タイトル:【Tr】銀河の鼓動マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/07/10 01:00

●オープニング本文


 銀河重工本社・KV開発部――
「もう一遍言ってみろ!!」
「す、すみません!」
「‥‥‥‥ああ、こっちこそ、すまない。つい取り乱してしまった。それで、なんだって?」
 徹夜続きで無精髭を生やし、頬がこけ、やつれた様子のシラヌイ開発担当主任がぷるぷる震えている部下に向かって尋ねた。
「NMV計画――次期中規模KV開発計画――です」
「‥‥」
「現在成長過程にある若手傭兵に向けて、ディアブロ、ワイバーン、アンジェリカなどに替えて、推奨できる中規模の機体をULTで採用する計画、だそうです」
「‥‥」
 主任からの反応は無い。
「あ、あのぅ?」
「‥‥それに、うちのシラヌイを出せ、と言うのか」
 硬い口調。
「はぃ。軍からの要求仕様に合わせ、再度調整を行って欲しい、とのことです‥‥」
「っ!」
 デスクに拳を叩きつける主任。積み重ねられていた書類が辺りに散らばった。
「ひぃっ!?」
 怯える部下から計画書をひったくり、ぱらぱらと捲る。
「‥‥貸与額200万C台‥‥。やはり‥‥高コスト化は抑えられないのか‥‥」
 計画書の内容に頭を抱える主任。シラヌイは元々、KVの高コスト化に歯止めをかけるべく開発が進められてきたのだ。シミュレーターによるテスト結果や傭兵の意見を取り入れた試作機がつい先日、完成したばかりだと言うのに。それを今になって――
「で、ですが、チャンスでもあると‥‥思い、ます」
 恐る恐る口を開く部下。
「なに?」
「このままでは‥‥シラヌイは、日の目をみることは無いかもしれません。ここは軍の要求に応じて、売り込みを掛けるべきかと‥‥」
「‥‥」
 確かに軍がKV採用の方針を転換した今、まだ実績のないうちの部署が生き残るにはそれしかないのかもしれない。
「解った。そのNMV計画とやらに賭けてみるか」
 はっきり言って分の悪い賭けだ。聞けば、社内でも別にNMV計画へエントリー用の機体を開発しているらしい。‥‥それでも、もう後には退けなかった。やるしかない。男の目に、光が宿った。

 かくして、シラヌイの開発担当者らの不眠不休の作業が行われ、要求仕様に合わせた実機が6機完成。
「やりましたね、主任!」
「‥‥そうだな」
 初期設計データからの変更点は‥‥傭兵からの要望により、回避性能を向上。更に価格帯の変更により、全体的に性能を向上。また、生存性を上げるため安価な特殊塗装、対レーザーコーティングを採用。
 シラヌイは高い安定性を誇り、ロビンに匹敵する回避性能を持つ高機動型汎用機として生まれ変わった。だが――
「本番は、これからだ‥‥」
 軍の目に留まるには実機テストで良い結果を残さなければならない。一片たりとも気は抜けなかった。


●GFA−01 シラヌイ
・性能
装備>攻撃>回避>命中>知覚>防御=抵抗=生命=練力
行動、移動は雷電と同等。副兵装スロット数3、アクセサリスロット数3。

・特殊能力
○超伝導アクチュエータver.2
雷電に搭載されていた超伝導アクチュエータを省エネ、小型化した物。
練力を20消費することにより1ターンの間、命中と回避に+40の修正を受ける。

○対レーザーコーティング
ヘルメットワームに非物理兵装が多いことから考案されたコーティング。
機体表面に施した特殊な塗装によって敵の非物理攻撃を減衰させる。
非物理攻撃を受けた場合、最初の1回のみ最終ダメージを1/2にする。

・価格
200万〜220万を想定。

【機体概要】
銀河重工がハヤブサを教訓に生み出した新型汎用機。
扱いやすさを最優先に設計されており、安定性が非常に高い。
当初は中価格帯を想定していたが軍からの要求(NMV計画)により仕様を若干変更。
それに伴い、形式番号から試作機を示すXは外されている。

