タイトル:シラヌイドライバーマスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/20 19:35

●オープニング本文


 UPC東アジア軍某基地――

 滑走路に居並ぶ濃紫の機体‥‥最新鋭機、GFA−01シラヌイ。
 ULTでの採用が決まり、傭兵への貸与が始まると同時に、正規軍への配備が始まっていた。
 その様子を格納庫の近くから感慨深げに眺める一組の男女の姿があった。
「壮観ですね‥‥主任」
「ああ‥‥」
 シラヌイの開発主任、草壁・誠十郎とその部下、南川・遥である。
 二人はいち早くシラヌイの配備が開始された基地の視察に訪れていた。
「私、嬉しくて泣いちゃいそうです」
「‥‥」
 思わず涙ぐむ遥。誠十郎は何も言わなかったが、気持ちは同じだった。
 強豪を抑え、NMV計画に採用されたシラヌイ‥‥。
 正直ダメかと思ったこともあったが、それでも遥は励まし続けてくれた。
「シラヌイは私達の子どもですね。なんて‥‥」
 涙を拭い笑う遥の顔を見て、部下達と何日も徹夜で行った改良作業を思い出した。胸の奥が、熱くなる。
 うちの部署――いや、銀河重工が総力を挙げて開発したこの機体が、バグアとの戦いを少しでも良い方向へ導いてくれることを切に願う‥‥。
「主任? 聞いてます?」
「聞いているよ。この機体が採用されたのはお前のお陰だ。お前の言葉が無かったら、シラヌイは日の目を見ることは無かっただろう。礼を言う、ありがとう」
「そ、そんな! 私は主任に付いて来ただけです!」
「ふっ‥‥謙遜するな」
 微笑み合う二人。そこへ――
「随分と仲の良いことね。相変わらず‥‥と言うべきかしら?」
 濃紺のカジュアルスーツを着こなした、金髪の女性が姿を現した。
「ミラージュ!」
 誠十郎が声を上げる。彼女の名はミラージュ・イスルギ。UPC東アジア軍所属の中尉であり、シラヌイの最終調整に携わったテストパイロットでもある。
「何故、君がここに」
「居て悪い? 私、この基地に配属になったのよ。それで、先に見に来たってわけ。私の恋人‥‥シラヌイをね」
 誠十郎の問いに片目を瞑って答えるミラージュ。
「恋人‥‥ね」
 誠十郎は苦笑する。
「君は美人なんだから、いい加減人間の恋人を作ったらどうだ」
「あら、その言葉はそのまま返すわ。貴方もいい年なんだから、そろそろ身を固めた方が‥‥」
 ミラージュは遥の方に目をやる。
 視線に気付き、ぼっと顔を赤らめる遥。
「‥‥?」
 しかし、誠十郎は首をかしげたままだ。
「まったくこれだから技術屋ってのは――」
 ミラージュが呆れて溜息をつこうとした瞬間、突然けたたましい警報が鳴り響いた。
『エマージェンシー! エマージェンシー! 当基地に向けて敵部隊が進攻中。敵編隊には爆撃装備のHWが確認されている。戦闘員はただちに所定の位置へ、非戦闘員は速やかにシェルターへ避難せよ。繰り返す――』
「敵‥‥!?」
「目的は‥‥シラヌイか?!」
 敵の狙いは最新鋭機であるシラヌイと見て間違いはないだろう。
「‥‥君、使えるシラヌイはあるかしら?」
 駆け回る整備兵の一人を捕まえて、声をかけるミラージュ。
「中尉殿! 先程整備が終了した機体がありますが‥‥しかし‥‥」
「それでいいわ。ちょっと借りるわね」
「中尉殿!?」

 数分後――
『単独出撃だって? 無茶だ!』
「無茶、無謀。ドンと来いって話ね。危ないからどいてて」
 カジュアルスーツからパイロットスーツへ着替え、ヘルメットを被ったミラージュが誠十郎からの通信に答えながら機器のチェックをする。
『いくら君の腕でも単機では!』
「一人じゃないわ。先に出て足止めするだけよ」
 間もなく出撃準備が完了するバイパー小隊は確かにあったが‥‥今出撃できるのはミラージュが搭乗するシラヌイだけだった。
「それに、私にはシラヌイドライバーとしての意地があるの。漸く配備が始まったシラヌイをやらせるわけにはいかない」
『だが――』
「システムオールグリーン。ミラージュ・イスルギ、シラヌイ、出撃する」
 轟音と共に離陸していく濃紫の機体。
 それを‥‥心配そうに見つめる誠十郎と遥であった‥‥。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
セージ(ga3997
25歳・♂・AA
百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
ヤヨイ・T・カーディル(ga8532
25歳・♀・AA
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
新村・美香(gb7427
15歳・♀・FT

