●リプレイ本文
●追撃戦
青空を切り裂き飛行する傭兵部隊12機、アイリス隊16機、計28機のKV――。
彼らの任務は撤退を続けるバグア部隊の追撃‥‥。
(あの本星型‥‥傷だらけな姿を見ると、激戦を潜り抜けてきた証‥‥)
ノエル・アレノア(
ga0237)は他の追撃部隊からの情報にあった映像を思い出す。
(でも、僕も負けられない。あの時、何故撤退したのか気になるけど‥‥。超えるべき壁は乗り越えてみせる)
唇をきゅっと結び、操縦桿を握る手に力を込めた。
彼の機体はディアブロ改『ゼロ』。
「バンデットレーダーエコー」
ヘルメットのバイザー越しに、レーダーに映る赤い光点――敵機を確認し、伊藤 毅(
ga2610)が報告する。
彼の機体はフェニックスA3型。
「敵も必死、か‥‥でも、手心加えればやられるのはこっちだものな」
阿修羅改『蒼翼号』を駆る井出 一真(
ga6977)はそう呟く。
敵は強化本星型HWと強化型タロスを含む部隊‥‥。手を抜けば命は無いだろう。
「相手がどういう敵かについては、正直興味はありませんけど‥‥皆さんの話を聞く限りでは逃す訳にはいかない相手のようですね。では及ばずながら、わたしも全力を尽くします」
乾 幸香(
ga8460)が言った。
敵エースに傭兵達は何度も煮え湯を飲まされている。恐らくその話を聞いたのだろう。
彼女の機体はイビルアイズ改『バロール』。
(‥‥お久しぶりね、シュネーさん。貴女は忘れているかもしれないけど、私は覚えているわよ)
映像にあった水色の強化型タロス――。それを思い浮かべ、紅 アリカ(
ga8708)は心の中で小さく呟いた。
彼女の機体はシュテルン・G『黒鳥(ブラックバード)』。
「さて、俺もシラヌイドライバーの1人としては、ここでアイリス隊の面々に恥ずかしい所を見せる訳にはいかない。‥‥頑張るぜ!」
言葉を口にし、自らを奮い立たせるAnbar(
ga9009)。
彼の機体はシラヌイ改『アルタイル』。
「シラヌイドライバーか‥‥自称ハヤブサライダーとしては意識するところ。アイリス隊、フォロー、アテにしてますよ」
ハヤブサ改『紫電 −シデン−』に搭乗する狭間 久志(
ga9021)がアイリス隊の隊長、ミラージュ・イスルギ大尉に通信を送る。すぐに「任せておいて」と返って来た。
「敵機電探にて補足」
レーダーに目をやり、三枝 雄二(
ga9107)が言った。
よく見れば、敵は二手に分かれていた。そのまま撤退を続けるものと、こちらに向かってくるもの。
(味方を逃がすために殿を‥‥?)
フェニックスA3型のコクピットで雄二はそのように考えをめぐらせた。
強化人間‥‥今は人類の敵とは言え、元は普通の人間。バグアとて情もあるのか‥‥。
「あの漆黒の本星型HW‥‥奴だ!」
堺・清四郎(
gb3564)は眼をギラギラ光らせている。
宿命の敵に再び会い見えることが出来る‥‥。今はそれがただただ嬉しい。
(会いたかったぞ! ルフト・シュピーゲルング! この日のために我が剣を鍛え、磨き続けた! 今日こそ貴様を落としてみせる! 剣虎よ! その顎で食い千切れ!!)
