●リプレイ本文
●準備!
出発前、某兵舎――。
弓亜 石榴(
ga0468)が、石動 小夜子(
ga0121)と弓亜・優乃(
ga0708)の2人を呼び出していた。
「一体何のご用でしょう」
「な、何か嫌な予感が‥‥」
首をかしげる小夜子。汗を垂らす優乃。
「フフフ、よく来てくれたね」
石榴が現れ、ニヤリと笑みを浮かべる。
「まず石動さんに‥‥チョッピリ大人の勝負下着に着替えてもらおうか!」
石榴は大人の色気ムンムンの下着を手に、小夜子へと襲い掛かった!
「きゃー!?」
数分後‥‥頬を火照らせて倒れこんでいる小夜子の姿があった。
「コレで新条さんとナニがあってもダイジョーブ! 後はちゃんと身体寄せて目を閉じれば男の子なんてイチコロよ!」
「は、はい‥‥」
弱弱しく返事をする。
「さて‥‥」
「ひぃっ!」
今度は優乃にじりじりと迫る石榴。手には先ほどと同じようなきわどい下着。
(まさか‥‥私にもアレを着けさせる気‥‥?)
ぷるぷると震える優乃。しかしそれはフェイントであった。
「姉さん、成長したねー」
石榴は優乃の背後に回り込み、胸をもみもみ。
「きゃっ!? ちょ、やめなさい!」
乙女の嬌声が響く。
果たして今回の依頼はどうなるのだろうか――。
●デートその1
ヴァレス・デュノフガリオ(
ga8280)と流叶・デュノフガリオ(
gb6275)の夫婦。
「ヴァレスに何か有ったら嫌だから」
と、流叶がゴネたのでヴァレスが女装、流叶が男装をすることになった。
要するに見た目の性別が逆となる。
ヴァレス――。
流叶の押しに根負けした形で渋々女装。
襲われる側が自分から流叶になったため複雑な心境である。
「うぅ、また女装させられるなんて‥‥」
また、ヴァレスは女装自体気が進まないので涙目になっていた。
ロングヘアのウィッグを被り、女物のコートに身を包む。
流叶――。
「然し此れ‥‥苦しいって言うか‥‥」
痛みを感じるくらいにきつくさらしを巻いて大きめの膨らみを誤魔化す。
それでも違和感が残るため、その上に男物のダウンコートを羽織って隠した。
ただし、さらしにはかなりの負荷が掛っているので少しの衝撃で切れかねない。
それゆえに流叶の動きはかなり制限されてしまう。
もしもさらしが切れてしまったらコートのファスナーも危ない‥‥。
「‥‥まさか二度も男装する羽目になるとはね」
髪は後ろで束ねる。‥‥さらしの難点さえ除けば、中性的な男性に見えなくも無い。
着替えてから待ち合わせ場所にやってくる2人。
「‥‥や、やあ。待った?」
「誰? って‥‥ヴァレスかい?」
流叶はヴァレスの変装に目を丸くする。
「‥‥っ! ‥‥ははっ、似合ってる似合ってる!」
笑って肩をバンバン叩いてくる流叶に「笑うなー!」と抗議するヴァレス。
そうして2人はデートを開始した。
「さてと、次は何処へ行‥‥ん? 雪‥‥かな?」
「お、ホントだ。綺麗だねぇ‥‥♪」
雪が舞い散る中、腕を組んで歩く2人。
ふと、ヴァレスが流叶に唇を重ねる。
「不意打ちとは、卑怯だぞ‥‥?」
「ふふ‥‥でも、悪く無いでしょ♪」
そんなことをしていたら‥‥ロンリーウルブズ出現。
「来たなっ‥‥に、逃げるぞ!」
「やっとお出ましか。了解っ!」
2人は他の仲間の所へ誘導しつつ走る!