●参加者一覧

セージ(ga3997
25歳・♂・AA
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA
エレノア・ハーベスト(ga8856
19歳・♀・DF
賢木 幸介(gb5011
12歳・♂・EL
犬神 狛(gb6790
24歳・♂・FT

●リプレイ本文

●シラヌイ
 UPC東アジア軍某演習場――
 そのハンガーにて、整備を受ける6機のシラヌイを眺める傭兵達の姿があった。
「壮観だな‥‥」
「うん。シラヌイには、なんとしても頑張って欲しいからね。俺達も今日は頑張らないと」
 セージ(ga3997)の言葉に頷くヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)。
「‥‥幻と消させませんよ‥‥」
 機体を真っ直ぐに見据え、守原有希(ga8582)はぎゅっと拳を握る。
「シラヌイに関わるんはこれで二度目やねぇ」
 エレノア・ハーベスト(ga8856)が言った。彼女は機体名がデフォルトのままに決まってしまったことが少し残念なようだ。
「こうも銀河に縁があんのは何の因果なんだろうな」
 呟いたのは賢木 幸介(gb5011)。彼はNMV計画にエントリーする別の機体のトライアルにも参加していたのだ。
「さて、今回は新型機の発売が掛かっておる。気を引き締めんと‥‥」
 言ってから自分の手を見て、犬神 狛(gb6790)は震えていることに気付いた。
 ‥‥己の小胆さに思わず苦笑してしまう。
 そのとき――
『まもなくテストの開始時刻です。アグレッサー部隊、および傭兵の方々は機体に搭乗してください。繰り返します――』
 そのようなアナウンスが流れた。
(「時間か。‥‥ふぅ。テストとは言え、三度目の出撃でもこれか? じゃが、今回はヴァレス殿やセージ殿も参加しておる。醜態は見せられんよな‥‥」)
「大丈夫か? 顔が強張ってるぜ」
 と、セージが声をかけてくる。
「死にはしないんだから、気楽にいこうよ♪」
 ヴァレスもひょっこり顔を出した。
「‥‥」
 無言の狛。しかし、少し気分が和らいだ。仲間とはよいものだ‥‥。
 ――そうして、傭兵達は機体に搭乗。いよいよシラヌイの命運をかけた実機テストが開始される。

●陸戦
 KVの全高ほどもある遮蔽物が点在する演習場に6機のシラヌイが佇んでいた。
 ここからでは見えないが、反対側にはアグレッサー部隊が陣取っているのだろう。
 傭兵達の班分けは‥‥
 A班:セージ、ヴァレス、幸介
 B班:有希、エレノア、狛
 となっている。
 ほどなくして、模擬戦がスタート!

 A班が前進を開始。囮となって相手の手の内を探る算段だ。
 B班はその情報を元に強襲を欠けるべく、迂回。

 アグレッサー部隊のディアブロ3機も前進。A班を発見するや否や、Sライフルで狙撃。
「丸見えなんだよ、傭兵!」
「新型の性能がどれほどだろうが!」
「全力でやらせてもらう!」
 周波数帯が違うため、傭兵達には聞こえない。
「くっ!」
 セージ機、ヴァレス機、幸介機はすぐさま回避運動。
「なんつう正確な狙撃だ!」
 しかしシラヌイの回避性能もあってか、命中はせず。
 とりあえず遮蔽物に身を隠す。

 一方、アグレッサー部隊のワイバーン3機はマイクロブーストを使用。
 高速で迂回中に有希機を発見。一斉にSライフルで射撃。
「こちらA班。ワイバーンの姿が見えない。そっちはどうなっている?」
 ヴァレスからの通信。今はそれ所ではない。全力で回避する有希。
「‥‥っ! ワイバーン3機から集中砲火を受けています!」
「なんだって! ‥‥奴ら、ディアブロを囮にして十字砲火を形成するつもりだったんだ!」
 有希からの返答。しばし間を置いて幸介は相手の意図に気付いた。
 囮と囮がかち合って、強襲班と強襲班がかち合ってしまった。
 ‥‥さすがはアグレッサー。思うようにやらせてはもらえない。
 そのまま、否応無くA班とB班は分かれて戦闘することになった。

