●リプレイ本文
●メイドさん(+執事)大集合!
開店前に臨時のメイドさんと執事が集められ、軽いレクチャーが行われる。
女性店員の服装は基本的にカチューシャ+水着+ふりふりエプロンとなる。
ノエル・アレノア(
ga0237)と神崎・子虎(
ga0513)の衣装は‥‥白のスクール水着。腰から下だけの前掛けタイプのふりふりエプロン。狼耳尻尾。胸には『のえる』『ことら』という名札をそれぞれ付けている。
「やーん♪ ノエルン似合ってる☆ 僕とお揃いでぴったしなのだ♪」
「こ、これは(一部分が)危険な気が‥‥え、エプロンつけるとは言えっ。こんなのって‥‥」
ノエルとお揃いでとっても嬉しそうな子虎とは対照的に、顔をまっかっかにして恥ずかしそうにしているノエル。
衣装を用意したのは子虎であり、彼に選んでもらった時点でノエルの運は尽きていた。
「私の見立てには狂いはありませんですよ! あはは♪」
「ちょ、伊万里! なんでこんな水着なんですの!」
伊万里 冬無(
ga8209)と大鳥居・麗華(
gb0839)の二人はTバックビキニ。
上は冬無が薄紫色のチューブトップで、麗華は赤いビキニだ。
特に、麗華の白い肌には赤色が良く映える。
「如何してですかっ♪ とてもよくお似合いです♪」
「のぉぉぉぉぉ!!」
勿論、水着を用意したのは冬無である。
「店員として、参加‥‥滅多に無き、機会故‥‥盛り上げて、いきたい‥‥」
L3・ヴァサーゴ(
ga7281)はゴスロリ風の装飾が施された微妙に布地が少ない黒のビキニ。
「‥‥然し、何故‥‥皆、水着着用‥‥?」
女の子の水着姿を見る事によって視覚的に夏を先取りしよう! というのが今回の企画。
柚紀 美音(
gb8029)は胸の中心に大きなリボンの付いたオレンジ色のビキニ。前掛けタイプのふりふりエプロン。
「水着でエプロンとは‥‥聞いていた事と違います! しかし、やるからには目一杯稼ぎましょう♪」
麗華、ヴァサーゴ、美音の3人は冬無に誘われたのだが‥‥詳しい内容は知らされていなかったらしい。
心の中でほくそえむ冬無。
瑞姫・イェーガー(
ga9347)の水着は紺のスクール水着。
その上にセーラー服の夏服の上着だけを着る。俗に言うスク水セーラーだ。
オプションとして犬耳尻尾も付いてます。
セレスタ・レネンティア(
gb1731)は黒の三角ビキニ。
二条 更紗(
gb1862)は超Tバック。胸にはニップレス。
ふりふりエプロンと合わせて、背中丸見えの裸エプロン状態。
エプロンの長さは計算されたもので、脚には黒のオーバーニーソックスを穿き、絶対領域を形成。
「少し‥‥いや、かなり刺激が強すぎるわねぇ」
非常に魅力的で男性客の視線を集めること間違いなしだが、危険すぎる。
「うちの店を誤解されそうだから、残念だけど着替えてきて頂戴」
店長からNGを食らい、更紗はメイドのミカと琴音によって更衣室へ強制連行。
「あら? あらら?」
結局、紺のスクール水着(胸の名札に『4の5二条』と書かれている)にスカートタイプのエプロン、脚には白タイツ、となる。
ヘイル(
gc4085)は長袖のシャツ、漆黒のネクタイとベストとスラックス、白手袋という執事姿。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
店長からレクチャーされた通りに恭しく挨拶してみる。
「‥‥何をやってるんだ、俺は‥‥」
だが言った後に後悔。
(「それにしても、何だって能力者の女性っていうのは美人が多いんだろうな?」)
周りを見回して思う。
能力者には美形が多い。それは男性にも言える事だ。
水下 夏鬼(
gc4086)はオリーブグリーンの三角ビキニ。
胸元が大きく開いたふりふりエプロン。豊満な膨らみをこれでもかと見せ付けている。
マルセル・ライスター(
gb4909)はショタっ気溢れる半ズボンの執事服。
「な‥‥何なんですか? ここ、何処ですか? 何で俺、半ズボン姿なんですか?」
瞳に涙を浮かべてぷるぷる震える。
事前に誘っておいた恋人の姿を探していると‥‥背後から肩を叩かれた。
振り返れば、控えめにフリルの付いたビキニとパレオを着た、エスター・ウルフスタン(
gc3050)の姿。
「べ、別に水着をあんたに見せようとか思って着たわけじゃないのよ‥‥? これはそう、ちょっとお小遣いが足りなかったから、お金を稼ぐためよ!!」
「えっと、その‥‥凄く可愛いよ」
言い放った彼女をさり気無く褒めてみる。
「そ、そんなこと言われても‥‥全然、全然嬉しくなんてないんだから!」
頬を赤く染めているエスター。彼女は重度のツンデレらしい。
(「喫茶店でメイドさん‥‥明るい雰囲気でジメジメを吹き飛ばすよう頑張るのですっ!」)
気合を入れる鬼灯 沙綾(
gb6794)。飲食店での接客業務は以前にも経験があった。
(「あの時だってやれたのです、今度もきっと大丈夫。頑張れボク。今だけはさよなら人見知りなボク」)
水着は要所を白のフリルで彩った黒のホルターネックビキニ。
(「やっぱりメイドさんと言えば白と黒のコントラストなのですよ」)
その意見には大いに賛同する!