だが追いつかれ、男装をしている流叶がウルブズに捕まってしまう。
「なっ‥‥ちょっと、離せっ! ‥‥あぁっ!」
「しまっ――流叶!」
ジタバタと服のことも忘れて大暴れする流叶。
当然さらしが切れ、ファスナーが弾けてしまい、束縛が解かれて豊かなバストが露になる。
「‥‥ッ!? きゃあぁぁッ!!」
流叶は必死に手で身体を覆い隠す。
「‥‥おい、テメェ等‥‥お祈りは済ませたか?」
その様子にヴァレスはブチキレ。覚醒。
コートからナイフと拳銃を取り出してロンリーウルブズ相手に大立ち回り。
‥‥あっさり退散するウルブズ。
その後、流叶は事前にコインロッカーに隠していた女性用の服に大人しく着替え。
2人とも始終顔を真っ赤にしたままデートを続行したそうな。
「ドイツにはクリスマス市っていうのがあってね、国中が電飾で飾られるんだ。よく妹とこうして、歩いたもんだよ。いつか、アッキーを連れて行きたいな、俺の故郷に。とても、いい所だよ」
手を繋いで歩くマルセル・ライスター(
gb4909)と北崎 照(
gc5017)。
2人は出店などを見て回る。いい匂いに刺激されて、照のお腹がぐぅ〜と鳴った。
「あっ‥‥」
はっとお腹を押さえて頬を染める照。
「ん? お腹空いた? ‥‥じゃあ、そこの屋台でカリーヴルスト買おうか」
「ここのは美味しいんだよー。ドイツ人のおっちゃんがやっててね。本場の味さ」
「へぇ‥‥そうなんですか」
興味深そうに頷く照。
「え? ‥‥去年より可愛くなった? なんのこと??」
屋台のおっちゃんにそのようなことを言われ、目を丸くするマルセル。
去年ここを訪れたのは双子の妹だ。
公園にやって来た2人――。
照のほうが大分大きいので、マルセルは噴水の縁に立ち、身長を水増してみる。
やはり身長の差が気になってしまうようだ。
「‥‥さっきのイルミネーションも綺麗だったけど、噴水もライトアップされているんだ。綺麗だね」
と、子供のような屈託の無い笑みを浮かべる。
「‥‥あっ、もしかして、雪降ってないかな?」
マルセルが言う。照の視線が空へ向くと‥‥彼は上から少し屈みこんで唇にキスした。
一瞬、時が止まる。祝福するように、背後で噴水が一斉に噴出した。聞こえるのは水の音だけ‥‥。
しばしの時が過ぎ、唇を離すと、2人の頬が真っ赤になった。
そのとき、密かに【不眠の機龍】で待機させていたAU−KVが反応。
クラクションの音が響く。ロンリーウルブズ出現。
「この人は私のですっ! 手を出しちゃだめですっ!」
マルセルを自分の背後に隠す照。
しかしマルセルは照を静止し、前へ出る。
「こういうときは男に任せていいんだよ、アッキー。ちょっと、待っててね」
それはまさに男の顔だった。
「フフ、無粋だね。でも、華を添えるだけだよ?」
ウルブズをボコボコにして撃退。
一息ついた後、マルセルは照へ『小さなオルゴール』をプレゼント。
「メリークリスマス、アッキー‥‥」
照からマルセルへは『【OR】リーリエ・チョーカー』が贈られた。
「先輩‥‥いつもありがとうございます。これは私から、感謝の気持ちです」
プレゼントを交換し、微笑み合う2人であった。
ヤナギ・エリューナク(
gb5107)とユイリ・ラフィアス(
gc5135)はウィンドウショッピングを楽しむ。
アクセサリ店――。
「ヤナギさん、アクセを見に行きたいです」
「ああ。いいぜ」
ユイリからのリクエストで、まずはここを訪れる。
「これ可愛いなぁ」
「何だ、ユイリ‥‥こう言うのが好みなのか?」
「私、こういうのが好きなんです。‥‥どうです? 似合いますか?」
「もちろん」
ヤナギは優しい笑みを浮かべる。
ユイリはメンズ物のシルバーアクセを見つけると手に取り、ヤナギに恥ずかしそうに見せてみた。
「これ似合いそうですよ」
「ん? ‥‥どうかな?」
「わぁ、やっぱり似合います!」
手を合わせて可愛らしく笑うユイリ。その表情に、ヤナギは思わずときめいた。
楽器店――。
「ヤナギさん新しいベースとか買う予定あるんですか?」
「新しいギター欲しいかも‥‥」
「俺はこっちが好みかねェ‥‥」
「やっぱ燃えるよなー!」
などなど、お互い音楽が趣味と言うことで話が弾む。
ペットショップ――。
「わぁ、ヤナギさん見て見て! 子猫ですよ。可愛い♪」
みゃーみゃー鳴く子猫を前にして、はしゃぐユイリ。
ヤナギは自分が飼っている黒猫の話をしてみる。
「俺ん家にも黒猫が居るんだ。今度見に来るか?」
「そうなんですか? 是非行きたいです!」