●リプレイ本文

●急行
 編隊を組み、飛行する8機のKV――
「先行した中尉とバイパー隊が心配だ。一刻も早く追い付いて、敵HWの撃退に尽力することとしようか」
 言ったのは愛機、雷電「忠勝」に搭乗する榊兵衛(ga0388)。彼ら傭兵部隊は先に迎撃に出た正規軍の応援に駆り出された次第である。
「俺もシラヌイの開発に関わった1人だ。傷つくのを黙って見てるわけにはいかないんでな」
 群青に塗られたシュテルン「リゼル」のコクピットでセージ(ga3997)が口を開く。開発に携わっただけあり、思い入れがあるようだ。
「爆撃装備で新鋭機狙いとは、派手な泥棒もいたもんだ。ま、爆撃も鹵獲も面倒だし‥‥こういうのはさっさと片付けるに限るな。火付け盗賊は打ち首獄門、ってね」
 華やかな雰囲気の女性、百瀬 香澄(ga4089)が飄々とした口調で話す。
 敵部隊の目的は恐らくシラヌイの鹵獲ではなく、破壊。離陸前を狙って爆撃する算段だろう。
「いずれにせよ、やらせはなしない」
 漆黒に紅いラインで塗装されたシュテルンを駆るヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)。
「単機で先行って、無茶が過ぎますよ‥‥」
 ウーフーのコクピットで溜息をつくヤヨイ・T・カーディル(ga8532)。彼女が言っているのは単独出撃をしたミラージュ中尉のことだ。噂を聞けば、かなり無茶をする人物らしい。その分、腕も立つようだが。
「‥‥さすがに1人は無茶すぎる気がするけど‥‥まぁ、いいわ」
 思慮深い瞳をした女性、紅 アリカ(ga8708)は何か言いたげだったが‥‥口を閉じ、唇を引き締めた。
「新型のシラヌイか‥‥俺はミカガミファイターだ。乗り換えはしない‥‥」
 ミカガミB型に搭乗する堺・清四郎(gb3564)は言う。彼の胸中には新型に対する複雑な思いがあるようだ。
(「‥‥個人的な感情はともかく、新型を早々と敵に破壊されるわけにはいかん、丁重にお帰り願おう」)
 しかし‥‥と、清四郎は思う。
「シラヌイとエレメントを組むことになるとはな‥‥」
 隣を飛行するのは新村・美香(gb7427)のシラヌイ。
(「実戦も、KVに乗るのも初めてっすけど‥‥あたしだって訓練はしてるっす。足手纏いになるつもりは無いっすよ。一緒に戦う先輩達と、この機体を信じて戦うっす」)
 赤い髪の少女、美香。パイロットスーツの上からでもはっきりと分かる豊満なバストが魅力的だ。今回が初陣である彼女は必死に心を落ち着けていた。でもやっぱり――
「うぅ、緊張するっすー‥‥」
 ぷるぷると肩を震わせる。そこへ香澄機から通信。
「あまり気張らないことだよ、新村。力を入れすぎると逆効果。深呼吸でもしてリラックスするんだね。‥‥無事帰還できたら、熱いキスをプレゼントだ」
「ありがとうございます! でもキスは遠慮しておくっす!」
「‥‥さて、お喋りはここまでだ」
 兵衛機から通信。
「ブーストを使用して少しでも時間を稼ごうと思う。どうか?」
 それに全機から「了解」との返答。そして8機のKVは一斉にブーストを点火。
「‥‥紅 アリカ、『黒鳥(ブラックバード)』‥‥いきます!」
 空気を切り裂き大空を駆け抜ける。

