タイトル:蟲喰い6マスター:とりる

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/07/13 00:44

●オープニング本文


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 相川小隊駐屯基地。ブリーフィングルーム――。
「皆さん、前回の作戦、お疲れ様でした」
 相川小隊の隊長である相川・俊一少尉がいつものように隊員達へ向かって言った。
「‥‥」
 しかし隊員達は無言。それに‥‥人数がいつもより半減していた。
 前回の作戦、キメラプラント乙6号攻略作戦。
 作戦自体は成功した。しかし、隊員の半数以上が負傷するという大損害を被ってしまったのだ。
「‥‥申し訳ありません、皆さん。私の能力不足です」
 隊員達に向かって俊一少尉が深々と頭を下げる。
「そんな‥‥そんな事ないですよ‥‥。
 隊長はいつも通り‥‥いや、いつも以上にやってくれたじゃないですか」
 第2分隊長、深森・達矢兵長が言う。
 俊一少尉は実際に、最前線に立って指揮を執った。
 彼のメガネはひび割れ、腕には包帯を巻いている。
「そうですよ。怪我をした奴は多いけど、死んだ奴は1人も居ないじゃないですか!」
「頭を上げてくださいよ!」
 他の隊員からも同様の声が上がる。
 プラント内での戦闘は地獄だった。敵の凄まじいまでの物量。
 俊一少尉の奮戦が無ければ‥‥死者が出ていたのは間違いない。
「深森君‥‥皆さん‥‥ありがとうございます」
 俊一少尉は顔を上げた。頬には大きな絆創膏が貼られている。
(‥‥)
 顎に手を当て、俊一少尉はしばし考えをめぐらす。
 そして‥‥答えを出した。
「皆さん、落ち着いて聞いて下さいね。‥‥相川小隊は、しばらくの間、活動を休止します」
 その場に居る一同から驚きの声が上がった。
「どういうことですか? 隊長!」
「たっちゃん‥‥!」
 隣に座る牧原・蝶子曹長が袖を引っ張ってきたが、達矢は立ち上がって尋ねた。
 せっかくここまでやってきたのに休止なんて‥‥!
「ですから、落ち着いて聞いて下さい。あくまで一時的な措置です。
 現在、我が小隊は半数以上の負傷者を出し、小隊として機能していません。
 しばらくは回復に努めます。その間、活動を休止するという事です」
「そういう事なら‥‥」
 達矢は席に腰を下ろした。
 蝶子に頬をぐにーっと引っ張られた。痛い。
「ただし、完全に休止という訳にもいきません。
 春日基地が落ち、九州バグア軍の統制が失われたとはいえ、キメラプラントは依然存在しています」
 キメラプラントが存在するという事は、絶えずキメラが生産されていると言う事‥‥。
 確実に周辺地域へ害を及ぼす。放って置く訳にはいかない。
「深森君」
「はい?」
 名前を呼ばれた達矢は反射的に答えた。
「第2分隊は傭兵と合流してキメラプラントを叩いて貰えませんか?」
 達矢が率いる第2分隊は比較的負傷者が少なかった。
「‥‥了解です!」
 達矢は力強く頷く。傭兵と共に戦えるならば心強い。
「それでは、よろしくお願いしますね。第4分隊の皆さんは負傷者の治療に専念して下さい。
 第1、3分隊はしばらくの間活動休止とします」

 こうしてブリーフィングは終了となった。

 ***

「たっちゃん‥‥気を付けてね‥‥」
 幼馴染兼恋人の蝶子が、達矢の手を両手でぎゅっと握り締めてきた。
 温かく、柔らかい感触。
「蝶子も仲間の治療を頼むぜ。早くまた‥‥皆で戦えるようにな」
「うん、私、頑張るよ」
 にこりと微笑む蝶子。
「じゃあ、行って来る」
 達矢は最愛の恋人の頭にぽんと手を乗せた後、出発準備に取り掛かった。

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
旭(ga6764
26歳・♂・AA
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
RENN(gb1931
17歳・♂・HD
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
冴城 アスカ(gb4188
28歳・♀・PN
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
天原大地(gb5927
24歳・♂・AA

