タイトル:武士の魂2マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/26 15:16

●オープニング本文


 銀河重工本社。工場区画――。
 ガントリーに固定された1機の歩行形態のKV。
 鎧武者のような外見をしている。
 機体色は金属そのままで、まだ塗装前のようだ。
「試作1号機がロールアウト‥‥」
「シラヌイの時もそうでしたが、やっぱり形になると良いですね‥‥」
 その機体をキャットウォークから間近で見つめる、背の高い男性と小柄で童顔の女性。
 男性の名は草壁・誠十郎。目の前の機体『XGSS−03A シコン』の開発主任。
 女性の名は南川・遥。誠十郎の補佐を務めている。
 2人とも感慨深そうな表情だ‥‥。
 誠十郎は手元の端末を素早く操作。ディスプレイに機体の情報を表示した。


●XGSS−03A シコン
【機体性能】
 行動3
 移動5
 副兵装スロット4(固定武装込み)
 アクセサリスロット4

【固定武装】
○高出力レーザー砲(仮)
 雪村系の超濃縮レーザーブレード技術を転用し、高出力レーザー砲として再設計、開発された兵器。
 射程20(前回は10程度と記載したが改良により向上、威力は低下していない)。
 装弾数1発。リロード不可。一度の使用で練力50を消費。
 射程内、一直線上に位置する全ての敵に対して攻撃を行う。

【機体特殊能力】
○ストライク・アクセラレータ
 攻撃+100、知覚+100、移動+2 練力消費50 効果時間:1ターン

 同社製KV、XF−09B竜牙の『オフェンス・アクセラセレータ』を応用した攻撃補助システム。
 敵の懐に飛び込み、強烈な打撃を与えることを目的としている。

○超伝導AEC Type.B
 抵抗+200 使用可能回数3 効果時間:一瞬

 既存のAECをエネルギーカートリッジ式に変更し、消費練力を無くしたタイプ。

○超伝導アクチュエータ Ver.4
 命中+50、回避+50 練力消費20 効果時間:1ターン

 雷電・シラヌイで技術を確立させた超伝導アクチュエータの練力効率を更に高めたもの。

【機体解説】
 『シコン(士魂)』という名の通り、武士の魂を具現化したKV。
 シラヌイS2型を改造した『シラヌイS2型・丙』をベースとして開発中の機体。
 竜牙に迫る攻撃性能、雷電と同等以上の防御性能を有する。
 固定武装として雪村系の技術を転用した高出力レーザー砲を搭載。
 現時点で銀河重工が持ち得る技術を結集した機体(技術実証機)。

 歩行形態は鎧武者のような外見。頭部上部の2本のアンテナブレードと
 機体後部にある9本のテールスタビライザーが大きな外見的特徴。

 飛行形態は二等辺三角形に近い形状。
 機体後部、中央に1本の大型スタビライザー。左右に4本ずつ小型スタビライザーが展開。
 スタビライザーは可動式で、それぞれにスラスターが搭載されている。