「でも、水着で接客というのは流石に初めてなのです‥‥」
ぼそぼそと呟く。
(「皆さん綺麗な方ばかりで、尚の事恥ずかしいのですよ‥‥」)
きょろきょろと見回し、もじもじする沙綾。
周りのメイドさんと比較しても全く見劣りしていないのだが。
「あぅ‥‥。でも、ボクみたいな子どもが黒とか生意気な感じでしょうか‥‥?」
「いえいえ、そんな事は無いですよ」
メイドのミカが笑う。
「にゅ‥‥ミカお姉ちゃんのために‥‥が、頑張るですの‥‥」
来栖・繭華(
gc0021)はピンクのワンピース水着。
幼い肉体に不釣合いなビッグサイズのバスト。彼女が水着を着ると凄いです。
「にゅ‥‥胸が苦しいですの‥‥こ、この前は大丈夫でしたのに‥‥」
胸は絶賛成長中である。繭華‥‥恐ろしい子っ。
「ミカお姉ちゃんは‥‥ポニーテールとツインテール、ど、どちらが良いと思いますの?」
おずおずと尋ねると、ミカは「どちらかと言えばツインテールの方が似合いそうです」と答えた。
「えと、バイト先ではまだまだですから‥‥ウェイトレス道を磨くですよ‥‥っ」
リリナ(
gc2236)は金欠なので、タンスに眠っていた濃紺の旧スクを着用。
胸の名札に『Lirina』と、ぶっとい字で書いてある。
「後‥‥個人的に他のバイトも探してましたし‥‥一杯働いて稼ぐです‥‥っ」
如月 葵(
gc3745)はふりふりエプロンの白が映えるように黒いビキニ。
髪型は後ろで結わえてポニーテールにする。
「接客業はあまり得意ではないのですが‥‥これも社会勉強の一環だと思って頑張りたいです」
依頼にてメイドとして潜入した事があるので大丈夫だと思うが‥‥
「人前で肌を見せるのは、恥ずかしいですね‥‥。私も執事服ではダメですか? 普段スーツを着ていますし‥‥」
しかし店長から「絶対にダメ!」と言われてしまう。
●ハーレム状態!
ノエルと子虎は基本的に、一緒に接客を行う。
「接客業務はある程度慣れているから足は引っ張らないと思うけどっ‥‥これではっ」
「大丈夫大丈夫。楽しめばいいのさ、ノエルン♪」
ノエルは頬を赤くしたまま必死にエプロンの裾を押さえながら歩く。
子虎はるんるん気分で配膳などを行う。
極上の男の娘二人に「こんなに可愛い子が女の子のはずがない!」と、客の視線が集まる。
ノエルは恥ずかしすぎて死にそう。頭から湯気が出ている。
子虎のほうは視線を浴びまくって気持ち良さそう。
「もう、お兄ちゃん待ちくたびれちゃった! 今日はたーくさん食べてくれるんだよね♪」
美音は妹系甘えん坊メイドとなり、客に腕を絡ませて席に案内。
「あっ‥‥あの二人は‥‥」
(「男の子‥‥なんですよね?」)
その後、ノエルと子虎を発見。二人が油断している隙にエプロンを捲って確認してみる。
「きぃやあああああっ!!?」
「いやーん☆」
パニックになるノエルと、わざとらしくくねくねして恥らう子虎。
水着メイドさんとして接客をするヴァサーゴ。
「‥‥お帰り、なさい‥‥ませ」
客を出迎える時は聞き取れないくらいの小さな声でぼそぼそと。
「‥‥」
「あのー、カルボナーラを頼みたいんだけど‥‥」
「‥‥」
注文を取る時も頷くだけであった。
麗華も同じく水着メイドさんとして接客。
「おーほっほっほっ! よくいらっしゃいましたわね! さ、早く注文を仰いなさい!」
あくまで高飛車に対応。
「ちょ、どこを見ていますの?! えっちぃ殿方にはおしおきですわ!!」
ねっとりとした視線を感じると、頬を水着と同じ色に染めてムキになりつつ鞭を振るおうとする。
だが美音に取り上げられ、くどくどとお説教。
「ダメですよ麗華さん、ご主人様にそんなことしちゃ。ヴァサーゴさんも。もっと大きな声を出して!」
「んんっ、違いますです。ほら、こうやりますですよ♪」
見かねた美音と冬無が麗華とヴァサーゴを指導。
「お帰りなさいませです、ご主人様♪」
冬無は邪悪成分無しの笑顔でお客を向かえ、席まで案内してみせる。
「ね、簡単です♪」
「いいですか、あのようなにっこり笑顔でご主人様をお迎えしてですね。あとご主人様のことを『お兄様』と呼んでみては‥‥って、何をしてるんですか?!」
ヴァサーゴは背後からもにゅもにゅと美音の胸を揉んでいた!