彼の機体はミカガミB型『剣虎』。
(この前の佐賀空港奪還作戦の時はノエルさんが助っ人に来て助けてくれました。今度は、ボクがそのお返しをする番)
ティリア=シルフィード(
gb4903)はきっと表情を引き締める。
愛する人の役に立ちたい。そういう想いが彼女の胸にあった。
「敵エースと因縁のある方々が戦闘に集中出来るよう、しっかり露払いを務めないと‥‥!」
彼女の機体はスピリットゴースト『Merkabah』。
(ふわ‥‥凄い機体ばかりですね‥‥)
周囲を飛ぶ味方の機体に目をやる張 天莉(
gc3344)。
見れば入念なチューンが施された機体が複数ある。
(でも、やるべき事を見失わなければ私のマオだって行けるはずです)
そう‥‥KVは性能だけではない。使い方、戦い方が重要なのだ。
彼の機体はリンクス『マオ』。
(どんなに相手が強大でも譲れない願いがある。だから、もし対峙するならその時は――)
真剣な表情をしているドゥ・ヤフーリヴァ(
gc4751)。
彼の機体はスカイセイバー『ウォード・スパーダ』。
敵との距離は大分詰まっていた。
そこでドゥは敵‥‥強化型タロスに向けてオープン回線で語りかける。
「あの‥‥今更ですが戦うのやめません‥‥? 僕はあなた達が武力を放棄するなら戦う気はない」
しかし返答は無かった。
今更投降したとて、強化人間の末路は決まっている。
それに強化型タロスのパイロット――シュネーには譲れないものがあった。
「うん‥‥ごめんなさい。やっぱり返事はしてくれませんよね。そちらにも戦う理由があるんでしょう。ならこちらも――」
「こっちは引き受けます。手強い相手をお願いします!」
「直接俺が相手をした訳ではないが、何度も俺達の前に立ち塞がってきた奴らだ‥‥そろそろ精算時。バックアップは任せておいてくれ」
一真とAnbarが言う。事前に決めた役割通りに分かれる傭兵部隊。
全機増速。接敵に備える。
●VS強化本星型HW・強化型タロス
漆黒のボディに黄金のラインが入った本星型HWを視認――。
「今日こそ決着を‥‥!」
「ルフト・シュピーゲルング‥‥会えて嬉しいよ、バグアのエース!」
「久しいな! この日を待ち焦がれたぞ! ルフト・シュピーゲルング!」
ノエル、久志、清四郎の3人はそれぞれの想いを叫ぶ。
3機は増速。距離を詰める。
「貴様に落とされ続け、生き恥を曝しながらも我が身を鍛え続けてきた‥‥それが今報われる!!」
清四郎機が先行する。
「果たして、それはどうかな‥‥?」
オープン回線で敵から通信。若い男の声。
「ルフト‥‥!!」
清四郎は敵意を剥き出しにし、表情を歪める。
本星型HWは清四郎機を捉えると、プロトン砲を連射してきた。
――とてつもない熱量が清四郎機を襲う。装甲が融解し内部にまでダメージが及ぶ。
「があああ!?」
生命力を半分以上削られてしまった‥‥。
「清四郎さん! なんて出力だ‥‥!」
ノエル機は本星型HWをロックオン。
「僕の機体ではうかつなことはできないけど‥‥」
D−013ロングレンジライフルで狙撃、リロード。
しかし距離があったため、砲弾は空を切り、命中せず。
「狙いが甘い、避けるまでも無い。舐めているのか、ディアブロのパイロット」
「くっ! 舐めてなんか‥‥!」
こちらは必死で戦っている‥‥! ノエルは奥歯を噛んだ。
「さぁ、始めようか」
久志機、増速。本星型HWの後ろに付き、試作型『スラスターライフル』を連射。
命中し、表面装甲を削る。中程度のダメージ。
「‥‥っ。この機体‥‥ハヤブサか‥‥」
今では珍しいハヤブサ。久志機は外装にも相当手が加えられているが――。
「おのれルフト‥‥!」
清四郎機、本星型HWをロックオン。
「くたばれぇ!!」
トリガーを引き、M−12強化型帯電粒子加速砲を放つ。極太の光条が飛ぶ。
命中。本星型HWの表面装甲を融解させる。中程度のダメージ。
そのまま増速。一撃離脱の要領で距離を取り、旋回。機首を本星型HWへ向ける。
本星型HW、増速。再び清四郎機を捉えた。