 概要は以上。傭兵による模擬戦のデータや意見なども取り入れ、設計データの見直しを行った。
 そしてつい数日前、シコンの試作1号機がロールアウトした次第。
「塗装と調整が完了したらすぐ実機テストですか?」
「いや、その前にシミュレーターで空戦データを取っておきたい」
 遥の問いに誠十郎が答える。
「? シミュレーションならもう何度も‥‥」
「いや、傭兵の戦闘データが欲しいんだ。この間は陸戦だけだったからな」
「なるほど‥‥」
 遥は納得したように頷く。
 そこへ――コツコツとヒールの靴音が響いた。
 黒いフレームのメガネをかけた女性がこちらへ歩いてくる。
「君か‥‥。君も機体を見に来たのか?」
「‥‥」
 女性は答えず、じっと『XGSS−03A シコン試作1号機』を見つめる‥‥。
 女性の名は青樹・由香子。シコンの固定武装である高出力レーザー砲の設計担当者だ。
「由香子‥‥? どうかしたか?」
 誠十郎は由香子の顔を見る。
「まだファーストネームで呼んでくれるのね」
 誠十郎の瞳を見つめ返して由香子が言った。
「なんだ、いきなり」
「‥‥何でもないわ。それより、試作1号機‥‥ロールアウトしたのね」
「ああ」
 誠十郎は頷く。
「模擬戦のデータを見せてもらったけど、中々のようね。期待を裏切られずに済みそうかしら」
「裏切らないように努力している。俺は最善を尽くす」
(変わらないんだ‥‥)
 誠十郎の真っ直ぐな目を見て、由香子は思う。
「私のレーザー砲、どうかしら。更に磨きを掛けてみたんだけど」
「あれか。あれには驚いたよ。前回提出してもらった設計データよりも性能が向上している。君は常に上を目指しているんだな」
 微笑む誠十郎。素直な賞賛の言葉。
「‥‥当然です」
 ほんの少し動揺が混じる声。誠十郎は気付かない。
「レーザー砲は別の部署で組み立て中。完成までに試作機の調整を終わらせておいて頂戴」
「わかった。必ず間に合わせてみせるよ」
「‥‥せいぜい、私に追い抜かれないように頑張ることね」
 そう言い捨てて、由香子は去って行った。
「‥‥なんだったんでしょう?」
「さあ? ‥‥それよりも早く空戦データを取りたい。ULTに連絡だ」
「わかりました!」
 元気に手を挙げる遥であった。

●参加者一覧

緑川 安則(ga0157
20歳・♂・JG
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
日野 竜彦(gb6596
18歳・♂・HD
不破 霞(gb8820
20歳・♀・PN
柳凪 蓮夢(gb8883
21歳・♂・EP
ネオ・グランデ(gc2626
24歳・♂・PN

●リプレイ本文

●XGSS−03A シコン
 シコンのシミュレーターによる空戦テスト。
 そのために銀河重工本社へやってきた12名の傭兵達――。

 緑川 安則(ga0157)――。
「銀河か‥‥懐かしいな。雷電やミカガミに関わった事があるので士魂の性能には期待だ。練剣『雪村』から派生した高出力レーザー砲がどこまで使えるのか、楽しみだ。ミカガミの内蔵雪村は賛否両論だったが‥‥」

 漸 王零(ga2930)――。
「銀河の新型‥‥楽しみだな」

 アンジェリナ・ルヴァン(ga6940)――。
「試作1号機がロールアウト‥‥か。実機の素体が完成したとなると、実感が湧くな」

 井出 一真(ga6977)――。
「KV開発関連の依頼は大好物です」

 Anbar(ga9009)――。
「シラヌイドライバーの1人としては、良い後継機が出来そうで、ものすごく楽しみにしているぜ」
「今回はアグレッサー役だが、欠点が見付かると良いな。早めに改善できたほうが良いし」

 赤崎羽矢子(gb2140)――。
「シコン‥‥銀河の技術を集めただけあって凄まじいスペックのようだね」

 堺・清四郎(gb3564)――。
「さて、シラヌイと比べて運動性はどうだろうな?」

 孫六 兼元(gb5331)――。
「ガッハッハ!! 武士のKVとは、実に気になるな!!」

 日野 竜彦(gb6596)――。
(前回もジャジャ馬ぶりを見せてくれたけど、空戦もどうなるか少し楽しみ)

 不破 霞(gb8820)――。
「シラヌイと竜牙の搭乗経験はあるけど‥‥どんなものかな」

 柳凪 蓮夢(gb8883)――。
「実質シラヌイの後継機か‥‥」

 ネオ・グランデ(gc2626)――。
「シラヌイ乗りとしては気になる機体だな」

 そして傭兵一同は受付で確認をし、少し待った後にシミュレータールームへと通される。

●空戦テスト・前半戦
 搭乗機は以下の通り。

 シコン班――
 安則、王零、一真、清四郎、竜彦、霞

 アグレッサー班1――
 サイファー:アンジェリナ、Anbar、羽矢子

 アグレッサー班2――
 スカイセイバー:兼元、蓮夢、ネオ



 模擬戦開始――。

 羽矢子機、増速。大きく前へ出る。
「あたしだってLHの中じゃ機体の扱いはそれなりなんだ。あたしが駆るサイファーと正面からやり合って墜とせるものなら墜としてみなよ!?」