「‥‥」
「ヴァサーゴさん‥‥聞いてます?」
「冬無も、麗華も、美音も、皆‥‥大きい‥‥羨ましい‥‥」
「あぁん♪ そんな、いけませんです。はぁぁん♪ ヴァサーゴさん、なんという絶妙な指遣い‥‥♪」
今度は冬無の胸を揉むヴァサーゴ。全然聞いてない。
「ちょっとヴァサーゴ!」
ズビシィ! とヴァサーゴを指差す麗華。
美音は「珍しく叱ってくれるのか」と思うが‥‥
「そ、その‥‥伊万里や美音のだけでなく、わたくしのも‥‥揉んでもよろしくってよ!!」
と言い放つ。盛大にずっこける美音。
そんな様子の4人の周りには客が群がっており、当然店長のお叱りを受けた。
「はあ‥‥」
美音が落ち込んでいると‥‥
「ど、どうかしましたの?」
ツインテールを揺らして繭華がやってくる。二人の容姿はそっくりで、まるで姉妹のよう。
「店長さんに怒られてしまいました」
しゅんとする美音。
「そ、そうでしたの‥‥。ふぁ、ファイト、ですの!」
励ます繭華。美音は微笑んで繭華の頭を撫でる。
「フェルマータ‥‥侮れん、いつの間にここまで勢力を拡大したものか」
メイドさんに癒されようとやって来た夜十字・信人(
ga8235)。
しかしいつもとはえらく違った店内の様子に戸惑う。
水着エプロンのメイドさんがせわしなく歩き回っているではないか。
しかも沢山。どういうことなの。
ちらちら窺ってみる。‥‥前から見るとまるで裸エプロン!
これはヤバい。ヤパいじゃなくてヤバい。
それは兎も角! 信人は思考を切り替え。
「お帰りなさいませ、ご主人様♪ お席へご案内いたします♪」
レタス色のショートヘアが特徴的なメイドの萌黄に話しかけられる。
「その前に、メイドのエリス君を呼んでもらえないだろうか」
「エリスちゃんですね? わかりました。少々お待ち下さい」
ぴょこぴょこ奥へ下がっていく。暫くして金髪ツインテールのメイドさんが現れた。
「お呼びですか、ご主人様」
「いつぞやは不愉快な想いをさせてしまい、すまなかった」
信人は頭を下げ、お詫びの品を差し出す。
「プレゼント、ですか? ありがとうございます。でもこういうのは受け取れない決まりに‥‥」
「それでも受け取って欲しいんだ。本当に悪かったと思っている」
真剣な表情で言い、小包をメイドのエリスの手に握らせる。
「それだけなんだ。‥‥時間をとらせて申し訳ない」
一生懸命練習してきた笑顔を浮かべ、メイドのエリスに背中を向け、開いている席へ一人で向かおうとする信人。
後ろから信人の腕に手が回される。
「私の為に、わざわざありがとうございます、ご主人様。お礼にこのままお席へご案内しますね」
「あ、ああ‥‥」
満面の笑みのエリス。信人は頷く。
(「今回だけよ、エリスちゃん」)
それを遠くから優しい表情で見つめる店長。
事情‥‥信人がメイドのエリスを泣かせた事は知っていた。
プレゼントの件は見て見ぬふりをする。
ちなみに信人は『金髪ツインテール恐怖症』を未だ克服できておらず、メイドのエリスに腕組みされている最中は顔が真っ青で冷や汗だらだらだった。
席に座って一息つく信人。
「折角だし、何か食事でもとるか」
メニューに目を通していると、メイドをしている冬無や麗華の姿を発見。
彼女らには普段頭が上がらない信人‥‥そんな彼の心に静かな炎が灯る。
(「俺は客で、あっちは店員‥‥今日の俺は、来店したその時から優位!」)
「そこのメイドさん、注文をいいかな」
と、冬無や麗華、ヴァサーゴを呼びつける。美音も付いてきた。
「冬無君、珈琲を頼む。悪魔のように黒く、地獄のように熱いブラックを。あとスマイル。こっちは黒くないのを」
「麗華君、オムライスを頼む。‥‥ああ、その前に、語尾には『にゃん』を付けて喋ってくれ」
二人に無茶な注文をする信人。
「アハハハ! かしこまりましたです♪」
「なっ!? 何を仰っているんですの?! ‥‥か、かしこまりました‥‥にゃん、ご‥‥ご主人様」
奥へ下がる二人。
「ヴァサーゴ君‥‥。素晴らしい、美しいな。ちょっとそこでひらりと回って見せてくれたまえ」
悪びれた様子も無く、続けて注文。
「お帰りなさい、お兄様‥‥?」
くるりと回ってみせるヴァサーゴ。
信人の視界には翻るふりふりエプロン、水着に包まれた可愛いお尻が映る。
美音はその様子を見てニヤニヤ。
「ふっ‥‥」
優越感に浸る信人。‥‥そこへ麗華と冬無が戻ってきた。
麗華は(あくまで表面上は笑顔で)コーヒーを運んできて‥‥足を滑らせたふりをして信人にコーヒーをぶっかける。
「わちゃー!?」
「あらあら。ご主人様、ごめんなさいですわ」
棒読みの麗華。
「申し訳ありませんですぅ♪ うふふふふぅ♪」
冬無は満面の笑みでコーヒーが掛った部分をおしぼりで丁寧に拭くが、目は全く笑っていない。
ハイライトの無い吸い込まれそうな漆黒の瞳が自分を見つめてくる。
目が合っちゃった! 合っちゃったよ!