「沈め」
チェーンガンによる猛烈な射撃。吐き出される無数の砲弾。
清四郎機はそれをまともに浴び、機体が蜂の巣になってゆく。致命的なダメージ。
「ぐぁっ!? やはり強い‥‥! だがミカガミを舐めるなぁ!」
続けて本星型HWは久志機に砲口を向け、光条を放つ。――プロトン砲。
「当たるわけには‥‥!」
久志は機体をロールさせて回避。
ノエル機、ブーストを噴かして一気に増速。本星型HWをロックオン。
「捕らえた‥‥!」
トリガーを引き、ロングレンジライフルで再び狙撃。
「いけっ!」
命中。砲弾は本星型HWの表面装甲を浅く抉る。小程度のダメージ。
久志機、増速。本星型HWをスラスターライフルの射程に収め、連射。
「ルフト、僕の相手もしてもらおうか!」
命中。砲弾が装甲を削り、中程度のダメージ。
(このハヤブサ‥‥俺に付いて来るか‥‥)
清四郎は血走った目でHUD(ヘッドアップディスプレイ)を見つめる。
「はあ‥‥はあ‥‥」
機体は既に悲鳴を上げている。先ほどから警告音が五月蝿くて仕方なかった。
――ここでやらなければ後は無い。
HUDに表示される円が本星型HWに重なった。ロックオン完了。トリガーを引く。
「はぁぁぁっ!!」
清四郎機は8.8cm高分子レーザーライフル、通称『アハト・アハト』で狙撃。
高出力のレーザーは正確に本星型HWの装甲を射抜いた。
兵装を切り替え。再度ロックオン。続けてK−02ミサイルを発射。
250発ものミサイルが白煙の尾を引き、本星型HWに襲い掛かる。
命中。ファランクスの迎撃により威力が減衰。
――しかしそれでよかった。清四郎機は増速。K−02ミサイルは接近するための布石。
「剣虎よ! 切り裂けぇぇぇ!!」
一気に距離を詰め、ソードウィングでの斬撃!
刃の翼が装甲に食い込み、甲高い金属音を鳴らし、火花を散らして切り裂く。
それは本星型HWの側面装甲に深々と斬痕を刻み、大ダメージを与えた。
強化型タロスの対応に回るアリカ機、雄二機、毅機――。
「マスターアーム点火、ドラゴン1エンゲイジ」
「火器管制点火、ドラゴン2交戦!」
毅と雄二が宣言する。
3機増速。敵との距離を詰める。
(あのシュテルンは‥‥)
強化型タロスのコクピット――。少女は見覚えのある機体に目を向けた。
パイロットとは、会話をしたこともある。
(アリカの機体‥‥)
名前も知っている。奇異なことに、相手から名乗ってきた。
いや、それが彼女の流儀なのかもしれない。
少女――シュネーはアリカ機をロックオンすると、レーザー砲を連射した。
命中。大出力のレーザーが次々とアリカ機の装甲を貫き、致命的なダメージを与える。
「‥‥くぅっ‥‥」
開始から手痛い攻撃を受けてしまうとは‥‥。アリカは表情を歪める。
アリカ機、増速して旋回。機首を強化型タロスへ、
「ドラゴン1、FOX2」
「よっと、ドラゴン2、FOX2!」
毅機と雄二機はD−03ミサイルポッドを一斉発射し、濃密な弾幕を展開。
それは命中こそしなかったものの、強化型タロスの動きを阻害する。
雄二機はUK−10AAMも放つが、命中せず。
「アリカ‥‥今日で終わりにしましょう‥‥」
強化型タロスはアリカ機に急接近すると、ハルバードを振るい、連続で斬撃を加える。
アリカ機は翼を数枚切断され、胴体にも損傷。致命的なダメージ。
「‥‥きゃあっ!?」
コクピットが赤く照らされ、警告音が鳴り響く。
「まずい、アリカさんが!」
雄二が声を上げる。
毅機と雄二機は再びミサイルポッドを発射し弾幕を展開。アリカ機を支援。
雄二機の放ったAAMはまたも命中せず。
「‥‥まだっ、まだよ」
アリカ機、強化型タロスの後ろに付き、ロックオン。スラスターライフルを連射。
命中。砲弾が外装を削る。中程度のダメージ。
「このフェニックス‥‥邪魔ですね‥‥消えなさい」
オープン回線で若い女性の声。
強化型タロスは雄二機に狙いを定め、レーザー砲を連射してきた。
命中。雄二機はレーザーの雨に晒され、見る間に生命力が減っていき――