●リプレイ本文

●キメラプラント乙5号攻略作戦
 相川小隊駐屯基地。ブリーフィングルーム。

「ついに片手一桁のプラントまで。もう、一息です‥‥ね」
 ノエル・アレノア(ga0237)が言った。
 相川小隊とは久しぶりの共同作戦となる。
 仲間が倒れるのは辛い事だが‥‥生きている限り、再び共に歩めるだろう。
(達矢君も頑張るな‥‥僕にも支えたい人が居るし‥‥負けていられない、ね)
 ちらりと、愛する恋人であるティリア=シルフィード(gb4903)の顔を見る。

 そのティリアは――何か、考え込んでいる様子。
(久しぶりに達矢さんと共に戦えるのは嬉しいですけど‥‥
 そうなった経緯と状況を考えると、喜んでばかりもいられません。
 それに、ボク達の方もここ最近は苦戦が続いています。
 今回も一筋縄では行かないでしょうが‥‥あと5つ、確実に、1つずつ。潰して行きましょう)
 きゅっと口元を引き締める。
「達矢さん、くれぐれも気をつけて。蝶子さんを悲しませない為にも‥‥ですよ?」
 ティリアが達矢に向って言うと、彼はゆっくり頷いた。

 遠石 一千風(ga3970)も考えをめぐらす。
(段々HBも強くなって来ている。前回手痛い目に遭ったが、今回は遅れを取るつもりは無い。
 相川小隊を含めて、この場に集まった皆、同じ気持ちだろうけれど)

 同じく旭(ga6764)。
(カウントダウンもついに5まで来た、か。
 内部構造が推測出来てるのは嬉しいけれど‥‥培養施設も多そうだなぁ)

(‥‥)
 アンジェリナ・ルヴァン(ga6940)は目を瞑り神経を研ぎ澄ましている。

「相川小隊の方も結構被害出てるのか。今回は何とか被害ださねぇ様に踏ん張らねぇと。
 あ、終わったら見舞いに行くのもアリかもな」
 砕牙 九郎(ga7366)はやれやれと、首をこきこき鳴らした。

「前回の二の舞には避けなきゃいけないよね」
 柿原 錬(gb1931)が言う。前回は敵から挟撃を受けてしまった‥‥。

「今日はガンガン前に出るよっ」
 いつもはエネルギーキャノンMk−II装備のヨグ=ニグラス(gb1949)。
 今回は剣を装備し、前へ出るつもりのようだ。

 冴城 アスカ(gb4188)は達矢達、第2分隊のメンバーの顔を窺う‥‥。
(達矢君達‥‥浮かない顔をしてるわね。
 これ以上悲しい顔させない為にも‥‥私達がしっかりしなきゃ‥‥)
 達矢の前に立ち、その肩をバシッと叩いた。
「ほら! 暗い顔しない! そんな顔してたら蝶子ちゃんに心配されるわよ?」
「いてて。してないよ。ただ、考え事をしてただけだ。
 ‥‥でも、そうだな。考えても仕方ないな。また蝶子に怒られる」
 少しだけ微笑む達矢。

 天原大地(gb5927)は‥‥恋人のアスカを、ぎゅっと背後から抱き締めた。
「!? 大地‥‥?」
 驚き、振り向くアスカ。
(アスカ‥‥お前は俺が‥‥)

 ほどなく出撃時刻となり、一同は攻略目標へ向う。

●培養施設攻略・前半
 キメラプラント乙5号付近。
 傭兵部隊と相川小隊第2分隊(以下、深森分隊)は兵員輸送車を降りる。
 ‥‥情報通り入り口周辺に敵影は見当たらない。プラントへ突入。

 入ってすぐに分かれ道。作戦に従って二手に分かれる。

 ***

 A班――。
 通路を進み、最初のドームの入り口付近までやって来た。
 大地は閃光手榴弾のピンを抜き、甲虫型キメラの密集地点に向けて投擲。
 フラッシュ。それと同時に、大地以外の全員が移動スキルを用いてドーム空間へ突入。
 すぐさま迎撃の弾幕と光線が飛ぶ。
 ‥‥閃光の効果は薄い‥‥? 昆虫型キメラだけに、触覚も存在する。多用し過ぎたか‥‥。
 アスカは駆けながら考える。
「相変わらず手厚い歓迎ねぇ」
 【瞬天速】と【高速機動】にて突撃。
 レイビートルのプロトン砲を回避。【残像斬】を使用。
 貫通弾を装填したガンズトンファーで甲殻の隙間を狙い、連射。