(「ひぃぃぃ!!」)
後で絶対何かされる! と、信人は心の底から怯えた。
「‥‥‥‥」
真っ白になって燃え尽きている信人。
何があったのかはご想像にお任せする。
「にゅ。信人お兄ちゃん、いらっしゃいませですの」
「あ、信人さん。いつも姉がお世話になっています」
繭華と葵の二人が挨拶するが、信人は「ああ‥‥」と、か細い声で答えるだけだった。
●打ち上げ!
鷹代 アヤ(
gb3437)、社 朱里(
ga6481)、神棟星嵐(
gc1022)、エリス・ランパード(
gc1229)が来店。
「にゅ。お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」
「やっほー繭華ちゃん。今日も可愛いね! いや、今日は特に!」
「あ、ありがとうですの」
出迎えた繭華を褒めるアヤ。
席に案内されると朱里が口を開いた。
「さて、たいちょー。の結婚祝いの一次会みたいなものかな!」
『たいちょー。』とはアヤのこと。先日めでたく結婚したそうな。
「人数があまり揃わなかったのは残念でしたね。まあ、今回は4人で楽しみましょう」
大規模作戦の疲れが残っているであろう皆の様子を心配しながら星嵐が言った。
「うん、皆で楽しまないとだねー♪」
こくこくと頷く朱里。
「ご注文はお決まりですか? ですの」
待機していた繭華が訊ねてくる。
「せっかくですから、ここの勘定は自分が持ちます。皆さん好きな物を頼んで下さい」
言ったのは星嵐。今日は財布にぎっちり中身を詰めてきたので何でもドンと来いだ。
「おー、星嵐さん太っ腹ですね。じゃあアールグレイのアイスティーとスコーンを人数分」
まずはアヤ。
「うーん、じゃあこのDXパフェを人数分」
次はエリス。
「このケーキセットを人数分!!」
最後は朱里。
3人のオーダーを星嵐が聞き、纏めて注文する。
「かしこまりました、ですの。少々お待ち下さい、ですの」
繭華は奥へと下がっていく。
「‥‥」
そういえば、たいちょー。に「洋服で行こうね!」って言われたから、白のワンピースを着てきた。
だけど‥‥どうだろうか。ちょっと自信が無い。いつもは和服だから。俯く朱里。
「そのワンピース、とってもよく似合ってるね」
アヤが笑顔で言う。
「ありがとー! たいちょー!」
「わわっ!」
アヤに抱き付く朱里。
「あ、そうだ‥‥これ。結婚式に行けなかったから代わりと言っちゃなんだけど、プレゼントだよ」
サンダーソニアとスイートピーの花束を贈る。花言葉は『祝福』と『門出』。
「わー、ありがとう」
花束を受け取り、嬉しそうなアヤ。
まもなく紅茶が運ばれてくる。
「アヤねーさん、結婚おめでとーっ! それと、AA作戦お疲れ様! かんぱーい!」
エリスが音頭を取り、4人はアイスティーで乾杯。
カランカランとグラスのぶつかる音が響く。
アヤの結婚祝いの他に大規模作戦の打ち上げも兼ねていた。
来られなかった仲間もいるけれど‥‥それはまた今度と言うことで。
「隊長がご結婚されたのはとても喜ばしいです」
微笑む星嵐。
「あはは、皆ありがとう。そしてお疲れ様、だね」
少し照れているアヤ。
その後お菓子も運ばれてきて、4人はお茶会を楽しむ。
「社ねーさんって色々武道やってるみたいだけど、合気道もやってるの?」
「はは、やってると言えばやってるけど‥‥ボク、いつもやりすぎちゃうみたいで、おじーちゃんに止められてるんだよね」
エリスの問いに苦笑する朱里。
(「あっ‥‥気が付いてみたら男の子は神棟くん1人だけ!? 肩身が狭くなりだからちょっとフォローかな?」)
と言う訳でエリスは続いて星嵐に話を振ってみる。
「聞く所によると‥‥ガールフレンドが出来たそうだね?」
「えー! そうなんですかー?」
アヤも食いついてくる。
「えぇっ!? それは‥‥」
「どうなんですか? 彼女さんとは上手くいってるんですか?」
瞳を輝かせて興味津々のアヤ。
「あはは‥‥まあ、順調、ですよ」
少し困ったようにごまかす。
「自分もしっかりと先を見据えていかないと、な‥‥」
星嵐は愛する人の顔を思い浮かべ、呟く。
「!? よーく考えて見れば‥‥この面子だと、社ねーさんとボクだけフリー‥‥」
(「兄貴も最近‥‥ボクの小隊の子と良い雰囲気だしねぇ‥‥。うう、華より団子だ。色々食べてストレスを発散しよう‥‥」)
もきゅもきゅと食べる。巨大なパフェがどんどん小さくなっていく。
「おお、エリスちゃんいい食べっぷり! ボクも負けてられないね!」
ケーキセットをもりもり平らげていく朱里。こちらも色気より食い気らしい。
その後も楽しげなお茶会が続く。アヤは仲間一人一人、一つ一つの言葉に耳を傾けてメモを取り、新曲の歌詞を紡いでいった‥‥。
●欲望!