ペットショップを出ると‥‥ロンリーウルブズが出現。
「おわっ!?」
囲まれ、攫われそうになるヤナギ。
「オイタが過ぎますよ? おすわり!」
ユイリはにっこり笑顔を浮かべ、背後にどす黒いオーラを纏って威嚇。
怯んだ所で、足払いして狼男数匹を転倒させる。その隙にヤナギは脱出。
「助かった。甘噛みは勘弁だからな」
「いえ。それよりも早く片付けてしまいましょう」
2人は協力し、見事ウルブズを撃退。
その後、デートを再開した2人。イルミネーションを観に行く。
「わぁ‥‥綺麗ですね。来て良かった」
ユイリが少し寒そうにしていたので、ヤナギはその手をそっと握った。
「こうすればちょっとは暖かいだろ?」
「‥‥ありがとうございます」
頬を染めて微笑むユイリ。
「またデート出来たらいいです‥‥ね」
「そうだな‥‥」
2人はお互いの手をぎゅっと握り締めた‥‥。
功刀 元(
gc2818)と御剣 薙(
gc2904)はバイク形態のAU−KVで二人乗り。
イルミネーションに彩られた街路樹を車道側から眺めつつ公園を目指す。
薙は元の背中にぴったりとくっ付いている。
「こんな綺麗な所があったんですねー。薙さんと出会わなかったら、一生気が付かなかったですねー」
到着すると、2人は腕を組んで、囮であることも忘れて園内の散策を楽しむ。
「‥‥」
ちらちらと元の顔を窺う薙。
今日は自分なりにおしゃれをしてきたつもりなのだが‥‥いまいち自信が無い。
「? どうしましたー?」
「べ、別に何でも‥‥」
「そういえば薙さん、今日はいつもと雰囲気が違いますねー。そういう格好も可愛いですよー」
「ほんと? 良かったぁ」
にっこり笑う元と、ほっと胸を撫で下ろす薙。
‥‥途中、出店で薙と違うものを頼んで味見し合う。
「あ、ボクの一口あげるから、一口味見させて下さいー」
「はい、元君。あーん」
そんなこんなでデートを楽しんだ2人は公園の広場の真ん中に移動。
「薙さん! ボク達‥‥ま、まだ学生だし、ちょっと早いかもしれないけど、いつか本物の婚約指輪をプレゼントするまでの婚約の予約指輪みたいな感じで‥‥とにかく、これ受け取って下さい!」
元から薙へ『シルバーリング』をプレゼント。
「ありがとう‥‥嬉しい」
「元君、えっと‥‥その‥‥メ、メリークリスマス」
「これを‥‥ボクに‥‥?」
「編み物、それ程得意って訳じゃないけど‥‥手編みの方が良い‥‥かなって」
薙から元へ『【OR】手編みのマフラー』をプレゼント。薙の頬は赤らんでいる。
「薙さん、僕もすごく嬉しいですーありがとうございますー」
いい雰囲気になる2人。雪がはらはらと舞い降りる。
‥‥それを邪魔するようにロンリーウルブズが出現。
元は薙の手を引き、AU−KVの所まで走る。
「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとやらですー! パイドロスセッタップ! てやっ!!」
AU−KVを装着し、機械剣βを振るう元。
薙は知覚銃で射撃して牽制。邪魔されたことに割りと本気で怒っている。
ウルブズが集結すると‥‥元はAU−KVを脱ぎ、バイク形態へ変形させ騎乗。
「宇宙の彼方へゴウアウェーイ!!」
【騎龍突撃】で一気に蹴散らし、見事撃退。
「恋する2人は無敵なのですー!」
元と薙は一緒に決めポーズを取った。
商店街の路地を1本入った所にある‥‥
ダーツバーも兼ねたそれなりに賑わいを見せるアイリッシュパブ。
そこで静かにインドの詩集を読んでいる男が1人。
「ん? 外が少し煩い、ね。何がやっているのかな。――だが外は寒いからねぇ」
ロイヤルブラックの艶無しのフロックコート。
同色の艶無しのウェストコートとスラックス。
兎皮の唾広の黒帽子。
コードバンの黒皮靴と共革の革手袋、ベルト。
パールホワイトの立襟のカフスシャツ。
スカーレットのタイとチーフ。
銀と白蝶貝が台座の古美術品なカフとタイピン。
鋭い瞳と優しい微笑‥‥常に余裕と深い知性を漂わせ、煙草を咥えたダンディズム溢るる男の名はUNKNOWN(
ga4276)。
注文はカウンターでスモークの鴨とギネスビール1パイント。
外から聞こえる僅かな喧騒(?)を耳にしつつ傍の女性客達にも話しかけ
「――乾杯」
カランとグラスが鳴る。
「ふむ、それについては‥‥」
色々と話をする中――
「ガルルルァァ!!」
突然扉が開け放たれ、狼男が乱入。
UNKNOWNはちらりと横目を向け、帽子を押さえつつ立ち上がり、つかつかと歩いていき‥‥