 王零機、増速。羽矢子機をロックオン。ミサイルを連続発射。命中。羽矢子機、大ダメージ。

 アンジェリナ機、ブースト使用、増速。高分子レーザーを安則機に照射、命中。
 安則機、超伝導AEC・Type.Bを使用。ほぼ無効化。

「たまには空の上ってのも良いもんだ‥‥。重武神騎乗師、ネオ・グランデ、推して参る」
 ネオ機、増速。距離を詰める。

 一真機、増速。羽矢子機をロックオン。高分子レーザーを連続照射、命中。羽矢子機、大ダメージ。

 Anbar機、増速。距離を詰める。

 安則機、ブーストとストライク・アクセラレータを使用。
「火器管制機構クリア、目標補足。スカイセイバーとサイファーが相手となれば、遠慮はしない。先手を打つ――ブースト点火! ストライク・アクセラレータ起動! 吶喊する!!」
 増速。高出力レーザーでAnbar機とネオ機に攻撃。
「――往生せいや!」
 Anbar機に命中。Anbar機はFコーティングを使用。中程度のダメージ。
 ネオ機に命中。大ダメージ。
 更にAnbar機をロックオン。ミサイルを発射、命中。Anbar機、大ダメージ。

「さあ、士魂、お前の力を見せてくれ」
 清四郎機、旋回。アンジェリナ機をロックオン。ミサイルを連続発射、命中。
 アンジェリナ機、大ダメージ。

 霞機、旋回、増速。超伝導アクチュエータVer.4を使用。
 アンジェリナ機をロックオン。高分子レーザーを照射、命中。
 アンジェリナ機、大ダメージ。

 竜彦機、増速。蓮夢機との距離を詰める。
「S型に乗り続けきた人間と、シコンのシュミレーター経験のある人間の対戦‥‥か!!」

 兼元機、増速。距離を詰める。

(その性能に振り回される事がないか‥‥確かめさせて頂く)
 蓮夢機、増速。Sライフルで竜彦機に攻撃するも、わざと外す。リロード。



 羽矢子機、ブースト使用。一真をロックオン。ミサイルを一斉発射、命中。一真機、ダメージは軽微。
「全力で行かせて貰うよっ!」

 王零機、SA使用、増速。兼元機に強襲を掛ける。ロックオン。
 ミサイルを連即発射、命中。兼元機、大ダメージ。
「なるほど‥‥確かに強襲をするのに適した機体性能だ。面白い」

 アンジェリナ機、ブースト使用、増速。清四郎機の背後に付き、高分子レーザーを連続照射、命中。
 清四郎機、AECを連続使用、ダメージは無し。

 ネオ機、旋回、増速、旋回。

 清四郎機、旋回。アンジェリナ機をロックオン。高分子レーザーを連続照射。
「ミカガミでの戦い方、こいつならどうだ!?」
 命中。アンジェリナ機、大ダメージ。

 一真機、羽矢子機をロックオン。高分子レーザーを連続照射、命中。
 羽矢子機、致命的なダメージ。

 Anbar機、旋回、安則機をロックオン。ミサイルを連続発射、命中。
 安則機、ダメージは軽微。
「馬鹿な囮が突っ込んで来たと思っているかもしれないが、こちらにも考えがある」

 安則機、Anbarをロックオン。ミサイルを一斉発射。
「じゃあ、こちらもお返しだ。持っていても勿体無いからね」
 命中。Anbar機、致命的なダメージ。

 霞機、旋回。アンジェリナ機をロックオン。ミサイルを連続発射、命中。
 アンジェリナ機、大ダメージ。

 兼元機、増速。王零機をロックオン。高分子レーザーを連続照射。
 王零機、アクチュエータを使用、命中せず。

 蓮夢機、Sライフルで竜彦に攻撃、リロード、攻撃。2発ともわざと外す。

 竜彦機、高出力レーザー砲を空撃ち。
「機体の圧倒的な性能だけで勝っても自分が納得いかないからね!!」
 その後、蓮夢をロックオン。ミサイルを連続発射、命中。
 蓮夢機、大ダメージ。