 深森分隊、達矢ともう1人がB1型を抑え、残り3人が甲虫型へ攻撃を開始。

 大地はSMG『スコール』で甲虫型へ銃撃を加える。
 B2型が高速で接近。手の甲の剣で攻撃を仕掛けてくる。
「ちっ‥‥!」
 大地は盾を構えて防御。刀・血桜に持ち替えて反撃。
「無理はしないで!」
 アスカが加勢。脚甲『ペルシュロン』でハイキックを繰り出した。

 ***

 B班――。
 ドームへ突入。ペネトレーターの3人が移動スキルを使用し、先行。
 甲虫型の群れの中に突入。撹乱する。

「あれは7号に居たキメラ‥‥。少し違うタイプも居るわね」
 一千風はドーム内の状況を確認。苦戦したB1型の姿に、無意識に力が篭る。
(あの教授が乙7号の結果から、このタイプが有利だと踏んだのか)
 直刀・神斬を振い、ブリットビートルの甲殻を連続で斬り付け、撃破。
「まずは1匹。次はっ‥‥!」

 エクリュの爪で甲虫型に斬撃を加えるノエル。
「やあっ!」
 甲虫型の背面に回り込み、二刀小太刀『永劫回帰』で切り裂くティリア。
「はあっ!」
 2人は連携し、甲虫型の撃破に当たる。

 残りの5人も続き、乱戦へ持ち込む。

「今回は剣士型か。随分と本数が多いけれど‥‥まぁ、お手合わせ願おう」
 佇むB1型に、旭は狙いを定めた。
 向こうも気付いたらしく、空刃が飛んでくる。それは旭の頬を掠めた。鮮血が散る。
「‥‥っ」
 旭は聖剣『デュランダル』を両手で握り、間接部を狙って斬撃を繰り出す。

 アンジェリナは甲虫タイプと戦闘。刀・蝉時雨を振って角を叩き切る。
 砲撃型の甲虫キメラを無力化するのはこの方法が一番だ。
 そこへ――B2型が高速で向ってくる。
(速い‥‥?!)
 両腕からの斬撃。アンジェリナは攻撃を刀で受ける。が、衝撃波によりダメージが身体へ伝う。
「くっ‥‥」

「プロトン砲はご勘弁願いたいねぇ」
 九郎は盾を構えて弾幕を防ぎつつ、レイビートルに狙いを付け、アラスカ454で射撃。
 銃弾が甲殻に突き刺さり、体液が噴出す。

 AU−KV『アスタロト』を装着した錬、『パイドロス』を装着したヨグ。
 2人は連携して甲虫型と交戦。錬はエネルギーガンで射撃。
 ヨグは甲虫型を【竜の咆哮】で吹き飛ばし、敵の射線上へ放り込み、妨害を行う。
「好き勝手には撃たせないっ」

 アンジェリナはB2型と戦闘を繰り広げる。敵は非常に素早く、苦戦。
 斬撃と斬撃の応酬。
「こいつ‥‥!」
 B2型はB1型の装甲を削り、素早さを高めた型の様である。
 それでも防御力はそれなりであり、攻撃力は‥‥B1型と同等‥‥!
「大丈夫か?」
 九郎が加勢。拳銃で射撃しつつ接近。直刀・菫に持ち替え、攻撃。
「すまない」
 アンジェリナは九郎の援護を受けつつ、刀を両手で握り、突きを繰り出した。
 命中。甲殻を破り、内部へダメージ。体液が飛ぶ。

 甲虫型をある程度片付けたペネトレーターの3人は旭の加勢へ向う。

●培養施設攻略・後半
 敵を撃破し、培養施設をある程度破壊。傷の応急手当をした後、次のドームへ。

 A班――。
 深森分隊がB1型を抑えつつ甲虫型の撃破に当たる。

 アスカと大地は、今度は最初からB2型と戦闘。
 大地がSMGで弾幕を張り、牽制。
「アスカ‥‥!」
 B2型は回避。アスカへ斬撃を繰り出してくる。
「解ってるわ‥‥!」
 アスカは【瞬天速】と【高速起動】で回避。【残像剣】でカウンター。
「たあああっ!!」
 様々な蹴り技。トンファーの打突のコンボで攻撃が決まる。
 それを見た大地は盾を構えて突撃。
(ここだ! 距離を詰める!)
 B2型は飛翔。空中で一回転。大地の背後から降下と共に斬り付けて来る。
「ぐあっ!?」
 大地の背中が切り裂かれ赤い液体が散った。
 続いて空刃を飛ばしアスカに攻撃。
「くぅっ‥‥」
 アスカはトンファーで防御。【瞬天速】で肉薄。
「よくもやってくれたわね。喰らいなさい!」
 トンファーによる打突から貫通弾発射。