小型超機械αを持った手で腹に一撃を喰らわせ、狼男を外に放り出してガチャリと扉を閉めた。
彼はそのままつかつかと戻ってきて‥‥
「ふむ、それについては――」
何事も無かったかのように会話を再開するのだった。
●デートその2
小夜子と新条 拓那(
ga1294)はイルミネーションや星空を眺めながら散歩。
「え、と‥‥ロンリー狼を誘き寄せるために拓那さんとデート、ですね」
「そうだね。そうなるね」
ぽりぽりと頬をかく拓那。
「ちょっと照れますけれど‥‥作戦とはいえ、拓那さんとご一緒できるのは嬉しい、です」
小夜子は拓那に寄り添い、手を繋いで歩く。
「やっぱりこの季節はイルミだね♪ 何だか見てるだけでワクワクしてくるよ」
「はい‥‥」
優しい彼の温もりを感じ、小夜子は目を細める。
少し疲れたら、2人はベンチに座って一緒に夜空を眺める。
(冬の大三角を探せば、オリオン座とこいぬ座、おおいぬ座が見つかりますよね)
「ふふ‥‥イルミネーションも綺麗ですけれど、星や月も神秘的で美しい、ですよね。特に冬の夜空は澄んでいて良い、ですし‥‥」
(拓那さんと一緒に見られて、幸せ、です‥‥)
ふと、拓那と目が合う。小夜子は石榴から教わったように、目を閉じて身を預けた‥‥。
(おぉ、イイ雰囲気イイ雰囲気♪)
それを物陰からじぃぃぃっと見守っている石榴。
(2人とも普段からラブラブだから問題無いけど‥‥コレだけじゃあアレだしね! 記念写真をこっそり撮っといてあげようか♪)
拓那と小夜子の甘甘シーンを激写激写激写。
キラキラと輝くイルミネーションの傍ら‥‥。
「ありがとう、小夜子。こんな俺といつも一緒に居てくれて。愛してるなんて一言じゃ足りないくらい、俺は、石動 小夜子を愛してます」
彼女の耳元で囁き、拓那は唇を重ねる。いつの間にか、雪が降り始めていた‥‥。
(キターーー!)
石榴は興奮気味にシャッターを押しまくる。
そのとき――ロンリーウルブズ出現。拓那が攫われそうになる。
「ちょっ、まっ、お前らだってホントは寂しいんだろ? その気持ちは分からないでもないよ。だからほら、これでも食べて元気出せって。‥‥やっぱダメ?」
持参したショコラタルトで狼男の気を引こうとするが、まるで効果無し。
「拓那さんを離しなさい!!」
「あのまま行けばアレでナニなことに発展していたかもしれないのに!」
小夜子と、物陰から飛び出した石榴は、刀の峰とハゴイタソードでウルブズをボコボコにして拓那を救出。
「キャウンキャウン!」
情けない鳴き声を上げるウルブズ。石榴はそれらをずびしぃと指差し、説教を開始。
「この馬鹿者め! だから貴様らはアホなのだ! カップルが跋扈するのはクリスマスのみにあらず! バレンタインデーとホワイトデーしかり、夏の海水浴しかり‥‥最近はハロウィンにもイチャップルは出没している。それも判らずただクリスマスを襲うだけなど言語道断! ロンリーの風上にも置けぬわ!」
熱弁を振るう石榴の気迫に押され、ウルブズは尻尾を巻いて逃げ出した。
「おぉっと、お邪魔したね♪ じゃあ後はじっくりねっとりたっぷり楽しんでネ☆」
石榴はウィンクし、手を振りながらその場を後にする。
ぽかーんとする拓那と小夜子。
「え、と‥‥退治が終われば依頼は完了、ですよね。その、拓那さん‥‥月がこんなに青くて綺麗ですし‥‥2人で少し、遠回りして帰りませんか?」
頬を赤く染めつつも、しっかりと拓那の瞳を見つめ、小夜子が切り出す。
「そう‥‥だね。そうしよう」
拓那が頷くと、2人は再び手を繋ぎ、歩き出した。
神崎・子虎(
ga0513)と優乃。
子虎は女装して彼女役。乙女ちっくなフリフリのドレスに狼の耳と尻尾をつけている。
対して優乃は胸にさらしを巻いて男装。彼氏役。
「男性を裸に剥いて路上に放置‥‥そんな迷惑なキメラを放っておくわけにはいかないわよね‥‥」
「さて、これでどっちが攫われるやら? あ、攫われそうになったら守るのだ♪」
自信まんまんに片目を瞑る子虎。
「ん、ありがと。頼りにしてるよ、子虎くん」
(ふう。それにしても子虎くんすごく可愛い‥‥。どうせ私はスカートとか似合わないし、子虎くんが羨ましいよ)
熱熱ぶりを周囲に見せ付けるように、本当のカップルのように振舞う2人。
「やん♪ 優っちは今日も凛々しいのだ☆」
(それはどうなんだろう‥‥。嬉しいような‥‥そうでないような‥‥)
優乃は複雑な面持ち。
「もっとべたべたしたほうがいいのかな? かな?」
「そ、そうだね」
(ラブラブ‥‥ぅぅん、これは誘き出すのが目的よ、優乃。落ち着きなさい!)