●ミサイル乱舞
 傭兵達が正規軍に合流した時点で、敵の数は2機減っていた。しかしバイパー4機も中破してしまっている。ちなみにミラージュ機は流石と言うべきか、無傷であった。
「こちら傭兵部隊。損傷の激しい機体は離脱してください! 支援します!」
 ヤヨイ機からバイパー小隊へ通信。
「ミラージュ機及びバイパー小隊各機へ。これより爆撃装備型HWへK−02を使用する。当たってくれるなよ」
 続けてヴァレス機から警告。小隊長機から「了解」との返答。ミラージュは「K−02とは大奮発ね」と言った。
 兵衛機とヴァレス機は爆撃装備のHWを射程内に捉えると、ロックオン。二人はほぼ同時にミサイルレリーズを押し込む。K−02ミサイルが一斉に射出される。兵衛機は全弾、ヴァレス機は1回使用。それに乗じてセージ機もAAMとAAEMを発射。
 750発にも及ぶ小型ミサイルが白煙の軌跡を描き目標へ襲い掛かる。回避行動を取るHWの尻に喰らい付き、次々と着弾。盛大な爆炎が巻き起こる。その光景に口笛を鳴らすバイパーのパイロット。
 中型HW、および爆撃装備の小型HW、全機撃墜。セージ機のミサイルは通常装備の小型HWに命中。しかしバグア式ファランクスの迎撃を受け威力が減衰。それでも大ダメージを与えた。
「やりましたね。敵残存数10です」
 ヤヨイ機からの報告。
「‥‥捕まえた!」
 アリカ機、増速。アハト・アハトでHWを狙撃。リロード。高威力のレーザーが装甲を融解させ、大ダメージを与える。
「私らは右翼の奴らをやるよ」
「了解です」
 香澄機とヤヨイ機、旋回、増速、旋回。バイパー小隊を包囲している右翼のHWに向かう。
「俺達は左翼を引き受ける。付いて来い」
「りょ、了解っす!」
 清四郎機、増速。美香機も追随。
「うおらあああ!!」
 清四郎機、HWに狙いを定め、SR−Rで射撃。リロード。装甲を貫き、致命的なダメージを与える。
「やらせねえっす!」
 美香機、螺旋弾頭ミサイルを2発発射。ファランクスの迎撃を受けるも、撃墜。小爆発を起こしながら墜落していくHW。
「やったっす!」
「あまり浮かれるな‥‥次が来る」
 喜ぶ美香と警戒を強める清四郎。

 兵衛機を狙い、HWがプロトン砲を連続で放つ。兵衛機はアクチュエータを起動。全て回避。
「この程度‥‥!」
 2機のHWが香澄機に向けてプロトン砲を発射。
「おっと!」
 香澄機はアリスシステムを起動。寸でのところで避ける。
 2機のHWは増速し、香澄機とヤヨイ機の後方に出る。
 別のHW2機、香澄機に向けてプロトン砲を発射。しかしアリスシステムを起動した香澄のロビンには掠りもしなかった。
「舐めてもらっては困るね」
 香澄は余裕の表情である。
 HW2機は香澄機とヤヨイ機の側面に付く。バイパー小隊の代わりに包囲されてしまった形だ。
 先の攻撃でダメージを受けたHW2機は反転し増速。傭兵部隊と距離を取る。
 左翼のHW2機、清四郎機と美香機の背後につき、にプロトン砲を放つ。
「当たらん!」
「うわわわっ!?」
 しかし命中せず。
「さすがっす! シラヌイ!」
 入念にチューンが施された清四郎のミカガミB型、そして美香のシラヌイ。どちらも高い回避性能を誇る。
 だが――機体スレスレを光線が通り過ぎるのは肝が冷えた。美香の心臓はバクンバクンと高鳴っていた。