ダメージが限界に達し、操縦不能となる。
「くそ! エンジン停止、油圧低下、機体を捨てる。ドラゴン2脱出!」
雄二機、撃墜。機体は爆発四散した。
「‥‥っ」
アリカはスラスターライフルをリロードさせる。
強化型タロスをロックオン。トリガーに指をかけ、一気に引く。連射。
命中。砲弾は強化型タロスの外装のあちこちを吹き飛ばした。大ダメージを与える。
僚機を失った毅機は尚もミサイルポッドで弾幕を展開し、アリカ機の支援を続ける。
(この弾幕‥‥煩わしい‥‥)
強化型タロスは毅機にレーザー砲の銃口を向けて、連射。
命中。いくつもの光条に貫かれ、毅機は操縦不能に追い込まれる。
「エンジン停止、オイルプレッシャーネガティブ、ドラゴン1、イジェークト」
毅機、撃墜。機体が火球へと変わる。
「また仲間を失いましたね、アリカ」
「‥‥やってくれたわね‥‥」
シュネーの言葉に、アリカは唇を噛んだ。
「それでもまだ‥‥戦いますか?」
「‥‥当然よ」
「あなたと私は似ているかもしれませんね‥‥」
シュネーはぼそりと小声で言った。
互いに、譲れないもののために戦っている――。
●VSタロス
「タロス8機、ナンバリング完了。データ転送します」
今回、管制を担当する幸香機から通信。
「強化型HWは全てアイリス隊が引き受けてくれるそうです。わたし達はタロスを‥‥!」
「おお、強化型HWは20機以上いたんじゃないか? それは助かるな」
Anbarが言う。アイリス隊のバックアップは頼もしい‥‥。
そして傭兵部隊6機は各エレメント(2機編隊)に分れ、戦闘開始。
一真機とドゥ機――。
このエレメントはタロス3機を担当する。
一真機、ドゥ機、増速。行動力に勝る一真機が先行。
「俺が先鋒を勤めます! ドゥさんは隙ができたら攻撃を!」
「了解です。よろしくお願いします!」
一真からの通信に、ドゥはやや緊張気味に答える。
タロス3機は先行する一真機に向けてレーザー砲の猛烈な射撃を加えてくる。
一真は射線のわずかな隙間を縫い、全てを回避。
「この程度なら!」
一真機、増速。タロス1をロックオン。十式高性能長距離バルカンの猛射。
多数の砲弾を浴びせられ、タロス1は機体のバランスを崩す。大ダメージ。
「相手が無人機なら、数で勝っていようとも!」
更に一真機はタロス2の背後に付き、すれ違いざまに斬りつける。
装甲に大きな斬痕を刻まれたタロス2は大ダメージ。
ドゥ機、増速。タロス3に向け、84mm8連装ロケット弾ランチャーを発射。
弾幕を張る。命中。ファランクスの迎撃により威力が減衰。
(やっぱりファランクスを積んでいるか‥‥)
予想通りではあった。
タロス1と2、一真機にレーザー砲を向け、連射。一真機は回避。
タロス3はドゥ機を確実に捉え、レーザー砲を放ってくる。
命中。ドゥ機は複数の光条に貫かれる。致命的なダメージ。
「うわあああっ!?」
機体が激しく揺さぶられる。ドゥは思わず悲鳴を上げた。
「ドゥさん! この‥‥!」
一真機、タロス3機を射程内に納め、マルチロックオン。
「やらせるかぁ!」
ミサイルレリーズを一気に押し込む。K−02ミサイルを全弾発射。
全弾命中。青空に爆炎が広がる。
しかしファランクスの迎撃とFFの集中展開により威力は大幅に減衰。
タロス3機のダメージは軽微。
「くっ‥‥!」
一真機はタロス1をロックオン。長距離バルカンで射撃。命中。大ダメージ。
続いてタロス2をロックオン。同様に長距離バルカンで射撃。命中。大ダメージ。
大量の砲弾はタロス2機の外装をズタズタに引き裂いた。
(一真さんが頑張っているんだ‥‥僕だって‥‥)
ドゥ機、アサルト・フォーミュラAを使用。タロス3をロックオン。
短距離高速型AAMを3発発射。‥‥命中。ファランクスの迎撃。
タロス3の損傷は軽微。
タロス1と2は一真機に肉薄し、サーベルによる斬撃を放ってくるが一真機はギリギリで避ける。
タロス3は再度ドゥ機を捉えた。レーザー砲による連射が来る‥‥!
(――っ!!)
