タイトル:【ODNK】戦女神1マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/18 06:26

●オープニング本文


 九州某基地。ブリーフィングルーム。
 α−01部隊、通称乙女中隊の面々は早朝から召集を受けていた。
「早くからすまんな」
 高ノ宮少佐――α−01部隊の創設者――が口を開いた。
「我々に出撃命令が下った。‥‥諸君らも知っての通り、春日基地の司令官ダム・ダルを始めとしたバグア軍の攻勢により、現在九州戦線は危機的な状況にある」
 実際、UPC軍九州方面隊北熊本本部はダム・ダルのFRによる攻撃でかなりの被害を被った。
「軍の決死の抵抗で、戦線を立て直すことには成功したが依然予断を許さない状況が続いている」
 ‥‥高ノ宮少佐は数日前に言葉を交わした叔父の顔を思い浮かべた。
「諸君らに出撃してもらうのはこの地点だ」
 スクリーンに映された地図をポインターで指し示す。熊本と福岡の県境‥‥。
「ここは‥‥激戦区だ。ゆえに、手が足りない。軍は諸君らの力を必要としているのだ」
 激戦区。その言葉にα−01部隊の面々は唾を飲み込んだ。前回の対エース戦のことを思い出す。
 ‥‥少し、手が震えた。早乙女・美咲(gz0215)は必至にそれを押さえる。
 自分は隊長だ。こんなことでビビってどうする! 自分がしっかりしなくてどうする!
 きっと、表情を引き締め、再び高ノ宮少佐の顔を見つめた。
「早乙女、大丈夫か?」
「問題ありません」
 祖国、故郷であるこの地を守るためならば‥‥自分は‥‥。
「そうか。ならば良い。では、出撃準備にかかれ。皆、死ぬなよ」
「了解しました!!」
 乙女達は一斉に敬礼。
 バグアに、これ以上好きにはさせない。人類の底力を見せてやる‥‥!


 熊本・福岡間、県境。激戦区。
 濃紫の機体がひび割れたバイザーフェイスを赤く光らせ、群青色のタロスへ向かっていく。
「このぉぉぉ!! 貴様らに! これ以上我らの土地を荒らさせてたまるかぁぁぁっ!!」
 外部スピーカーから青年らしき声が響く。
 その機体はGFA−01シラヌイ。各部の装甲が砕け、満身創痍の状態である‥‥。
 しかし‥‥両手にしっかりと赤と白の、二つの機刀を握り締め、目の前の敵へ向かう。
「はぁぁぁっ!!」
 斬撃を見舞うが、タロスの熱剣により防がれてしまった。
 タロスはそのままガトリング砲を掃射。シラヌイの装甲が弾け飛び、内部が露になる。
 右腕は千切れ飛び、左腕の機刀も取り落としてしまう。機体にスパークが奔る。
「ぐふっ‥‥はあぁ‥‥はぁ‥‥。人類は‥‥貴様らバグアなどに‥‥屈したりはしない――!!」
 シラヌイは残る左腕で、腰にマウントしていたG−M1マシンガンを取る。
 ゼロ距離。フルオートで射撃。
「!?」
 タロスの機体が揺らぐ。タロスはすぐに熱剣を構え直し、敵機のコクピットを正確に貫いた。
 バイザーフェイスが光を失う‥‥。機能を停止し‥‥ゆっくりと崩れ落ちるシラヌイ‥‥。
「このえ様、ご無事ですか?」
 部下からの通信に群青色のタロスのパイロット、牙城・このえが答える。
「ああ。大丈夫だ」
「‥‥こちらは片付けました。しかし敵の抵抗が激しいですね」
「ふん‥‥流石に最前線だけあり、少しは骨のある奴も居るらしい」
「このえ様‥‥?」
「何でもない。補給が済み次第、再び攻撃を開始する。ビッグフィッシュに連絡を」
「了解しました」
 その後、このえは撃破した敵機にカメラを向けた。
 敵機――シラヌイは最早原型を留めていなかったが‥‥残った左腕だけは‥‥
 こちらに、尚も掴み掛かろうとしているようにも見えた‥‥。

●参加者一覧

時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
鷹代 由稀(ga1601
27歳・♀・JG
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
夏目 リョウ(gb2267
16歳・♂・HD
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
奏歌 アルブレヒト(gb9003
17歳・♀・ER