ショタっ子大好きな優乃はどうにもそわそわしてしまう。
「グラァァァ!!」
そのとき、ロンリーウルブズの襲撃!
「‥‥登場したみたいだね♪ おっと、大事な優っちは攫わせないんよ?」
子虎はスカートを翻し、太腿に装備したナイフを抜く。
‥‥青のストライプがちらりと見えた。
「しっとは見苦しいんだぞ。君達も相手を見つけて出直しなさい」
優乃を守ろうとする子虎だったが、ウルブズの数は多く、彼女は攫われてしまう。
「優っちー!!」
人気の無い場所まで連れて来られ、服を脱がされそうになる優乃。必死に抵抗。
「きゃっ! 服を脱がすなぁ?!」
顔を真っ赤にして、思わず女々しい声を上げてしまう。
そこへ二条 更紗(
gb1862)がどさくさに紛れ、現れる。
更紗は狼の頭部を模した被り物を着けており、目元辺りまで隠れていて誰とは判らない。
胸はチューブトップの毛皮の水着。下も同じくビキニタイプの毛皮的なもの。
履いているブーツも同様に毛皮付き。露出度の高い狼娘的なファッション(尻尾も装備)。
ちなみに流石にそれだけでは寒いのでマントも纏っている。
そんな彼女はカメラを構え、写真撮影を開始。
「何かに使えるかもしれませんし」
「ちょ、ちょっと待って! 私は女――」
「女性側に進呈して、使い道を模索して貰うとか‥‥おや? あなたも女性でしたか」
「だからそう言ってるでしょ! 撮るなぁー!!」
優乃は涙目。大ピンチ。
「見つけた! 優っちを返すのだー!!」
「子虎くん!!」
ギリギリの所で子虎が追いついてくれた。
「今助け――!?」
子虎はナイフを構えてウルブズに攻撃しようとする。だが更紗はウルブズに加勢。
衝撃を受けて子虎はどどーんと吹っ飛んだ。更紗の【機鎧排除】からの【竜の咆哮】である。
「こっちの楽しみの為に悪いが、邪魔させて貰う」
「あいたたた‥‥。なんなのさ? そこをどいて!」
退治する2人の狼娘(見た目)――。
尚も狼男に服を脱がされそうになっている優乃。そこへ今度は石榴がぬぅ〜っと現れる。
「あらら、優乃姉さん、大変なコトになってるね」
ニシシと笑う石榴。
「笑ってないで助けてよ!!」
「ふっふっふっ‥‥寂しい狼男に少しくらい慈悲を与えてやってもイインジャナイ?」
「な‥‥なにを‥‥!」
石榴は狼男一匹の後頭部をがしっと掴み、その顔面を優乃の肌蹴た胸元へ思い切り押し当てた。
「――き、きゃあああっ!!」
優乃の悲鳴。もう何が何やらカオス状態。
その悲鳴を聞いた子虎は本気モードとなる。
「ナニをしちゃってるのさ‥‥? 優っちを‥‥離すのだー!!」
プッツリ切れちゃった子虎は更紗の妨害を強引に突破し、優乃を襲っている狼男共を片っ端からぶっ飛ばす。
(‥‥)
ウルブズが劣勢と見た更紗は、一時撤退。AU−KVを着用し、何食わぬ顔で戻ってきて今度は子虎に加勢。
「人の恋路を邪魔する奴は(以下略)」
そんな感じでウルブズを撃退。‥‥ウルブズが去ったときには石榴の姿も消えていた。
(一応成敗しておいた方が良かったかしら。後の世のために)
などと思う優乃。そして更紗と別れた2人はデートを再開。
「さて、キメラも無事退治出来たし‥‥せっかくだからこのままデートをするのだ♪」
「うん。このまま一日付き合ってくれたら嬉しいな」
ソーニャ(
gb5824)は拡大するロンリーウルブズの被害に対応するため、街の人々に呼びかけ、自警団を組織していた。