命中。ドゥ機はダメージが限界に達し、撃墜。爆散。
「くそっ!」
僚機を失った悔しさに、一真は握り緊めた拳でコンソールを叩く。
一真機はタロス1をロックオン。長距離バルカンの射撃を浴びせ、撃墜。
続いてタロス2をロックオン。長距離バルカンの射撃。砲弾はタロス2を貫き、撃墜。
更にタロス3の後方に付き、ソードウィングで鋭い斬撃を加える。
機体を切り裂かれたタロス3は大ダメージ。斬痕から火花が散る。
タロス3は一真機に対してレーザー砲を放ってくるが、やはり当たらない。
そして一真機は再度、タロス3の背後に付いた。
「これで‥‥!」
すれ違いざまにソードウィングで斬りつけ、撃墜。タロス3は爆発。
幸香機とAnbar機――。
このエレメントはタロス3機を担当する。
「これから【邪眼】を発動します。敵が弱った隙に思い切り叩いちゃって下さいね」
幸香機は対バグアロックオンキャンセラーを使用。
「了解だ」
Anbarは返答しつつ、超伝導アクチュエータVer.2を起動する。
2機は増速。移動力の高いAnbar機が先行。
管制を担当する幸香機は集中的に狙われる可能性があるため、Anbarには敵の注意を自機に引き付ける思惑もあった。
タロス4〜6の3機、増速。Anbar機に向けレーザーの猛射。
Anbar機は回避運動。命中せず。
「なんだ‥‥? 狙いが甘い‥‥? ロックオンキャンセラーが効いているのか」
幸香機、増速。タロス5をロックオン。
「いきます!」
UK−10AAMを2発発射、命中。ファランクスの迎撃により威力が減衰。
小程度のダメージを与えた。
Anbar機も同様にタロス5をロックオン。こちらはAAMを3発発射、命中。
ファランクスの迎撃により威力が減衰。中程度のダメージ。
タロス4、増速。レーザー砲を幸香機に連射。幸香機は回避。
タロス5と6、増速。レーザー砲をAnbar機に連射。
しかしまたもAnbar機はアクチュエータの効果もあり軽々と回避をする。
「ロックオンキャンセラーの効果は確かなようだな」
「何よりです。このまま畳み掛けましょう!」
幸香からの元気な返答。
「了解! ボコボコにしてやる!」
幸香機、タロス5をロックオン。AAM3発を発射。
全弾命中。爆発と共に装甲の破片が撒き散らされる。大ダメージを与えた。
「‥‥! ファランクスの迎撃が無い! Anbarさん、今です!」
「わかった!」
Anbar機、同様にタロス5をロックオン。AAM3発を発射。
命中。タロス5は爆発を起こして墜落していった。
「よっしゃ、撃墜!」
タロス4と6、増速。幸香機に接近し、サーベルによる斬撃を放ってくる。
「当たりません!」
幸香機は回避。命中せず。
幸香機、KP−06ミサイルポッドを発射。弾幕を張り、目くらましをかける。
タロス4のファランクスによる迎撃。
その隙に幸香機は接近し、GPSh−30mm重機関砲を連射。
「やあああっ!」
命中。タロス4の装甲に砲弾が突き刺さる。大ダメージを与えた。
Anbar機、タロス4をロックオン。AAMを3発発射。
全弾命中。ファランクスの迎撃により威力が減衰するも、中程度のダメージ。
タロス4は接近してきた幸香機に向けてレーザー砲を連射。
命中。レーザーは装甲を焼き、中程度のダメージ。
「‥‥っ! でもこのくらい!」
タロス6はAnbar機にレーザー砲を連射してくるが――
「だから当たらないんだよ!」
光条はAnbar機を捉えることは無かった。
幸香機、タロス4をロックオン。重機関砲で射撃、リロード、再度射撃。
命中。敵の装甲に穴を開け、大ダメージを与える。
Anbar機、タロス4をロックオン。AAM2発を発射。
命中。ファランクスの迎撃で威力が減衰。
「くそ、弾切れか‥‥」
兵装をスナイパーライフルRに切り替え。再度タロス4をロックオン。狙撃。
命中。砲弾は狙い違わずタロス4を撃ち抜き、撃墜。
タロス6、レーザー砲でAnbar機を狙うが、やはり当たらない。
