●リプレイ本文
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UPC軍基地。
ブリーフィング後‥‥数名の傭兵がまだ部屋に残っていた。
「よぉ、カレン少年兵」
ナスル・アフマド(
gc5101)がカレンに話しかける。
「‥‥何か?」
「この土地は、故郷ではあるんだが‥‥久しくてな。
おまえさん‥‥敵の所在に関して、何か分かる事はあるか?」
「‥‥砂嵐発生装置の位置ですか。それなら砂嵐の発生ポイントその物でしょう。
砂嵐の中心に向えば自然に発見出来るかと。
‥‥これはあくまで僕の推測です。作戦には従いますよ」
カレンはそれだけ、淡々と答えた。
「久遠時‥‥? いや、日系って訳でもないのか?」
黒木 敬介(
gc5024)の問いに、カレンは近くの机の上にあったボールペンを取り、
メモ帳にサラサラと走らせる。
「漢字では『久遠寺』‥‥と書きます」
「ふーん。ま、よろしく。
若いからって取り分け差別したり甘やかしたりしないけど、それで構わないかな?
男に優しくする趣味はなくってね」
「‥‥別にそれで構いません」
カレンはただ、無表情である。
部屋を出て行こうとしたアルテミス(
gc6467)の額にきゅぴーんと電撃のようなものが奔る。
「お仕事お仕事‥‥はっ!? 運命の出会い!」
カレンの元へダッシュ。
「好きっ! 付き合って〜♪」
そのまま愛の告白をして抱きついた。
「‥‥あなたは?」
カレンは抱きつかれたまま振り向き、冷たい視線を向ける。
「クールでかっこいいし超タイプ。一目惚れだね♪ 好き好きーv」
「‥‥ですから、あなたの名前は? 依頼の参加者という事は知っていますが‥‥」
「あ、ボクはアルテミス! よろしくね♪」
にっこりと笑顔を浮かべる。
「‥‥。とにかく、離れて下さい」
「好き好きーv だって好きになっちゃったんだもん。もう少しこのままでいさせて?」
(口で言わないと伝わらないしね)
「‥‥」
「わっ!?」
カレンはアルテミスを強引に振り解き、ブリーフィングルームを出て行ってしまった‥‥。
***
全機出撃。砂嵐が吹き荒れる砂原‥‥。
ディアブロ改『ゼロ』に搭乗するノエル・アレノア(
ga0237)。
(こうも視界が悪いと‥‥。孤立だけは避けないと‥‥)
恋人のティリア=シルフィード(
gb4903)に通信を送る。
「作戦通り砲撃は完全にお任せします。宜しくお願いします。
カレンくんも、宜しくね」
「わかりました。ノエルさんもお気をつけて」
ノエルからの通信に答えるティリアの機体はスピリットゴースト『Merkabah』。
(移動する砂嵐‥‥自然発生の物でも厄介なのに‥‥。
バグアが意図的に発生させているのなら、その脅威は推して知るべしです。
今回の任務は大きな作戦の一環と聞きました。
作戦が滞りなく進行するよう、まずは目の前の脅威を取り払うとしましょう‥‥。
視界的な意味でも、ね)
「初めまして。砂漠戦は正直なところ不慣れなので‥‥
ご迷惑をかけるかもしれませんが‥‥宜しくお願いします」
カレンは「こちらこそ」とだけ答えた。
ハミル・ジャウザール(
gb4773)の機体はS−01H『ナイトリィ』。
「砂嵐の発生装置‥‥ですか‥‥。
ここで壊せないと‥‥城攻めが難しくなるんですよね‥‥。
責任重大です‥‥」
ブロント・アルフォード(
gb5351)の機体はフェニックス『夜朱雀』。
「さて、始めるか‥‥」
彼は戦闘区域に入る前から一切油断の無いように行動。
ジリオン・L・C(
gc1321)は搭乗機、ガネット『超! 魁! 未来勇者号!』を‥‥
「とーぅ!
俺様は! ジリオン! ラヴ! クラフトゥ!!
‥‥未来の勇者だ!!」
そんな叫びと共にガキーンとポージングさせる。
「砂嵐だとゥ!? ハァーッハッハッ!!