 ***

 B班――。
 先程と同じくノエル、ティリア、一千風が先行して突入。乱戦へ。

 旭はまたもB1型と戦闘。大剣を振りかぶり、攻撃。
「お前の強さはよく分かったよ‥‥。全力で行く‥‥!」
 反撃の斬撃。旭の肩から血が舞った。
「今度は僕達も!」
 ヨグはイアリスと盾を構えてB1型へ。剣を振う。
「あまり戦いたくなったけど‥‥!」
 錬は知覚銃を連射し、ヨグの援護を行う。
 3対1の状況。傭兵が有利。
 しかしB1型はパワーで押し切ってくる。
 全身の刃による斬撃を受ける2人。錬も飛んできた空刃を受ける。

 アンジェリナはB2型と戦闘。【流し斬り】で背面を狙う。
「――やぁっ!」
 九郎はアンジェリナと連携。敵の斬撃を盾で防ぎつつ刀で攻撃。
「速い上に並以上に硬いとは‥‥ね」
 2人の攻撃は一応命中するものの、中々決定打には至らない。
「アンジェリナさん! 九郎さん!」
「B2型‥‥!」
「新型だろうと‥‥!」
 ノエル、ティリア、一千風が加勢。撹乱しつつ反撃に転じる。

●新たな影
 2つのドームを制圧したアスカと大地、深森分隊。現在は小休止中。
「さて‥‥そろそろか。ガキ共を帰してやんな。ここからは大人の仕事だ、行け」
 大地が達矢に言った。しかし視線は彼の目を見るのではなく、別の方向。
「ちょっと! そんな言い方‥‥!」
 アスカが言うが、達矢は口を開く。
「ガキじゃない。俺達はずっと戦って来たんだ。あんたも見ただろ? 俺達はまだやれる――」
 少年は大地を睨み付ける‥‥が。
「と、言いたい所だが、結構消耗してるのは事実だ。気遣い感謝するよ、不器用な兄さん」
 表情を崩し、ふっと笑った。深森分隊は培養施設破壊の後、退路確保に回る事となる。
 ‥‥A班の2人はB班に合流。傷の手当てを行う。

 ***

 最深部へ突入。
 そこにはB1型1体、B2型1体、ブリットビートル複数、レイビートル複数を確認。
 やはり弾幕と光線が飛ぶ。

 ペネトレーターの4人が先行し、甲虫型へ攻撃。
 ノエルは爪。ティリアは二刀小太刀。
 一千風は刀。アスカはガンズトンファー。
 敵の只中に飛び込んだ4人がそれぞれの得物を振い、次々と巨大な甲虫を屠って行く。

 後続の6人も負けてはいない。

 大地はB1型に向け、SMGで射撃。弾幕で牽制。
 旭は走り、大剣で縦一文字に斬撃。
 B1型は少なからずダメージを受けた様子。
 回転し、体当たりを仕掛けてくる。
「ぐぅぅぅ!」
「うぁぁぁ!」
 刃が2人の肌に食い込み、鮮血が舞い散る。

 アンジェリナはB2型と剣を打ち据える。【流し斬り】で側面へ回り込み、刀で攻撃。
 それは命中し、甲殻を削る。やっと敵の動きが読めて来た様だ。
 九郎もB2型と交戦。アンジェリナと入れ替わりに刀で攻撃。
 B2型は飛翔。上空から空刃を飛ばしてくる。2人は避けきれず、受けてしまう。
「‥‥っ」
「くそったれめ‥‥」 
 腕と肩を抑える2人。血液が床に滴った。

 錬はバイク形態のAU−KVに騎乗。
「いつものをやるよ! ‥‥イグニッション・ファイア!!」
 【騎龍突撃】を使用。甲虫型の群れへ突っ込む。
 ヨグは【竜の翼】でそれに続き、近接戦を仕掛ける。
「GOGOー!!」
 2人とペネトレーター4人の活躍により、甲虫型は全滅。