幸香機、増速。タロス6をロックオン。重機関砲を連射。
「食らいなさい!」
命中。外装を吹き飛ばし、大ダメージを与える。
Anbar機、今度は兵装をスラスターライフルに切り替え。
タロス6をロックオンし、射撃を加える。命中。致命的なダメージ。
外装が剥がれ落ち、生体部品が露出。そこから体液のようなものが噴出している。
タロス6はもはや虫の息。
それでもレーザー砲をAnbar機に放ってくるタロス6‥‥だが当たらない。
幸香機、タロス6をロックオン。
「これで‥‥!」
重機関砲の射撃を浴びせ、トドメを刺した。
ティリア機と天莉機――。
このエレメントはタロス2機を担当する。
ティリア機、天莉機、増速。天莉機はティリア機に速度を合わせ、足並みを揃える。
タロス7、増速。ティリア機に狙いを定め、レーザー砲で攻撃を仕掛けてきた。
命中。高熱が装甲を焼き焦がす。中程度のダメージ。
「くぅっ‥‥」
タロス8、増速。こちらは天莉機に狙いを付け、レーザー砲で射撃。
命中。光条が天莉機を貫いた。
「わぁっ!?」
コクピットに警告音が響く。大ダメージ。
ティリア機、タロス7をロックオン。
スナイパーライフルD−03で狙撃、リロード、狙撃。
命中。砲弾が敵の装甲にぶち当たる。中程度のダメージ。
天莉機、タロス8をロックオン。
「――そこ!」
スナイパーライフルLPM−1で3度狙撃を行う。
命中。外装を貫き、大ダメージを与えた。
タロス7、レーザー砲をティリア機に連射。命中。表面装甲が融解。中程度のダメージ。
タロス8のレーザー砲が天莉機を捉える。連射。
命中。複数の光条が機体を貫いた。致命的なダメージ。
「わあああああっ!!」
コクピット内が赤い警告ランプに照らされる。
これ以上攻撃をもらったら確実に堕ちてしまう‥‥!
「これ以上やらせない‥‥再生もさせない‥‥ファルコン・スナイプ起動! 一気に打ち砕くッ!」
ティリア機、ファルコン・スナイプを使用。
200mm4連キャノン砲でタロス7に連続して砲撃を加える。
大口径の砲弾が命中し、タロス7の外装を砕いた。致命的なダメージ。
「リンクス・スナイプ発動‥‥ぜーんぶもらっちゃって下さいね♪」
天莉機、リンクス・スナイプを使用、SライフルLPM−1でタロス7を2度狙撃。
命中。砲弾がタロス7の剥き出しになった生体部品を貫き、撃墜。
天莉機はブーストを使用。増速して距離を取り、旋回。
タロス8、ティリア機に照準を定め、レーザー砲を連射。
命中。レーザーは装甲を貫き、内部にまでダメージが及ぶ‥‥。
ティリア機、Fスナイプ使用、4連キャノン砲でタロス8に3度砲撃。
命中。大ダメージを与える。
天莉機、Lスナイプ使用。リロード、SライフルLPM−1で2度狙撃。
命中。更に大ダメージを与える。
タロス8、レーザー砲をティリア機に向け、連射。命中。致命的なダメージ。
警告音が耳に響く‥‥。
「まだ‥‥耐えてみせる!」
ティリア機、SライフルD−03をリロード。タロス8をロックオン。狙撃、リロード。
天莉機、タロス8をロックオン。SライフルLPM−1に連動するトリガーを3度引き、狙撃。
命中。タロス8は空中で爆散した。
「やっと堕ちましたか」
ほっと胸を撫で下ろす天莉。これ以上長引けば危なかった‥‥。
●一心同体
清四郎機の攻撃により大ダメージを受けた本星型HW――。
「ふふ、ふははははは!」
笑い声を上げるルフト。
「やるな! ミカガミのパイロット!」
ルフトは叫ぶ。
「ならば――とっておきを使わせてもらう!!」
すると、本星型HWが赤く発光した。
コクピット内、ルフトはメインスクリーンに映るノエル機、久志機、清四郎機にマーカーを付け、マルチロックオン。
「全弾くれてやる!」
マルチロックミサイルを全弾発射。無数のミサイルがコンテナから射出される。
3機は回避行動を行うが、その狙いは恐ろしく正確で――避け切れない!