「アグレッサーの力、まだそれだけではない筈だ。本気を見せてもらう!」
 言ったのはヴァレス。A班の3機は遮蔽物に身を隠しつつ、真ん中のディアブロ2にリロードを挟みSライフルで狙撃。全弾命中。致命的なダメージを与えるも、撃破には至らない。

 エレノア機、突出した有希機をカバーするべく前進。アクチュエータを使用。Sライフルでワイバーン3を狙撃。リロード。
 それに合わせて有希機もアクチュエータを使用。Sライフルでワイバーン3を撃ち、前進。更にレーザーを浴びせる。
 狛機も前進。Sライフルで射撃。ワイバーン3は大ダメージを受けた。

 ワイバーン3機の反撃。ワイバーンの1と2は前進。狛機にレーザーを浴びせる。ダメージを受けているワイバーン3は後方から狙撃。
「ぐうううっ!」
 狛機は致命的なダメージを受ける。モニターに警告の表示。対レーザーコーティングが無ければ戦闘不能になっていただろう。アクチュエータを使用していなかったのが痛手だった。

 ディアブロ3機は一気に距離を詰めると、AFを使用しそれぞれディフェンダーを振り被る。セージ機と幸介機は同じディフェンダーで受け止める。中程度のダメージ。さすがトップクラスの攻撃力を誇るディアブロだ。
 ヴァレス機はアクチュエータを使用。跳躍して避ける。そのまま空中で機体を捻り反転、ディアブロ2の背後に着地すると同時にディフェンダーで斬り掛った。
「はあああっ!!」
 ディアブロ2、戦闘不能。
「やるな、ヴァレス。こっちも負けられん」
 セージ機もディアブロ1をディフェンダーで3度斬りつけ、致命的なダメージを与える。
「トドメだっ!」
 幸介機は後退しつつディアブロ1にレーザーで射撃。ディアブロ1、戦闘不能。

 残るディアブロ3は装輪走行でセージ機の側面に移動。AFを使用してディフェンダーで攻撃を仕掛けてくる。武器で受けるセージ機。中程度のダメージ。

「犬神さん!?」
 有希は集中攻撃を受けた狛機を気にかけつつ、アクチュエータを使用。レーザーでワイバーン3に射撃。ワイバーン3、戦闘不能。続けてワイバーン1にレーザーを浴びせ、致命的なダメージを与える。
「これ以上はやらせへん」
 エレノア機、アクチュエータを使用。Sライフルでワイバーン1を狙撃。リロード。レーザーに切り替えて射撃。ワイバーン1、戦闘不能。
「犬神さん、今のうちに後退を」
「面目ない‥‥」
 有希機とエレノア機の援護を受け、後退する狛機。しかし――
 マイクロブーストを使用したワイバーン2が姿を現した。そのまま狛機を猛追。そしてレーザーを容赦なく浴びせる。狛機‥‥戦闘不能。
「くそっ!」
 ‥‥やはり、移動性能ではワイバーンに分があるようだ。

「狛がやられた? ちぃっ!」
 報告を受けヴァレスは憎憎しげに呟くと、ディアブロ3にレーザーを浴びせる。ディアブロ3、戦闘不能。
「仇は取ります!」
 有希機、レーザーでワイバーン2を攻撃。
「そうだ、奴は立派な戦士だった!」
 セージ機、装輪走行でワイバーン2に追いつき、レーザーを見舞う。
「犬神はんの死、無駄にはせえへん!」
 エレノア機、ワイバーン2にレーザーで射撃。ワイバーン2、戦闘不能。
(「わしは死んどらんのじゃがのう‥‥というかテストじゃし」)
 赤い警告ランプの灯るコクピットで、なにやら盛り上がっている仲間達の通信を聞きながら狛はそんなことを思っていた。

