‥。
「敵の陣容は指揮官機と見られる本星型HWと宇宙キメラが数種。諸君らはこれより出撃、敵を殲滅してくれ。説明は以上」
(‥‥)
 戦争が終わっても、戦いは続く‥‥。智覇は何か悲しくなった。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
香坂・光(ga8414
14歳・♀・DF
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
来栖・繭華(gc0021
11歳・♀・SF
御剣雷光(gc0335
22歳・♀・PN
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF
黒羽 風香(gc7712
17歳・♀・JG

●リプレイ本文

●VSバグア軍残党
 月面基地『崑崙』の防衛圏内である月付近宙域に侵入し、戦力を展開中のバグア軍残党を迎撃するべく、緊急招集を受けた傭兵とそのKVを乗せた宇宙輸送艦二隻が発進。
 智覇(gz0258)を含めた九名の傭兵達は既に格納庫内のKVに搭乗して待機中。戦闘に備える。

 ドクター・ウェスト(ga0241)の機体は天(Tian)。
「我輩はドクター・ウェストだ〜」
 白髪の男は特徴的な笑い声を上げる。

 愛機フィーニクスのコクピットシートに着座した香坂・光(ga8414)がちょいちょいと指先でパネルを操作。仲間へ回線を開く。
「繭華ちゃん、戦域情報をよろしくね♪ 未だに戦うことを止めないバグアにはしっかりお仕置きをするのだ!」
「にゅ、今回も大変ですけど、頑張って情報を集めますの」
 ピュアホワイトXmas『アルテミス』に搭乗する来栖・繭華(gc0021)は健気に光からの通信に答える。
 モニターのウィンドウに映る繭華は両の拳を握って表情を引き締めている。光の視点からもやる気十分な様子が見て取れた。
 そして幼い容姿のわりにビッグなバストというアンバランスなボディもぴっちりなパイロットスーツの上からはっきり確認できた。
 自分の胸をぺたぺた触りつつ、ちょっぴり‥‥どころではなく、かなりジェラシーを感じる光。まあいつものことだが。

 乾 幸香(ga8460)の機体はタマモ『フーリー』。
「バグア本星を破壊出来たと言っても、後始末は残っていますからね。まだまだわたしも頑張らないといけませんね」
 幸香は今回依頼を共にする智覇へ通信。
「お久しぶりです、智覇さん。今回も宜しくお願いしますね」
 すると「よろしくお願いします」と短い返答。
「智覇さん、先ほどのブリーフィングでもお話ししましたが、わたしと黒羽さんと同じ班でご協力願えますか?」
「‥‥。突撃型と砲撃型の対応でしたね‥‥了解しました」
 やや含むような言い方をする智覇であったが、幸香は気付かなかった。

 ソーニャ(gb5824)の機体はロビン改『エルシアン』。
(智覇‥‥ボクと全然違ってて、どこか似ている? 髪は金と灰。身長は‥‥胸はないね、二人とも)
 負傷中の彼女はしくしくと痛む自分の身体を抱きつつ、思い耽り、智覇と自分の共通点を探す。
(灰色と黒の機体、その横にシアンとコバルトの機体‥‥。いつも包帯だらけの智覇‥‥今日はボク‥‥)
 思案しつつ、身体から手を放し、操縦桿を握る。
(ふふ、バグアの事は言えないね。こんな状態でも、戦いは止められない)

 御剣雷光(gc0335)の機体はラスヴィエート『暁9号』。
「宇宙ゴミの中での戦いですか」
 戦域のデータを確認。今回の戦場は障害物の多いデブリ帯。通常の宇宙戦闘とは勝手が違う。

 ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)の機体はタマモ『フック・フォクス・イーノクス』。
「見逃しもあったかもしれないだろうに‥‥生き急ぎか。悪いが、そっちがやる気なら排除するしかない」

 黒羽 風香(gc7712)の機体はフィーニクス『Schutzengel』。
「戦争が終わったと言っても、まだまだこんな事が続くんでしょうね‥‥」
 そう言って風香は嘆息を漏らす。
(早く兄さんと平和を謳歌したい‥‥)