しかし何故かそこに集まったのは女子ばかり。更に彼女らはいわゆる腐ったヲトメであった。
集合した女子達を前に、ソーニャは『パトロール開始の挨拶』を行う。
「ロンリーウルブズ‥‥毛むくじゃらの狼男の集団‥‥。
狼が雄ばかりのはずがない。必ず雌もいるはず。
カップが襲われるのはいい。もはや我々には関係ない話だ。
しかし万が一にも血迷った雌狼が一人身のショタ(美少年)を襲うことなど絶対あってはならない!」
ソーニャはぐっと拳を握り緊め、振り上げる。
「ここは各々、趣味にあわせて美青年なり美中年なり脳内変更してくれ。
我々は同士だ、助け合わなければならない。
各自、連絡を密に、敵と遭遇した時は、近くにいる者が協力。
助けた後の交渉権は最初に見つけた者に帰属することとする。
かいぐりかいぐりして家に送るなど、人道とヲトメとしての道に外れない限り自由。
但し、必ず同意を得ること。無理強いは厳禁。
この時期、教会などクリスマスの出し物の練習帰りなど1人ショタの襲われる確率は非常に高い。
各自、この機会をものに出来るよう切に願う‥‥。では今より、パトロールを開始する。以上!」
‥‥趣旨が変わってきている気がするが、ともかく、ヲトメ達は動き出した。
しかし――ロンリーウルブズは『(見た目)男女のカップルの男性のほうのみ』を攫うのであって、一人身の美少年を襲うことはなかった。
「ううぅ‥‥ひっく‥‥」
「大丈夫、お姉ちゃんが守ってあげるから。おうちまで送ってあげるね」
泣きべそをかく小学校低学年ほどの可愛らしい男の子を抱きしめて、ほっぺにすりすりするソーニャ。
「ほんとぉ? ありがと、お姉ちゃん」
にぱっと天使のような笑みを浮かべる男の子。
見た目は子ども、中身は大人(ショタ好き)なソーニャは今にも鼻血を噴出しそう。
‥‥結局自警団は、はぐれた子どもを親や自宅まで送り届けるなど、迷子の対応に大活躍した。
●デートその3
藤枝 真一(
ga0779)と天道 桃華(
gb0097)は一緒にイルミネーションを見て回っていた。
「今年こそはちゃんとしたデートにするわよ!! わぁ‥‥すごく綺麗! ね? シンちゃん!」
「‥‥んー。まぁ綺麗なんじゃないか? 電気の無駄だけど」
相も変わらず真一は煌びやかな電飾にまったく興味を示さない。
「もう! シンちゃんったらまたまた雰囲気台無しー!」
桃華としてはラブラブデートをしたいのだがそっけない真一の態度にご不満な様子。
真一の頭をピコハンでピコンとやる。
「うー‥‥さむっ。さっさと終わらせて、帰ってコタツでTVでも見ようぜ」
「じゃあこうしましょう♪」
桃華は両手を大きく広げ、真一の身体にぴったりと抱きついた。
「なんだよ桃華、歩き難い」
「だってー、抱きついてる方があったかいんだもーん」
「‥‥まあいいか」
真一はめんどくさそうに振舞いながらも、桃華に合わせ、寛容に受け入れる。
まるで熟年カップルのようだ。2人とも若いのに。
「シンちゃんっ、これ食べよっ♪」
と、出店の前で桃華が言えば、しっかり真一が買ってあげる。
もきゅもきゅと美味しそうに大判焼きを頬張る桃華を見て、真一は微笑んだ。
「そういえば、初デートもここだったな。あれから2年か‥‥。早いもんだ。しかしお前は、全然成長しないな」
「うー、ひーどーいー! あたしだってちゃんと成長してるもん!」
ぷうと頬を膨らませる桃華。
「まぁ、俺は小さいほうが好みだからいいんだが。‥‥その、少しはな」
真一のアブナイ発言!