●空戦テスト・後半戦
 羽矢子機、試作型斥力制御スラスターを使用。一真機をロックオン。
 高分子レーザーを連続照射、命中。一真機、AECを連続使用、ダメージは無し。

 王零機、SA使用。増速、旋回。高出力レーザー砲でAnbar機とネオ機に攻撃。
 Anbar機に命中。Anbar機、Fコーティング使用、致命的なダメージ。
 ネオ機に命中。大ダメージ。

 アンジェリナ機、ブースト使用。増速。霞機の背後に付き、高分子レーザーを連続照射、命中。
 霞機、AECを連続使用、ほぼ無効化。

 ネオ機、安則機をロックオン。ミサイルを連続発射。
 兵装をSライフルに切り替え、狙撃。全て命中。安則機、中程度のダメージ。

 Anbar機、安則機をロックオン。ミサイルを連続発射、1発命中。
 安則機、中程度のダメージ。Anbar機は増速、距離を取る。

 清四郎機、旋回。アンジェリナ機をロックオン。ミサイルを連続発射、命中。
 アンジェリナ機、致命的なダメージ。

 安則機、旋回、増速。アクチュエータ使用、Anbar機をロックオン。ミサイルを発射、命中。
 Anbar機、試作型斥力制御スラスターを使用するが、命中。Anbar機、撃墜。

 一真機、SA使用、増速。ネオ機をロックオン。高分子レーザーを連続照射、命中。
 ネオ機、致命的なダメージ。
「これがXGSS−03Aの機動ですか‥‥良い反応ですねえ」
 シコンの機動力に手応えを感じる一真。

 蓮夢機、リロード。Sライフルで竜彦機に攻撃するが、わざと外す。リロード。

 竜彦機、増速。SA使用、蓮夢をロックオン。高分子レーザーを連続照射、命中。
 蓮夢機、致命的なダメージ。
「流石‥‥この性能差では抑え込まれるか‥‥」

 霞機、旋回。アクチュエータ使用、アンジェリナ機をロックオン。高分子レーザーを連続照射、命中。
 アンジェリナ機、撃墜。
「ふっ‥‥」
 アンジェリナは満足げな笑みを浮かべる。

 兼元機、歩行形態に変形、エアロダンサーとアグレッシブトルネード使用。
 ディフェンダーで安則機に空中格闘を仕掛ける。
「うぉりゃあああ!!」
 しかし命中せず。変形、飛行形態へ戻る。



 羽矢子機、増速。安則機をロックオン。ミサイル発射、命中。安則機、中程度のダメージ。

 王零機、増速、旋回。ネオ機をロックオン。高分子レーザーを連続照射、命中。
 ネオ機、撃墜。

 安則機、旋回、兼元をロックオン。高分子レーザーを連続照射、命中。
 兼元機、致命的なダメージ。

 一真機、SA使用、旋回。羽矢子機をロックオン。ミサイルを連続発射、命中。
 羽矢子機、撃墜。

 清四郎機、ブーストとSA使用。
「速度は攻撃と防御!」
 兼元機をロックオン。高分子レーザーを照射、命中。
 更に高出力レーザーを発射。
「士魂の秘密兵器の威力はどうだ!?」
 命中。兼元機、撃墜。

 蓮夢機、ブースト使用。竜彦機をロックオン。ミサイルを一斉発射。
「ここが勝負時、だね‥‥決める!」
 命中。竜彦機、中程度のダメージ。

 竜彦機、蓮夢機をロックオン。高分子レーザーを連続照射、命中。
 蓮夢機、撃墜。

 アグレッサー班全滅。空戦テスト終了。

●性能評価
 模擬戦を終え、会議室に通された傭兵達が感想を述べる。

 安則――
「この機体性能から言えば400から500万はするな。下手すると西王母並みかも」
 シミュレーターに乗ってみた感覚、性能から値段を推測してみる。

 王零――
「なぁ、シコンにもシラヌイの時のように性能向上型が出たりするのか?」
 その質問に誠十郎は「今は考えていない」とだけ答えた。

 アンジェリナ――
「私のミカガミの戦闘データだ。レーザー砲とシコン本体との整合性の参考になれば‥‥と思う」
 誠十郎にスティック状の記憶媒体を差し出す。
 アンジェリナは自身の今の剣(機体)がLH随一の性能の内臓雪村を持つミカガミだと自負している。
 本当は高出力レーザー砲の設計者である由香子にデータを渡したかったが‥‥
 残念ながら彼女は同席していなかった。
「こういう物は受け取らない事にしていたんだが‥‥‥‥まあ――頂戴しておくよ」
 アンジェリナの模擬戦のデータに目を通しながら誠十郎は言った。