 幾条ものプロトン砲の火線を潜り抜けた傭兵部隊は、再び攻撃態勢へ。

●急転
「バイパー小隊は無事に戦域を離脱できたそうです」
 ヤヨイ機から報告。
「ミラージュさんよ、それもシラヌイなんだ。落としたら承知しねぇぞ!」
 セージ機からミラージュ機へ通信。
 ミラージュ機はHW1機に追い縋り、レーザーを浴びせて撃墜。爆発四散するHW。
「‥‥甘く見ないで欲しいわ。自分の実力を見誤ったりはしない。そっちこそ、落ちないようにね、ふふ」
「なっ‥‥!」
 言い負かされてしまったセージであった。
「セージ、無駄口は‥‥」
「わかってるよ」
 ヴァレス機とセージ機、旋回、増速、旋回。損傷したHWを追う。
「百瀬達が包囲されている。援護に向かうぞ」
「‥‥了解したわ」
 兵衛機とアリカ機、旋回、増速。香澄機とヤヨイ機の側面に位置するHWを狙う。
「当たれ‥‥!」
 兵衛機、螺旋弾頭ミサイルを発射。命中。しかしファランクスの迎撃で威力が減衰。HWに中程度のダメージ。
「くっ、ファランクスか。煩わしい‥‥。全機、聞こえるか。通常のミサイルでは効果が薄い。銃器で対応したほうがいい」
 全機に通信を送る。「了解」との返答。
「‥‥これなら!」
 アリカ機、アハト・アハトで狙撃。またもレーザーがHWの装甲を射抜く。大ダメージを与えた。
「一匹たりとも逃がすもんかよ。Mk4−D、Destroyerの型番は伊達じゃあないんだ」
 香澄機、旋回、増速。HWに向けてレーザーの雨を降らす。高熱に装甲を焼かれ、HWは大ダメージを受けた。
「撃ちます‥‥!」
 ヤヨイ機、SR−Rで香澄機と同じHWを狙撃。命中。致命的なダメージ。スパークし、火花を散らすHW。
 清四郎機、旋回、増速、旋回。
「ブレイド、FOX3!」
 スラスターライフルで射撃。次々と吐き出される砲弾がHWの装甲を削った。大ダメージ。
 美香機、旋回、増速、旋回。有利な位置取りをする。
「よっし、ここなら‥‥!」

 HW2機、香澄機に向けてフォトン砲を一斉射。だが例によって香澄機には命中せず。
「まったく、しつこい男は嫌われるってのにね。ま、無人機だろうけど‥‥それに私は可愛い女の子にしか興味がないのさ!」
 別のHW2機がプロトン砲を兵衛機に向かって発射。アクチュエータを起動した兵衛機は機体をロールさせて回避。
 傭兵部隊と距離を取っていたHW2機、追いついてきたヴァレス機とセージ機に向けてプロトン砲を放つ。
「そんなもの‥‥!」
「よっと」
 距離があったため、2機は軽々と避ける。
 左翼のHW2機、フォトン砲で清四郎機と美香機に攻撃を仕掛けてくる。
「超伝導なんちゃら起動っ! 当たってたまるかこんにゃろーっ!」
 清四郎機と、アクチュエータを起動した美香機は余裕を持って回避した。