片腹痛いな! 実に魔王の手先的だ、実に良い!!」
「‥‥」
ジリオン以外の全員が華麗にスルー。
「行け! 勇者パーティー! 出撃だ!」
その言葉を聞いてか聞かぬか、傭兵部隊は砂嵐の中心へ向う。
敬介のグリフォン、ナスルのグローム『爆凌』、アルテミスのマリアンデール『カリストー』。
カレンのサイファーEが続く。
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砂嵐の中心へ接近。更に視界が悪くなる。
各機、地殻変化計測器を設置。全機にデータリンク構築完了。
ティリア機はファルコン・スナイプを使用。
「着弾点算出、射角修正‥‥砲門オープン、Fスナイプ起動! 砲撃開始します!」
M−181大型榴弾砲を全弾発射。
砂嵐発生装置の位置を特定する為、砲弾1発ごとに着弾点を少しずつずらして広範囲に砲撃。
アルテミス機はファルコン・スナイプ改を使用。
「どっかーん! っと! いっけー!」
DR−M高出力荷電粒子砲の掃射モードを砂嵐の中心に向って放つ。
極太の光条を放った後、自動的に装甲を解放され放熱が行われる。
ハミル機はスナイパーライフルD−02で射撃。
敬介機は7.65mm多連装機関砲で砂嵐発生装置を炙り出そうとするが‥‥
他3機の兵装に比べ射程が短過ぎる為、ここから射撃しても意味が無い。
もっと接近する必要があるが‥‥この視界不良。
単機で突出するのは極めて危険。ここは踏み止まる。
視界が非常に悪く、砲撃の効果は確認出来ない。砂嵐発生装置の位置も特定出来ず。
ノイズの激しいレーダーに、微かに反応。ゴーレム5機が接近。
前衛の6機が迎撃に出る。
***
「敵護衛戦力‥‥砂漠仕様のゴーレム5機を確認。‥‥行きます!」
ノエル機、試作型『スラスターライフル』での射撃と、ファランクス・アテナイでの牽制の後、
双機刀『臥竜鳳雛』で近接戦を仕掛ける。
「来たな‥‥仕掛けるぞ!」
ブロント機はP−115mm高初速滑腔砲で牽制の砲撃を行いつつ、
3.2cm高分子レーザー砲を照射。
「勇者! ガン!!」
ジリオン機はクァルテットガン『マルコキアス』で弾幕を展開。
敬介機はステップ・エアを使用し、ホバー移動をしつつ、プラズマリボルバーで射撃。
接近してきた所をスパークワイヤーで攻撃。
ナスル機はゴーレムの曲刀をハード・ディフェンダーで受け止めた。
そのまま叩き付けて弾いた後、一度距離を取る。
CK−05Bアサルトライフルにペイント弾が装填されたマガジンを差し込む。
砂漠迷彩のゴーレムに対し1マガジン分全弾射撃。ゴーレムは蛍光色の塗料塗れになる。
「ハッハー! 丸見えなんだよぉ!」
接近し、ノワール・デヴァステイターで射撃。
カレン機は近接戦を仕掛ける味方機をレーザーで援護。
ブロント機はゴーレムに向い、邪断刀を振う。
「腕は悪くは無い様だが、相手が悪かったな‥‥!」
邪断刀の斬撃は盾で防がれた。
「急所がガラ空きだぞ‥‥貰った!」
そこへ練剣『七星』で攻撃! ‥‥が、寸前で回避されてしまう。
「デザートストームはやらせん!」
「こいつ‥‥有人機? オープン回線で通信?!」
刀と曲刀の鍔迫り合い。
「デザートストームとは砂嵐発生装置の事か?」
返答は無し。
ゴーレムは曲刀でブロント機を斬り付け、蹴り飛ばし、チェーンガンとプロトン砲を猛射。
「ぐ、ぐあああああ!?」
ブロント機はチェーンガンの砲弾に装甲を砕かれ、プロトン砲の光条に機体を貫かれ、大破。
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前衛はゴーレムと交戦中‥‥。
ノエル機、スラスターライフルで射撃。ゴーレムの装甲に砲弾が突き刺さる。