 一真――
「この機動性能は‥‥なかなかですね」

 Anbar――
「やはり機体性能と機体特殊能力だけでも押し切られるな‥‥」

 羽矢子――
「主兵装がレーザー砲ではなくバルカンかガトリングならもう少し戦えたんだろうけどね‥‥」

 清四郎――
「やはり回数が1回なのがネックだな、K−02ほどの制圧力や威力がないから1回だけでは扱いにくい」
「回数をこなせるようにするか、いっそのこと取り外すのも選択肢かもしれん」
「レーザー砲で難しいならばソードウィングと同様の武装に変更などはできないのか?」
 思うままに意見を述べる清四郎。
「とりあえず、ソードウィング系の武装は整備に多大な負担が掛かる上に『破曉の二番煎じ』とだけ言っておく」
 誠十郎はそのように答えた。コンセプトが被るのは頂けない。

 兼元――
「空中格闘を外したのは痛かったな!!」

 霞――
「やっぱり1発限りは使い辛いです‥‥。試作機がロールアウトしているという話なので、今更でしょうけど‥‥」

 ネオ――
「1つツッコミたいのは、何故『士魂』なのに固定兵装がレーザー砲?」
「シコンは銀河重工の技術を結集した、技術実証機。高出力レーザー砲は練剣『雪村』の超濃縮レーザーブレード技術から派生した兵器。現代の武士は銃も扱えなければいけないだろう。刀を振るう事だけが武士ではない」
 ネオの疑問に誠十郎はきぱきぱと答える。
「空陸で使用可能な兵装となると銃器、ってのもあるんだがね」
 と、誠十郎は付け加えた。



 工場区画――。見学を希望する傭兵達は特別に許可を貰い、ここへ通された。
 傭兵達の両サイドを、それ以上に屈強な能力者のガードマンが挟み、常にじぃぃぃっと監視している。
 KV開発は各メガコーポにとって最重要機密なのだ。

 一同はガントリーに固定されているシコンの試作1号機を遠くから見学。
「開発は順調‥‥後は乗り手の問題、か」
 アンジェリナがあごに手を当てて呟く。
「ふ〜ん、あれが試作機‥‥高出力レーザー砲は搭載するんですよね‥‥」
 竜彦も何かを考えている様子。
「実機のほうにも早く乗ってみたいもんだな」
 ネオが言い、まもなく見学は終了となった。



 KV開発室――。
「何の用かしら」
 誠十郎のデスクに由香子がやってきた。不機嫌そうな表情をしている。
「このデータ、良ければ見てくれないか」
「‥‥なに? 傭兵の戦闘データ? 興味が無いわね。用事がそれだけなら、帰るわ」
 きびすを返そうとする由香子の手首を握り、引き止める誠十郎。
(‥‥!?)
「まあ、そう言わずに。見るだけ見て欲しい。傭兵だからと言って侮れない。俺は傭兵の戦闘データを重視している。俺の推薦だと思ってくれていい」
「‥‥」
 由香子は渋々スティックを受け取った。
「こういう開発関連依頼に個人的なデータを持ち込もうとする傭兵は多いがね。いきなり研究室へ押しかけようとするとかではなく、しっかり手順を踏めば‥‥それなりの実績があれば‥‥受け取ろうと俺は思う」
 誠十郎はコーヒーを一口飲んで、また口を開く。
「‥‥ああ、そういえば君のレーザー砲、まだ名前が無かったな」
「ええ‥‥(仮)になっているわね」
 由香子は特に名称などにこだわる人物ではなかった。
「前回、とある傭兵が言っていたらしいんだが‥‥それで思いついてね。鉄砲伝来の地から取って『種子島』なんてどうだ?」