タイトル:乙女分隊・救援マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/10 18:06

●オープニング本文


 九州某演習場――
『これより機動実験を開始します』
「了解」
 KVのコクピットで、パイロットスーツを身の纏った少女が操縦桿を握り締める。
 実験開始のサイレンが鳴った。
 ロックオン警告。数秒置いてSSMからミサイルが放たれた。
 少女は超伝導アクチュエータを起動。機体を捻り、迫り来るミサイルを連続で回避する。
「‥‥!」
 そしてG−M1マシンガンを構え、射撃。
 ビルの様な建物の上に設置された的の中心を正確に撃ち抜く。
 尚も飛んでくるミサイルを避けつつ、残る的を次々と破壊していった。

 数分後――
『実験終了。お疲れ様です、少尉』
「ありがとう」
 オペレーターの労いに答え、ふう、と一息つく少女。
 彼女の名は高ノ宮・雪。階級は少尉。
 銀河重工の実験機「GT−01カスミ」のテストパイロットだ。
 先ほど行われていたのは超伝導アクチュエータの最新バージョンのテストである。
『午前の実験は終了です。ハンガーに一旦戻って‥‥えっ?』
「どうしたの?」
 戸惑った様子のオペレーターに雪が尋ねる。
『‥‥地殻変化計測器に反応が‥‥。これは‥‥敵です!』
「なんですって!?」
『すぐに護衛部隊にスクランブルをかけます。少尉は下がってください』
 そのとき――
 地響きと共にアスファルトを突き破り、通常より一回り大きいアースクエイクが前方に出現。
「!?」
『逃げてください! 少尉!』
 アースクエイクは攻撃は仕掛けて来ず、その代わりに口から対KVキメラを吐き出し始めた。
「護衛部隊はまだ?!」
『あと3分かかります!』
「くっ‥‥あなた達は下がって! ここは私が食い止める!」
『少尉‥‥了解しました。しかし、無理は』
「わかってる。機体は壊さないようにする」
 ‥‥なるべく、だが。

「なんなのよ! こいつら!」
 雪は超伝導アクチュエータで敵の攻撃を避けつつ、G−M1マシンガンで攻撃を加える。
 Gタランチュラ数匹が弾けた。しかしGスコルピオン数匹が迫る。
 飛んでくる強酸を避け、マシンガンの砲弾を叩き込む。ビルの陰に隠れてリロード。
「はあ‥‥はあ‥‥」
 頬に汗が伝う。彼女にとって、これが初めての実戦だった。
「うあああああっ!!」
 飛び出し、再びマシンガンで射撃。Gスコルピオン数匹に痛手を与えるが‥‥
 その後方から猛然と突進してくる一体のメガホーン! もう目の前まで迫っている!
(「やられる‥‥っ?! ね、ねえさま‥‥!!」)
 目を瞑った雪であったが‥‥衝撃は来なかった。
「なに‥‥?」
『ご無事ですか、少尉』
 正面モニターに映っているのはミカガミB型の姿。
「は、はぃ‥‥」
 まだ恐怖から立ち直っておらず、小さな声で雪が答える。
『我々はα−00独立小隊。そちらを援護します』
「あ、ありがとう」
『瑞葉、紅葉、双葉、行くわよ!』
『了解!!』
 4機のミカガミB型は巧みな連携で動きの鈍ったメガホーンを包囲し‥‥
 内蔵雪村の超濃縮レーザーブレードでバラバラに斬り裂いた――。