 暫くして、輸送艦が作戦宙域へ到着。傭兵部隊のKVは順次発艦。

●VS宇宙キメラ
 展開する敵部隊との距離が接近。
 まずは管制を務める繭華機――
「敵部隊を捕捉しましたの。データベース照合‥‥前衛に突撃型宇宙キメラ五体、小型十体。中衛に本星型HW一機。後衛に砲撃型宇宙キメラ三体とBF一隻がいますの。‥‥ナンバリング、データリンク構築完了」
 これより繭華機の複合ESM『ロータス・クイーン』が収集した情報は傭兵部隊各機へ随時送られる。
「繭華は後衛から皆さんの支援に徹しますの。皆さん頑張って下さいですの。繭華も一生懸命やりますの」
 彼女の言葉が合図となり、傭兵部隊は各対応班に分かれて散開。すぐに戦闘が始まった。

 ***

 本星型HWの対応を担当するのはウェスト機一機。
(なんだろう〜、敵がよく見える気がするね〜)
 ウェスト機は目標に対し大量の小型プラズマミサイルを発射。
 数発被弾しながらも回避運動を取るHW。損傷は軽微な様子。
 その隙にウェスト機は接近。人型へ変形。練機槍と重練機剣を用いた近接戦へ移行。
 HWはブレードで応戦。フェザー砲で牽制。距離を取ろうとする。
 そこでスキル『D.Re.Ss』Aを使用するウェスト機。パージした装甲で気を逸らしつつ追撃。
 重練機剣の一撃を見舞うが、HWの赤い障壁に阻まれ威力が大きく減衰。カウンターのプロトン砲の直撃を受け、損傷大。
 怯まずに近接攻撃を行おうとするがフェザー砲のシャワーに阻まれる。同時にダメージ。
 装甲のパージにより防御性能が低下していたのは痛かった。至近距離のため回避もままならない。

 ***

 突撃型・砲撃型キメラ対応。

 幸香機――
「班内で密接に連携を取り、相互補完を図って、無駄な損害を出さないためにも効率よく戦いましょう」
 同班の二機へ通信。その時。
「突撃型が急接近ですの。注意してくださいですの。それから――」
 敵機の接近警報と同時に光条がKV三機の脇を掠めた。
「砲撃型のプロトンビーム!?」
 幸香は攻撃が飛んで来た方向を拡大表示。長い尾を持つ古代生物のようなキメラがこちらを狙っていた。
「そうですの。敵は既に砲撃体勢になっていますの。こちらも注意を、ですの」
「くっ‥‥迎撃を」
 三機は散開。尚もプロトンビームが飛ぶ。突撃型との距離はもう近い。
「私が砲撃型を抑えます。お二人は突撃型を」
 智覇からそのような通信が入ると、CRブースターを点火した灰と黒のハヤテは砲撃を恐れる事無く突撃して行った。
 ‥‥高速の突撃型、それを後方から援護する砲撃型。その二つを同時に相手にするのは得策ではなかった。ゆえに別行動。というのが智覇の判断。
「了解です。こちらは任せて下さい」
 智覇の考えを悟った幸香は兵装を選択。トリガーを引き、ガンランチャーを発射。砲弾が突撃型の前面甲殻にぶつかり、弾ける。

 風香機――
「一発大きいのを撃ちます!」
 PDレーザーでデブリごと掃射を行う。突撃型二体が閃光に包まれ、体勢を崩す。
 しかし他の三体がもう目の前に迫っていた。それを寸での所で回避しながら、
「行きなさい! フォビドゥンガンナー!」
 遠隔攻撃機を射出。それに搭載された粒子砲が後部を晒した突撃型を貫き、撃破。
「前は硬いようですが、後ろはそうでもないみたいですね」

 幸香機も反転して砲撃を行い、一体を撃破していた。残るは三体。

 ***

 小型キメラ対応。十体が二機のKVを包囲しつつ迫る‥‥。

 ソーニャ機――
(他人の為に己をかえりみない智覇、飛ぶためなら全てを犠牲にするボク)
 傷の痛みを確りと感じながら兵装を選択。遠隔機を飛ばす。
(戦いは続く。それが悲しいの? でも人はずっと戦い続けてきたんだよ。人間同士で。戦いあるからボクは飛んでいられる。飛べないならボクなんていらない)
 少女は想いを巡らせ、遠隔機を操作。粒子砲が放たれ、小型キメラ一体を撃破。
(智覇は優しい女の子。周りに人が集まる。‥‥ふふ、ボクと君は似ているようで似ていなかった)
 遠隔機を戻し、兵装を切り替え。知覚砲で一体を撃ち抜く。
「飛ぼう、エルシアン。ボクはそれだけでいい」
 更に兵装を切り替え。知覚機関砲で弾幕を展開。それに捕まった一体が爆ぜた。