(「この衣装‥‥ちょっと、いやかなり狙ってるけど。まっ、大丈夫だよね」)
お尻を振って犬尻尾を揺らす瑞姫。
「‥‥イェーガーさん、一緒にお仕事どうですか?」
セレスタが話しかけてくる。
「うん、OKだよ」
頷く瑞姫。二人は一緒に客への給仕を行う。
「いいなぁ、セレスタさんはスタイル良くて。ボクなんかツルペタ。気にしすぎかも知れないけどさ」
ふと、瑞姫はセレスタのナイスバディをまじまじと見つめ、凹む。
「イェーガーさんもこれからですよ」
セレスタは身体中に視線を感じ、頬をほんのり染めながら答える。
「それに‥‥うわぁ!? なっ! 何を‥‥!」
更紗がいきなり後ろから胸を揉んできた。
「ダメだって‥‥ん‥‥んふぅ‥‥」
円を描くように撫で回され、艶っぽい声を漏らしてしまう瑞姫。
「‥‥人の事言えませんけど残念ですね、まぁ、わたくしよりあると思いますよ」
と、更紗は慰める様に背中をぽんぽんと叩く。
「まったく何をするのさ! ふむ‥‥そうだよね。胸の大きさだけが女の魅力じゃないよね」
けど、残念って‥‥まあいいか。気にしたらいけない。
「はあ‥‥」
その様子を唖然として見つめていたセレスタに、更紗の次なる魔の手が迫る‥‥。
正面から堂々とセレスタの胸を鷲掴みにし、揉み倒す。これでもかと揉み倒す。こね回す。
ふにふにふに。もみゅもみゅもみゅ。ふにふにふに。もみゅもみゅもみゅ。
「ふむ、中々の触り心地と大きさです。いいですねぇ、病み付きになりそうです」
「あぁ‥‥!? あぁぁぁ‥‥っ!!」
超絶技巧とも言える手つきに嬌声を上げるセレスタ。
「ご馳走様でした」
更紗が手を離すとセレスタはがくりと床に膝を付く。それほどまでに激しかったのだ。
ちなみに3人が店長から大目玉を食らったのは言うまでもない。
そんな事でめげる更紗ではなかった。次なる目的地はキッチン。皿を下げるついでに覗いてみる。
「はかどってますかぁ〜」
鉄板で『プレーンな焼きソバ』を焼いているヘイルに声をかける。
「ん? 更紗か。何の用かな」
「通りかかっただけです。意外と手際いいですね」
「ああ、だいぶ慣れてきたよ。しかし焼きソバは人気だな。焼いても焼いても追いつかない」
ぷ〜んとソースのこげる良い匂いが漂ってくる。更紗のお腹がぐぅぅぅ〜と鳴った。
はっとして慌ててお腹を押さえる。ヘイルには聞こえていなかったが。
他愛の無い会話をした後、更紗は「お邪魔でしたね。では、頑張って下さいな」と言い、キッチンを後にした。
沙綾はまず、雨に濡れて来店したお客さんをタオルで拭いてあげるサービスから始める。
「お帰りなさいませ、ご主人様ぁ。ああ、お風邪を召しては大変なのです。ささ、こちらへどうぞー」
このサービスは大好評で、お客は例外なく嬉しそうであった。
続いて配膳などを行う。
(「‥‥なんというか、多分気のせいだと思うのですが‥‥皆さんの視線が心なしかボクの胸に集中しているような‥‥。やっぱりどこか変なのです?」)
気になりつつも銀のトレイを持って歩き回る。
「あのメイドさん、可愛いな」
「そうだね。かなりレベル高いよ。それになんかフローラルな香りもほのかに漂って‥‥ハァハァ‥‥もう辛抱堪らん!」
「待て、早まるな! メイドさんに触れるのは礼儀に反する。紳士的ではない」
「HENTAI紳士の間違いだと思うお」
などと客達は話していたのだが、幸い沙綾には聞こえていない。
(「ふう。というか‥‥去年の水着が、もうキツイのです‥‥」)
動く度にたぷんたぷんと揺れるたわわな二つの膨らみ。繭華などと同じく成長著しいようだ。
(「むぅ、動き回ってると水着が食い込んでいやんな感じなのです」)
立ち止まってトレイを脇に挟み、水着を直す沙綾。
すると‥‥一部から歓声が巻き起こった。
「ふぇっ!?」
沙綾はびくっとする。
この食い込んだ水着を直すしぐさは一部の者にとっては堪らないのだ。破壊力抜群なのだ!