 アグレッサー部隊全滅。陸戦テスト終了。傭兵部隊の勝利。

●空戦
 機体整備と休憩を挟み、空戦が開始。
 編隊を組んで飛行する6機のシラヌイ。班編成は陸戦と同じである。
「アグレッサー‥‥噂に違わぬ強敵だ。こちらも容赦はせん、堕ちて貰う‥‥!」
 先ほどの陸戦で撃破された狛は雪辱の念に燃えているようだ。
 そのとき、レーダーに反応。6つの赤い光点が物凄い速度で接近している。
「なんだと!?」
 セージが声を上げた。まもなく視認。言うまでも無くアグレッサー部隊だ。
 そう、彼らは‥‥ディアブロはブースト、ワイバーンはマイクロブーストを使用。足並みを揃えて一気に突っ込んできたのである。これは‥‥短期決戦を挑んでくるつもりだ。
 しかも敵はディアブロ1機とワイバーン1機でペアを組んでいる。傭兵達の作戦はディアブロとワイバーン、どちらを狙ってくるかを敵が想定しているかによって変化するものだった。しかしこれでは‥‥
 だが考えている暇は無い。今は当初の予定通りディアブロを狙ってのミサイル一斉射を敢行する。傭兵部隊は全機アクチュエータを使用。
「狛犬、FOX2‥‥!」
 無数のミサイルが2機のディアブロに向けて放たれる。エレノア機は時間差で攻撃。セージ機は2射に止め、増速し敵機の後ろに出る。
 白煙の軌跡を青空に描き、舞い踊るミサイルが次々とディアブロに着弾し、生命力を削る。ディアブロ1、およびディアブロ3、撃墜。
 ミサイルパーティは終わらない。ディアブロ2、AFを使用。ワイバーン3機も含めたアグレッサー部隊全機がミサイルを一斉に放つ。狙いは‥‥有希機一つ!
 ブーストを使用し振り切ろうとする有希機だったが多数被弾。
「耐えろ、不知火!」
 警告音の鳴り響くコクピットで叫ぶ有希。致命的なダメージ。しかし、なんとか撃墜は免れた。

「しばし任せる」
 ヴァレス機はアクチュエータを使用し増速。A班の彼はディアブロの担当だったが初撃で2機撃墜したので硬く厄介なワイバーンの対応に回ることにしたのだ。正面からレーザーを見舞い、ワイバーン1に大ダメージを与える。
「こんまま終わらせん‥‥!」
 尚も警告音の鳴り響くコクピットで有希は操縦桿を握り締めた。
 アクチュエータを使用。増速。急旋回。ワイバーン1にレーザーを浴びせ、致命的なダメージを与える。
「守原はんのカバーに回ります」
 エレノア機、アクチュエータとブーストを併用。一気に速度を上げ、旋回。ワイバーン1を捉えた。迷わずレーザーのトリガーを引く。ワイバーン1、撃墜。

 セージ機、旋回。ディアブロ2の斜め後ろからミサイルを2発撃ち込む。着弾。中程度のダメージを与える。
「お前も落ちろよ!」
 幸介機、ディアブロ2にミサイルを3発発射。全弾命中。致命的なダメージを与える。

 瀕死のディアブロ2、旋回。増速。敵中突破を図る。
 ワイバーン2、増速。有希機の尻に食いつき、レーザーを浴びせ、撃墜。
「くっ‥‥!!」
 悔しそうな有希。対レーザーコーティングがあったものの、残り少ない生命力では耐え切れなかった。ワイバーン2は更に増速。ディアブロに追いつく。
 ワイバーン3、ミサイルで狛機に攻撃。命中するもダメージは軽微。増速。こちらもディアブロ2に追いつく。ディアブロを守る気だ‥‥! 誰かがそう思った。

 セージ機、ヴァレス機、幸介機、旋回。増速。ディアブロ2を追う。

 エレノア機、旋回。増速。ワイバーン3にレーザーで射撃。中程度のダメージを与える。
 狛機も旋回。増速。ワイバーン3をロックオン。ミサイル発射。着弾。少ないが確実にダメージを与える。

 ディアブロ2、旋回。すれ違い様にレーザーでセージ機を攻撃。対レーザーコーティングの効果により威力が減衰。損害は軽微。
 ワイバーン2と3、旋回。レーザーでセージ機に一斉攻撃を掛ける。セージ機は大ダメージを受けてしまう。
「こいつら、よってたかって‥‥!」