「狙いは外さん!」
 ヴァレス機、リロードを挟み、アハト・アハトで2回射撃。2つの光条は正確にHWを貫き、撃墜。爆散。
「どうした! この程度ついて来れなきゃ話にならないぜ?」
 セージ機、増速。ショルダーキャノンを2発叩き込み、撃墜。こちらも爆散。
「これでトドメだ!」
 兵衛機、増速。スラスターライフルで銃撃を加える。まともに喰らったHWは火を噴き、爆発。
「‥‥私の刃からは逃がさない‥‥落ちてもらうわ」
 アリカ機、増速。すれ違い様にソードウィングでHWを切り裂いた。脇腹をぱっくり割られたHWは力なく墜落していき、地表近くで大爆発を起こした。
 香澄機、HWを正面に捉え、ロックオン。
「こいつが私のとっておきさ。増幅装置オールグリーン‥‥撃ち抜け、光の槍!」
 荷電粒子砲を発射、極太の光条がHWに突き刺さる。機体に大穴を空けられたHWはそのまま爆散。
「次いくよ‥‥!」
 香澄機は旋回し次の獲物へ。レーザーを照射。HWに致命的なダメージを与える。
「これで終わりです!」
 ヤヨイ機、SR−Rで狙撃。砲弾がHWに命中し爆炎が上がった。
「はあああああっ!」
 清四郎機、増速。スラスターライフルを射撃。HWの装甲を蜂の巣にしていく。ほどなく、HWは爆散。
「うおりゃー!」
 美香機、ショルダーキャノンで砲撃。狙い違わず砲弾がHWに突き刺さり、爆発。
「‥‥敵部隊の全滅を確認しました」
 ヤヨイ機からの通信。
「よっしゃ、終わったー‥‥」
 美香は緊張の糸が解けたように、へなへなとなった。
「まだ油断は禁物です。これより周辺警戒に入ります。‥‥ん? 待って、これは‥‥!」
 レーダーに反応があった。とても大きい。
「中型HW‥‥まさか‥‥」
 ヤヨイは息を呑む。
「本星仕様?!」
「こちらヴァレス機、視認した」
 もっとも近かったヴァレスが真っ先に確認。現れたのは――本星仕様の中型HWであった。漆黒のボディに金色のラインが入っている。‥‥何か、禍々しいものを感じさせる。
「派手にやってくれたな、人間共」
「なに!?」
「通信だと!?」
 驚きの声を上げるヴァレスとセージ。聞こえたのは、若い男の声。
「貴様は何者だ! 答えろ!」
 ヴァレスが叫ぶ。しかし返答は無い。
「くっ、迎撃する!」
「待って! うかつに手を出したら!」
「やらなきゃ基地が、シラヌイがやられちまう!」
 ミラージュの静止を振り切り、セージ機とヴァレス機は旋回、増速。
「喰らえぇ!!」
 ヴァレス機、PRMシステムを攻撃に注ぎ、温存していたK−02ミサイルを発射。
 本星型HWは回避行動。網の目のような白煙を潜り抜け、全弾回避。
「こちらも行くぞ!」
「‥‥了解!」
 兵衛機とアリカ機、旋回。ブーストを使用し増速。
「‥‥捉えた!」
 アリカ機、アハト・アハトを射撃。しかし本星型HWは易々と回避。
「本星型だろうが!」
 清四郎機、旋回、ブーストを使用。増速。一気に距離を詰める。そのとき――
「調子に乗るなよ、人間共が。――目標、マルチロック」
 本星型HWに搭載されたミサイルコンテナのハッチが開き‥‥無数のミサイルが吐き出された。そしてそれは、ヴァレス機、セージ機、兵衛機、アリカ機、清四郎機に襲い掛かる。回避行動を取るも、執拗に追尾してくるミサイルは‥‥避けられない!
 被弾。5機は黒煙を吹き上げ、落下してゆく‥‥。
「俺の名はルフト、ルフト・シュピーゲルング。貴様ら人間共を絶望の底へ叩き落す存在だ!」
 そのような通信が送られた後、本星型HWは撤退した。

●シラヌイドライバー
 どうにかこうにか、基地へ帰還した傭兵達。
 本星型HWの介入により一時混乱したが、依頼は無事達成した。

 清四郎はハンガーに収まったシラヌイを眺めながら、ちょうど基地を訪れていたシラヌイの開発主任である草壁・誠十郎に話しかける。
「‥‥良い機体だがやはり俺には合わんな‥‥。銀河は、ムラサメは出さないのか‥‥?」
 それに誠十郎は苦笑してこう答えた。
「開発者に面と向かって言うかね。‥‥まあいい。ムラサメは強敵だったよ。あれは、俺もいい機体だと思う。だが、出すも出さないも、採用を決めるのは軍とULTだ。シラヌイはたまたまNMV計画に当て嵌まった、といったところか」
 誠十郎は一呼吸置いて、また口を開く。
「君のようなユーザーの熱意が伝われば‥‥或いは‥‥としか言えないな。俺は一開発者に過ぎないよ」

 美香は愛機の前にやってきていた。
「頑張ったっすね‥‥これからも頼むっすよ、シラヌイ」
 装甲を優しく撫でる。見れば、表面がプロトン砲の熱で少し歪んでしまっているではないか。一度も被弾はしていないが‥‥やはり、いつまでも納機されたばかりのピカピカのままとはいかない。これが実戦を経験した証――。
「貴女、見込みがあるわね」
 そこへ、ミラージュが歩いてくる。
「中尉さん!」
 思わずびしっと敬礼してしまう美香。
「あはは、楽にして。初陣で2機も撃墜するなんて、すごい。‥‥また、同じ空を飛ぶかもしれない。その時は頼りにさせてもらうわね、シラヌイドライバー」
 片目を瞑って微笑むミラージュ。
(「シラヌイドライバー‥‥!」)
 美香はキラキラと瞳を輝かせた。

 一方、ヴァレスは――
(「なんだったんだ、アイツは‥‥」)
 脳裏に浮かぶのは漆黒の本星型HW。わざわざ通信を送ってくるなど‥‥。しかも、いいようにあしらわれてしまった。
「‥‥」
 また奴が出てくるかもしれない。ヴァレスは気を引き締めるのだった‥‥。