全弾命中。次々と爆炎が立ち昇る。
「うわあああっ!?」
「くうううううっ」
「があああああっ!!?」
ノエル機、致命的なダメージ。久志機、大ダメージ。
清四郎機は――ダメージが限界に達し、操作不能。機体は黒煙を上げて墜落していく。
「ルフトぉぉぉぉぉっ!!!!」
腹の底から搾り出すような清四郎の咆哮。
「さよならだ、『清四郎』。我が宿敵よ」
「――!?」
直後、清四郎機は大爆発を起こす。
本星型HWはミサイルコンテナをパージ。
増速。爆炎を潜り抜け、久志機に迫る。照準を定め、プロトン砲を連射。
命中。凄まじい熱量により久志機の外装が融解。致命的なダメージ。
「これくらいじゃ落ちない‥‥まだだ!」
それでもまだ久志の瞳は光を失っていない。
「行くぞ、翼面超電導‥‥! 僕の意識が飛ぶ前に、捉えて見せるッ!」
久志機、翼面超伝導流体摩擦装置を使用。
マニューバ・コブラで機体姿勢をピッチアップ。
機体を減速させ高度をズラし、背後に付いていた本星型HWをやり過ごす。
制動をかけたクルビットでそのまま一回転。逆に敵の背後を取った。
「これが最後だ‥‥ノエルさん、頼みます!」
試作型G放電装置の電撃で連続攻撃。命中。本星型HWに中程度のダメージ。
「了解ッ!!」
ノエル機はブーストを使用。増速。本星型HWをロックオン。
スラスターライフルで猛烈な射撃を加える。
本星型HWは回避運動。砲弾は装甲を掠めるのみ。
本星型HWは尚も赤い光を発している。
「これで幕だ」
ノエル機、久志機を確実に捉え、順番にチェーンガンの射撃を加える。
砲弾の豪雨に晒され、ダメージが限界に達した2機は――爆発四散した。
僚機である毅機と雄二機を撃墜されたアリカ機――。
尚も強化型タロスと交戦中。
「その程度ですか、アリカ」
「‥‥見くびらないで」
アリカ機はPRMシステムを攻撃に使用、強化型タロスをロックオン。
「‥‥仕掛ける! さぁ、舞い踊れ、黒羽の舞(ブラックフェザー・ダンス)!」
ミサイルレリーズを思い切り押し込み、K−02ミサイルを全弾発射。
その上でフェザーミサイルを一斉発射。
多数のミサイルが強化型タロスに襲い掛かる。命中。連続して爆発が巻き起こる。
――しかし、その機体は未だ健在であった。
強化型タロスは慣性制御を用い、アリカ機の背後に回り込む。
そしてハルバードを振るい、何度も斬撃を加えた。
ダメージが限界に達したアリカ機はコントロールを失い、小爆発を起こしながら落下していく‥‥。
「‥‥もし、別の形で‥‥知り合えていたのなら‥‥仲良くなれていたかもね‥‥私達‥‥」
警告音が響き、赤いランプに照らされ、スパークが走るコクピット内。
アリカは額から血を流しながら途切れ途切れに言った。
まもなくアリカ機は爆散。
「そうかもしれませんね‥‥アリカ」
シュネーは爆炎を見ながら呟いた。
「アリカさん! くそ! 間に合わなかったか!」
そこへ駆けつける一真機、幸香機、Anbar機。
対タロスに当たっていた他の機体は損傷が激しいため後退中。
一真機はハルバードを携えた傷だらけの強化型タロスをロックオン。
長距離バルカンを射撃しようとするが――遮るように極太の光条が空を切る。
――プロトン砲。漆黒の本星型HWが急速に接近。
こちらも外装があちこち吹き飛んでおり満身創痍の様子。
尚も連続で放たれるプロトン砲。3機のKVは仕方なく距離を取った。
「シュネー、配下の部隊は無事バグアの勢力圏へ離脱した」
専用回線でルフトがシュネーに通信を送る。
「そうですか。‥‥それでは、わたくし達の役目もこれまでですね」
シュネーは穏やかに答える。
「ああ。シュネー‥‥」
「はい、お兄様、わかっております」
本星型HW、強化型タロス、共に損傷甚大。長くは持たないだろう‥‥。
そして仲間を逃がすという任務は完了。2人は自らの使命を全うしたことを悟った。
強化型タロスは本星型HWに寄り添う。
「俺達は‥‥」
「わたくし達は‥‥」
「「一心同体」」
2機は眩い光に包まれ、大爆発を起こした。
――自爆。強化人間の兄と妹の短い人生は、そこで幕を閉じたのだった。