●リプレイ本文

●激戦区
 熊本と福岡の県境――激戦区へ向かうKVが20機――。
 うち、傭兵部隊所属が8機、α−01部隊所属が12機である。
「前回は自身の行動から失態を招いたが、今回は同じ轍を踏むつもりは無い」
 時任 絃也(ga0983)がぼそりと言った。
 彼は前回、ゴーレム部隊の集中攻撃を受け、重体スレスレの重傷を負ってしまったのだ。
 現在は回復しているが‥‥果たして今回、汚名返上となるか。
 彼の機体は無骨なR−01改『R−1改』。
「同系機ながら、ここまで揃うと壮観ねぇ‥‥。まぁ‥‥あたしのがシラヌイに見えれば、だけどさ」
 12機のシラヌイで編制されたα−01部隊を見回す鷹代 由稀(ga1601)。
 彼女の機体はシラヌイS型『ラジエル』。砲狙撃戦に特化した独自のカスタマイズが施されており、外観は殆ど原形を留めていない。
「キャンプの次は激戦区か。忙しいな、君達も」
 まだ夏の日、α−01部隊‥‥通称、乙女中隊と一緒にキャンプをした事を夜十字・信人(ga8235)は思い出す。
 彼の機体はシュテルンG『幽霊憑き(ゲシュペンスト)』。

 味方も多いが相手はそれ以上か。更にあの強酸蠍。全く持って重KV乗りには鬼門な奴らめ。
 そんな事を考えつつ、龍深城・我斬(ga8283)が信人に通信を送る。
「よっす! 信人ん。久しぶりにコンビ組んで行こうか!」
「ああ。宜しく頼む、がー君」
 無愛想に答える信人。がー君とは我斬の愛称だ。そんながー君の機体は雷電改。
(「見せてやる‥‥エースアサルトの力‥‥いや、ボクに名乗る資格は無いかもしれないけど。‥‥喰らってやる。敵を、喰らい尽くしてやる。ボクのオウガに出来る事はそれだけだ」)
 キッと表情を引き締めている瑞姫・イェーガー(ga9347)。
 彼女の機体はオウガ『キャスパー・ファントム』。
 今度は激戦区‥‥せめて自分も力になって、恋人をしっかりと支えてあげられたらと思い、依頼を受けた。勿論、平和をより早く勝ち取る為にも、だが。
 その様に思考をめぐらせつつ、リヴァイアサン『蒼炎』に搭乗する夏目 リョウ(gb2267)が恋人である早乙女・美咲に通信を送る。
「美咲、大丈夫だ。俺達がついている」
 不安な気持ちを吹き飛ばす為の、励ましの言葉。‥‥しかし、返答は無かった。
「‥‥美咲?」
「‥‥あ、リョウ君ごめん。‥‥ありがとう」
 しばし間があって、美咲からの返答。それはどこかぎこちなかった‥‥。
(「あのタロスは‥‥この前のエース機‥‥。暫く姿を見せないと思ったら、攻勢に合わせて出てきたんですね‥‥。友軍が多大な損害を出しつつも何とか戦線を持ち堪えていると聞きました。強敵には違いませんが、これ以上好き勝手させる訳には‥‥!」)
 ティリア=シルフィード(gb4903)の脳裏に浮かんでいるのは友軍機からの映像で見た群青色のタロス。どれ程の強敵であろうと、退く訳にはいかない!
 彼女の機体はスピリットゴースト『Merkabah』。
(「‥‥ダム・ダルは相変わらずですが‥‥熊本では反撃のチャンスです。‥‥不必要な邪魔が入らぬ様‥‥こちらも確実に勝利します」)
 ロビン『Schwalbe(シュワルベ)』を駆る奏歌 アルブレヒト(gb9003)はそう思う。
 カスタマイズされた彼女の機体は通常のロビンに比べ、女性的な形状をしている。
「‥‥ダム・ダルと‥‥直接対決した時に比べればまだマシですが‥‥油断はできません。‥‥師匠‥‥熊本内部はお任せします」
 奏歌は小さな声でぽつりと言った。