 雷光機――
(デブリ帯での戦闘は神経を使いますね)
 繭華機からの情報を頼りに敵の位置を把握。スキルを使用し、ミサイルを連続発射。
 球状の爆炎がいくつも上がり、デブリと共に小型キメラ二体のマーカーが消えた。
 爆炎が消えると細かく破砕されたデブリが広がり、視界が劣悪となった。
「くっ、デブリの数が此れほどとは。――そして敵も素早い!」
 デブリの影からキメラが出現。襲い掛かってくる。警告音。
 咄嗟に兵装を機関砲に切り替え。射撃し、どうにか取り付かれる前に撃破した。

 ***

 遊撃を行う光機は――
「颯爽と褌仮面登場! ‥‥なんちゃって♪ まあ仮面は付けてないけどもっ」
 たった一機で三体の砲撃型キメラを相手にする智覇機の援護へ。機関砲で牽制攻撃。
「智覇さん、助太刀するよ」
「感謝します」との返答。
「あたしの触手を舐めないでよね! これでも長く伸びるんだよ♪」
 胴体から伸びた六本の触腕を使用しキメラに攻撃を仕掛ける。

 ***

 光機と同じく遊撃を行うドゥ機――
「相手が誰かは関係ない‥‥駆逐しますか」
 デブリに身を潜め、味方機と交戦する敵機へ正確に狙いを定め‥‥知覚砲で砲撃。命中。
 ダメージは大きくないようだが注意は逸らせた。その隙に味方機が敵機へ近接攻撃を喰らわせる。
 ドゥ機すぐに移動。別のデブリに隠れる。
「‥‥意外に苦戦しているようですね」
 彼は本星型HWに押され気味であったウェスト機の援護に来ていた。
 

●VS本星型HW+BF
 本星型HWに若干苦戦している物の、キメラの数は確実に減り、戦闘は傭兵部隊の優位に進んでいた。

 繭華機――
「支援射撃‥‥いきますの!」
 長射程の知覚砲を発射。突撃型キメラや小型キメラと交戦中の味方を支援する。

 ***

 幸香機――
 目標を中央に捉え、突撃砲で砲撃。だがそれは敵の分厚い全面甲殻に弾かれる。
「当たる訳には‥‥!」
 突撃型キメラの突進をギリギリで避け、機体を反転。
「はあああっ!」
 刀と剣を連続で振るって斬撃。‥‥体液が散り、キメラは動かなくなった。
「はあ‥‥はあ‥‥」
 荒い息を吐く幸香。
 突撃型との戦闘は心臓に悪い。突撃をまともに受ければ大ダメージは必至だろう。
 そこで警告音。
「――っ!?」
 もう一体の突撃型がデブリの影から出現し、一気に向かってきた。回避が間に合わない?
「でも‥‥!」
 超伝導RAを使用。同時に凄まじい衝撃に襲われる。
「くぅぅぅ!」
 歯を食いしばって損傷を確認。‥‥装甲を貫通し、機体内部までダメージが達していた。警告音が耳に響く。
 RAを使っても一撃でこれとは。やはり気は抜けない。
 幸香機はマニューバAを使用。突撃型の後方から追い縋り、知覚砲で射撃後に刀を突き刺し、撃破した。

 風香機――
「すばしっこいですね。仕方ない‥‥もう一度掃射します」
 PDレーザーを発射。デブリを排除した後に、
「逃がしませんよ」
 最後の突撃型を捕捉。丁度尻を見せていたそれへ狙撃砲を向け、ロックオン。
「さようなら」
 トリガーを引き、射撃。砲弾は正確に命中し、敵を撃破した。

 ***

 雷光機――
「‥‥ゴミ処理には時間が掛かりそうね」
 機関砲で射撃し、肉薄してくる小型キメラを排除。
 ミサイルを多用していたら微細な破片が辺りに飛び散ってしまった。
「あまり攻撃をデブリにぶつけないでくれると助かります。潜伏遊撃からすれば大変だ」
 との苦情が味方から寄せられた為に現在は機関砲をメインに戦闘中である。