2人は近くにあったベンチに座り、一息つく。
「ホラ、クリスマスプレゼントだ。‥‥お前に似合うと思ってな」
真一はごそごそと包みを取り出して、桃華に差し出す。
「お前好きだろ、クマ」
真一から桃華へのプレゼントは『クマのきぐるみ』だった。
「って、なんで着ぐるみっ!? ぬいぐるみじゃないの?!」
桃華はピコハンをフルスイング。真一の顔面にお見舞いした。
そしてお返しとばかりに、真一に『ウサギのきぐるみ』を着せる。
ちなみに、桃華の本日の衣装はアリスコス。‥‥それに合わせてのことだろうか。
「まったくもう。‥‥ええと、あたしからの真面目なプレゼントはそれじゃなくて‥‥」
桃華が差し出したのは『カプロイア伯爵のマント』だった。
「はいっ、これで伯爵みたいにカッコよくなってね♪」
「これは‥‥真面目‥‥なのか‥‥?」
桃華の美的センスがちょっぴり心配になる真一であった。
カップルで溢れかえる公園に紅月・焔(
gb1386)が1人、佇んでいた。
なんというか‥‥すごく浮いています。
「ロンリーウルフ‥‥なんか増えたみたいだな‥‥」
ぼそぼそと呟く。
「仕方ない‥‥柄じゃないが‥‥歌うか」
焔はエアギターを構える。
「この広い世界に‥‥二人出会えた奇跡‥‥。その2人を祝福して‥‥歌います‥‥。『浮気と不倫』‥‥聞いてくれ」
縁起の悪すぎる、嫌がらせとしか思えない曲名。ちなみに悲しいかな、誰も聞いていなかった。
追儺(
gc5241)は出店で購入したケバブにパクつきながらカップル達を見張り中。
(ロンリ―ウルフねぇ‥‥バグアも暇なんかね?)
(甘噛みされるってのは別に大した被害じゃないが‥‥カップルには問題かもしれんね)
などと彼は考える。しかし裸のまま路上に放置されるというのは、されたほうは堪ったものではない。
そのまま色々と買い食いをし、しばらく時が過ぎる――。
‥‥周りは案の定カップルだらけであった。
人目も憚らずラブラブちゅっちゅするカップル達の様子に追儺は悶絶。
「‥‥‥‥」
あまりの熱熱っぷりに鳥肌を立ててぷるぷると震える。
(一人身にこの甘甘な光景はいくらなんでも目の毒だろ‥‥)
このままここに居たら頭がおかしくなりそう。追儺は精神の危険を感じた。
「今年も冷え込みますね‥‥」
西園寺 縁(
gc5188)はお鍋の材料の買い物をしながら街をふらふらしていた。
途中、喫茶店に立ち寄り、コーヒーを注文。窓際の席で外を眺める。
「‥‥あ、雪」
イルミネーションに飾られた街路樹。はらはらと舞い降りる雪。
その2つが合わさって、縁の目の前に幻想的な光景が広がる‥‥。
縁はつい、コーヒーが温くなるまで見とれてしまった。
結城 桜乃(
gc4675)とヘミシンク・ローゼ(
gc6469)は共に真一と桃華のカップルを尾行していた。
ロンリーウルブズがいつ出現しても良いように、だ。
(‥‥‥‥)
「これ、端から見たら完全にストーカーだね」
頬に汗を垂らす桜乃。
「まあこれも依頼です。仕方が無いですよ。頑張りましょう」
ヘミシンクは何だかんだで楽しんでいる様子。
「はあ〜はあ〜。‥‥しかし冷えるなあ」
両手に息を吹きかける桜乃。‥‥日が落ちてからぐっと寒くなった。
「俺、コーヒー買ってきますから、見張りお願いします」
「わかりました。見つからないように気をつけてください」
桜乃は頷き、自販機まで歩いていく。
まあ、真一達に見つかっても依頼に支障は無いのだが‥‥
雰囲気を壊してしまうのは悪い気がした。
‥‥まもなく桜乃が戻ってくる。
「どうぞ」
ヘミシンクに缶コーヒーを差し出してきた。
「ありがとうございます。温まります」
「いやいや。これくらい別に」
男が2人してコーヒーを啜る。
真一と桃華はベンチに座って何やら騒いでいるが‥‥とても楽しそうであった。
(はあ‥‥羨ましいなあ‥‥)
心の中で溜息をつく桜乃。
ベンチに座って話している真一と桃華。