それからというもの、沙綾に注文が殺到し、一日中引っ張りだこだったらしい。
「お仕事モードです‥‥っ」
キリッとした表情のリリナ。彼女は料理の腕が壊滅的のため、頑張って接客を行っている。
「お、お帰りなさいませ、ご主人様」
たどたどしくもきちんと客を迎えて席に案内。
「かしこまりました。あ、それと、海の家っぽいメニュー、ジャンボフランクはどうですか‥‥?」
積極的に商品を勧め、注文を集める。
「お仕事中ですからダメですよー。というか、店内は撮影禁止ですっ」
マナーの悪い客に対しては厳しく注意。
小さな身体で奮戦するリリナ。がんばれリリナ!
(「ふう‥‥。そういえば、クラヴィーアさんは来るのかな」)
前の依頼でシャワーに誘ってもらったお礼を言いたかった。
その様な事を考えていると――カランカランと入り口の扉が開いた。お客さんだ。
「おかえりなさいませ、お嬢さ‥‥」
視界に入ったのはULTオペレーターの制服を着た女性の姿。
「こんにちは、リリナさん。様子を見に来ちゃいました」
やって来たのはクラヴィーア・櫻野だった。リリナの顔を見てニッコリ微笑む。
「クラヴィーアさん! 来てくれたんですね! えと、ええと、あたしがお席へご案内します!」
会いたかった人が突然現れてちょっと混乱気味のリリナ。
「うふふ、焦らなくてもいいですよ」
クラヴィーアはくすくすと笑う。
話を聞けば、丁度お昼時だったのでランチしに来たのだそうな。
依頼の説明を何度か担当した為、前々からフェルマータの事が気になっていたらしい。
クラヴィーアへの給仕はリリナが自ら行い、終始和やかムードだった。勿論お礼も言えた。
抜群のプロポーションを誇る水着メイドさんが壁に背を預け、物思いに耽っていた。
自分は一般的なメイドの仕事をした事はないが、メイドとしての教育は受けている。
立ち振る舞い、言葉遣い、マナーは無難にこなせる‥‥はず。
そして何よりお嬢様から有難いお言葉を頂いている!
曰く「自分の個性を最大限生かしなさい。でも恥じらいと焦らしも忘れないで。適度なストレスを快楽に昇華させるのよ」とのこと。
(「お嬢様‥‥ナッキーは頑張ります!」)
ぐっと拳を握る夏鬼。そこで、軽く丸めた新聞紙で頭をぽかりと叩かれる。
「はうっ!」
「何ぼーっとしてるの。そんなんじゃお給料は出せないわよ!」
背後に居たのは店長だった。怒られた。
「ごめんなさーい!」
(「ナッキーは‥‥ナッキーは頑張ります‥‥!」)
そして夏鬼はお客へのご奉仕を開始!
歩く時は水着の布部分を徹底的に隠す。
(「お嬢様‥‥ナッキーは恥ずかしいです‥‥」)
一礼の際にはエプロンの裾を持ち上げて水着をちらちらと見せる。
「お帰りをお待ちしております、ご主人様」
客の視線を誘導するため、幸運のメダルを胸元で光らせる。
(「ふふ、見られてる‥‥。これが気になるのね?」)
‥‥恥ずかしがりやなのか大胆なのか、一体どっちなのだろう。
「水着エプロンのメイドさんか。正統派から言えば邪道かもしれないけど、何故かアーちゃんは違和感ないねー。まあ世界に目を向ければ、別に珍しくもないからかな。人類にもバグアにも色んなのがいるしね」
などと言いながら来店したアーク・ウイング(
gb4432)を葵が出迎える。
「お帰りなさいませ、お嬢様。お煙草は‥‥吸われませんよね?」
「うん、アーちゃんは未成年だから吸わない」
アークはこくりと頷いた。
「では、お席のほうに案内いたします」
心よりのスマイルを浮かべる葵。先導して席へ向かう。
「‥‥」
後ろを歩くアークが、ぷりぷりとした葵のお尻をガン見。
いや、これは仕方ない。水着エプロンなのだ。同性でも自然と目が行ってしまう。
「っ!?」
視線を感じた葵は恥ずかしそうにお尻を手で隠す。
‥‥舌打ちが聞こえたのは気のせいだろう。
席に着くと、アークはジュースを注文。
「ではメニューの方を確認させて頂きますね。トロピカルジュースがお一つ。ご一緒にココナッツパイは如何ですか?」
「じゃあそれも貰うー」
「ありがとうございます。少々お待ち下さいませ」