 ソーニャ機――
(キメラって犬みたいなもの? 感情あるのかなぁ? あればいいなぁ)
 今度はそんな事を考えつつ、
(戦うだけの存在でも、泣き、苦しみ、精一杯生きるのがいい。それがボクの罪となっても)
 彼女はトリガーを引き、
(グロテスク? ボクの中身も同じようなものだよ。飛ぶ為だけの化物)
 目標を潰す。
(生存競争をしよう。生物として。この殺し合いにせめてもの意味を)

 ***

 本星型HW対応――。

 ウェスト機が敵機のブレードと鍔迫り合いを行う最中。
 それまでは知覚砲で狙撃を行っていたドゥ機がマニューバAを使用して急襲。突撃砲の砲弾をばら撒く。
 HWはすぐさま反応。多数のミサイルを発射。砲弾をぶつかり激しい爆発が起こる。そこへ。
「切り裂け〜! シンジェ〜ン〜!!」
 接近し、重練機剣を振り被るウェスト機。HWは体勢をずらし、ブレードで受け止めるが。
 爆炎を抜けてきたドゥ機が別方向から練機槍による突きを繰り出す。
 赤い障壁に阻まれる二機の攻撃。しかし‥‥練力が切れたか、程無く障壁が消失。
 HWのブレードは断ち切られ、重練機剣の刃は本体にまで達する。ドゥ機の槍もHWの機体に突き刺さる。
 二機が離れると、HWはスパークした後に爆発四散した‥‥。
 
 ***

 光機は智覇機と協力し砲撃型キメラと交戦中。
「‥‥相変わらず智覇さんは無茶するね」
 智覇機は二刀を抜き砲撃型のプロトンビームを避けつつ斬撃を喰らわす。
 光機はやや離れ、触腕による攻撃を継続していた。
「大分ダメージを与えたっぽいね。智覇さん、砲撃型を一列に誘導できるかな?」
 光からの通信に智覇は「やってみます」と返す。智覇機は弾幕で敵を誘導。砲撃型三体が光機の射線上に並んだ。
「褌レーザー‥‥もとい、PDレーザー、発射ー♪」
 智覇の離脱を確認してからトリガーを引く光。敵三体が閃光に包まれた。
 ‥‥閃光が止むと、敵は身を焼かれ瀕死の状態になっていた。
「一気に終わらせちゃおう♪」
「了解です」
 この後、砲撃型全機を撃破した後に二機は味方他全機と合流。
 後方に残っていたBFに一斉攻撃を加え、見事撃沈。輸送艦に戻り、『崑崙』へと帰投した。

●戦闘後‥‥
 月面基地『崑崙』。居住エリア。

 薄暗い部屋に佇むソーニャ。その時、自動ドアが静かに開いた。
「やぁ、ドクター。久しぶりだね」
 立っていたのは白衣の男。
「包帯を替えるの手伝ってくれるの?」
「‥‥」
「身体も拭いてくれるの? 助かるよ。傷が塞がるまでお風呂は禁止されてるから」
 処置が済むと、白衣の男は立ち上り、
「我輩の戦いはまだ終わっていないからね〜」
 去り際にそう呟き、部屋を出て行った。

 ***

 ソーニャを除く女性陣は各自部屋を借り、お湯で汗を流す。
「メイドとして完璧に仕事をするのは当たり前ですから」
 皆の着替えはメイド服姿の雷光が用意。

 光と智覇は一緒にお風呂。と、その前に。
「智覇さん身体洗ってあげるのだ♪ 隅々まで綺麗にするよ〜♪」
 手に石鹸を泡立てた光が迫る。‥‥二人とも綺麗にしてから湯に浸かる。
「ここも温泉とは言わないけど、大きなお風呂があったらよかったのにねー?」
「それは贅沢が過ぎると、偉い人に却下されたと聞きました」と智覇は返した。

 繭華は別の部屋で、智覇の主治医と一緒にお風呂に入り、智覇の昔話等を聞く。

 風香はまた別の部屋で一人、ゆったりとお湯に浸かる。
「ん〜、シミ一つ無い肌‥‥。首に噛み付かれたり、全身骨折したり、お腹を貫通されたりしましたけど、痕が残らなくて良かった‥‥」
 随分‥‥ハードな人生らしい。

 幸香はまたまた別の部屋でシャワーを浴びる。
「‥‥別にスタイルとか気にする必要もないと思うんですけどね」
 豊満な肢体を丹念に洗いながらぽつりと漏らす。

 持つ者と持たざる者‥‥解り合える日は来るのだろうか。