いつの間にか桃華の定位置は真一の膝の上になっていた。
実にいい雰囲気である。いつもはそっけない真一も、流石に意識してしまい、頬が赤らんでいる。
「ねえ、シンちゃん‥‥お顔、こっちに寄せて」
「なんでだよ」
「いいからー!」
「わーったよ! ほら!」
真一が顔をこちらに寄せたのを確認すると、桃華は真一のあごを両手で優しく包み‥‥
ほっぺにちゅーをした。
「!?」
「えへへ‥‥ちゅーしちゃった‥‥」
もじもじとしていた桃華は恥ずかしさがMAXになり、その場から逃げ出そうとして‥‥べちゃりと転んだ。
「まったく、なにやってるんだよ。ほら」
真一が桃華に手を差し伸べて助け起こしてハンカチで頬を拭ってやったそのとき――
「ガルルルァァァァァ!!」
奴らが現れた。ロンリーウルブズ。
「まだこんな事やってたのね‥‥」
呆れた様子の桃華。そして同情的な視線を向ける。
「って何でこんなに増えてるの!?」
昨年までは1匹だったロンリーウルフが今年は増殖している‥‥。
「出たな。よーし、桃華っ、行って来い!」
と、真一は堂々と恋人である桃華を自分の前にちょこんと置く。
「しっかりと練成超強化をかけておいた。行けっ! 桃華!」
「ちょっと待って?! 何が『行けっ!』よ?! こういうときは男の子が戦うもんでしょ?!」
「まて桃華。冷静に考えろ。奴らは男しか狙わないし、俺が前に出て行く必然性無いだろ」
「‥‥」
真一にそう言われて、桃華はしばし考え込む。
「まあ‥‥そうなのかな?」
首をかしげる桃華。真一は心の中で「計画通り!」と悪い笑みを浮かべた。
(桃華のおバカさは俺が一番良くわかっている)
‥‥恋人を盾にする男、藤枝 真一。これはひどい。
そんなことをしているうちにロンリーウルブズが襲い掛かってきた!
「早く行けー! 桃華ー!」
真一が声を上げると――
「元気ですかー! 元気があれば! 何股でも出来る! 行くぞー! 1! 2! 3! ダッシャー!!」
そんな意味不明の叫びと共に急速に接近してくる1つの影。‥‥焔であった。
焔はウルブズにラリアットで突っ込み、狼男を拉致し、甘噛みし、ジャイアントスイングでぶん投げる。
まさに大暴れ。彼は熱熱のカップル達の中に長時間居たため、某脳メーターが振り切れてテンションが上がりすぎて暴走していた。
「出てきたな‥‥ロンリ―ウルフ‥‥どう見ても変態の集団にしか見えんぜ」
「危害を加えるのなら追い払わないと‥‥!」
「さあ、本気で行くよー♪」
「研究用ロンリ―ウルフを一匹、欲しいな‥‥」
ここで追儺と縁、更に見張っていた桜乃とヘミシンクが合流。
‥‥あっという間にロンリーウルブズを退却に追い込んだ。
だがしかし――
「ガルルルァァァァァ!! グラァァァァァ!!」
焔の暴走はまだ止まらない。
「ぱんつ見せろー!! がおー!!」
などと、桃華と縁に対しセクハラ行為を働こうとする。
‥‥全員からフルボッコにされる焔。
「もきょー!!」
彼はお星様になりましたとさ。
そうして任務を終えた一同は解散となった。
デートに戻った真一と桃華。
「奴‥‥いや、奴らがクリスマス以外をどう過しているのか、ふと気になったが‥‥。狼男ってことは、普段は人間に擬態して生活に溶け込んでいるのかも知れん」
真一はあごに手を当てて真剣に考え込んでいた。ロンリーウルフの生態は謎に包まれている‥‥。
「なぁ、あいつ等、来年も現れるかな。‥‥次は何だろう、巨大化して‥‥とか?」
「さあ?」
よくわからなーい。といった桃華。そして――
「あー‥‥雪強くなってきたな。積るかもしれん。まったく、忌々しいな。冷たいし滑るし」
「そうねー。降ってる間とか、新雪は綺麗なんだけどね」
しんしんと降り積もる雪の中を2人は歩く‥‥。ぼんやりとイルミネーションの輝きも見えた。
「桃華、屋台でラーメンでも食って帰ろうぜ」
「ホントに? やった!」
「‥‥桃華の奢りで」
「シンちゃんのバカー!!」