 九州某基地――
「銀河重工の実験機、GT−01が敵の襲撃を受けた」
 ブリーフィングルーム。集まったα−01部隊の面々を前にし高ノ宮・茜少佐が口を開く。
「機動実験中であったそうだが‥‥それを狙ってのことか、ただの攻勢か、そこは判らん」
 高ノ宮少佐は一同を見回す。
「諸君らはただちに出撃し、傭兵部隊と合流後、GT−01の救援に向かえ」
「少佐、質問をよろしいでしょうか」
 α−01部隊の隊長である早乙女・美咲(gz0215)が手を上げた。
「許可する」
「‥‥あの、私達はまだ訓練部隊ですよね。それを、何故‥‥」
 おずおずと美咲は立ち上がり、尋ねる。
「軍は九州北部戦線に掛りきりでな、手が足りぬのだ」
「‥‥そうですか。了解しました」
 着席する美咲。
 一年と少し前のあのときのように‥‥また、軍のゴリ押しだろうか。
「私は」
 高ノ宮少佐が声を上げる。
「諸君らには出来ると思っている。でなければこのような要請は受付ぬ。諸君らは模擬戦で傭兵を破っただろう! 自信を持て!」
 その言葉に一瞬びくっとした美咲であったが、すぐに表情を引き締めた。
「‥‥今回は最初から傭兵もいる。案ずるな、全力を尽くせばいい」
「了解!!」
 落ち込み気味だったα−01部隊の面々の士気は、なんとか上がった様子。
「パイロットの生命も重要だが、GT−01の安全を最優先に考えろ。あれは世界に7機しか存在しない貴重な機体だ」
 高ノ宮少佐はそのように続ける。そして――
「それから‥‥誤解の無い様に言っておくが‥‥GT−01のパイロットは‥‥私の妹だ」
「!?」
 驚きの表情を浮かべる一同。
「決して、そのような私情で部隊を動かすわけではない。これは誓う」
「‥‥了解しました! 妹さんは必ず助け出します! 皆、いいね?」
「了解!!」
「α−01部隊、出撃準備!」
「了解!!」
 美咲の号令で、一目散に退出していくα−01部隊の一同。
「‥‥」
 無言の、高ノ宮少佐。まだ退室を許したつもりはなかったのだが‥‥。
「どうやら、やる気を出させちゃったみたいね」
 隣で聞いていた片瀬・歩美軍曹がくすりと笑う。
「‥‥私もまだまだだな。部下の前で弱いところを見せてしまった‥‥」
 高ノ宮少佐は苦笑。
 我ながら情けない。しかし、彼女らに託すしかなかった。
(「‥‥妹を、頼んだ」)

●参加者一覧

百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
鈴葉・シロウ(ga4772
27歳・♂・BM
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
夏目 リョウ(gb2267
16歳・♂・HD
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN

●リプレイ本文

●騎兵隊
 敵の襲撃を受けているGT−01カスミの救援に向かう傭兵部隊とα−01部隊。
「前回といい今回といい、図ったようなタイミングで来る奴らだな‥‥実は監視してるんじゃないのか? ‥‥まぁそれは冗談として、サクっと助けに行きますかね」
 まず口を開いたのはロビン『Silver Lancer』のコクピットシートに座る百瀬 香澄(ga4089)。
「しかし何だ、カスミって自分の名前を呼ぶみたいで、なんか恥ずかしいな」
 そのように続ける。偶然なのだろうがどうしても気になってしまう。
「香澄さんと同じ名前の実験機‥‥やらせるわけにはいきませんね」
 九条・冴からの通信。それに香澄は「はは、ありがとう」と穏やかに答えた。
「一つ愉快なお話を。飛熊ってつまりは太公望。なので大いに頼っちゃってもいいんですぜ?」
 雷電改『飛熊』に搭乗する白熊ヘッドの紳士、鈴葉・シロウ(ga4772)がそんなことを言い出した。彼は中々に協調性のある性格のようで、頼りになる。
「‥‥別に釣りな太公望で白熊が乙女に釣られクマーということではアリマセン」
 本当の所はどうなのだろう。彼が美少女『愛』なのは確定的であるが‥‥。
 二次元三次元はともかくとして。
「演習場にまで仕掛けてくるとはな。それとも実験機を狙ってんのか‥‥どちらにせよ、とっとと片付けちまおうぜ」
 火砲の運用に長けたワイバーン『遠雷』のコクピットで玖堂 鷹秀(ga5346)が言った。
 彼は今回、「腕の錆を落とす」という個人的な理由で同行している次第である。
「GT−01‥‥か。貴重な実験機を失うわけにはいかない」
 ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)が呟く。彼の乗機は漆黒に赤いラインのカラーリングが施されたシュテルンだ。
「こうも早くあの虫どもと再戦する機会がやってくるとはな。前の様にはいかん、そして誰一人やらせねえ。俺の力は誰かを助けるための物だ。‥‥それにGT−01にも興味あるしな、試作機って事はやっぱ採算度外視の高性能機なのかなあ?」
 シロウと同じ雷電改に搭乗する龍深城・我斬(ga8283)が心構えと、疑問を口にした。
 GT−01カスミの性能はGFA−01シラヌイよりも劣る。GT−01の元となったのはNMVコンペ時のトライアルで傭兵が実際に搭乗したシラヌイの試作機である。シラヌイはNMV計画に採用が決まり量産に至るまで大幅な性能強化が施された為、試作機の方が、性能が低いのだ。
 ‥‥と、α−01部隊の隊長の早乙女・美咲が説明してくれた。高ノ宮少佐の受け売りだが。
「貴女方は我々に勝ったのです‥‥自信を持って下さい。それとも‥‥我々では役不足でしたかな?」
 アヌビス『黄泉』のコクピットからα−01部隊に通信を送るヨネモトタケシ(gb0843)。
 緊張しているかもしれない彼女らへの気遣いだ。
「そんなことありません! ヨネモトさん達が居てくれれば心強いです!」
 と、美咲が返してきた。
「実験機も大切なんだろうが、俺は虫達の犠牲者を少しでも減らしたいから‥‥助けられる命はこの手で守る。ましてや知っている人の身内なら尚更ね」
 夏目 リョウ(gb2267)はリヴァイアサン『蒼炎』のコクピットで、操縦桿を握る手に力を込める。
「リョウくん、無理は‥‥しないでね」
 美咲からの通信。心配そうな声。
「ああ、解かってるさ」
 覇気の篭った声で、リョウは答える。
(「茜少佐の妹さん‥‥できればこんな非常事態でない時にお会いしたかった、な」)
 バイパー改『Sylph』に搭乗したティリア=シルフィード(gb4903)はそんな風に考えていた。
(「状況は厳しいけれど、必ず助け出してみせる。少佐を悲しませるわけにはいかないから‥‥! それに名前は『高ノ宮・雪』さん、だっけ‥‥)
 ティリアは『雪さん』と家族同然に呼び慕う女性の顔を思い浮かべる。
 ‥‥そうしたら「尚更無事に助けなければ!」という気持ちになった。
 名前が似ているだけだが、なぜかそういう気持ちになった。