 間もなく奪還対象、戦場である市街地に突入。全員が戦闘に備える。

●VS虫型キメラ
 市街地はやはり対KVキメラで溢れ返っていた。計測の結果、敵は2〜3個中隊規模。
「まずは数を減らす。皆、準備は良いか?」
 言ったのは絃也。そう、まずは敵の数の上での優位を崩さねばならない。
 後方に控えていると思われるワーム部隊の事も考慮すれば尚更だ。
 全機から「了解」との返答。
「こういうのは最初が肝心。まだだ、まだ引き付けて‥‥」
 我斬は赤い光点で埋め尽くされたレーダーを見つめる。そして――
「今だ、一斉砲撃!」
 初めに我斬機とティリア機がグレネードを発射。
 ティリア機はFスナイプも使用。‥‥着弾し、爆発が巻き起こる。
 吹き飛ぶキメラ群であったが前面に展開している数が多い‥‥!
 ティリアはもう一度トリガーを引く。着弾、爆発。
「打ち砕け! Gナックル!」
 絃也の雄々しい叫びと共に弾丸が発射される。続いて多連装機関砲で掃射。
「多いな‥‥」
「うわぁー、虫さんいっぱいる。どれからぶっ壊そうっかなー」
 信人機がLバルカン、瑞姫機がLガトリング砲で弾幕を叩き込む。
「いくわよ! ラジエル、目標を狙い撃つ!」
 由稀機はアハト・アハトで狙撃。光条がメガホーンの分厚い甲殻を貫いた。
 リロード。その合間、頭部に増設されたガンカメラで敵の動きを探る事も忘れない。
「次のお客さんが来たわよ! 皆、配置は頭に入ってるわね?」
 両翼より第二波が接近。全機より「了解」との返答。
 リョウ機はレーザー砲、奏歌機は脚部を狙ってLカノンを照射。
 α−01部隊もそれに続き弾幕を張る。
「こう多いと狙い撃ってなんかいられないわね‥‥なら、乱れ撃つわよっ!!」
 PライフルとPリボルバーに持ち替え、乱射する由稀機。

 攻撃は暫く続いた。旺盛な火力に沈んでゆくキメラ群。
 敵の約3割を削った所で傭兵とα−01部隊は各班に分かれて行動を開始‥‥
 しようとした時、風切り音と共に敵後方から砲弾が飛来。空中で炸裂し、榴弾の雨が降り注ぐ。
 一同は慌てて散開。タロスとゴーレム担当のA・B班は正面突破も考えていたがこれでは無理そうだ。迂回して行く。
「絃也さん、ちょっとすみません」
 その場に残ろうとする絃也機に通信を送るティリア。
「絃也さんはゴーレムの方へ向って貰えませんか。ここはボクとA小隊の皆さんで引き受けます」
 どうやら打ち合わせの内容と実際の行動とで齟齬があった様だ。ここは臨機応変に対応するべきである。
「‥‥すまん、了解した」
 ブーストを吹かしてB班を追う絃也機。

 まだキメラ群の勢いは衰えない。先程の榴弾で巻き添えを喰らい、力尽きた個体もあったがそれは少数だ。どんどん距離を詰めてくる。
 ティリアはメガホーンを狙って4連砲のトリガーを引きながら、ガトリング砲を構えるシラヌイS型‥‥美咲機に通信を送る。
 出撃前、彼女の様子がおかしかった事が気に掛っていた。
「美咲さん、あまり思い詰めては駄目ですよ? 大丈夫、いつも通りにやれば‥‥いえ、いつも通りにやる事が勝利への一番の近道です」
「‥‥!」
 その言葉を聞いて美咲ははっとした。
 自分は‥‥任務ばかりに目を取られて、生き残るという大切な目的を忘れていた‥‥。
 死神に魅入られていたのかもしれない。ティリアの言葉を聞かず、戦闘を続けていれば‥‥今頃‥‥。背筋にゾクッと寒気が走る。
「ありがとう。いつも通り、だね」
「そうです。いつも通り、です」
 硬さが取れた美咲の声にティリアは安堵し、再び目の前の敵に向けて砲弾を撃ち込む。
 傷つきながらも突撃を敢行してくるメガホーンに対しては――
「Merkabahが、射撃しか出来ない機体だと思うなっ!」
 双機刀を抜いて鋭い斬撃を見舞った。メガホーンの甲殻に深い斬痕が刻まれる。