そんなやり取りの後、葵はお尻を隠したままススーッと奥へ下がっていった。
数分もしない内にジュースとパイが運ばれてくる。
「このメイド喫茶のイベントのことを手紙に書いて実家に送ったら、父さんとお爺ちゃんから水着の店員さんを撮ってくれっていう返事と一緒に、やたらと高性能なカメラが送られてきていたなぁ」
などと、ジュースをちゅーちゅー飲みながらアークは呟く。
ちなみに撮影するつもりは微塵も無かった。『店内撮影禁止』という貼り紙も見えるし。
「撮らなくてもどうせ母さんに2人とも制裁されて、この話も終わりだろうしねー」
そんな感じでパイを頬張りながらぐだぐだと過ごす。
食べ終えると、あんまり長居するのもアレなので会計を済ませ、アークは店を出た。
「うむー、何か忘れているような‥‥」
兵舎までの道を歩きながら首をかしげる。
なんだろう、このすっきりしない感じは‥‥。しばし思考をめぐらす。
「はっ! ゲームで連敗続きの汚名を返上するのを忘れていたー!!」
メイドの琴音の顔が思い浮かぶ。きぃぃ、悔しい。
だがしかし、今更店に戻るのもどうかと思ったので、アークはそのまま帰宅したそうな。
時は少し遡ってお昼前――。
「面白そうな企画をしていますね」
ソウマ(
gc0505)が来店。興味深そうに店内を見回す。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
そこへミカがやってきて、お決まりのご挨拶。
「あ、ミカさんじゃないですか。ミカさんのおかげで劇は大成功でしたよ。ありがとうございます」
「あらあら、そうでしたか。それは良かったです」
ぺこりと頭を下げるソウマ。微笑むミカ。
前回、彼がフェルマータを訪れた時に『メイドの心得』をミカが伝授したのだ。
「それではお席へご案内します」
「はい、よろしくお願いします」
席に腰を下ろしたソウマ。ミカはすぐに呼ばれてどこかへ行ってしまった。
筆頭メイドである彼女は自らが企画したキャンペーン中の為、今日はいつにも増して忙しい。
前回のように「あーん」してもらうのは難しそうだ。残念ながら。
とりあえず紅茶でも頼もうかと、声を上げてみる。
「すみませーん、注文いいですかー」
「はい、ですの。お伺いいたしますの」
小さなメイドさんが近寄ってきた。身体は小さいが‥‥胸は大ボリューム!
しかも今回は水着なので余計にその迫力、大きさを感じられる。
思わず生唾を飲み込むソウマ。
「ご主人様?」
(「この娘‥‥確か前にも‥‥」)
記憶を辿る。キーワードは『爆乳』『小柄』『メイドさん』。脳内検索終了。
(「‥‥そうだ! パンツの娘!」)
拳をぽんと掌に打ちつける。なんという覚え方だ。
「あの‥‥ご注文を‥‥」
小さなメイドさんは困った様子でおろおろしている。
「あ、ごめん。ええと、特大チョコパフェと‥‥このホッパーアイス? を」
「チョコパフェの特大と、ホッパーアイス、ですね。かしこまりました、ですの。少々お待ち下さい、ですの」
そう言うと小さなメイドさんはぴょこぴょこ下がっていき‥‥何も無い所でべちゃっと転んだ。
‥‥うん、胸は凄いけどお尻は小振りだ。
「いたたた‥‥ですの」
「大丈夫?」
起き上がり、同僚の介抱を受ける。その様子をほくほく笑顔で見つめるソウマ。
後で尋ねてみたら小さなメイドさんは『繭華』という名前らしい。
ちなみにホッパーアイスはバニラアイスの上にイナゴの佃煮が乗っているという物だった。
味はまあまあ。
時は現在に戻る。おやつ時を過ぎた頃。
ソウマはちまちま注文しながらメイドさんウォッチングを続けている。
いやあ、水着エプロンって素晴らしい。見てて飽きない。
そんな風に考える。表情には出さないが、脳みそピンク色状態。そこへ‥‥
「ご主人様、カキ氷はいかがですか? 今ならメイドさんに食べさせて貰えますよ」
「5種類のカキ氷、全部食べ切れたらタダです!」
ヘイルと夏鬼がにこにこ笑顔でやってくる。
「えぇ‥‥と?」
カキ氷か。しかもメイドさんに「あーん」してもらえるとな?