 ヴァレス機、ディアブロ2に追い縋り、ミサイルを発射。
「堕ちろ!」
 命中。ディアブロ2、撃墜。

 セージ機、旋回。ワイバーン3にミサイルを2発発射。全弾命中。致命的なダメージを与える。
「俺を落とせるもんなら落としてみろ!!」

 エレノア機は旋回。速度を上げる。ワイバーン3に向けてミサイルを発射。命中。しかし撃墜には至らない。
 狛機も旋回。ブーストを使用して距離を詰め、ワイバーン3に向けてミサイルを発射。着弾。‥‥まだ落ちない!
「ちっ、硬いのう」

 幸介機、旋回。こちらもブーストで一気に距離を詰める。ワイバーン2にレーザーを浴びせ、中程度のダメージを与える。

 ワイバーン2と3、旋回。セージ機に接近しレーザーの集中砲火! ‥‥セージ機、撃墜。
「ちくしょう!」
 悔しげに拳を握り締めるセージだった。

「よくもセージを!!」
 ヴァレス機、旋回。ワイバーン3の後ろに付く。レーザーを掃射。ワイバーン3、撃墜。
 エレノア機、狛機、幸介機、旋回。増速。ワイバーン2を包囲。
「こいつで最後だ。一気に畳み掛ける!」
 言ったのは幸介。そして‥‥3機は同時にレーザーの雨を降らせた。
 ワイバーン2、撃墜。

 アグレッサー部隊全滅。空戦終了。傭兵部隊の勝利。

●性能評価
 会議室――
「シラヌイのディアブロ、ワイバーンに対するキルレシオは3:1といったところか‥‥」
 コーヒーを飲みながらデータに目を通す開発主任。傭兵達にもそれぞれ飲み物が出されている。ちなみに傭兵の要望でアグレッサー部隊も同席。
「テストの結果、シラヌイは充分な性能を持っていることが判明しました。同じ装備、パイロット技量は‥‥正直申し上げてアグレッサー部隊のほうが上でしょう。それでこの数値です。確かな結果だと、判断します」
 部下が言った。
「そうだな‥‥完全勝利を期待していたが、まあいいだろう。傭兵はよい働きをしてくれた。感謝する」
 主任が頭を下げる。新たに追加した対レーザーコーティングも開発陣の予想を上回る効果を発揮した。シラヌイは既存機に対し有用性を見せ付けたと言っていいだろう。だが――
「あえて改善点を挙げるとするならば‥‥」
「移動力だな」
 主任の言葉にアグレッサー部隊の一人が重ねた。
「ああ。さすがはアグレッサー、気付いていたか」
 ふん、と鼻を鳴らす主任。最終的には撃墜したが空戦ではワイバーンの移動性能に若干振り回されてしまった感がある。

 そして傭兵達から挙がった改良案。
 エレノアの対レーザーコーティングを練力消費型、もしくは複数回使用可能にすることは出来ないかという案は確実に価格が上がってしまうため断念。そもそも、対レーザーコーティングはオマケ程度の機能なのだ。まあ、予想を上回る成果を残してくれたが。
 次に既存の銀河重工製KVのパーツ流用。これは真っ先に却下を食らった。それを実行するためには一から設計を見直す必要がある。最終調整段階の今からでは無理のある話だ。なお、シラヌイは完全新規設計では無く、S−01の銀河重工のライセンス生産モデル「S−01G」がベースとなっている。
 ハードポイントシステムも同様の理由で却下。‥‥しかし、既存機の技術を元にしたフレームは推奨装備として良いかもしれない、と主任は言った。

 結論として、移動力の向上が的確ではないかという意見で纏まった。
 シラヌイ――開発チームの血の滲むような努力と、傭兵達の熱い想いで生み出された、高機動型汎用KV――それが世に放たれるかどうかは、まだ誰にも判らない。
 だが、ここまでの結果を残したのだ。信じるしかない。主任と部下はただ‥‥祈るばかりであった。

「あ、まだ改良作業が残っているな。また徹夜か」
「えぇっ!? でも、シラヌイのためなら私、頑張ります!」