●VS強化型ゴーレム
 B班――絃也、由稀、リョウ、α−01部隊C小隊。こちらはゴーレムの担当となる。
 ビルの合間を縫い、暫く進むとビルの陰から榴弾砲で砲撃を行っているゴーレム部隊を発見!
「こちらが側面から近接戦を仕掛ける。鷹代、敵を抑えてくれ」
「了解。ラジエル、撃ちに行くわよ!」
 やや後方から由稀機がアハト・アハトを構えて狙撃を開始。
「厄介な物を持ち込んでくれちゃってからに‥‥」
 ゴーレムの榴弾砲を狙う。柚葉機と瑞葉機もマシンガンで牽制。
 攻撃を受けたゴーレムがこちらに気付き、機関砲を放ってきた。
「もう少し‥‥!」
 側面に回り込むことが出来れば‥‥。リョウの頬に汗が伝う。
「ダメ! 押さえ切れない!」
 由稀の悲鳴にも似た声。
「!?」
 ゴーレム4機が側面へ回り込もうとしていた絃也機、リョウ機、紅葉機、双葉機へ向う。
 KV3機でゴーレム8機を押さえるというのは流石に無理があった‥‥。
「くっ‥‥!」
 連携は失敗だ‥‥。
「きゃああ!?」
 今度は双葉の悲鳴。双葉機がゴーレム4機から集中砲火を受けている。
 シラヌイの装甲は厚い訳ではない。このままでは‥‥!
「夏目っ!!」
「わかってる! アクティブアーマー展開!」
 操縦桿を握り、ゴーレムと双葉機の間に割り込む絃也機とリョウ機。
 紅葉機は援護射撃。しかし――
「ぐあっ!?」
 リョウ機がゴーレム2機の刀の峰での攻撃を受けて弾き飛ばされ、ビルに激突。
「夏目!!」
 絃也が一瞬目を離した瞬間。
「――っ!!?」
 後方から衝撃。
「がっ‥‥!?」
 ゴーレム1機が、後方から絃也機の胴体に刀を突き刺していた。
 それに同調するかの様に、他の3機も四方から囲むように絃也機へ突撃。刀を突き刺す。
「ぐあっ‥‥!!」
 コクピット内で小爆発。大小の破片が絃也の身体を傷つけ、鮮血が散る。口からも吐血。
「‥‥」
 警報が鳴り響くコクピット内。絃也は動かない。
「時任! 時任ー!!」
 リョウの叫び。機体の態勢を立て直し、双機刀を構えてゴーレムに向う。
「嘘でしょ‥‥そんな‥‥」
 メインモニターに映る串刺しとなった絃也機に、呆然とする双葉。
「‥‥ぐ、がはぁっ‥‥はぁ、はぁ、この‥‥まま‥‥終わらせはせん‥‥!」
 胴体に4本の刀が刺さったままの絃也機。だがまだ機能は停止していない。
 デモンズ・オブ・ラウンドを構え、Aファングを使用。
「うおおおぉぉ――!!」
 一閃。横に薙ぐ。‥‥ゴーレム2機の胴体を両断。スパークしながら上半身がずり落ちた。
「ここまで密着していれば‥‥な‥‥」
 そこで絃也は、意識を失った。
「時任‥‥。これ以上やらせるか! 輝け蒼き燐光! 蒼炎斬!!」
 システム・インヴィディア起動。双機刀でゴーレムの背中から斬り付ける。
 
 リョウはその後、紅葉・双葉と連携しゴーレム2機を撃破。
 由稀達と合流。残りのゴーレムへ攻撃を開始した‥‥。

●VS牙城・このえ+側近タロス
 A班――信人、我斬、瑞姫、奏歌。α−01部隊B小隊。
 エース機を含むタロスを担当するこの班はキメラ群を迂回し、目標へ向う。
「‥‥友の想い人の教え子たちなれば、俺にとっても教え子同然‥‥。いや、なんか違うな」
 信人は何か一人で呟いている。
「ま、大切な友と言う事で、1つ。‥‥こちらの方が、多少装甲が厚い。敵機の正面に回ろう」
「了解です。お気遣い感謝します」
 B小隊長、九条・冴が礼を言ってきた。信人機が前に出てB小隊が少し下がる。