「ブロントさんが‥‥くっ」
ハミル機、大破したブロント機に代わって前へ出る。
「フォローに入ります」
MSIバルカンRの弾幕で牽制しつつ、MMEディフェンダーで近接攻撃を仕掛ける。
ジリオン機、敵の射撃を回避。
「とーぅ! 当たらん! そこだ! 勇者! ガン!! セカンド!」
マルコキアスの弾幕をゴーレムに浴びせる。
敬介機はステップ・エアの起動を継続。敵の攻撃を回避。
リボルバーで射撃しつつ接近。ワイヤーで電撃を浴びせる。
再び後退、を繰り返す。
ナスル機は剣で斬り付けた後に拳銃で射撃。
ティリア機はゴーレムと交戦中の前衛を援護。
SライフルD−03での狙撃と、十式高性能長距離バルカンで弾幕を張る。
アルテミス機は引き続き砂嵐の中心へレーザーガンで射撃。
「撃て撃てー。長距離射撃で狙撃がお仕事なのさ♪」
その時。地殻変化計測器に反応。
「ハァーハッハッ! 見え透いてるぞ! 魔王の手先ェ!」
ジリオンは高笑いを上げるが――
「‥‥って、あれ? 後ろ?」
砂の中から蠍キメラ10体が出現。
後衛のティリア機とアルテミス機が奇襲を受け、包囲されてしまう。
***
前衛で戦うノエル機、双機刀の斬撃でゴーレムをX字に切り裂き、撃破。
「ティリアさん!!」
恋人の危機に、名を叫ぶ。
ティリア機はバルカン砲を蠍キメラに浴びせる。1体は甲殻を貫かれ体液を散らし、動かなくなる。
「大丈夫‥‥ですよ。この程度ならこちらで対処可能です。心配しないで下さい」
ノエルへ返答。ノエルは、ほっと胸を撫で下ろす。
アルテミス機は盾で鋏攻撃を防ぎ、練槍に兵装を切り替え。
突きを繰り出し、蠍キメラ1体の甲殻を焼き貫き串刺しにする。
「そっちはそっちの敵をやっつけてね!」
***
ハミル機は地面に突き立てた剣を遮蔽物とし、砲撃を防ぐ。
バルカン砲の弾幕と、SライフルD−02のピンポイント狙撃でゴーレムを撃破。
ジリオン機、ガキーンとポーズを取り、腕をゴーレムへ向ける。
「行けェ! 勇者! ガネットォ! ファングゥ!!」
ガネットファングを連続発射。全弾命中。ゴーレムは爆発。
敬介機、ステップ・エアを尚も起動中。
リロードを挟みつつリボルバーで的確な射撃。ゴーレムの装甲を焼く。
接近。ワイヤーを打ち付け致命的な損傷を与えた後、
頭部をクローで貫き、撃破。
ナスル機はゴーレムの頭部へ近距離から拳銃の銃撃を加える。
カレン機が接近。剣でゴーレムの両腕を斬り落とす。
ナスル機はゴーレムの胴体を剣で何度も斬り付け、撃破。
***
前衛はゴーレムを全機撃破。
「急ぎましょう‥‥早く破壊しなければ要塞の攻略に影響が‥‥」
ハミルが言う。ゴーレムに撃破にやや手こずってしまった。
「ブロントが聞き出してくれた情報‥‥『デザートストーム』‥‥これが砂嵐発生装置の名称か‥‥」
言ったのは敬介。
「奴の犠牲は無駄に出来ん! 行くぞ勇者パーティー! 前進だ!」
「ええ、行きましょう」
ジリオンの言葉に頷くノエル。
(ブロントさん‥‥どうか無事で居て下さい‥‥)
前衛は砂嵐の中心へ移動。すると‥‥砂嵐の発生源をついに発見。
「こいつは‥‥」
「やはり‥‥」
呟くナスルとカレン。
それはゴーレムよりも細身な、カレン機と同じ様なデザートカラーをした人型ワームだった。
デザートストームはプロトン砲を連射してきた。前衛全機は回避運動。
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後衛2機は蠍キメラと戦闘中。
ティリア機、近距離から旺盛な砲撃を行い、蠍キメラを撃破していく。
「前衛の皆さんが砂嵐発生装置――デザートストームと交戦状況に突入した模様です」
アルテミス、練槍で蠍キメラを正確に貫き、撃破。