 他の者もティリアと同様の想いを胸に、現場へと向かう――。

●包囲突破
 演習場手前に到着した一行。そこは‥‥情報通り、敵で溢れていた。
 一刻も早く救出しなければGT−01、護衛部隊、α−00独立小隊は敵の波に飲み込まれてしまうだろう。
 傭兵部隊とα−01部隊は早速行動に出る。
「まずは一丁派手に‥‥薙ぎ払うッ!」
 香澄機、DR−2荷電粒子砲を二連射。空気がプラズマ化し、粒子と熱の衝撃が敵を襲う。
「喰らえってんだよ!」
「いっけー!」
 続いて我斬機とティリア機がG−44グレネードランチャーを放ち、爆風が巻き起こる。
「フフーフ。それじゃミサイルパーティーの始まりです」
「道を、開けろ‥‥!」
 間髪置かずにシロウ機、ティリア機、ヴァレス機は同時にC−0200ミサイルポッドを発射。無数のミサイル群が敵に吸い込まれ、爆炎が幾つも上がった。
「さぁて、楽しいドンパチのお時間だ! ハデに楽しんで行こうぜぇ!!」
 鷹秀機、47mm対空機関砲「ツングースカ」で無数の砲弾を叩き込む。
 α−01部隊各機はスナイパーライフルで援護射撃。
 ‥‥ほどなく、包囲に穴が開いた。
「速やかに‥‥蹴散らして差し上げましょう! 黄泉、参る‥‥!」
「行くぞ『蒼炎』! 何としても皆を助け出すぞっ!!」
 それを見てヨネモト機とリョウ機が双機刀「臥竜鳳雛」を構え先陣を切って飛び込み、同じ前衛である香澄機、ヴァレス機、我斬機が続く。

 香澄機、レーザーガトリング砲でGタランチュラの群れを蹴散らし、それでも肉薄してくる敵には高電磁マニピュレーターを叩きつける。
「わらわらと数ばかり‥‥!」
 ヴァレス機、試作型「スラスターライフル」を撃ちつつ、すれ違いざまにソードウィングでGスコルピオンの尻尾を切り裂く。そして――
「押し通る、邪魔するな」
 前方のメガホーンに対し、ブーストを使用。機杭「エグツ・タルディ」で、その強靭な装甲を撃ち貫きよろめかせ強引に突破。
 我斬機、レーザーカノンを放ち、ファランクス・アテナイで弾幕を展開。
「虫共が! 道を阻むな!」
 ヨネモト機は80mm輪胴式火砲の引き金を引いてGタランチュラを潰し、接近する敵は双機刀で斬り払う。
「やあぁっ!!」
 Gスコルピオン数体が体液を撒き散らして地に伏した。
 リョウ機、3.2cm高分子レーザー砲を照射しつつ、接近してきた敵にはヨネモト機と同じく双機刀で対応。
「敵の数が多い‥‥でも!」

 α−01部隊はレーザーを照射しながら前衛に追随。
 ティリア機はα−01部隊と足並みを合わせ、道を塞ごうとする敵に対し強化型ショルダーキャノン、R−P1マシンガンを撃ち込む。
「こんな所で、足を止めていられないんだ!」