 A班の面々は途中に点々としていたキメラを倒しながら進む。
「‥‥やはり、虫型‥‥非物理攻撃には弱いと見える‥‥」
 Lカノンで蠍キメラを焼きながら駆け抜ける奏歌機。
「そうみたいだね」
 Lガトリング砲で蜘蛛キメラを蹴散らす瑞姫機。
 そして――かなり後方に位置していたタロス4機を確認する。
 うち1機は群青色をしており、武装が他の3機とは異なっていた。
「パーソナルカラー付きのタロスか」
 自分の機体と腕でいけるか? などという弱音は飲み込んで、信人は機体に剣を構えさせる。
 戦端を切ったのは奏歌機であった。両肩に装備したLキャノンを交互に放つ。
 4機のタロスは散開――したかと思えば、今度はカスタムタロスが単機で、タロスは3機1組になって向ってきた。機関砲弾とプロトン砲が飛んでくる。
 今度はA班が散開。カスタムタロスは信人機を狙ってきた。ガトリング砲が掃射される。
 回避行動。否、避けられない。剣で受け止める。防ぎ切れなかった砲弾が装甲を抉り、破片が乱れ飛ぶ。
「‥‥っつ。相手はカスタムタロス、1人では無理だ。がー君、コンビネーションで攻める。いけるな!」
「おうさ!」
 ブーストを使用。カスタムタロスに正面から斬撃を打ち込む信人機。盾で受け流された。
 反撃の熱剣の突きが来る。装輪走行のバックダッシュで何とか避けるも、翼一枚持っていかれた。
「敵機の注意がこちらに向いたら、横から噛み砕け」
 α−01部隊B小隊に通信を送る信人。「了解」との返答。B小隊から援護射撃が来る。
 その反対側からチェーンソーを構えた我斬機が接近。攻撃を行うも受けられた。
 ガトリング砲の反撃が来る。盾で受けるも重装甲がじりじりと削られる。
「ちっ‥‥」

 一方で、瑞姫と奏歌はタロス3機の相手を「させられて」いた。
 カスタムタロスの方に向おうとしても妨害されてしまうのだ。
 奏歌機のレーザーによる援護を受け、瑞姫機が近接戦を仕掛ける形となっている。
 B小隊の2機も加勢してくれている。

「はあっ!」
 PRMSを防御に使用。信人機がカスタムタロスに剣で斬りかかる。
 2度攻撃し、踏み込み過ぎない様、そこで一旦下がる。
 B小隊2機の援護。続いて我斬が前に出た。
 チェーンソーを振り被るが避けられてしまう。
 反撃の電磁鞭。ここで我斬は勝負に出る。攻撃を「わざと」受けたのだ。
「ぐあああ!?」
 電撃が迸る。激痛が襲う。
 一見すると何の事か判らないが、我斬は電磁鞭を腕で受けるふりをして巻きつかせようとした。しかし鞭には巻きつく様な弾性は無い。故にそのまま受けてしまった次第。また、我斬は腕部をパージするつもりだったのだが、KVにその様な機能は備わっていなかった。
「ぐ‥‥!」
 痺れの残る腕で操縦桿を動かし反撃を試みる。
「まだだ、この程度で諦めたら大切な人達を、守る事なんて、出・来・る・ものかよーーー!!」
 真スラスターライフルを構えてゼロ距離射撃を試みる。
 だがカスタムタロスは慣性制御を用いて我斬機の背後に回り込み、そして――熱剣を勢い良く――突き出した。熱剣は雷電改に突き刺さり、貫通。コクピットを掠めた為、我斬も負傷。
 熱剣を引き抜き、容赦なく連撃を加えるカスタムタロス。信人機が駆けつけるまでに我斬機は完全に機能を停止。
「くそ、がー君! 返事をしろ!」
 今度は信人機に攻撃を行おうとするカスタムタロスだったが、突然動きを止める。
『どうした』
『申し訳ありません、このえ様』
 見れば、タロス1機が膝を付いている。損傷しているらしい。
 奏歌機のLキャノンと瑞姫機のTBO・Bを使用した攻撃を受けた結果であった。
『‥‥』
 状況を確認するこのえ。キメラの殆どを失い、ゴーレム部隊も壊滅状態。
『撤退する』
 このえは戦線の維持が困難と判断。飛行形態に変形し、上昇。最大速度で撤退してゆく。
 側近のタロスもそれに続いた。傭兵達はかなり消耗しており、追う余裕は無い‥‥。
 ‥‥辛勝、であった。