 ***

 ノエル、ティリア、一千風はB2型へ攻撃開始。
 ティリアが【エアスマッシュ】を放ち、ノエルが【急所突き】を使用した爪で攻撃。
「同じ手は食わない‥‥これで、どうだっ!」
「やあああっ!!」
 一千風はB2型の攻撃を【回転舞】で回避した後、刀で斬撃。
「速い‥‥だけど、付いて行けない訳ではない」

 九郎は拳銃で照準。連射。B2型の甲殻を砕く。
「今だ!」
「了解した」
 アンジェリナは全スキルを使用。背面に回り込み、怒涛の連続攻撃。
 B2型は切り裂かれた全身から体液を噴出し、沈黙した。

 ***

 アスカ、錬、ヨグはB1型へ攻撃開始。
 ヨグが【竜の咆哮】を使用。
「吹っ飛べー!」
 B1型を後退させ、錬が知覚銃で射撃し追撃。
「当たれ!」
 その隙に‥‥アスカが脚甲を装着した脚を、大地が刀を、旭が大剣を構える。
「行くわよ、大地!」
「解ってるよ‥‥」
「‥‥おっと、僕も忘れないで下さいね」
 3方向同時攻撃。鋭い斬撃音。――B1型はどさりと床に伏した。

 ***

 敵の殲滅を完了。
「ヨグと皆がくれたチャンス、無駄にはしない。いけっ!」
 錬は【猛火の赤龍】と【竜の角】を使用。知覚銃を両手で構え、動力炉を撃つ。
 小爆発が連続で起き、動力炉は黒煙を上げて沈黙。破壊完了。

 すると――室内が赤く染まり、警告音が鳴り響く。
「‥‥!?」
 傭兵達は全員警戒態勢を取る。
 破壊された動力炉の後方の床から、3つの培養カプセルが競り上がってきた。
「また‥‥バックアップなんです‥‥?」
 ヨグが言う。プシューという音と共に培養カプセルの扉が開く。
 辺りが白い煙に包まれた。
「‥‥アァん? やっと俺達の出番か」
「その様だな」
「丁度良いですわ。暇をしておりましたもの」
 若い男性の声と、壮年の男性の声と、艶っぽい若い女性の声が響く。
 白い煙の為、姿は見えない。
 傭兵達は動かない。いや、下手には動けなかった。
 一体どの様な敵なのか‥‥見極めるまでは‥‥。
 煙越しに奇襲、という事も考えられるので皆、構えている。
「アァ、そこに居んのは能力者か。俺らは家に帰るんで、お前らもとっとと帰れや」
「動力炉が‥‥また酷く壊してくれたものだな」
「俺が喋ってる時に口出すなよ! オッサン!」
「‥‥」
「まぁ、乱暴なんだから。もう少し礼儀正しくしなさいとお姉ちゃんいつも言っているでしょう?」
「す、すまねぇ姉貴。‥‥まあ、とにかくだ、このプラントは間も無く自爆しますんで。
 そのまま突っ立ってると一緒にどかーんとなりますがよろしいですか?」
「よく出来ました。偉い偉い」
 パチパチと拍手の音が響く。
「んじゃーな、俺達は帰るんで」
「さらばだ」
「それでは失礼致します」
 何らかのハッチが開閉する音と共に、3つの声は消えて行った。
 ほどなく、白い煙も消え失せる。
「今のは一体‥‥」
「何だったんでしょう‥‥?」
 ノエルとティリアが目を見合わせる。
「敵なのは間違いないな」
 アンジェリナが腕を組みながら言った。
「それよりも今の人達が言っていた事が本当なら大変です!」
「そ、そうです! 早く脱出しましょう!」
 汗を垂らすノエルとティリア。
「今の人達が出て行った扉は?」
「ダメだな。完全に閉じられてる」
 旭の問いに、壁を調べていた九郎が答える。
「いつ爆発する分からない。達矢君達に連絡を!」
 アスカが声を上げる。

 傭兵達は深森分隊に連絡。すぐさまプラントを脱出した。
 そして間も無く、大爆発が起こり、プラントがあった洞窟が完全に崩落。

「‥‥教授が私達を分析してどんなキメラを作り出そうと、全部潰してみせる」
 プラントの入り口跡を見つめ、一千風が呟いた‥‥。