 シロウ機、30mm重機関砲とスラスターライフル、二つの重火器で前衛を援護。
「鉛玉は美味しいですか? もっとイカガ?」
 鷹秀機、ツングースカと試作型リニア砲で同じく前衛に対し支援砲撃。
「ヒャッハー! 食い放題だぜ! オラオラオラオラー!!」
 旺盛な砲火が飛び、対KVキメラの群れの中に一本の道が作られる。

 傭兵部隊とα−01部隊は真っ直ぐに突き進む‥‥。

●合流・脱出
 敵の包囲を抜けると‥‥バイパー4機の護衛部隊、ミカガミB型4機のα−00独立小隊、そして‥‥それらに守られたGT−01カスミを発見。
 戦闘中のようだが、先ほどの敵陣の真っ只中よりは幾らかマシな様子だ。バイパー4機は小破程度、ミカガミB型4機とGT−01は幸いほぼ無傷である。
「雪さ‥‥じゃなくて、雪少尉、助けに来ました。大丈夫ですか?」
 ティリアがGT−01に通信を送る。
「え? あ、はい。なんとか‥‥大丈夫です。そちらは?」
 いきなり名前で呼ばれ、戸惑ったように答える雪。
「乙女のピンチに、私、参上。‥‥こちらは傭兵部隊、およびα−01部隊です。高ノ宮少佐の命により救援にマイリマシタ」
 真っ赤な薔薇でも口にくわえていそうな口調でシロウが名乗る。
「ねえさまが!? ‥‥いえ、なんでもありません。ありがとうございます」
 雪は恥ずかしそうに言い直した。
 それから接近してくる敵を迎撃しつつ、脱出作戦について説明を行う。そこへ――
「失礼します。私はα−00独立小隊隊長、森ノ宮・柚葉曹長です」
 透き通る声が回線に割り込んでくる。間もなく黒髪の美女がメインモニターに映し出された。
「脱出の前に、傭兵部隊とα−01部隊にも、演習場外円部に設置してある地殻変化計測器のデータを転送しておきます。これで、EQの出現位置が予測できるはずです」
「これはありがたいですねぇ」
 ヨネモトが転送中の表示を見ながら言った。
 寄って来る敵を払いながら、軽く打ち合わせを行った後、一同は脱出を図る。

「ゼロ・リーダーより各機、これより友軍と協力し、敵の包囲から脱出する。GT−01‥‥高ノ宮少尉をお守りすることが最優先。いいわね?」
「02了解」
「03了解」
「04了解」
 そのような通信が聞こえてくる。きびきびとした反応に美咲は「すごいなあ」と思った。

 作戦は――
 我斬機、ヨネモト機、リョウ機、ティリア機が前衛となって道を切り開き、
 香澄機、シロウ機、鷹秀機、ヴァレス機が殿となって背後を守る。
 α−01部隊がGT−01カスミの直衛につき、護衛部隊とα−00独立小隊がそれを囲む。
 ――というものだ。

 時間経過と共に不利になるのは明らかなので、一同は躊躇わず行動を開始!
 香澄機、最初と同じ様に荷電粒子砲を二連射。
「もう一丁! 薙ぎ払え!」
 続けてシロウ機とヴァレス機がC−0200ミサイルを一斉発射。
「本日二度目のミサイルパーティー、GO!」
 それを合図に全機が一点に火力を集中させ、再び突破口を開く。
 全機前進。

 我斬機、Gタランチュラはレーザーで焼き殺し、向かってくるメガホーンは盾で受け流してチェーンソーで側面を斬る。だが赤い壁の抵抗を受けて威力が減衰。
 Gスコルピオンの強酸が飛んでくる。
「っと、蠍の強酸は受けるなよ、尻尾を優先して破壊しろ」
 超伝導アクチュエータを使用、スラスターを吹かしステップ移動で回避。
「同じ轍は二度踏まねえ、今回は武器を軽くしてその分スラスターを増設したかんな」
 ヨネモト機、迫る敵を次々と双機刀で斬り伏せていく。
「押し通る‥‥! 道は開けてもらいますよ」
 リョウ機、ヨネモトと同じく双機刀を振るい、突撃してきたメガホーンの攻撃を避け、システム・インヴィディアを起動。
「希望へ続く道を照らし、輝け、蒼き燐光‥‥蒼・炎・斬!」
 渾身の必殺剣で、メガホーンのボディに深い斬痕を刻み込んだ。噴出す体液。
「残りのミサイル、ありったけ‥‥喰らえッ!!」
 ティリア機、リョウ機が傷を付けたメガホーンにC−0200ミサイルを叩き込む。
 傷口に大量のミサイルを受けたメガホーンは爆散。