「無事に破壊出来るといいけどー‥‥」
***
前衛6機、デザートストームの激しい砂嵐による目晦ましと連射されるプロトン砲により、苦戦。
反撃の糸口を見出せずに居た‥‥。
「視界がほとんど利かない状況でこれは‥‥くっ」
「‥‥っ」
奥歯を噛むノエル。ハミルも急激に上昇していく損傷率に表情を歪める。
「おのれ魔王め! 卑怯だぞ!」
「ジャミングも酷い‥‥くそ、電子戦機が居れば‥‥」
叫ぶジリオン。ノイズが酷いレーダーを見る敬介。
「どうするよ、カレン少年兵」
ナスルはカレンに通信。
「一気に接近し、近接戦を仕掛けるのがベストかと。Fコーティングを展開、僕を盾に使って下さい」
「‥‥了解だ。行くぞ。全員、いいな?」
全員から「了解」との返答。
全機ブーストを使用。
ゼロ・シールドを構えつつ、カレン機が先行。
プロトン砲の猛射を受けるが‥‥なんとか耐えて見せる。
距離を詰めた全機は、一斉に攻撃を開始。
「Pフォース起動! ――これで!」
ノエル機は威力が上昇した練鎌を振い、連続の斬撃を与える。
「この距離ならば‥‥外さない‥‥」
ハミル機はブレス・ノウを使用。DR−2荷電粒子砲の、極太の光条を撃ち放つ。
「うおお! 俺様の勇者パワーが乱れ咲く‥‥!」
ガネットオーラを使用したジリオン機。機体から翡翠色のオーラが奔流のように湧き上がる。
「喰らえ!! 超必殺ゥ! 真! 勇者‥‥斬り!!」
両手でしっかりと保持したブレイブソードによる斬撃。
燃えるような幻影の炎と共に『超必殺 真 勇者斬り』の筆字が
ジリオン機の背後にババァーン! と浮かんだ。
高威力の斬撃と光条と、そして必殺技を受けたデザートストームは外装の一部が脱落し、損傷大。
内部にもかなりのダメージが及んでいるようだ。
「やれやれ‥‥。俺は必殺技とか、無いんだけどな」
敬介機は多連装機関砲を猛射。反撃の隙を与えない。
「‥‥ナスルさん」
「なんだ?」
ナスルはライフルに連動するトリガーを引きつつカレンからの通信に答える。
「敵の機体後部に電源ケーブルと思しき物を確認。あれを狙って下さい」
「そうか‥‥これだけの砂嵐を‥‥常に発生させられるんだもんなァ!」
ブーストを噴かして敵の背後に回り込み、剣でケーブルを切断。
砂嵐が‥‥止んだ。
カレン機は剣を振い正面から斬撃。
「トドメを」
他の機体もデザートストームに猛烈な砲撃を浴びせる。
「よし、貰ったァ!」
ナスル機はカレン機の斬撃で亀裂が入った装甲にディフェンダーを叩き付ける。
‥‥デザートストームは小爆発を何度も起こした後、大爆発を起こして四散した。
***
基地に帰還後。
シャワーを浴びて汗と砂を洗い落とした傭兵達は各々で休息を取る。
ちなみにブロントは、負傷したものの重体まではいかず、医務室で手当てを受けている。
「あぁ‥‥今日もいい、殺し合いだった‥‥」
ナスルは煙草を吸い、一服。
隣でミネラルウォーターを飲みながら固形栄養食を頬張るカレンに目をやり、話しかける。
「カレン少年兵、てめぇも、楽しめたか?」
「‥‥僕は仕事として戦っているだけです」
「戦争で金を貰う商売だ。仕事、楽しまなきゃ損ってもんだ」
「‥‥」
カレンは特に何も答えず、もぐもぐと栄養食を咀嚼した。
シャワー上がりのアルテミスが背後からカレンに抱きついた。
「今日はお疲れ様ー♪ ねぇ今度、デートしようよ」
「‥‥あの、あなたは男性ですよね」
カレンは少しだけ困った表情。
さっきシャワーを浴びた際にアルテミスは堂々と男性用のシャワー室に入って来たのだ。
それには流石のカレンも最初、少しだけ驚いた。
「何か問題でも?」
きょとんと首かしげるアルテミス。
カレンはその無邪気な顔を見て溜息をつき、
「‥‥また、会う機会があれば考えます」
と答えた。