ここは男として頼まない訳にはいくまい。
という事で注文。特大のカキ氷が運ばれてくる。
「‥‥」
絶句するソウマ。
「はい、あーんしてー」
そんなことは気にも留めずに、隣に座った夏鬼が長いスプーンで氷をすくい、口元へ運んでくる。
条件反射でぱくっと食べる。
「美味しいですか?」
「美味しい」
「じゃあドンドンいきましょう♪」
「ちょ、まっ」
段々口の運ばれるペースが早くなってくる。
「はいはい、次いきますよー」
「ぶべほっ!! ぐほっ!?」
口の中の感覚が無い。だけど食べる。気合いで食べる。
そして――完食。
「なん‥‥だと‥‥?」
驚きを隠せない、メニューの発案者、ヘイル。
「じゃあ、ヘイルくんのお給料から差っ引いておくわね」
電卓を持った店長が通り過ぎた。ヘイルは崩れ落ちる。
完食すればタダというリスクがある以上、発案者は責任を負わねばならない。
そういう約束だった。世の中そう甘くは無い、というお話である。
接客中のエスター。
「はい、かしこまりましたっと」
そっけない態度の彼女。客から「あーんして」などと頼まれれば‥‥
「はぁ?! う、う、うちがなんでんなことしなきゃいけないわけ?!」
「ツンツンきたこれ! 僕のハートにビシビシくる! 愛想が全く無い! だがそれがいい!」
この様にツンデレキャラで地道に客のポイントを稼いでいた。
一方、マルセル。
「‥‥」
湿気に丸眼鏡を曇らせた一見地味な少女、フランツィスカ・L(
gc3985)が来店。
前が見えないので突っ立っている。
「‥‥お帰りなさいませ、お嬢様」
それをマルセルが穏やかな声で迎えた。
「あっ‥‥その声‥‥!」
眼鏡を外し、布できゅっきゅと磨き、かけ直す。
「やっぱりマルセルさんでしたか‥‥。見覚えのあるお尻‥‥いえ、半ズボ‥‥いえ、ふとも‥‥後ろ姿が見えたもので‥‥」
フランツィスカは頬を紅潮させてもじもじとする。
彼女は半ズボンの匂いを嗅ぎ付け、思わず来店してしまったようだ。
マルセルはフランツィスカの手の甲に甘い口付けをする。
「!? はわわわわわっ!!?」
「お席へご案内いたします」
そのまま手を引いていく。
席に着いても動揺が収まらず、フランツィスカは勧められるままに注文。
運ばれてきた紅茶を口にしてようやく少し落ち着いた。
「えとその‥‥。普段はこういうお店には来ないんですけど‥‥。マルセルさんが働いているなら、毎日来てしまうかもしれませんね」
「ありがとうございます」
恭しく答えるマルセル。
「それにしても、変わった催し物ですね‥‥。皆さんとっても可愛いと思いますよ。い、一番可愛いと思うのは、マルセルさんですけど‥‥」
ちらりと彼の顔を見る。‥‥彼は微笑みを顔に貼り付けたまま傍に佇んでいた。
「‥‥あ、あの、私に構わず、エスターさんの所に‥‥行ってあげて下さい。マルセルさんにとって、大事な‥‥お客様でしょうし‥‥」
「えっ‥‥?」
エスターは早めにバイトを切り上げ、客として店内に残っていた。
そして――少し離れた席からマルセルに向かって凄まじい殺気を放っている‥‥!
「はっ!?」
急に汗をだらだら垂らすマルセル。
「お菓子もいただきましたし、私は帰ります。‥‥色々ありがとうございました。楽しかったです」
だっと席を離れ、レジで会計を済ませて店を出る。
「‥‥まだ止みそうにないですね‥‥。ああでも、雨も悪くないですよ。傘で顔、隠せますから‥‥」
小さな、呟き。彼には聞こえもしない言葉。
フランツィスカの頬を濡らすのは‥‥雨か、それとも‥‥。
エスターの元へやって来たマルセル。
「さっきのは仕事‥‥仕事だからね!?」
言い訳。エスターはぷいっとそっぽを向いている。あからさまに不機嫌だ。
「待たせてゴメンね」
「‥‥っ、別に。構って欲しいとかそんなんないし‥‥ほんとよ!?」
ムキになって言う彼女。マルセルは微笑む。いつものエスターだ。
「さて、シュヴァルツヴェルダーキルシュトルテでございます。紅茶はセイロン紅茶とキームン紅茶のブレンド、ブラッドオレンジ、ベルガモットの天然エッセンスのフレーバーに、ラム酒で少し香りをつけました」
「‥‥」
目の前に出されたお茶とお菓子に、一瞬言葉を失うエスター。
これは自分の為だけにマルセルが用意してくれた物‥‥。
「前に、ご馳走するって約束したからね。こういう形になったのは予想外だけど」
照れくさそうに頬を染めるマルセル。しばしの時が流れる‥‥。
「‥‥何だかんだで楽しかったわよ。まぁ、あんたにしては上出来だったんじゃないっ?」
「はは、良かった。エスターに楽しんでもらえるのが何より嬉しいから」
「‥‥っ」
二人して顔を真っ赤にする。
帰り際――
「‥‥ここは俺が払っておくよ」
さっと財布を出すマルセル。その後、二人は店の外に出る。
「エスター、愛してる」
「マルセル‥‥いつもごめんね。ありがと‥‥んっ」
彼女の傘を広げ、周囲から顔を隠し、マルセルは愛する恋人に唇を重ねた。
‥‥これが傘の本当の使い方である。
そんなこんなで営業時間終了。
「来客数は予想を大きく上回ったわ! これも皆のおかげね! ありがとう!」
テンション高めで店長が言った。店内に残った一同から歓声が上がる。
「やっと終わったぁ〜‥‥」
ノエルは思わず床に腰を下ろす。何度エプロンを捲られた事か(主に同僚に)。
「店長さんお疲れ様〜♪ また何かあったら呼んでなのだ☆」
「頼りにしてるわ、子虎ちゃん☆」
ウィンクし合う子虎と店長。
そして待望のお給料が配られ、能力者達はホクホク笑顔で帰路に着く。
「じゃ‥‥ノエルン、一緒に帰ろう♪」
「うん‥‥」
子虎がノエルの手を引き、立ち上がらせる。
二人は腕を組み、仲良く帰って行く。
と言った感じで『じめじめをぶっとばせキャンペーン!』は大盛況の内に幕を閉じたのだった。