 α−01部隊はレーザーで討ち漏らしを排除。
 α−00独立小隊は練機刀「月光」を振るい、GT−01に迫るGタランチュラを切り裂く。

 香澄機、レーザーガトリング砲で追い縋る敵を蹴散らす。
「ここは通してやれない。同じ名前のよしみでね、キズモノにされると目覚めが悪いのさ!」
 メガホーンの突撃がきた。‥‥通さないと言った! 盾で受ける。衝撃。機体が軋む。しかしそのまま高電磁マニピュレーターを振り下ろす。
「背中は任せた。信頼してるぞ、乙女分隊!」
 すぐさま「了解!」との返答。
 シロウ機、重機関砲とスラスターライフルを使い分けて対応。
 鷹秀機、リロードを挟みつつツングースカで弾幕を張る。
「ハッ! 狙いなんざ必要無さそうだなオイ、手当たり次第ブチ込んでやるぜ!!」
 トリガーハッピー状態‥‥。何せ『撃てば当たる』のだ。
 ヴァレス機、回避運動を行いつつソードウィングでGスコルピオンの身体を引き裂いた。
 直後にメガホーンの突撃がくる。ブーストジャンプで回避。PRMシステムを攻撃に使用――落下のエネルギーを利用して機杭を打ち込む。それは赤い壁を‥‥分厚い甲殻を貫いた。

 安全圏まであと少しと迫った時――鳴り響く警報! 間もなく前方に二体のEQキャリアーが地面を突き破って出現!
「ヨネモトの旦那! 左は任せた!」
「了解ですよぉ!」
 我斬機、右翼のEQキャリアー‥‥対KVキメラを吐き出すべく開いた口にグレネードを撃ち込み‥‥内部で大爆発を起こした。
 ヨネモト機、ホバー移動で左翼のEQキャリアーに接近。フレキシブル・モーションを使用。巨大な刀――邪断刀を振り下ろす。
「断ち斬れぇ‥‥ッ!」
 それは、火花を上げて巨大な、長虫のようなEQキャリアーの身体を斬り裂いた。
 ――二体のEQキャリアーが動きを止めた隙に、全機はブーストを使用。全速力で戦域を離脱した。

●実戦部隊
 基地へ帰還した一行。GT−01カスミは‥‥少なからず損傷はあるものの、許容範囲内であり、任務は無事達成だ。
 機体をハンガーに置いた後、ブリーフィングルームに集められた。
 皆が席に着くと、高ノ宮少佐が口を開こうとしたが――
「ねえさま!」
 遅れて部屋に入ってきた雪が、高ノ宮少佐に抱きついた。
「雪‥‥無事で何よりだ」
 高ノ宮少佐は優しく雪の頬に手を添える。
「すみません、ご心配をおかけして。助けを出してくれて‥‥ありがとうございます」
「いや、いい。助けたのは私ではない。‥‥ともかく、今はデブリーフィングだ。席に着け」
「えっ!? やだっ‥‥私ったら‥‥申し訳ありません! 了解しました!」
 慌てて座る雪。それを見てリョウは「どこか美咲に似ているなあ」とか思った。
 容姿は似ていないが‥‥性格というか、なんというか。でも育ちの良さは違うかも。
 そんなことを考えていると、隣に座る美咲に耳を引っ張られた。
「どこ見てんのよ!」
「ご、ごめん!」
 二人とも、小声。
 そして高ノ宮少佐は咳払いをし、話し始めた。
「諸君、今回の任務、ご苦労だった。おかげでGT−01も、パイロットも無事だ」
 高ノ宮少佐は微かに笑みを浮かべる。
「傭兵諸君には感謝を。そして‥‥これは別の話になるが‥‥。α−00独立小隊は本日をもって解体、α−01部隊に編入。KV12機体制、即ち中隊規模の実戦部隊とする」
「ええっ!?」
 驚きの声を上げる一同。α−00独立小隊の面々は事前に知らされていたのか、落ち着き払った様子。
「隊長は引き続き、貴官だ、早乙女」
「えええっ!? せ、先任の方じゃないんですか?!」
 口をぱくぱくとさせる美咲。
「早乙女は既に実戦を経験しているだろう。‥‥予定より、少し早まったがな。問題ないと、判断した。中隊編成に伴い早乙女は特進、准尉となる。他の者も昇格だ」
 突然のことに、唖然とする乙女分隊のメンバーであった‥‥。
 乙女中隊の誕生である。